魔法世界の実力者になりたくて!   作:Assassss

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アウラ編の導入です。


『陰の実力者』はシナリオを予測したい!

フリーレン一行がグラナト領に入ったところ、フリーレンが捕まった。彼女は突然町中で魔法をぶっ放そうとしたそうだ。これには僕もちょっと驚いたけど、なんでもここでは魔族の和睦の使者が来ていて、フリーレンはそいつを殺そうとしたらしい。へー、魔族にも穏健派がいるんだね。まあ、人間だって競争社会を厭う人も大勢いる。魔族もそうなんだろう、きっと。

それよりも、大事なのは久しぶりにイベントの気配がするということだ。おそらく、今まで敵対してきた魔族という種族と共存は可能なのかどうかという、大きなテーマが中心のビッグイベント。そして、そこには陰の実力者としての活躍の場も無数にあるということだ!

 

ケース1: 共存を望む魔族たちは、紆余曲折ありながらも人間との平和条約を取り付ける一歩手前までこぎつける。しかしここで、非穏健派魔族が思わず人間を攻撃してしまい、結局魔族は人間の敵だという話になり、戦争一歩手前になる。しかしここで登場するのが陰の実力者だ。彼は突然、人間と魔族両方を攻撃しだしたのだ。仕方なく人間と魔族は一時休戦し、共同戦線を張り彼を退ける。その後、人間の良さを認識した非穏健派の魔族は自らの行いを反省し、無事平和条約は締結された。もしかしたら彼は、魔族と人間の共存の可能性を見たかったのかもしれない……

 

ケース2: 共存を望む魔族たち。しかし交渉の途中、突然無茶苦茶な理由で交渉破棄を言い渡される。しかし、それは実は対魔族用兵器を売り出す商人たちの陰謀だった。あわや処刑寸前といったところに、颯爽と現れる陰の実力者。彼は商人たちの真の狙いを暴き、その商人こそが人間と魔族の戦争を起こす陰謀を張り巡らせていたことを、白日の下にさらしたのだった!逆上した商人たちは刺客を差し向けるが、陰の実力者は返り討ちにし、去っていった。その後、商人たちは打倒され、人間と魔族の新しい時代が幕を開けるのだった……

 

ケース3: 人間との戦争を望まない魔族たち。しかししばらく人間を襲わないでいると、人間を襲いたいという欲望が耐えられないほど大きくなっていく。やはり魔族は人間と敵対するように生まれた運命なのかと絶望する魔族たち。ついに耐え切れず、人間を襲おうとしたところに現れる陰の実力者!彼は魔族たちを抑えると同時に、その欲望が魔族の遺伝子ではなく、環境的要因(例えば食べ物が悪かったとかかな?)であることを突き止める。それをもとに、生活環境を改善し、魔力的治療を進めると、最終的に人間を襲いたいという衝動の完全な消去に成功したのだった……

 

うんうん。ちょっと考えただけでもこんなにシナリオの可能性がある。ならば僕がするべきことは、これからシナリオがどんな方向に行くかを見極めることだ。

そのために、僕は気合を入れて変装して彼らを観察している。長期滞在の為に、たまにしか使えない長期滞在の言い訳「ちょっとした武者修行のために遠方の魔族討伐依頼を受けた」を使った。今僕は、幻影魔法や変装を駆使しているので、誰の目から見てもモブの中のモブに見えていることだろう。その証拠に、いまフリーレンをとらえている衛兵さんを割と近くから観察してるんだけど、全然気にもされないのだ!僕は今まで、モブ力の鍛錬も怠らなかった。その努力が、今まさに報われているのだ!

 

 

……さて、遠目から見てる限りでは交渉は順調っぽいようだった。途中領主のグラナトさんが怒ったような様子を見せたけど、魔族さんたちが上手く説得して怒りを抑えたみたいだ。けど、このまま順調に和睦が行われるなんて僕は思ってない。必ず邪魔が入るのだろう。その邪魔の種類によって、今後の展開が決まる。

というわけで、その邪魔の正体を見極めるために、すこし領を離れて探索してみると……。どうもそのアウラと思しき魔族を見つけた。なんか大量のゾンビ兵を引き連れて、領の方をうかがっているようだった。何考えてるんだろう?

僕は幻影魔法や隠ぺい魔法も使えるから、少なくとも事前に察知されない状況なら魔族に近づいても存在がバレないようにできる。アウラの横に立って、一緒に領の方を眺めながら考える。うーん、多分今は和睦の交渉が上手くいっているのかどうかを見守っているのかな?

 

「……なんでこんなところに人間がノコノコ現れるのかしら?」

 

ノコノコとは失礼な。まあいい。それよりも今後のことだ。これから和睦の使者の魔族が帰ってくることだろう。でも、あのフリーレンは、町中で魔族を問答無用で殺そうとするほどに魔族を嫌っている。ということは。

 

「フリーレンは脱獄して、このアウラを殺しに来るに違いないな……」

「……おい人間、ゴチャゴチャうるさい。何がしたいの?」

「その憎しみをこのアウラがどう克服するのかが最大の焦点になるのか。そしてこのアウラが負けそうになったときに、突如として現れる陰の実力者。うん、これもなかなか……」

「私が負ける?はぁ……真面目に聞いて損した。さっさと殺しちゃいましょ。」

 

……さっきからゴチャゴチャうるさいなぁ。せっかく人が妄想を含まらせているんだから、邪魔をしないで欲しい…………?

あれ、アウラ、なんかこっち見てない?え、バレてる?そ、そんな、僕の幻影魔法と隠密魔法は完璧のはず。前にゼーリエに接触したときだってバレなかった。なんで!?最近は使っていなかったからなまったのか!?

 

……あーー!僕は今隠密じゃなくて、モブになりきるために魔法使っていたんだった!しまった!今、アウラには目の前にモブがいるように見えているんだ!か、考えろ。僕はモブとして何をすべきか。いま、モブとして最もふさわしい行動。それは。

 

「え、う、うわああああああああああ!!!ま、魔族だーーー!!!」

「……この人間、もしかして私に今まで気づかなかったの?」

「ひ、ひいいいいいい!!!ま、間違えただけなんでしゅううう!!!命だけはお助けをおおおおおお!!!!!」

 

そう言って、僕は人間として違和感がない程度の走力で逃走を始めた。

そう、今僕がすべきことは。ネームドボスに震え、なすすべもなく無様に逃走することなのだ!ここで立ち向かうなんて主人公のやること。真のモブは、そのような勇気など持ち合わせていないのだ!

 

「逃がすわけないじゃない。よくも耳障りな戯言を聞かせてくれたわね?」

 

そういって、僕の前にゾンビ兵が現れる。しまった。いつものモブじゃない僕ならこんな雑兵瞬殺だから気にも留めていなかった。

 

「……いや、よく見るとコイツ、割といい体してるわね。武器を持たせればまあまあの兵士になるかしら……?」

 

そりゃ陰の実力者として毎日鍛えてるからね!そして、僕は今正直ピンチだ。今の僕が取れる一番モブっぽい行動。それは、無様にアウラに首を切られることだ。この段階じゃ、陰の実力者の出番なんてまだ早い。しかし、僕の今のモブ技に、首を切断されても生き残るなんてさすがに無いのだ。どうしよう。真のモブならば、この場からどうやって逃走すべきなのだろうか!?

 

「はぁ……変な人間もいるものね。"服従させる魔法(アゼリューゼ)"」

 

あ、あれはアウラの必殺技の服従させる魔法(アゼリューゼ)だ!魔力量が自分より少なければ、相手を服従させられるが、逆に多ければ自分が服従してしまう魔法。アウラのメインウェポンだ。対アウラのボス戦は、いかにこの服従させる魔法(アゼリューゼ)の発動を妨害しつつ、魔力量を自分より減らせるかが肝になるのだろう。でも、魔力量はどう見ても僕の方が多い。ここでアウラが僕というモブに服従したら、シナリオはもう無茶苦茶だ!

 

「ま、待ってくれ!ここは穏便に話し合おう。ここでそれをしたら、メインシナリオは崩壊してしまうだろう!?」

「……やめるわけないじゃない。なによそれ。やっぱり変な人間ね。」

 

そういって、アウラと僕の胸付近から、魂っぽい何かが出てきて、天秤に載せられた。そして。

 

ガッチャアアアアアン!!!!!!

 

「………………は?」

 

まるで綿と鉄球を比べたような勢いで、天秤は僕の魂が下になるように傾いてしまった。




・交渉は順調
Q: リュグナー達の家族ってなんだろう発言を聞いてないの?
A: 聞いてません。シド君は人の話を聞かないうえに、さすがに聞こえる距離にモブが居れる状況じゃないからね。

・シナリオ
「彼らはどんな魔族なのか」じゃなくて、「これはどんなシナリオなのか」を考えるあたりに、シド君の狂人っぷりが出てる

・ゼーリエにバレなかった
今のシド君の幻影魔法の力量は、事前にゼーリエがそこに存在するということを察知してなかったらバレないけど、察知してたら見破られる程度

・アウラ
「なんか突然人間がぶつぶつ意味わかんない独り言を言いながら私の横に来た……」
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