ノブリス・オブリージュ?なんですのそれ? 作:一般お嬢様
遥か遠く キヴォトスに 有名な 3人の社畜が
長い 長い 仕事をしていた
一人は仕事に追われ
一人は仕事に忙殺され
一人は…………気絶する
社畜達は 積み上がる仕事を 力合わせ越える事にした
────キヴォトス某所。寂れた街の一角、そこにある屋台に3人は集まっていた。
「………お疲れ様」
空崎ヒナ 学名:ゲヘナシナシナシロモップ
ゲヘナの過労死ライン超え生徒。あまりにも増えすぎている仕事に食事さえままらなかった。趣味が寝ることというもはや趣味で寝ているとかいう意味不明なものを趣味にしている。珈琲でさえもはやただの動作でしか飲まなかった社畜
「……ええ、お疲れ様です」
尾刃カンナ 学名:ヴァルキューレシオシオトオボエワンコ
本来は犬のおまわりさんになりたかったが人相が怖いという理由でなれなかった悲しきワンコ。いつもキレてるのでデフォルトの人相がより悪くなった社畜。珈琲はブラックしか飲まなかったが時折ドカッと砂糖を入れてめちゃくちゃ甘いのをキメることもある
「来月も仕事は終わらないと思いますわ」
天上ヒトミ 学名:トリニティメンタルボロボロエセオジョウサマ
言わずとしれたトリニティの過労死枠。ティーパーティーやらなんやらの仕事が積もりに積もって何度も気絶している。あまりご飯を食べることはない、食べたとしてもゼリー飲料だけなのはよくある。そして魔が差したのか紅茶ではなく珈琲に手を出した結果、仕事の効率が上がり。カフェインをキメることを覚えてしまった、ティーパーティーにお茶に誘われても拒否るようになった、ナギサはミカにとうとう愛想尽かされたんじゃんね☆と揶揄われて脳破壊された。
「それじゃあ……今日もお疲れ様ということで一つ」
「ええ」
「はい……」
この3人の出会いはと言うと、まあ良くないものだった。ゲヘナの生徒とトリニティの生徒がいざこざを起こしてヴァルキューレがそれを連行した。それを引き取りに来たヒナとヒトミ、捕まってなお煩い二人にげんなりするカンナ。それぞれがそれぞれの顔を見た瞬間、電流が走る
あ、こいつら自分と同類だと
そこからは話が早かった、喚く下手人をさっさと処した後、事後の確認と称して3人は集まった。そして盛大に愚痴りあった、やれ自分の学園はどうだとか、上司がクソだとか。そんな話である。
ヒナとカンナはそれである程度スッキリしたのだが、ヒトミは特に自分の置かれている環境に文句を言うことはなかった。理由を尋ねると、仕事してないと何をすれば良いのかわからないこと。そもそもぼっちだからどうでもいいこと。そんなことを言われた二人は速攻でヒトミを屋台に連れてった。そこでなんやかんやあって仲良くなったのだ
「最初に会った時のお二人の顔はそれはそれはひどいものでしたね」
「それは否定しないけど」
「顔が酷いのはカンナさんも一緒ですわ」
「気にしているので言わないでください……私が悪かったので」
しみじみというカンナにヒナとヒトミがお前の顔は元々怖いだろと返すと、カンナは空笑いしたあと。割と本気で凹んだ、少なくともこういう会話をできる程度にはお互いのことを理解している様子なのだ。
「それを言うなら……ヒトミが二年生というのが未だに信じられない」
「それは同感ですね…三年生かと思いました」
「見た目で言うならヒナさんは小学生、カンナさんは擦れたOLにしか見えませんわ」
「私が悪かった……」
「同じく………」
ヒトミのことを揶揄うヒナとカンナだったが、即座にヒトミからのカウンターブローで撃沈する、どちらも見た目が割りとコンプレックスなので。禁句と言えば禁句だがヒトミもほんの少しだけ気にしているので仕方がないとも言える
「……まあ、こうやって言い合える位には、心を開いてくれるから良いけれど」
「そうですね……最初は、本当に取り付く島もない様子でした」
「……それは、悪く思っていますわ。ごめんなさい」
最初はヒトミは特に何も喋らず、少しだけ食べてさっさと帰ってしまうことがほとんどであり。ヒナとカンナが根気強く関わり続け。彼女からどうして関わるのを避けているのかと問いかけても何も答えることはなく、そこからもう少し立って出先で気絶している所を保護して話を聞いた時にようやく話してくれたのだ
人へどう頼れば良いのかわからない、と
その後、自分の置かれている境遇と。そもそもとして単独での行動がほとんどであり、集団でなにかするという経験自体がほぼないことを語ったのだ。ヒナとカンナは、それを聞いて憐れむことも、怒ることもせず。前と同じように誘うだけにとどまった。
無理に変えようとしてもストレスになるだけだろう、と
それからヒトミは段々と心を開き。憎まれ口を叩くまでには人間関係を深めてきている、これはまだどこかの昆布茶とロールケーキですら到達しておらず。トリニティにいるのが過労の一番の原因かもしれない
「……はい、もう食べて良いと思うよ」
「すみませんわね、いつも……」
「良いよ、何時ものお礼」
ヒナがヒトミの分を用意して、少しだけ申し訳無さそうにヒトミが受け取る。ヒトミはあまり刺激が強いものが食べられないのと。過度に熱いものも冷たいものも食べられないので。ヒナがそれを確認してから受け渡しているのである。ちびちびとラーメンを啜っているのを見守りながら、ヒナとカンナもラーメンをすする。
ヒトミは割とこの時間が好きだったりする。他人と一緒というのはその場の空気とか色々と考えないといけないのだが。食べている間は何も考えなくていいというのが大半の理由だ。それ以外は二人と一緒だとちょっぴり安心するからだろう。ヒナは言わずとしれた風紀委員長、ゲヘナだけではなくトリニティどころか不良でも襲うことはまず無い。カンナもワルキューレの上層部の方であるため、敵にはしたくはないだろう。そもそもとして顔が怖いので寄り付かないというのも有る
「……美味しい?」
「……ええ、美味しいですわ」
「それは何より。お二人共食事をあまり取られていないと聞いていましたので」
ヒナが問いかけ、ヒトミが頷き。カンナがため息とともに安堵の声を出す。ようやくふたりともマトモに食事を取ってくれると。カンナが一番苦労したのかもしれない、ヒナもどちらかというとどうでもいい派なので。とても苦労したのかもしれない
「……なんですの?二人共」
不意にヒナとカンナから視線を受けたヒトミが二人の方を見る。いつもであれば、挙動不審になったり。何かやらかしたのか?と不安がるのだが。その様な気配もない、ヒナとカンナがお互いの顔を見ると、くすっと笑いだす
「いえ……随分、安心してくれてると思っただけですよ」
「?」
カンナの言葉にヒトミは首をかしげれば、ヒナがヒトミの頬に触れる。どうやら海苔の一部が顔に着いていたらしい、ほんの少し恥ずかしそうにしているヒトミを見て。また二人はクスクスと笑う
そうして、夜は更けていくのだった
ヒナ様とカンナ様からは、限界社畜お嬢様ことヒトミさん。妹かなんかかと思われているようですわねこの番外編では