戦場の素手   作:木檜 煌人

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第1話

 

 

 

……

………「……こ………は…………。」

 

 

今、自分が居る場所は誰も想像に難を印すだろぅ。

目印は何も無く、どこかの建物としか判断出来なぃ。

その理由は、自分が見ているのは、2本の蛍光灯と雲が見えるから…

 

 

「ん……ぅ…ん」

「……はぃ…」

 

 

誰かの話声だろうか…

近くから?遠くから?

それさえ判断出来ない程、処理が追いつかない。

 

 

「……ぃ…」

「……ぉぃ」

 

 

???

誰かが呼んでるのか?

それとも、誰かが呼ばれたのか?

それすらも判断出来ない。

 

 

「…ぉぃ!」

「聴こえてるだろぅ?」

「アンタに言ってるんだ!」

 

 

声が聴こえる方向に向きたいが、

どうも、おかしい…

 

その方向は右手側と思うのだが、何せ身体が動かない。

 

 

「あぁ…」

「動かない方が……ぃゃ。」

「動けないだろ?」

「でも、声は聴こえてるだろぅ?」

 

 

確かに、声は聴こえる…

「聴こえる」と言うか、「聞かされてる」?

 

 

「動けなくても「声」は出せるか?」

「あんまり騒ぐと厄介だから、なるべく小声で…」

 

 

そう言われても、声が出るかは分からない…

「小声で」と言われても、強弱出来るか分からない…

 

「ぁ……ぁ………」

 

分からないが、やらない事には進まないし、

進展は無い。

正直言うと、ここがどこかで自分が誰かで、何故ここに居るのか、周りはどうなってるのか…

1番は、何故「動けないのか」

自分には判断出来ず、又、理解すら出来ない。

雲がある事から「日中」と言うのは判断出来る。

だだ、それだけであり、それ以外は判断に苦しむ。

 

 

「その調子で、練習と思い、続けて発声してくれ」

 

 

そう言われたが、呼吸が苦しい。

「ぁ」を発する度に、肺が圧迫されるし、何だか苦い。

それでも、「練習」なら、やるしかない。

 

「ぁ……ぁ…あさ?……」

 

「あさ」ってなんだ?

何故「あさ」と発した?

いや。

雲を見て「あさ」と発したんだろぅ。きっと。

 

「ぃゃ。今は昼下がりだ。」

「…それより、ここがどこだか分かるか?」

「ぃゃ。何故、ここに居るかの方が重大か…」

 

 

そんな事を聞かれても、分からないし…

………って…

昼下がり?

ん?

それは、何故分かるんだろうか?

雲なんて、朝から夕方までの間は変わらないだろう…

でも、確かに「昼下がり」と言ったよな。

 

 

「…ひ……ひ…る……さ…がり?」

 

「そうだ。」

「今は昼下がりだ。」

「何故分かるかって?」

「それは、雲が波打ってるからだ。」

 

 

何言ってるんだ?

雲が波打ってる?

たったそれだけで「昼下がり」なんか分からないだろ。

波打つ雲なんて、朝からでも見れる……

ん?

んん?

「波打ってる?」

雲が波打つ?

はぁ?

どゆ事?

 

「あぁ…」

「そうか。」

「アンタが居た「場所」は雲は波打つ事は無いんだった」

「悪い悪い。」

 

 

???

何言ってます?

自分が居た「場所」?

この時点で頭はパニックだわ。

 

 

「ぇ…ぇっ……と………」

 

 

「あぁ。」

「…すまない。」

「気にしないでくれな。」

 

 

いや。

「気にしないでくれ」と言われると、気になるが?

 

 

「声は普通に出る様になってきたか?」

「それとも、まだ苦しいか?」

 

 

苦しいと言われれば苦しいが、

出ない事はない。

無理やりではなく、出そうと思う程でもなく、

まぁ自然と出る感じかな。

 

 

「す…こ……しず…つなら…」

「なん…と…か……でます……」

 

 

「そうか。」

「少しは慣れてきたか。」

 

 

 

慣れる?

いや。

出る様になったって感じの方が強いかな。

 

 

「それで、自分より後に来たんだから、まだ把握出来てないよな?勿論の事だが…」

 

 

後?

って事は、この声の主は以前から居たのか?

いや。

それなら、後の方に聞くのは間違いじゃないか?

そっちが先なんだから、後の方が理解出来ない事の方が多いだろう。

てか、自分で言った言葉に自分でツッコミしてませんか?

 

 

「えっと……」

「…ここは……どこな…んですか?」

 

少しずつ声を出す感覚が戻ってきた?

……ん?

戻る?なんで?

初めから出てたよな?声…

 

 

「お!」

「続けて声が出る様になってきたな。」

「その調子だと直ぐに声は戻るよな。」

 

 

おい!

アンタは心が読めるのか?

てか、声が戻る?

え?奪われてた?

…もぅさっぱりわからん。

理解したいと思うが、次元が違うのか?

 

 

 

「ハハハ…」

「今「心が読めるのか?」と思っただろう?」

「それは正解ゃ。」

「いや。」

「正解と言うより特技かな。」

 

 

はぁ?

特技?

いや。それよりも。

心が読めるなら、声は要らなくねぇか?

思うだけで会話できるじゃないかょ。

 

 

「それは、無理だ。」

「こっちが思った事は読めないだろう?」

 

 

確かに。

あっちが読めても、こっちが読めなけりゃ意味ないわ。

って、心読むな!

気持ち悪いし、内心筒抜けやん。

 

 

「それはそうだな。」

「で、身体は動かせるのか?」

 

 

だから、心読むなよ…

 

 

「えっと…声は出る様になってきたけど、身体はまだ動かないです。」

「何か理由知ってますか?」

 

って、相手も同じ状態(動かない)なら理由なんか分かりゃしないのに、何を聞いてるんだろう…

 

 

「理由は知ってるし、こっちは身体動くけど?」

「だけど、歩くとか起きるとかは無理だな。」

「だってさ、固められてるんだと思う。」

「動くと言っても、微かだけどな。」

 

 

微かに動く?

普通「動く」ってのはさ、歩くとか起きるとかじゃねぇのか?

って……

あっ!

心読めるんだった…

てか、微かに動く程度で理由分かるんかい…

 

 

「………アンタ、意外と傷つく事思うんだな」

「まぁ良いけど…」

 

 

あぁ。

傷つけちゃったか…

って、それだけかょ。

 

 

「ん〜…」

「微かに動く位でどうやって全身が動かない理由が分かるの?」

 

 

「それはだな。」

「……………」

 

 

うん。

…で?続きは?

いや。そこで無言とか…

 

 

「静かに!」

「奴らに聞こえるから心で思うな。」

 

 

え?

奴らに聴こえ……

 

 

「だから、声に出して話せって。」

「奴らも読めるんだよ。心が!」

 

……!

…なるほどなぁ。

 

 

「心で思わなければ、聴こえないの?」

 

「そうだ。」

「奴らは心を読むのが得意だから、要らん事思うと罰喰らうぞ。」

 

「いや。」

「普通に考えたら声の方が聴こえるんじゃないの?」

 

「奴らには声は聴こえない変わりに心を聴くんだょ。」

 

「ふぅ〜ん。」

 

「……そうだ!」

「自己紹介が遅れたなぁ。」

「オレの名前はA。」

「これからは「A」と呼んでくれよな。」

 

「A?」

「名前なの?それ。」

「名称やん。Aって。」

 

「Aでいいんだ。」

「それ以外に呼び方無いしな。」

 

「名前は?」

 

A「ないよ。」

 

「なんで?」

 

A「奪われてるから。」

 

「誰に?」

 

A「心に?」

 

「心?」

「はぁ?」

 

A「……それよりも、アンタの名前は?」

 

「…Aが人称なら、自分も人称で良いよ。」

 

A「じゃ〜Bで!」

 

B「AとBってゲームか?」

 

A「ハハハ…」

「…そんなことよりもさ。」

「奴ら来るんじゃないのか?」

 

B「奴らって?」

 

A「こうなった原因を作った原因の事。」

 

B「原因…」

「って、足音しないけど?」

 

A「そりゃそうさ。」

「奴ら見えないもん。」

 

B「見えない?」

「さっぱり意味がわからんし、何故今こうしてるか位置から教えてくれないかな?」

 

A「それは教えれる範囲でしか無理だな。」

「当たり前だけど…」

「自分にもわからんことあるからな。」

 

B「それはそうだけど…」

「だったらさ、Aが分かる事を教えてよ。」

 

A「いいぜ。」

「けど、今は無理だ。」

「だって、日が暮れたから。」

 

B「てか、微かに動く位でどうして日が暮れたとか、日中とか、雲が波打つとか、何故周りの状態が分かるの?」

 

A「それはだな…」

「心が読めるからだな。」

 

B「??……!」

「そうか!Aは誰かの心を聴いて日中か雲が波打ってるか、日が暮れるかが分かるんか!」

 

A「その通り。」

「それが特技だからな。」

「発声の声も心の声も聴こえるってのも、実はつらいんだな。」

 

B「まぁ、重なって聴こえたり、裏表が分かったりするもんね…確かに。」

「って、いつの間にか奴らはどっか行った?」

 

A「いや。」

「目の前に居る…」

 

B「目の前って…」

 

A「絶対に心で思うな!」

 

B「ひぃ……」

 

 

……

……………

 

 

第2話へ続きます。

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