朝焼けの帰り道
何の変哲もない、帰り道
表現するすべの無い、在り来りな道
今日も、慣れで柔らかくなった自転車をこぐ道
明日なにかが、起こる道
...
「伊津、伊津!起きて!あんた今日のために早く寝たんでしょ!」
差し込んでくる光が触れる感覚、瞼がかたい感触、朝が来たという自覚が体をつたる。
聞きなれた声、そう思うと同時に、声としてかたまっていない音が、口から漏れ出す。
「もごもご言ってないで起きろ!トバおじちゃんに叱られるのあんただからね!」
朝、朝は嫌いだ、いつも自分を憂鬱にする。
「ほらほら〜、起きないとどんどん蹴りが強くなるよ〜?ほらっ、ほらほらっ」
やけになって、振り払うように重い体を起こす、おもむろに頭を掻き、ため息を誘発させた
「起こしてやったってのに...もういいわ、あたし先にご飯食べてるからね、ご飯食べて、さっさと着替えて準備して、とっとと行ってきな」
彼女...この人は海都、 通称ミトさん、歳は2つ上、姉と言うより、お母さんのような存在だ、わけあって彼女には親がいない、だから伊津家に養子として迎えられた、大雑把で負けず嫌い、青臭くて子供っぽい人だが、面倒見がよく、子供たちから好かれるような人だ。
そして伊津家にも親はいない、元々母子家庭で、自分が物心つく前に母は息を引き取ったとトバおじちゃんに教えられた、それと同時にミトさんも引き取られたらしい、それからはトバおじちゃんが親代わりだったが、体を痛め、風邪をこじらせて5年前に息を引き取った、今はミトさんが親代わりだ。
覚束無い足で法則性のない音をたて、食卓に向かい、重い腰を下ろす。
「そんな歳相応のジジババみたいな座り方しない、最近あんた筋肉使わなすぎよ」
確かにそうだ、運動は得意ではないし、どちらかと言えば苦手だ、家事だって全てミトさんに任せている。
「最近、そこの山で妙な悪天候が続いてるのよねぇ、ウチから近い分、色々不安だわぁ...」
そんなミトさんの話を流しながら、食事をすまし、身支度をすすめる。意識ははっきりしなくとも、服のボタンを締めるのは造作もない事だ。
「そんなタラタラしてるとまた遅刻するわよー」
わかっている、ミトさんの時間の感覚ほど信用出来ないものはない、いつもそうだ、ご飯できたよと言われ、席についていざ料理が並べられたのは10分後なんてのはざらだ。
自転車の鍵に手をかけ、履きなれた靴を履き、ドアノブに手をかける。
「伊津ー」
「気をつけていきな、1年に1度の『お祭り』なんだから、遅れんなよー?」
適当な返事をかえし、ドアを閉める、平然を装うが、満更でもない楽しみが込み上げてくる感覚がした。自転車にまたがり、下り坂を駆け抜ける、誰かに急かされるようにおもむろにスピードを出し、風を切る。
この島で、1年に1回行われる建国を記念したお祭りが開催される、屋台が連なり、祝福の言葉が飛び交い、多種多様なパフォーマンスが展開される、そんなお祭りに心が弾む。
建国記念祭、開幕である。
...
過去の話である。1XX年、当時世界の資源を一括で管理していた大企業、Agencies policing all resources.通称『APAR(アッパー)』、有数の資産家が投資し、世界経済の13%をしめる規模を誇っていた。しかしある日、未曾有のテロが発生し、たかが一団体に略奪される事態が発生した、瞬く間にAPARは崩壊し、今まで統治されていた資源がむき出しの状態になってしまった、この世界的危機を国々が放っておくはずもなく、国内外問わず戦争が勃発した、世界中を巻き込むその戦争は、国民の住処を追い、豊かで風光明媚な動植物を根絶やしにし、権力者はここぞとばかりに己の権力を主張し、無責任にも己だけ助かろうと奮闘していた。数年の時が経ち、世界の100国のうち77カ国は外国から略奪、撃滅に陥り、うち17カ国は内戦や財政難、国民が散らばり、国として保つことが不可能とされ吸収された。残った6カ国も、未だなお資源を我が物にしようと葛藤していた、というよりも、もはやなんのために戦っているのか、そんなことも、誰も気に求めていなかったのだろう。争いを鎮火しようとした団体は1人残らず鏖殺された、世界は刻一刻と破滅へと近づいていたその時、ある1人の男が立ち上がった、その男は6カ国の頭を討ち取り、終戦へと導いた、6カ国に別れた国はひとつに合併され、男が民衆に向け放ったとされる言葉、『この国は永遠なり』からとり、新しい国を、新世界を『ルナーティア』と名付けた。
…
『ルナーティア建国記念祭』、古くからあるお祭りのようで、成り立ちについては無知と言えるが、自分にとって、この1年に1回は特別な日である、『ルナーティア武道大会』だ、各地から腕に自信のある武道家や魔術師、プロの殺し屋に至るまでが一斉に集まるのだ。自分はこの大会で名をあげることが夢であり、名声が知り渡れば様々なライセンスを受けることが出来る。自分はこの特権を活用し、様々な所に出向き、より己を磨くことに専念したいのである。
そんなことを考えていると、賑やかな歓声がかすかに近づいてきた、華やかな装飾、青い空を彩る花火、湧き上がった熱気が、ますます推進力になる。
仈「おーい伊津ー!ここここ!遅いよー!」
手をめいいっぱい広げ、自分の名前を呼ぶ声、幼馴染の仈だ、好奇心旺盛で、少し変わったやつ、そこら辺で見つけたムカデに名前をつけて、故意で飼っているような奇抜な性格もあって友達はいない。
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