【完結】スカー・リバイバー『世界渡り』による救世活動に関する報告   作:新川翔

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一~二日目 絞り込み

 一日目

 

 俺は小劇場から出てホテルの一室で休んだ後、この件にはサイコルとの協力が必要不可欠であると考え、魔法と5つの国の世界へ移動した。

 最初に向かったのはサイコルの家で、留守番をしていたお手伝いのメイドには職場にいると聞いたのでピアスから連絡をする。直接頼みたかったが仕方ない。

 すると彼女はすぐに応答してくれた。

 

「意外と再会、速かったね」

 

「俺もそう思う。そっちはどうだ?やっぱり忙しい?」

 

「忙しいーよー。あのラスアンブール。倉庫にとんでもない量の契約書を隠しててさ。裁判に必要な作業が多すぎるー」

 

「そうか……その、大変言いにくいことなんだが」

 

 革命後なのだから当たり前で春が、かなり彼女は忙しそうだ。それでも、本題に踏み込まなければならない。

 

「分かってる。私に頼みたいことがあるんでしょ」

 

「こんな忙しい時に、頼めるか?」

 

「全然良いんだけど……でもそれじゃあ、遺恨が残るって声色だね」

 

「そうだな。声でもお見通しか」

 

「私天才だからさ。成長する余地はすぐ埋められるんだよね。さて、そんなことはどうでもいいんだ。私からの条件だ。それは…」

 

 彼女は条件を述べようとすると、急に黙り始めた。

 その沈黙は数秒続き、こちらはなんだか気まずくなってきた。

 

「どうした?」

 

「よし、決めた。秘密にしておこう。ただ君は私が指定したその時、時間を作ってもらおうか」

 

「どのくらいだ?」

 

「念のため、一日。そうだ。さっきの時間の指定はナシ。よほどのことがなければ、君が帰って来た時にしよう」

 

「まぁ、そのくらいなら…」

 

「よぉし。約束だからね」

 

 彼女の声は、心を読む力がなくとも喜んでいることが分かるほど柔らかくなっている。

 

「そう、約束だな。それじゃあこっちの要望だ。今、連続殺人事件を解決しようとしていてな。犯人を特定するためにも協力して欲しい。日にちは出来るだけ近いほうが良い。時間は1時間くらい。かな」

 

「そうだね。明後日ならいつでもいけるよ」

 

「そうか頼んだ」

 

「りょ!それじゃーねー」

 

 連絡が切れるのを待ってから、手伝いの人に礼を言い、すぐに元の3つの都市の世界に戻った。

 

 

 

 

 

「ただいま」

 

「どうだった?」

 

 現時点での時間は昼。

 まだまだ調査する時間はありそうだ。

 

「お話は順調だ。それでウリエル、お前って睡眠、どれくらい必要だ?」

 

「地球人と同じくらいかな。徹夜は全然できるけど、したらパフォーマンスは落ちるよ」

 

「俺も同じだ。今昼くらいだし、まずはベルラージの関係者から調べようか。できればマフィアまで接触出来ればいいが…」

 

 何が起きるのか分からない。いざという時のために、体調は万全にしておいた方が良いだろう。その制限の中、俺たちはサイコルという切り札のために準備を行わなければならない。

 その準備とは『犯人候補の絞り込み』だ。

 相手の出方によっては、候補への総当たりでの犯人特定ができなくなる可能性もある。サイコルへの負担もあるし、候補の数は絞り込んでおいておく必要はある。

 いや、そもそも早く解決してしまい、切り札を使わなくて済むのだとしたら、これ以上のことはない。

 

(俺たちは、各都市に簡単に話が通る上に、移動に使う時間のロスが少ない。それを生かして情報をできるだけ集めよう)

 

(あのさ、私は分かれて別行動でいい?)

 

(どうしてだ?)

 

(今持っている情報が、正しいのか。そもそも別の犯人候補がないか。調べてみる)

 

(ああ、頼んだ)

 

 

 

 

 そうして俺は昼から夜までずっとベルラージの従業員に対して聞き込みを行った。

 結果としては上長。明日、すぐにでも時間の解決に取り掛かろう。

 

 

 

 そうして、日は昇った。

 おはようございます、

 昨晩の被害者は1名です。

 頭を銃で撃たれた後、アアラナ伝説の一場面のようなオブジェとなって発見されました。

 

 

 二日目

 

「どうだ理事会?何か有益な情報はなかったか?」

 

 次の日の早朝、支配人の部屋で俺たちは互いの成果をジョーに聞かせていた。

 実のところ、俺は内心焦っている。昨日にもその被害者は出たそうだ。つまり、そのペースが速くなっている。俺としては一刻も早くこの事件を解決したい。そんな焦燥で頭の中が一杯だ。

 

 一方的に殺される恐怖はこの身にしっかりと刻まれている。

 

「ベラルージのマフィア、そこが一番怪しいです。その事件に指紋などの証拠がないことから見て、これはプロの犯行だ」

 

「そして、他の都市には、犯罪を行う大きな組織はありません。個人の殺し屋に関する」

 

「やっぱ、そうだよな。ギャングだよな……」

 

 俺とウリエルの順番で犯人に関する調査結果を提供すると、ジョーはそれを知っているかのようにふるまった。

 

「昨日と意見が変わってますね」

 

 ウリエルがそこに疑問を呈す。

 

「いやさ、誤解だ。これにも理由がるんだよ。俺が気になってるのは、死体のオブジェを作る意味だ。プロの殺し屋ってのは、そういうモノは作らないんじゃないのか?その一点で俺はこの犯罪を単独での快楽殺人者の仕業だと思っているんだが……動機に関してはマフィアが一番揃ってんだ」

 

 ジョーさんはそのまま、マフィアについての説明を始めた。

 

「あそこのマフィアは、設立の経緯が経緯だからな。ベラルージは婆さんの代で経営のクリーン化を果たそうとして、その結果、反社会的勢力を追い出すことに成功した。だが、完全に消滅したわけじゃなくてな。逃げ残った奴らがマフィアとして集まったわけだ。つまり、奴らの目的が婆さんを追い出すことって考えたら、そういうことはしそうなんだよな」

 

「回りくどすぎ……あ、そうか警備にお金をかけているから犯罪は出来ないのか」

 

「その通りだ。クロノ。ま、脅しも並行して行っているんだろうけどな。このまま罪をかぶらないと殺すぞ、みたいなものをな」

 

「もし、それが本当ならすぐにマフィアに対処したいですね」

 

「今すぐにしたいところだが、そもそも証拠がないんだ。確信がないからこそ、俺たちは足踏みしちまってる。それに、組織のアジトに証拠があるとしても、マフィア共は見つかったらすーぐ逃げられるそうだ。この一か月の間に、婆さんの指示でアジトに三回突入したそうだが、どれも逃げられているらしい。んで逃がすと実はわざと逃がしたんじゃないのか?みたいに疑わるってスンポーだ」

 

「いや、俺なら何とかできるかもしれません」

 

 犯人逮捕を急ぐ俺は大見得を切った

 ただ、俺ならやれるという確信がある。

 

「どういうことだ?」

 

「俺はどこへでも一瞬で移動できます」

 

「あ?先遣隊は、ゲートはそんな使い方は出来ないって言ってたが…」

 

「俺の力です。理事会の制限はありません」

 

 その言葉を聞いたジョーはすぐに受話器を取り電話をし始めた。

 

「なら話は別だ!今すぐババアと連絡を取る!」

 

 彼女と連絡を取った彼は、改めて俺にマフィアの壊滅を依頼してくれた。

 

「よし、クロノとウリエルにアジトの突入を命じる。時間は今すぐ。場所は送信された場所だ。何、建前はある!殺人とは別のな!あの奇行も捕まえてから調べればいい!」

 

 そして、俺とウリエルがマフィアの拠点に突入することが決定した。

 

 

 

 

 

 

「ウリエル、どう攻める?」

 

「こっちは南から行くから、そっちは北から。あとはアドリブ」

 

 簡単な作戦を立てて、アウマさんから送られてきた座標に繋がる穴を開ける。

 ただ、これでは不十分だ。

 アウラさんによると完全に包囲されても逃げ出されたケースがあるらしい。

 つまり、中には隠し通路がある。俺たちはそこも封じる必要がある。

 文明タイプに地球に近い。想定される武装は銃やナイフ、念のため超能力や特殊な体質による攻撃も考慮に入れた上で、一気に鎮圧する。

 

「3、2、1、ゴー!」

 

 俺たちはすぐに穴に飛び込んだ。

 

(郊外にある地下のアジト。縦に長い)

 

「薬物の押収に来た!おとなしくしてもらうぞ!」

 

 目の前には見張り2人を、瞬時に気絶させる。

 俺とウリエルの背後の穴を大きくして覆いつくして塞いだら、中央に向かって走り出した。

 動揺する者、抵抗する者、全てを等しく倒していく。

 扉は蹴破り、弾丸は穴で移動させてその隙に俺の礼装で叩く。

 通常の人間の性能を凌駕した力は、完膚なきまでに悪党たちを打ちのめす。

 アジト内にいたのは合計で36名。粒ぞろい歴戦のギャングその生き残り。

 それら全てを2名が55秒で鎮圧した。

 

「ここが最後の隠し通路だな」

 

 俺は見つけた隠し通路にも穴を出現させる。

 

「もしもし、ジョーさん。終わらせました」

 

 

 

 

 

 まだ、厄災の反応は消えていない。ただ、ウリエル曰くそれで問題はないようだ。

 この反応が消える時はその厄災が消滅した時だからだそうだ。

 だから俺たちは殺人犯が確定するまでこの世界にとどまる

 

 

 

 

 

 その日の夜、俺はほんの少しだけ疲れを感じながら、夜のレストランで食事をする。

 俺たちはその後も個人で行動していたマフィアなどの捕縛に協力しており、気付いた時には日は沈んでいた。

 だが、マフィアの構成員は全員捕まえることは出来たらしい。

 だからこそ俺たちは安心して夕食を食べ始めていた。

 ジョーさんおすすめのこの世界原産家畜生物『ガート』を煮込んだ料理らしい。

 よく煮込まれた肉がほろほろしていて、口の中で溶けているようだ。

 

「クロノ、あれ」

 

 ウリエルが店の外で手を振る存在に気が付いた。

 

「ああ、昨日の劇場の人か」

 

 昨日の小劇場で一人芝居を行った人だ。

 俺たちが手を振り返すと、彼は遠回りをして俺たちのところまで来た。

 

「こんにちは。ログテといいます」

 

「お疲れさまでーす」

 

 彼女はシチューのような料理に舌鼓を打ちながら、彼に労いの言葉をかける。

 

「いや、探したんですよ。確か…探偵のクロノさんと助手のウリエルさんですよね。ジョーさんからはそう聞いています。ちょっと事件じゃないことで別に色々聞きたくて」

 

 彼は一つ席を別の机から持ってきてそれに座る。

 

「まぁ、いいですよ」

 

「特に劇の感想を聞きたくてですね。お恥ずかしいことに、私、売れてなくて。自分のものがどう受け取られるのか、いまいち分からないんです。嬉しいことに、熱心についてきてくれるファンはいるんですが、全部肯定されちゃうとね…それに、そろそろ売れないと解雇されちゃいますし……」

 

「私はあれ以上、言えないです。ので、黙っておきます」

 

「それでも全然かまいませんよ。面白いという評価だけでも、こっちは飛び跳ねるほど嬉しいんです。それで、クロノさんはどうですか?」

 

 頑張ろうと努力している人間は、ただ純粋に応援してあげたい。

 そう思った俺は何とか自身の意見をひねり出して、彼へフィードバックを行おうと試みる。

 

「あの表現力を生かせる方向に舵を切れたらいいですよね。彼らに褒められたんだし、そこは間違いないはずだ」

 

「そうなんですよねー。ここは演出家の領分なんですけど、血糊とかダミーの臓物とか効果的に使いたくて。ただ、舞台の上で水の演出ってのは……片付けるの面倒だし。あとリアルすぎて引かれちゃいますし……」

 

「え、……そうか。確かに、そういう側面はありますね」

 

 こうして、この日の俺は残り時間を、ログテの相談に乗ることに費やした。

 

 

 

 

 

 そうして、日は昇った。

 おはようございます、

 昨晩の被害者は1名の男性観光客です。

 刺殺された後、サバク隆盛物語における、主人公が磔にされた場面のような姿で発見されました。




報告を受けた理事長「ちょっと早い…な」
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