ノブリス・オブリージュ?なんですのそれ?   作:一般お嬢様

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ナギサ様とスズミ様のお話ですわ


影を照らす月明かりのように

守月スズミは自警団に所属している2年生である。トリニティで自警団活動を自発的に行っていたのだが、いつしかそれは非公式の部活として認知されるまでになった。ただ、当の本人はそれを纏めているという自覚もなく。そんなつもりは一切なかった。なので、行動するときは一人で行動することが殆である。

 

「………爆発音は彼方から聞こえてきましたね」

 

ティーパーティーからの厳戒令が出されており、周りは静かだ。だからこそ、鳴り響く爆音よく聞こえる。それを聞けば?厳戒令下でも動くことに躊躇いはない、やる必要があるなら。幾らでもうごけるのがスズミという人柄だった。

 

「………!」

 

音がした方へ走ると、もう一度爆発音が鳴り響く。今度は規模が大きい、夜空の一部を赤く染め上げて。火柱が立った、急がないと間に合わないかもしれない。そんなことを思いながらひた走る……

 

 

─────ティーパーティー、セーフティハウス・跡地

 

「これは………酷いですね」

 

到着したスズミが見たものは、瓦礫の山になっていたセーフティハウスと思わしき建物だ。ほとんど倒壊しており……ところどころ、外に投げ出されたであろう人物が転がっている。スズミは厄介事の気配を感じながらも、歩みを進めていく……全員意識を失っているだけだ。そうであれば、ティーパーティーに連絡を……そう思うと、視界の端にとある人物を捉える

 

「桐藤ナギサ……様……?」

 

ティーパーティーのトップであるボロボロになっている桐藤ナギサがそこにいた、駆け寄ると。どうやら息はあるらしい、自分が着ているものを着させて。気道を確保しつつ、背に腹は代えられないとばかりに背中を何度か強めに叩けば。むせこむようにしつつ、ナギサが目を開ける

 

「………どうやら、死に損ないになってしまったようですね。であれば………」

 

スズミの顔を見て、開口一番にナギサは自嘲するようにそう言いながら。身体を起こす。元々あまり身体が強くはない上に、自爆までしたのだ。無事な訳がない、それなのに。ナギサはそのまま立ち上がろうとして、倒れ込んでしまう

 

「……情けないですね、この体たらくは」

 

「待ってください、桐藤ナギサ様。動けるような身体ではありません」

 

「貴女は……確か、守月スズミさん。でしたか……今は厳戒令下ですよ?」

 

スズミが静止を呼びかけると、ようやくそこでナギサの焦点がスズミへと向かう。記憶を探るかのように額に指を当てながら。なんとか思い出したように、そしてただの一般生徒であるスズミがこのようなタイミングで外にいるのはまずいというように

 

「確かに厳戒令下が敷かれていますが……人助けをするのは、何時のときも変わりません」

 

「………変わった御方ですね。貴女は」

 

「よく言われます」

 

ティーパーティーのトップたる自分に物怖じすることなく、自分の意志をまっすぐ伝えてくるスズミに対して。ナギサは今年の2年性は物怖じする性格の子がもしかしたら少ないかもしれない。などとそんなやり取りをしていると、騒ぎを聞きつけたのか。何処からともなく足音が聞こえてくる。……それは、アリウスでも、正義実現委員会でもなく

 

「ご無事でしたか、ナギサ様」

 

ティーパーティーの集団だった。スズミは彼女らがどの派閥なのかは良く分からなかったが、倒れている生徒の派閥であることを何となしに察知して。ティーパーティー……フィリウス派に銃を向ける、スズミは決して政治に聡い訳では無い。だが、こと戦場ではキビを察知することぐらいは出来るのだ

 

「……桐藤ナギサ様を、襲いに来たのでしょうか」

 

「まさか……私達は、そんな野蛮な方々とは違いますよ」

 

スズミの問いかけに、フィリウス派としてきたリーダー格の生徒がため息まじりに否定する。ほとほと疲れ切ったように、そんなフィリウス派を牽制しつつ。その後ナギサに視線を向けると、彼女らは敵ではないというように。頷くのを見れば、スズミは銃を下げる

 

「厳戒令下ですが、彼女はどうしてこの場に?」

 

「人助けのため、だそうです」

 

「なるほどなるほど……やはり、トリニティもまだ完全に死んでいるわけではありませんね?ナギサ様」

 

まとめ役の言葉にナギサは深い溜め息をつきながら、思わず腰を下ろす。スズミはそれを見て負担にならないように腰を支えてあげると、ナギサはスズミを見た後。もう一度、深いため息をつく

 

「……………私は、間違っていたのでしょうか」

 

しばらくの沈黙のち、ナギサが重苦しく。そして項垂れるような言葉をこぼす、それはフィリウス派の近しい存在にすら見せることはなかった。それこそヒトミにもろくに見せてこなかった、ただの桐藤ナギサとしての言葉だった。これで終わるつもりだった、だからこその言葉でもある

 

「正しくもあり、間違ってもいました。全てが正解という事柄も、全てが間違いであるという事柄も存在しないかと。我々は偉大な主ではないのですから」

 

「……そうですね、私は。自分の力量を見誤っていたのかもしれません。思い上がりというものも、どこかにあったのかもしれません、……やはり、私は相応しくなかったのかもしれません、この椅子に座り続けるのは」

 

「ナギサ様……」

 

その言葉にまとめ役の一人が言葉を返せば、また項垂れる。彼女にとっての励ましの言葉も、今のナギサには。ただただ事実を突きつけられたのと変わらないのだ。それを分かっていたとしても、それしか言葉を返すことしか出来ないまとめ役の一人は歯がゆそうな顔をする

 

重苦しい沈黙だ、ただ。それは直ぐに打ち破られることになった

 

「……すみません、一つ。発言してもいいですか?」

 

「……お名前は?」

 

「守月スズミです」

 

「ふむ……あぁ、あの自警団の。良いでしょう、発言を許可します」

 

今まで口を閉ざしていたスズミが声を上げたのである。スズミのことはティーパーティーの上層部も把握しているものは把握しているようで、発言を認め。項垂れているナギサの前に、スズミは足を向ける

 

「桐藤ナギサ()()

 

「なんでしょうか………」

 

すっかり生気を失っているナギサは、なんとか顔を持ち上げる。失敗した、もっとやり方があるのはわかっていた。だけど選べなかったのは自分の弱さが原因だ。そんな事が頭の中で駆け巡っている

 

「いつも、ありがとうございます。トリニティの生徒の一人として」

 

「はい………?」

 

そんなナギサの視界には、感謝を述べながら頭を下げるスズミの姿があった。あまりにも唐突すぎてナギサはいつも通り対応ができずに。思わず聞き返してしまうのだ

 

「あまりこういう機会も無いので、伝えておこうかと」

 

「は、はぁ………いえ、私はティーパーティーの……」

 

スズミの真っ直ぐな感謝の気持も、ナギサにとっては今はただただ苦しいだけのものである。歯切れの悪い言葉しか出てこない。今の自分は、トリニティのティーパーティーの一角、ホストを担うに値するような人間ではないのだと自覚したばかりなのだから。そんなナギサにスズミは更に語りかける

 

「……桐藤ナギサ先輩、貴女がどんなことで悩んでいるのかは。ただの生徒の私にはよくわかりません、貴女の苦悩も、決断の重さも。私には、分かち合うことは恐らく出来ないものだと思います」

 

「……えぇ、それはそうでしょうね。ですので感謝の言葉は───」

 

「ただ」

 

「……ただ?」

 

スズミの半ば突き放していると捉えられかねない、そんな言葉に自嘲気味に返しているナギサの言葉を。スズミは皆まで言わせることなく遮る。

 

「例え、歪でも、不完全でも、今のトリニティを守ってきたのは。誰でもない桐藤ナギサその人だと。私は思うんです、重い決断も、苦しい選択も。選べるような、そんな優しい『先輩』だと。私は感じています。そんな『先輩』を持つことが出来て。私は、幸福なことだと思っています」

 

スズミが語りかけているのは、ティーパーティーのホストである『桐藤ナギサ』でもなく。自らを出来損ないと自罰に悶えている『桐藤ナギサ』でもなく。ただのトリニティ総合学園3年生の、『桐藤ナギサ』であると。打算もなく、ただひたすらに心の中から漏れ出す言葉

 

そんな暖かく、染みる言葉。それはナギサの心を包み込んで癒やすとともに、こういう生徒が巻き込まれるかもしれないという懸念という名の針を突き立ててくる。

 

「私と同じことを、ヒトミさんも言っていましたよ?ヒトミさんはもう少し違う言葉で言っていましたけれども」

 

「………ヒトミさんが?」

 

唐突に出てきた思わぬ人物に面食らってしまう。ナギサの中では、ヒトミのことは好いては居るけれども。ヒトミの方からは、あまり好かれてはいないだろうと思っていた。疎まれている……とまでは行かないだろうと思いたいぐらいの。そんな一方的なものだと。そういう風に、ずっと。借りばかり作っていたと

 

「『見捨てるには、惜しい人です。優しいので、ナギサ様は』……と」

 

そんな事を言うスズミに思わずナギサはギョッとしてしまう。ティーパーティーのホストらしからぬ、顔に出てしまうほどの衝撃だったのだろうか。そんなナギサを見ているフィリウス派のまとめ役が思わずため息をついたのだった

 

「ナギサ様……いえ、此処は敢えて無礼を承知で。ナギサはその辺り鈍感すぎるのが悪いところだと思いますよ?」

 

「……!?」

 

唐突に呼び捨てにされたことに驚く暇もなく、まとめ役が言葉を続ける

 

「ナギサ、あの天上ヒトミが誰かとお茶を共にする事があると思いますか?」

 

「……まあ、ほとんど無いでしょうね。ヒトミさんは忙しいでしょうから、ですが完全にないというわけでは……何でしょうかその顔は」

 

まとめ役の言葉にナギサが返すと、まとめ役は普段決して見せるようなことがない呆れた顔をしたので。思わずナギサが言葉を止めてしまう

 

「ええ、天上ヒトミは基本的にすることはありません。我々はおろか、同じティーパーティーの聖園ミカ様ですら。天上ヒトミは拒否していると言われています……ですが、ナギサ。貴女とはお茶会をしていたのでは?」

 

「そ、それは。呼び出しに応じた時にたまたま……」

 

「彼女から参加の意志を示すのは?」

 

「……ありました」

 

「そういうことですよ、ナギサ。貴女は天上ヒトミに好かれている方なのですよ、隙を見せたりするのは基本的に貴女だからです」

 

「し、しかしミカさんにも「あれのきっかけは貴女でしょうに」……そう、ですね」

 

普段こうして詰められることがないナギサは思わずタジタジになりながら。言葉を濁してしまう、どうやら自分は思いの外。好かれているのかもしれない、いやそんなことは…等とぐるぐる思考を回しているナギサに再度まとめ役がため息を付きながら。止めを刺しにかかる

 

「そもそも、ナギサの仕事のお手伝いをしているのは。ティーパーティーに対してではなく、ナギサに対してなのを忘れていませんか?」

 

「……ぁ」

 

まとめ役の言葉に、思わずナギサは言葉を漏らしてしまう。そうだ、こうしてティーパーティーの仕事を手伝ってくれるようになったのは。私に対するほんの少しのお礼というところから始まったのだった。

 

不意に、あのときのヒトミの言葉がナギサの脳裏に蘇る。普段とは違った、ほんの少しだけれども。柔らかな雰囲気を漂わせていたヒトミの姿を

 

 

 

 

 

 

 

 

『……桐藤様だけですよ、私にあの時声を掛けて心配してくださったのは。これはほんのお返しとでも受け取っていただければと…まあ、私はティーパーティーに入る気はありませんけれど』

 

 

 

 

 

ナギサは、そこで思い違いをしてしまっていたのである。あれは、単なる貸し借りの精算ではなく。取り入るためのものでもなく

 

 

 

 

ただ、心配してくれてありがとう。そう、伝えに来ただけだったのだと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……どうやら、私は存外。単純なようですね」

 

「神輿は軽いほうが此方としても助かりますよ?ナギサ様」

 

いつも通り…いや、肩の力が抜けたナギサと。いつも通りでは有るものの。少しだけ距離を縮めたフィリウス派の姿があった。それをスズミは、特に何も言うこともなく、ただ。どことなく嬉しそうに見ているのだった

 

「……こうしては居られません。ミカさんを止めに行かなくては……っ」

 

「まだお体の方は安静にしておりませんと、傷が癒えた訳では無いのですから」

 

活力を取り戻した。と言うにはやはり傷だらけのナギサは歩き出そうとして体勢を崩してしまう。口惜しげにしているナギサにスズミは口を開く

 

 

 

「…私が、そちらの方に出向きましょうか?」

 

 

 

 

 

 




これにてナギサ様復活!……というわけでもなく。傷だらけなので。療養することになります。少しの間ですけれどね

番外編について

  • 同じ作品で投稿して欲しいですわ〜!
  • 別作品として投稿して欲しいですわ〜〜!!
  • ェ駄死もいいですわ〜〜!!!
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