ノブリス・オブリージュ?なんですのそれ? 作:一般お嬢様
───始まりは、いつだったろうか。1年生の頃だろうか?いや、もう少し前だったような気がする。そう、この気持ちを感じていたのは
『あれが、桐藤様……』
『綺麗なお方ね…』
取り巻き、と言う言い方はあまり好ましくはないのだろうけど、そういう思いがなかったわけではない。担ぎ上げられる神輿、或いは自分たちの主張を通すための叩く棒、どうしようもないほど自分本位
そんな『道具』として見られるのは、好きではなかった。
『どうぞ、よろしくお願いします』
友好的な挨拶も、その裏に潜む打算が見え隠れしていて
『桐藤様、どうぞこれを!』
贈り物も胡麻をするような、下手をすると此方を貶めるための手段でしか無いというように
そんな空虚な人間関係ばかりで、取り繕うのだけが。上手くなっていった。そうでなかったのは。ミカとセイアぐらいだろうか?……いや、実際のところ。あの二人にも、距離感を感じていた。或いは私が見えない壁を貼っていたのかもしれない
ミカは元々はあっけらかんとした、政治闘争にいるべきではないそういった人間だった。セイアは、回りくどい言い方で、結局何も言わなかったほうが良いまで有るような言動をしている
だから、本当の意味で心を許せるような相手は。今までは居なかったのだ
そんなときだ、彼女に出会った…出会ってしまったのは。天上ヒトミ、知ってよかったと思う反面、知らなければよかったと思う人の名前。
善性を持ち、救いを差し伸べた結果。その善性を利用されて落ちていった、哀れな人。自らがフィリウス派のトップになった理由でも有る人。
最初の発端を経て、最初は馬鹿なことを。と冷めた目で見ていたのは確かにあった。ただそれもすぐに擦り切れていく彼女を見て。そんなことも出来なくなった、そして声をかけた
その結果は、空振りだった。だけど……だけども
彼女は…いや、天上ヒトミは『フィリウス派の桐藤ナギサ』ではなく、ただの一個人としての私と会話してくれていた。もしかしたら、初めての経験だったかもしれない。
その時交わした言葉は数回だ、時間にしても1分もかからないような会話だ。だけど、だけれども。それが、私には嬉しくて。同時に、そんな彼女が擦り減っていくのを見てられなかった。
以前、彼女にあの状態に追い込んでしまったことを悔いた、と思ったのだが。本当の所は、ほんの少しだけ、嬉しかった。偏愛だと思う、繋ぎ止めたいがだけにそう思うのは。違うことだとも知っている。だから、一回壊すべきだというのも。重々理解していた。
ただ……そんなことは、出来なかった。弱い私には、出来なかった。彼女が積み上げたものを、彼女との時間を踏み潰す事だけは、どうしても。出来なかった……他の生徒が生活しているというのもあるが。大半はそれを締めているのも理解していた
私は、天上ヒトミを助けてあげたかった、だけど出来なかった。そんな苦しみの感情から、逃げようとしたことも何回もあった。でも逃げるわけには、行かなかった。理由は単純明快。私は、多分。天上ヒトミという人が好きなのだと思う。決して寄り添いながら支えてくれる人ではないけど。決定的な一歩を踏み外す前に、列からはぐれて。一人きりになる前に。そっと手を差し伸べて、元居た居場所に引き戻してくれる。そんな、優しさを持つ彼女のことが、たまらなく────
そう、たまらなく─────
「…………
二人の気配がなくなったのを確認してから、起き上がる。あれだけの爆発音、此方に甚大なダメージが入っていると相手は思うはずだ、そして時間もない。とするならば、それだけで判断力が鈍る。となれば、見せかけのもので幾らでも誤魔化しが効くのである…当然、ダメージそのものは相当なものでもあるけど
「………さてと、後は。私の問題ですね」
爆風で汚れた制服をはらって、立ち上がる。足腰にそれほどまでのダメージはない、ただ。少々ふらつきが残るのは当然のこと。そんなことを思っていると、足音が聞こえてくる。一人二人ではない、複数人だ。
「………お入りください」
「お邪魔しますね?桐藤様…いえ、ナギサ」
そう言って入ってきたのは、正義実現委員会……ではなく、ティーパーティーのフィリウス派。すなわち私の部下……いや、私の部下
「来ると思いましたよ、皆様方が」
「あら、そうでしたか?てっきり、想定してないと思いましたけれど?」
白々しい、心のなかで舌打ちをする。眼の前にいるのは。フィリウス派のメンバーの中でもいわゆるタカ派と言われる方々。自分たちの派閥こそ、一番だと思っている方々であり。私がトップを取るときに相手取り、潰した相手でも有る
「狙うなら、このタイミングしかないと思いましたから」
「それもそうですわね……?聡明なナギサらしい、小賢しさが見えますよ?」
戒厳令を敷いた理由とはなにか?補習授業部を妨害する…というのはただのブラフだ。シャーレの先生含めて、天上ヒトミを巻き込まないようにするための策。狙うなら、自分ひとりだけにさせるためのものであり。此方の思惑もわかっているであろう相手にも、乗らざるを得ないような。そんなものを敷いておいた
「褒め言葉として、受け取っておきます」
「……さて、もうどうなるかはご想像がつくと思いますけれど……一つ聞いてよろしいでしょうか?」
「何でしょうか?」
慇懃無礼な態度での問いかけ、足元を見られている、そんなことは把握している。だけど、少しでも、少しでも時間を稼がないといけない、気づかれてはならないものが有るのだから・
「あの小間使…ジプシーと随分と仲が良かったようで?その理由を教えていただければと」
「……ふふ」
「……?」
…その問いかけに、私は
「ふふ…っ、申し訳ありません。つい」
思わず笑ってしまった、てっきりティーパーティーの権力譲渡。或いはトリニティの至宝の在り処。どこかに隠されているという
「…ご自分の立場、お分かりになっていますか?」
銃で撃たれた、そんなことはすぐに理解した。元々身体が強くない私にとっては、それだけでそれなりの痛撃となり得る、ましてや爆風のダメージという少なくないものを受けた後では
「分かっていますよ?ええ……。天上ヒトミと仲が良かった理由ですか?」
「そうです、その理由です。……我々から見ても、憎たらしいことこの上ないのですが。能力はあります、しかしそれを無駄に消費している節もあります。有象無象に使うのではなく、我々の手駒になっていれば。もっと楽を出来たというのに、何故在野にしていたのでしょうか?」
流石にフィリウス派の中でも上の人間、有能さは理解しているようです。そうですね、彼女たちにとっては煩わしいことこの上ないのでしょう。1年前のことを知っている数少ない人間でもありますので
まあ、私にとってはそんなものは知ったことではありませんけれど
「理由は簡単ですよ」
「その理由を「愛です」……は?」
「そのままです。恵愛、仁愛、情愛、慈愛、愛念、愛着 ……偏愛、も混じっていますけれど。私は、彼女のことを愛しているのです。あの、どうしようもないほど、ねじれ曲がって、直接伝えることは出来なくとも。それでも此方のことを慮ってくれる、彼女のことが」
……そういうと、彼女たちはあっけにとられたような顔をする。まあそうでしょう、ヒトミさんの素晴らしさは。あなた方には一生わからないものなのですから
「………なるほど。私達は、桐藤ナギサという人間を過大評価していたようですね」
「私は貴女方が予想以上に節穴だということが理解できましたよ」
そう言い合うと、足音が更に増えてくる……これは、思ったよりも。私の行いの反動が大きかったようですね、後悔はありませんが………
「では………さよなら、無能なナギサ」
「………ふふ、ふふ……ははっ」
「な、何が可笑しいのですか……!?」
無能なナギサ、その一言に思わず声を上げて笑ってしまう。本当に心の底から、笑ってしまう。相手の目の節穴具合に、そう笑ってしまうと相手方は面白いように狼狽する。
「いえ、無能なのは否定しませんよ?ただ、随分今更だと……可笑しくなってしまいます」
その一言に、更に狼狽えを見せる。私が有能?笑わせる、たった一人の後輩一人救えなかった私がそんなわけ無いだろうに。本当に有能だったらこんなことにはなっていないだろうに。本当に……笑うしかない
「……まあ、私以上に無能なのが貴女方なのですけれど」
「…っ!?」
更に揶揄すると、怒りのあまり慣れていない銃を発砲した方の弾丸が制服の一部をかすり…
「な、な……っ!?」
「おや?何か驚くようなものでも…あぁ、これですか?いえ。私は弱いので。
「う、裏切り者…っ!?それは先程────」
「貴女方が裏切り者でしょう?」
狼狽するタカ派のトップの方にそういうと。動きを止める
「補習授業部の妨害工作を行い、私とヒトミさんを引き剥がそうとしたようですけれど……生憎と。そんな関係ではございませんので」
更に動揺を重ねる
「ですので……まとめて葬り去ってしまおうかと」
「ま、待ちなさい。待て、桐藤ナギサ…!?」
「生憎ですが………私は、並大抵の覚悟でティーパーティーのホストという椅子に座ったわけではありません」
カツン、カツン。足音を立てて、一歩、また一歩と足音を立てながら距離を詰めていく
「私のやり方では、反発が起こるのは必至でした。強引な部分もありますし、何よりもエデン条約などを結ぼうとしたのですから」
「そ、それ以上喋るな……っ!?」
優雅さの欠片もなくなった相手の銃弾が、頬を、脚を掠める。だが、止まらない。それは止まる理由には足り得ない
「当然クーデターも発生することは織り込み済み。それはただのクーデターではなく、
「くっ…………!?」
肩に被弾する、それだけではなく。脚にも当たる、羽の一部も掠めて血が若干滲む、痛い。痛いけれど、それだけでもある、それだけのことではある……どうせ。もう感じないことだからと、割り切る。あと少し、少しだけ。思いの丈を話すために、踏ん張る
「だから……連れて行くことにしました。争いを助長させる貴女方を。圧政と横暴をしてきた、私というフィリウス派の失脚を伴って。新しい、トリニティに、なるために」
「な、何故です…っ、自分が死ぬのも厭わないのです…っ!?」
視界が歪む、段々と力も抜けてくる。相手が、気圧されて、銃を撃つことすら躊躇って、くれているのが。救いですね
「私がティーパーティーのトップだから、それ以上の理由があるとでも?…このセーフティハウスを選んだ理由も。周りに迷惑をかけずに、葬り去るためです」
「─────────っ!!」
そう、私は。ティーパーティーの、ホスト、桐藤ナギサ。トリニティがよりよい、方向に、向かうのであれば。構わない、たとえ死んでしまうことに、なったとしても。ミカさんが、いる。あのように、成長してくれた、ミカさんならきっと…
「では、そろそろ幕引きを……」
そう言って、手に握ったスイッチに手をかける。心残りは沢山ある、変わっていくであろうトリニティを見れないこと。幼馴染のミカさんとセイアさんと話ができないこと。ロールケーキをもう食べられないこと
……天上ヒトミ…ヒトミさんと、あの子と。もう話せないこと
「──っ!!貴女の心中に付き合う道理等…っ!!」
「ぐっ…………っ」
銃弾が身体に当たる鈍い感覚。そんなときに思い出すのは、呆れながらも、嫌そうにしながらも。それでも、それでも私の側に居てくれた。そんな後輩、私の、可愛らしい後輩……
出来れば………出来ることなら、もう少し。もう少しだけ、仲良くなりたかった。あの背中を優しく抱きしめて、あげたかった。いつもありがとうございます、と。言ってあげたかった……後悔ばかり。出来てしまうけれど。これで、これでいい……多分、きっと…………
「────サヨウナラ」
ナギサがスイッチを押したその時、セーフティハウス内に配置されていた爆弾も作動し。爆炎が上がるのだった…………
ナギサ様がこうしようと思ったのは。第一次試験での妨害行為があったからですわね、それがなかったら。割と原作と近い状態だったかもしれませんわ
番外編について
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同じ作品で投稿して欲しいですわ〜!
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別作品として投稿して欲しいですわ〜〜!!
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ェ駄死もいいですわ〜〜!!!