ノブリス・オブリージュ?なんですのそれ? 作:一般お嬢様
ミカの満面の笑みを浮かべながら放たれた言葉に。一同は今度こそ言葉を失う、トリニティの生徒はゲヘナのことが嫌いだ。ゲヘナからの被害を被っているというのもあるが、潜在的にゲヘナ生徒が嫌いというのはトリニティでは珍しくはない。
ただ、トリニティへの嫌悪感。それも消滅してしまえば良い、何ていうことまで思う生徒はほぼほぼ居ないのである。
「だから……エデン条約を取り消そうとしているのですか?ナギサさんを捕まえて?」
そんな中、いち早く動揺から復帰したのはハナコだった。ゲヘナではなく、トリニティへと向けられる憎悪。というのはトリニティ生徒であれば皆無と言って良い出来事であり。そう問いかけるのが精一杯だった
「ん〜?………あぁ、浦和ハナコ。礼拝の授業で水着着たり、それで街中に出たりとかしてたっけ?ティーパーティーの候補らしいね、私は浦和ハナコは必要ないと思うけど」
「………っ」
ハナコが話しかけると満面の笑みから一瞬で無表情に変わる。まるで記憶に留めておく必要なんてある?というような無機質な視線、或いは問題児を見る冷ややかな視線だろうか。一瞬で激変した雰囲気にハナコが若干気圧されるがすぐに視線をハナコから外す
「まあ…そうだね。半分正解?っていう感じかな?本当はエデン条約なんてやってる場合じゃないからね」
「””やってる場合じゃない……?””」
ミカの億劫そうな呟きに先生が疑問を呈する。それもその筈だ、エデン条約を締結すればある程度の治安改善がみこまれるはずだ。それは両者にとってメリットと言うにはふさわしいもののはずだからだ
「んー……じゃあ、先生に質問しよっか?第三者である先生にね。トリニティの校風ってどう思う?」
「””どう……っていうのは??””」
「傍から見たらお嬢様学校。品性高潔な生徒が数多く通う歴史ある由緒正しい学校……っていうのが触れ込みなんだけど。先生は内情ある程度把握しているよね?綺麗な見た目とは裏腹で、中に入っちゃえばドロドロの内部の派閥争いばっかり。足を引っ張ることなんて平気でするし、それを気にもとめない」
「””……………””」
ミカの問いかけに先生はどう答えるべきか考え込んでいた。普通に考えるのであれば政治競争というのはあまりにも学園生活とはかけ離れている、精神的な負担が大きすぎてまともに学生生活を送れるものではないだろうと
「意地悪な質問だったね。…んー、じゃあ変えよっか?天上ヒトミちゃんのこと。どういう風に見えた?」
「””それは、そうだね…第一印象は疲れている。というのがまず思ったかな。人との関わり合いを避けているという感じもした。けれど……””」
「けれど?」
「””彼女は、優しい生徒だと私は思うよ。ティーパーティーから派遣されていたのに、補習授業部の方に協力してくれたり。今だってアリウスとの戦いに参加してくれたりするから””」
「うんうん、生徒のことはちゃんと見てる辺り流石先生だね」
ミカがヒトミのことを尋ねれば、ずっと無言のままのヒトミに一瞬だけ視線を送りつつ。先生が自分なりのヒトミの解釈を話す、仕事だから。と言いつつも協力してくれる生徒だと。それを聞いてミカは何処か安心したように何度も頷きながら先生を褒めた
「じゃあそんな生徒がさっき上げたトリニティの校風のせいでそうなったって言ったら先生はどうする?」
「””………!””」
ミカの言葉に、先生が肩を跳ねさせる。補習授業部の方にばかり気を向けていたせいでろくにヒトミと関わり合いを持つ時間が作れなかった先生にとっては。その辺りの想定が無かったのである
「ヒトミちゃんはさー、いい子なんだよね。人に仕事任されても嫌な顔…は、偶にはしちゃうかもしれないけど。それでもやってくれるんだよね。面倒なことも引き受けてくれるし、なんなら此方が言う前に終わらせてくれてたりとかさ?それでいて自分がやったとか威張ることも無いし。何か対価がほしいとも言わないし、まあ。滅私奉公の精神?っていうのかな?凄く、優しい子何だと思うんだよね私は。しかも無派閥だよ?無派閥、そういう仕事やるなら派閥に入れば楽できるのに。それもしてないんだよね、だから色んなところから仕事を貰っちゃうんだけれど。その辺りも特になにか言ったわけでもないし、政治に関わってるのに精神性が他の子と違うんだよね。何というかこう、いい子だなーって。もうちょっと気を楽にしたら良いのになーってさ」
「””なら───””」
「だから、さ」
ミカが滔々と語る、これはヒトミにすら言ったことがない。ミカから見たヒトミへ対する本心だ。普段のウザ絡みからは考えられないぐらい。心配して、どうにかしてあげたいなーという気持ちである。ならなんでエデン条約を取りやめさせるような事をしようとするのか?と先生が問いかける前に、ミカが再度口を開く
「そんな子が擦り切れるような価値がトリニティに有るのかなって」
「””…………””」
先程とは全く別のトーンで語られる言葉に先生は口を閉じざるを得なかった。
「だってさ。ヒトミちゃんがこんなにボロッボロになるまで尽くす価値ってトリニティに有ると思う?私は無いと思うな。だって何も還元されてないもん、ヒトミちゃんが頑張ったら頑張っただけトリニティが良くなるっていうわけでもないし、逆にあれこれ利用しようとしてる人達が群がってくるわけだし。誰も褒めてくれない、認めてくれない。それどころか差別されて、蔑称されて。真っ当に生きることすら出来てない状態ってどうなの?正しいの?私は正しくないと思うな」
ミカの言葉には、隠しきれない程の怒りと、それと同時にどうしようもないほどの同情を滲ませていた。怒りはトリニティの現状へ、同情はそんな状態に置かれているヒトミへの同情の心だった。
「いやまあ、私も此処最近まで能天気に生活してたよ?でもまあ、ヒトミちゃんの現状知っちゃってさ。色々と1から勉強したんだけど。まあ…大変だったね。色々と面倒くさいことばっかりでさ。よくこんなくだらないことしてるなってさー」
「””…ミカは、ヒトミをたすけたかったんだね””」
「そんなの当たり前じゃんね。それを見て何も思わない程、私は人でなしじゃないから」
「……っ」
先生の問いかけに対して、ミカは若干の嘲笑を含んだ笑みを浮かべながらそう答えた。他のトリニティの生徒と一緒になんてしないでほしいと
「此処に居る一人は禁止しているブラックマーケットに出入り。そのうえで、なんか何処かの誰かと一緒に強盗紛いまでしたらしいし?ブラックマーケットは危ないところだし、そこで捕まったら身代金要求されたりとか。その辺り全然考えてなくて。それを尻拭いしてもらったのにその後も行き続けてるみたいじゃんね」
「う…………」
名前こそ出さないものの、ミカはヒフミの方に視線を向けながらヒフミが行ってきたことを語る。咎めるわけでもなく、たしなめるわけでもなく。ただただ事実だけ言うように
「別の子は問題行動起こすと危ないのに正義実現委員会相手に徹底抗戦しちゃうし、その辺りの修繕の申請とか。知らなかったにしろ誰かに聞くということもしなかった。結局補習授業部でもやってること変わんなかったみたいだね」
「むぅ………」
その次はアズサに向けて
「別の子は……………ま、いいかな」
「ふぇ………?」
てっきり次は自分が言われると思っていたコハルが何も言われなかったことに対して間抜けな顔をする。それを見てミカはくすっと場違いな笑みを浮かべるが。次の瞬間能面のような顔になる
「最後は一番の問題児。授業の邪魔もするし、水着で街中歩くし。トリニティの評判を一番落してるって言っても良いんじゃないかな?ただの変質者、そういうしか無いよ」
「ふふっ……嫌われていますね」
今までの罵倒よりもより痛烈な批判を受けているハナコがそう口にすると、ミカはハナコに視線を向けつつ。冷めきった視線を浴びせかけた
「嫌ってるよ」
「………」
からかうようなハナコにミカは取り合う気がないような返し方で返答する。そこから繰り出されるのは、ミカが抱えている怒りの象徴とも言えるような存在に対する言葉だった
「うん、嫌い。大嫌いかな、浦和ハナコ。昔は成績良かったらしいけど、他の権力闘争に巻き込まれたんでしょ?その辺りはまあ、理解はしてあげる。でもそれを回避するためにああいうことするのは正直言って他のトリニティ生徒と変わんないというか、それ以下かな。補習授業部のテストの結果も見たけどあれなに?自分が退学したいから手抜きしてた?それで周りを不安にさせた?手を煩わせた?内情知ってからは点数高かったみたいだけれど、そんなにやめたかったら1年生の頃に辞めたら良かったんじゃない?権力闘争争いは嫌、でも自分で辞めるのも嫌。それにヒトミちゃんのこと、薄々把握してたんでしょ?それでも辞めなかったのってさ」
矢継ぎ早に言葉を言うミカは一旦言葉を区切りながら、侮蔑の表情を浮かべて。容赦なく言葉を放った
「トリニティの生徒らしい、性格の悪さしてるね」
「………っ!」
ミカはハナコが最も気にしている。トリニティらしさ、という心の弱い所を無遠慮に踏みにじる。ハナコが初めて余裕のない顔をしているのを気にも留めることなく、言葉を続ける
「自分が関係ないところの安全圏から言う政治の悪口、さぞ気持ちいいだろうね。だって巻き込まれないんだもん、そりゃ辞められないよね。自分と同じぐらい優秀な人が苦しんでるのも見てても手を貸すこともないし、迷惑かけるよね。ほんとに……自分でろくに決断も出来ないのに、自分が優位な所に居ないと気が済まないトリニティらしさが滲み出てると思うな☆」
「””ミカ、それ以上は駄目だよ””」
止まらない口撃に見かねた先生が割って入る。下手をするとハナコを本当に自主退学に追い込むまで辞めることのないようなミカの物言いは、見過ごせるものではないのだろう
「ねえ先生」
「””……何かな?””」
「何で私が此処までの物言いしてるか先生には理解できる?」
「””………わからない、かな””」
不意にミカに問いかけられた先生は、若干言葉に詰まる。補習授業部の面々とは長くもなく、短くもない付き合いということもあって。分かるところもあるし、わからないことも有るのだから
「それはね、ヒトミちゃんにありがとうとごめんなさいを言ったことがないからだよ」
「””………!!””」
「先生、その反応は今の私に対して良くないよ」
ミカが彼処まで口撃させるものがそんなものであったことに、先生は動揺しつつも。ミカはそれに対して、先生にも怒りの矛先を向けたのである
「なにかしてもらったら、ありがとうってお礼を言うのは当たり前。悪いことをしたら、ごめんなさいっていうのが当たり前。そこの3人、それすらも出来てないんだよね。そんな程度の低いことしてる癖に更に迷惑かけるんだよ?そんな生徒、追い詰めるところまで追い詰められて当然だと思うな」
「””だけど、それは”───”」
「先生」
ミカの言葉に先生が口を挟もうとするが、再度ミカに言葉を遮られる。瞳孔が完全に開ききり、今までにない、此処一番の怒りを滲ませながら
「真っ当に生きてる人間と、そうじゃない人間が区別されるのは当然のことなんだよ」
「””………っ””」
ギヂ……ミカは握っている銃が軋みを上げるほどの怒りを見せつつそういう、そのあまりの迫力に。さしもの先生も気圧され尽くしてしまう。
「そうじゃなきゃ、釣り合いが取れない。天上ヒトミのように献身を尽くす生徒と。他者を貶し、貶め、辱める生徒が同列に扱われて良いのか?良い訳がないよね。そんなもの、
「””………””」
ここでようやく、先生は理解したのかもしれない。聖園ミカという生徒は、権力なんて求めていないし。欲しくもない。ただ普通の生徒が普通に生きてほしい、それだけしか考えていないのだと。
「………そういう意味だと。コハルちゃんには謝らないと行けないね。ごめんなさい」
「えっ???えぇ!?」
迫力に押されきっていた所に急に名前を呼ばれたコハルは場違いな素っ頓狂な声を上げてしまう。それを聞いたミカは、ほんの少しだけれども。怒りが薄らいだようだった
「コハルちゃんは、特に素行不良って言うわけでも無かったんだよね。正義実現委員会に対する人質……って言うよりは。単に、本当に学習面で難があったから入れざるを得ないっていうか…そこで今回の件に関しては謝らないと行けなかったんだよね。仮に全員退学、って言うことになっても。コハルちゃんは温情かけるつもりだったし?」
「は、はぁ………」
ミカのあまりの扱いの差に、そこにいるメンバー全員が若干困惑をしてしまっていた。いや、困惑していないヒトミが居るにはいるのだけれど。終始無言で目を閉じているのである
「最初はどうでも良かったんだけれど……ヒトミちゃんに謝ったみたいだし。それに最初、ヒトミちゃんのこと。庇ったらしいし?コハルちゃんも真っ当な感性してるから。今のトリニティは生きづらそうかなって」
「そんな、ことは………」
「心当たりが有る時点で駄目なんだよね………やっぱり、トリニティは一回。潰さないとどうしようもないかな」
言い淀んだコハルに対して。失望したような風に言いつつ。決意を更にミカは固めた。当然コハルにではない、コハルのような生徒が生きづらいのも今のトリニティの校風故の弊害なんだろうと
そして、思わずというように。ミカの口から言葉がこぼれ落ちた
「これじゃあ、トリニティの普通の生徒より、ゲヘナのあの生徒のほうがまだましかもね」
これ2章終わるまであと4話ぐらい必要ですわ〜〜〜!!!!!
まだ折り返し終わってねえんですわ………
番外編について
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同じ作品で投稿して欲しいですわ〜!
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別作品として投稿して欲しいですわ〜〜!!
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ェ駄死もいいですわ〜〜!!!