【完結】スカー・リバイバー『世界渡り』による救世活動に関する報告   作:新川翔

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革命後夜

「次の議題だ。こと細かくは決めない。戦争について軽い方針くらいは決めておこう。キャプラかサバスさん、ラスアンプールの移動とルチさんのお見送りをお願いします」

 

 まずはキャプラの部下が内務卿だった男を連行し、老齢のドラゴンであるルチはサバスの部下が見送った。そして、部屋の周りに聞き耳を立てる者がいないことを調べてから、彼らはこれからこの町に迫る脅威について話し始めた。

 

「それで、敵さんは一か月後の会談に吹っ掛けるらしいが、それは回避できるんじゃないのか?」

 

 マイケルは敵となりうるワ―サイトについての疑問を投げかける。

 

「狼よ。結論から言うと、無理だ。……よしここはワ―サイトの基本情報を共有すべきだな」

 

 その疑問はサバスが答える。さらに彼は続けてワ―サイトという国の説明を始めた。

 

「ワ―サイトは、火山地帯にある国だ。元々は多種多様な鉱石が豊富に取れた上に、幅広い魔法道具を作り出す国で、我々とも友好的な間柄だった。が、十年ほど前に異変が起きた。アレムという男が武力でその国に君臨したのだ。以後は独裁軍事国家へと姿を変え、他国に積極的に介入を行っている。しかも、介入の方法が実に強引でな。今のかの国は適当な言い訳をつけて攻め入ってくるぞ」

 

「そんな軍務卿に質問でーす。万全なファーモットの戦力でワ―サイトには勝てますか?」

 

「すまないな、サイコル。それも無理だ。ワ―サイトの軍備と人材は数と質、共に最高だ。少数精鋭での奇襲でもほぼ不可能だろう」

 

「戦うのなら革命の後処理をしながら、軍備を整えなきゃいけないわけだな…。ここのメンバーに聞いておきたいのですが、もしワ―サイトと対立する際、どうしますか?私はこの国を守るためならどんな手でも使います」

 

 キャプラは次に行うことをまとめながら自身の意思を表明する。

 

「俺もこの国を守る。何、一ヵ月あれば十分本調子に戻れる。だろ、デズト」

 

「そうだな」

 

 軍務卿、処刑人もただ、征服されるつもりはないらしい。

 

「私も混ぜてよ。協力できることならなんでもするよ」

 

 サイコルはキャプラに抱き着きながら彼女の意思を表明する。

 

(ウリエル、お前も乗るか)

 

(もちろん。厄災の手がかりにもなりそうだし)

 

「俺たち、ああ、俺とウリエルが入った場合の勝率はどのくらいだ?」

 

「あ、俺も入れてくれ」

 

 俺とウリエルでその戦力差を埋められないか提案すると、マイケルも加わってくれた。

 

「それでも、厳しすぎるな。まず総大将のアレムに対して俺とデズト、そこの移動魔法使いの3名で足止めができるといった程度だ。運よくその場を凌げたとして、その間に奴の部下にこちらの戦力が全員殺されて、奴らの袋叩きにあう」

 

「それでは、南のシーオリトンと同盟を結ぶというのは?利害は一致するはずです」

 

「それで多少マシになる程度だ。あちらの有利は揺るがない」

 

 抱き着かれても無反応なキャプラの提案も、あまり効果はないらしい。

 

「……」

 

 沈黙が続く。

 この場にいる全員がどうしようもないと考えているだろう。

 

「まぁ、今はそれでいいでしょう。まだ時間はあります。対策はおいおい考えることにしましょう。私はシーオリトンに同盟を打診してみます。少なからずワ―サイトと戦うことという方針は固められました。それでよしとしましょう。本日はこれで解散です」

 

 

 

 

 

 

 

 その日の俺はサイコルの家で安静にすることにした。

 驚愕したことがある。それはこの国の医療技術が高いことだ。

 このレベルの医療魔法と俺の治癒能力なら明後日にはいつも通りの動きができるだろう。

 そんなことを考えてのんびりと過ごしていたら、マイケルに飲みに誘われた。

 

「クロノ、外食いくぞ。アルコールは飲めるか?」

 

 彼は左手を包帯で覆い、骨折した者のように腕を曲げて固定をしている。対して俺も左肩は動かせないように固定されている。

 

「飲める。てかお前、動いていいのか?」

 

 暇だったのでその誘いを受けることにした。

 

「それはお互い様だろって。俺はオーケーだ。めちゃくちゃ動ける」

 

 マイケルはぷらぷらと左腕を振っている。

 

「俺も大丈夫だ。…行こうか」

 

 そうして俺たちは夜の城下町に繰り出した。

 繰り出したといっても、サイコルの家のメイドに一番近い酒が飲める場所を聞いてそこに向かっただけだが。

 町は俺が来た時とも変わらない様子だった。革命がすぐに終わったからか、ドラゴンの侵攻を防げたからか、それともその両方からだろうか。今日もこの町は明日のために動いている。

 そこで俺たちは、紹介された店のカウンター席に並んでビールのような飲み物を注文した。

 

「「乾杯」」

 

「そういえばウリエルは?」

 

「理事会の本部に戻っているらしい」

 

「へー、今回の件の報告か?」

 

「そう言ってたな。お前のことも含まれるってさ。あっちではお前、有名人らしいな」

 

「おう、今のうちにサインでも書いておこうか?シャツとかに」

 

「いや、いいよ。いらん」

 

 適当に会話をしていく。

 

「もったいないな。……で、俺が有名人なの。マジか?」

 

「マジらしいぞ」

 

「そうか…なら、少し頼み事いいか?」

 

「ん、なんだ?」

 

「一旦だ。一旦、俺を元の世界に戻してほしい。ほら、色々あるだろう。職場に辞表出したり、家族とか友人とか彼女とかとも、話しておきたいんだよ」

 

「一旦か」

 

「ん、そうだが、どうした?」

 

「いや、一生逃げたいとか言い出すんじゃねぇかと思った。それは無理だからな」

 

「ハハハ!確かに、そんなしみったれた雰囲気だったな!でも、違う。これは転職だ。でもまぁ、命の危険はつきものだろ。この仕事。なら、それくらいは大切な人たちに伝えないとな」

 

「そりゃそうだ。明日くらいに俺の能力で届けるよ。後でその世界の様子とかを教えてくれ。その世界を検索してみる」

 

「おう、頼んだ。……そういえば、お前の能力なんだけどさ。結構、戦い方が人道的だよな。ほら穴に体を通して切断とかしないし」

 

「そうだな。したいと思ってもできないんだよ。いわば、そういう仕様って言ったところだ。俺の両親がそう設定した。解除方法は分からん。多分ない」

 

「へぇ、そうなのか。まぁ簡単に人殺しをしてほしくなかったのかな。それは」

 

「そうだろうな。その辺は厳しく教えられたよ。あ、そうだ。試しにそのグラス。置いてみてくれ」

 

「お。なんかやってくれるのか?」

 

 彼は目の前にグラスを置く。

 

「よ」

 

 俺は穴を出現させてその端をグラスに接触させた。すると穴の縁に触れた部分からグラスが歪んでいった。

 

「なんだこれ?歪んでるように見えるが」

 

「俺の穴は基本的に危害を加えられないって話だ。中途半端に巻き込んだとしても歪むだけで終わる。絵面だけはブラックホールの端みたいなもんになる」

 

 そして穴をジョッキから遠ざけると、グラスは何もなかったかのように元の形を維持している。

 

「それ、人にやると、どうなるの?」

 

「人も同じだ…ってウリエル⁉」

 

 いつの間にかウリエルが俺とマイケルの間に立っていた。

 

「報告終わったから。んで、急ぎの連絡あるから、飛んできた。今言っていい?」

 

「いいか、マイケル?俺はいい」

 

「酔う前に言ってくれねぇと忘れるからな。よろしく」

 

「まず、私たちの本部へご招待。先ずは二人とも司令と軽い話。そこからマイケルは詳しく身体検査をして、貴方が今どんな状態なのかを把握する。それとクロノは組織の説明とか、聞きたいことも色々あるから覚悟お願い。それが明後日にあるから」

 

「明後日か。都合良いな」

 

「そうだな」

 

「ん?詳しく聞いていい感じ?」

 

「ああ全然大丈夫。むしろ協力して欲しい」

 

「ほう。聞こうか」

 

「そっちにも世界の検索機能があるだろう?それを使ってマイケルの世界を特定したいんだ」

 

「────────────」

 

 どうしてかウリエルはこちらに目を向けたまま、何もしゃべらなくなった。

 

「う、ウリエル、どうした?」

 

「普通ににびっくりしちゃって。いや、そうか。世界移動できるもんね」

 

「それほどか」

 

「こっちじゃトップシークレットの技術だからさ。どきってしただけ。何も悪いことはないよ」

 

「まじで?」

 

「まじ……。こんなに否定していると逆に怪しく見えるけどまじ」

 

「そうか。まぁそれならいいか。明日の朝、協力してらうぞ」

 

「この夜は…飲むわけだね。いいよ、協力する。それじゃ、私はここで」

 

「なんでだよ?ソフトドリンクでもいいぜ」

 

 マイケルはウリエルもこの飲みに勧誘し始めた。

 

「この後、少し怒られてくる。色々バラしちゃったので」

 

「あー、なるほどな。なら俺のせいでもある。帰ったら話聞くよ」

 

 確かにあのようなことは普通、バラしていいものではない。

 

「是非。それじゃ。戻るよ」

 

「じゃあな」

 

「シーユー」

 

 ウリエルが店を出てからも、俺たちは夜中まで酒を飲み続けた。

 久しぶりに同郷の人間に会えたからか、話がかなり弾んでしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の日の早朝、朝の陽射しと人の気配に気づいた俺はガバっとベットから起き上がった。

 

「お、おはよう」

 

 それに驚いたサイコルは少々後ずさりしている。

 俺の機能だ。寝首をかかれぬよう、に寝ている間は物音に敏感になっている。

 

「おはよう。サイコルか。ごめん。驚いたな」

 

「ごめんね。起こそうとしたんだ。それと、簡単な診察も?」

 

「診察?お前治療とかもできるのか」

 

「ほおら、感情読めるからさ。痛がってるかどうかとか。気持ち悪いかどうかは分かるんだ」

 

「そうか、それで俺の感情はどうだ?」

 

 気になったので試しに聞いてみた。

 

「えっと、二日酔いだね。飲んだの?その傷で」

 

 見事に当てられてしまった。

 

「ああ、久しぶりに地球人と…同郷の奴と話せたからかな。飲みすぎちゃった」

 

「それは良かった。隣良い?」

 

「ん、大丈夫だ」

 

「よっこらせっと」

 

 彼女は俺が上半身だけ起こして座っている場所の左隣に、彼女自身も靴を脱ぎ、足を伸ばして座った。

 

「そう、キャプラから伝言。『今回の件、本当にありがとう。感謝してもしきれない。これからもよろしく頼む。今回の報酬としてささやかなものを用意させてもらった。遠慮なく受け取ってほしい』だって、んで実際の家と沢山のお金。住所は…私の家の近くだね」

 

「そうか、こちらも喜んでいたと言ってくれ」

 

「そうだね。うん。その通りに伝えとく」

 

 彼女はベッドの上でくつろいでいる。狭そうだったので右側に寄って彼女の場所を確保した。

 

「……そうだ。質問、良いか?」

 

「ん、何?なんでも答えるよ」

 

 俺は気になっていることを聞くことにした。

 

「なんで俺を気に入っているんだ?」

 

「え。そんなこと?君みたいな人間が大好きだからだよ。私は」

 

 考える間もなく、即答だった。

 

「えー。ほんとう?ありがとな」

 

「いえいえー。そんな君にプレゼント。実はこれが本命だったんだ」

 

「へー、ありがとうな」

 

 昨日使った連絡魔法が込められたピアスだ。三角の中心に赤い宝石が埋め込まれている。

 

「ウリエルから聞いたよ。ちょっと職場に戻るって」

 

「そうだな。でも、すぐ戻ると思うぞ」

 

「それはそうだけど、その後は?」

 

「後っていうのは、ここでの騒動が全部終わった後ってことか?」

 

「そう、その通り。これから君はどんどん先へ進んでいく。私にも出来るだけその道を照らさせてほしいんだ。この世界の中ならそれを使っていつでも私に直通で連絡できるから」

 

「そうか、ありがとう」

 

「どうも!いい感情だね。それじゃあ、朝ごはん出来ているらしいから待ってるよ」

 

「分かった。すぐ行く」

 

 彼女はニコリと笑ってベッドから降り、俺の部屋から出ていった。

 扉が閉まる最後の瞬間、隙間からこちらに向かって手を振っていた気がする。

 

「さて、行こうか」

 

 今日はマイケルの頼みを聞く日だ。

 俺は朝食を頂いてから、すぐにウリエルと多次元宇宙安全保障理事会と協力してマイケルのいた世界を突き止めた。

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