ノブリス・オブリージュ?なんですのそれ? 作:一般お嬢様
もう少し、続きますの!!
「貴女が、ですか?」
「はい、私が」
ナギサの言葉にスズミが答える、フィリウス派の視線も当然と集まってくる。ただの1生徒が、なんの後ろ盾もない状態でこの状況に首を突っ込むのは悪手も悪手だ。実力云々の話ではない、人間関係の話ではない。
「お待ち下さい。守月スズミ様、今の貴女が行ったところで、状況は良い方向に向かうことは考えにくいのです。貴女は在野の生徒。その場は良いかもしれません、ですが他の勢力の動きが読めない状態では、かえって危険となります。慎重になるべきかと」
そう、力があるだけならいっそのこと。正義実現委員会でも放り込めばいいだけなのだ、ツルギも投入すれば。指し物の
ナギサの言葉に、フィリウス派の一人が言葉をこぼす。
「力だけで、どうにかなるのであれば。天上はああなっていませんものね」
だから、何処もことをあまり荒立ててやることはないのだ。だからこそ、陰湿に物を運ぼうとする、
だからこそ、ナギサは不穏分子を一層し、退場することでそれを連れ去ることを画策した。
ならばこそ、ミカはそのものを破壊することで。それを消し去ることを目標とした。
そして、天上はそれを――――
「……ですので、スズミさんは。この場は何も見なかった、聞かなかった、そうして日常にお戻りください。そういった方を此方側に引きずり込むのは不本意ですので」
ナギサの言葉に、他のフィリウス派も一斉に頷く。彼女達も、最初から陰湿な行為を許容していたわけではない。ただ、やらなければならない。それが必要だからやっている、ただそれだけなのだ。ならばこそ、そこに踏み入ろうとするものを拒絶してきた。口では言えない手段を持って追い返したことも有る、ただ。それも悪意を持って行ったわけではない。そういったものが居なかったとは言わない、むしろ多かった。ならばこそ、だからこそ
自分達が背負っているものと同じものを。なんの罪もない人間に背負わせることへの罪悪感が人一倍強い傾向にあった
「そうですか……お気遣いありがとうございます。では、私は行ってきますね?」
ただ、スズミにとってはあまり関係ないようだった。むしろ、今すぐにでも向かわなければならない。そう言いたげな様子でもあった
「スズミさん、先ほどのお話を───」
「聞いていましたし、理解もしています」
ナギサの言葉に。短くスズミは返す、振り返る時間すら惜しいというように。
「私は、そういったところに身を置いてる
「……分かりました」
そこで折れたのは、ナギサの方だった。どうやら意志は固い、ともすれば。無理に引き止めるほうがかえって良くない結果になりそうな気配を察知して。スズミに現在戦闘が発生しているであろう体育館への最短ルートが割り出されている端末を投げ、スズミが受け取る
「……相手は、おそらく強敵です。お気をつけて」
「ありがとうございます、では…行ってきます」
そうして。スズミは体育館へと突き進み、ミカとの戦闘へと突入するのだった
「……仕切り直しですわね」
ヒトミちゃんが体勢を立て直すのを、スズミちゃんがカバーする。その様子を、少し夢見心地の視線で見届ける。なんとなくだけれども、この情景を邪魔してはならないとは思った。そんな気持ちが強かった
「……じゃあ、もう一回だね」
そう呟いて、銃を構え直す。頭数が増えるっていうのは、戦いだと結構な痛手だけど。スズミちゃんがどういう風に動いてくるのかわからない以上、プラスに動くことも有る。実際問題、ヒトミちゃんについてこられる子が居なかったから、こうやって一人で戦っているわけだし
「………」
「………」
「………」
三人無言で構えに入り、銃撃戦が始まった。ヒトミちゃんの動きは遅くはなってきている、内足が鈍ってきているような感じだ。これが1対1だったらそれだけで勝てるレベルにまで持っていけるんだけれど
「上!」
スズミちゃんの一言で、ヒトミちゃんが飛び上がり。閃光弾を絡めつつ。此方の攻撃を阻害するだけの銃撃を放ってくる。スズミちゃん、確かにパワーはあまり無いんだけれども、あの閃光弾が厄介極まりない。1対1ではさほど有効打にはならないと思うんだけど、誰かと組んで戦う場合だとそうも行かない
「………」
ヒトミちゃんは後ろに下がりながら、またあの銃をどこからか出してくる。あの契約書っぽいもの、どれぐらい残りが有るのか分かんない。こっちの弾薬だって無限じゃない、アリウスの方からの補給も有るには有るけど、あまり期待しすぎるのもいけないと思う。油断を晒しすぎるのは悪手も悪手
「すばしっこいなぁ……!」
思わず悪態をついてしまう。ヒトミちゃんの速さが瞬発的な速さであるなら、スズミちゃんのは継続的な速度の切り替え。此方との距離を詰めたり離したり、そんな戦い方を強いられていく。
───私にも、一緒に戦ってくれる人が居たらな。そんなことを思いつつ、閃光弾の光を遮る
─始まりは、ただのからかいだった。私は3年生になるまでの2年間、特に不自由もなかった。パテル派に所属してたのもなんとなく。面倒だったけど、そこに推薦されるのも、面倒事が増えたなー位だった。そこから、ナギちゃんの小間使、なんて言われてる天上ヒトミに興味を持った。
話しかけてみれば、口から吐き出されるのはトリニティの負の側面。そんなものばかりだった。決定的だったのは、あの日あの時。ヒトミちゃんが血を吐いて倒れちゃったあの時だった。
『……ごめんね、ヒトミちゃん』
あの時、こっそりとヒトミちゃんが飲んでいるお薬と紅茶を、ちょっと拝借したんだ。私には薬の知識なんてちんぷんかんぷんで、分かんないことだらけ。だから、同じ派閥の子にちょっとお願いして。頼んで、調べてもらったんだ
あの日のことは、よく。覚えてる
『…………こ、れ……何………』
紅茶に含まれてる方の薬のことは、あまりよくわかんなかった。恐らく、脳を活性化させて寝ないようにするためのお薬なんじゃないかと。それだけでも、十分衝撃的で。どうにかなりそうだった。
ただ、ヒトミちゃんが飲んでる錠剤のほうがもっと危ないものだった
血管拡張薬───狭心症っていう病気を。治すためのお薬だった。震える手で内容を見てみれば、過度なストレスや栄養失調でおかしくなったものを治すためのお薬、らしい
『……………っ!』
思わず、紙を破り捨ててしまう衝動を。抑えられなかった。あくまでも、似たようなお薬で、予防のようなために飲むものの種類だったらしいけれど。そんなことは私にはどうでも良かった
『ヒトミ、ちゃん………』
こんなにボロボロになってるなんて知らなかった。こんなに苦しそうな状態だなんて知らなかった。胃の調子も悪いって言ってたけど、それだけじゃなかった。そんな状態で、ずっとずっと
長い間、ずっとずっと
独りで、抱え込んでいた。その事実が。何よりも、私を追い詰めていった。
『は、はは………』
乾いた笑い声が出てくる、それしか出てこない。そんなボロボロの状態の後輩を、単に仕事し過ぎの子だと。認識していたんだ。気付けるタイミングはあった。確かに、今年からの関わり合いだけど。最初にあったあの時、もっと心配してあげるべきだったんじゃないか?もっと、話してあげるべきだったんじゃないか?
そんな、選択を。できた、はずじゃ
『はー……っ!はー………っ!』
その日、私は胃の中の物を全て吐きだしてしまった
次の日から、見えるものも。聞こえるものも。全部が変わってしまった。今のトリニティが、酷く薄汚れてるものに感じてしまった。
『…………』
遠くから聞こえてくるのは、派閥同士の遠回しな口撃の応酬。そして、私やナギちゃんのことに関する事柄。私の方については、まあほとんどトップらしいことはしてこなかったからあんまりだったけど。ナギちゃんのことについては結構な言われようだった
独裁者、暴君、いつも不機嫌そう。そんな言葉ばっかりだった。それにつられて出てくるのがヒトミちゃんのことについてだった。やれ取り入っていい目を見てるだの、奴隷だの、散々な物だった
『……………………』
頭に血がのぼって、どうにかなりそうだった。思わず手が出てしまいそうなほど、冷静さを欠いていたのは事実だったんだろう。
だから、私は引き金を引いてしまった。
『………もう一度、言ってみなよ』
ジプシー、トリニティの中でも差別度合いが格段に高い言葉。ほとんど使われることがないぐらいのことばで。それが自分の派閥から飛び出てくるなんて思いもしなかった。いわゆる派閥の定例会議の中で飛び出してきたそれに、言った子の首を締め上げながら。自分でも驚くぐらい冷たい声を出しているのを他人事みたいに聞いていた
『ひ…………』
あのときの、怯えた目線を今でもハッキリ覚えている。周りも乱心したんじゃないかって思ったんだと思うけど。私は、構うことはなかった。恐怖と痛みを与えるだけ与えて、その子とその取り巻きを自分の派閥から破門した。派閥から破門されるっていうことは、トリニティではかなり重いものだった。だけど、その時の私はあまり気に留めることもなかった
『………よし』
そこから、政治の勉強の比重を大幅に上げていった。買い物にもあまり行かなくなったし、お茶会の数も減らしていった。ナギちゃんからの視線はおかしくなったのかっていう奇妙なものを見るような視線だったんだけれど、まあ。それもそうかも知れないその時に。ナギちゃんがあれだけ不機嫌そうにしている理由もより深く理解することが出来たりしたんだと思う
そうしていると、補習授業部の件が浮上してきた。ことのあらましをナギちゃんから聞いた後、ナギちゃん自身はどうしたいのかっていうのも聞いたりしてみた
『──正直なところ。結果の是非には興味は御座いません。問題児を集めて、エデン条約が締結するまで大人しくしてもらえればそれで良いので』
ナギちゃんらしい回答だなって思った。ただ、それだけじゃもちろんなかったのは当然として。本音を聞いてみたところ
『……ヒトミさんを、遠ざけるため、でも御座います。エデン条約にも関わってしまうと、いよいよ派閥引き込みが始まりますので』
問題児の相手、というのが妥当かどうかはどうでもよく。この際それでも良いから、現政治から少しでも離れたところで。なおかつ自分の権力で守れる範囲でどうにかしてあげたい、そんな気持ちがひしひしと伝わってきた。
ヒトミちゃんは今の内政に食い込みすぎている。それをナギちゃんが一番理解しているっていうのは、私がよく知っている。ヒトミちゃんもだけど、ナギちゃんも相当神経をすり減らしているのは手に取るように理解できた。
『私に、出来ることって何なんだろう』
その言葉が、日に日に自分の中で重くなって行った。ヒトミちゃんを助けたくて、政治の勉強をして。ナギちゃんをどうにかしたくて、ちょっと露悪的な態度に変えてみたりとか。
『………でも。このままでいいわけないよね』
今のトリニティは嫌いだ、大嫌いだ。なんとなく感じていたゲヘナへの嫌悪感よりも明確に嫌いって思えてるから余っ程なんだと思う。さっさとこんなところから出ていきたいっていう気持ちがないわけじゃない。許されるなら、私と、ナギちゃんとセイアちゃんと。ヒトミちゃんを連れてどっかに逃げ出したいって思っても居る。
ただ、セイアちゃんは寝たきりだし、他の二人は動くに動けない。なんなら、現状を何とかしたいってずっと藻掻いて苦しんででも、戦っている。そんな状態で、私が。一番マシな状態の私が逃げ出すことは。許されるわけがなかった。
『………ヒトミちゃんに、会いたいな』
現在の楽園は、不完全である
不浄である
不自然である
度し難い
■■■が、いや。■■■■■が。あのような状況に置かれているのは。不服である、遺憾である、不許可である
──天秤は、罪に傾いたまま
今回のミカさんが、もっと早くに動いていたら。というのが1話に配置してあるIFストーリーですわね
番外編について
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同じ作品で投稿して欲しいですわ〜!
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別作品として投稿して欲しいですわ〜〜!!
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ェ駄死もいいですわ〜〜!!!