【完結】スカー・リバイバー『世界渡り』による救世活動に関する報告 作:新川翔
(まだ仕留めきれていないな!)
奴は上手く兜の角度を調整して槍を弾き、燃え始めた兜を外すことで延焼を回避していた。
手中に移動させていた槍で攻撃を受け止めて、白炎を鎧に移そうとするとすぐに距離を取られた。
すぐに槍の形を取り回しのいい刀に変えながら、穴を通して地上に移動する。
足元に移動させていた
しかし俺は先程の剣戟と同様、凌ぐことしかできない。
そして時間が経過するごとに受けきれなかった攻撃により傷が増えていく。
(隙を作るやり方も、対策されそうだ。ならば!)
「エンジェル・アンカー。目標をドラガに!」
(直接狙う!)
足元から再び出現する巨大な杭。俺はすぐに狂い遊星3機の接続およびエネルギーチャージを開始する。
この杭は先ほど俺は発射したもので、地面に突き刺さってから慣性が死ぬ前に地中で穴に通すことで俺の世界に移動させて冷却状態に入ることを防いでいた。
この一撃でアンカーは確実にオーバーヒートするだろう。
だが、それでいい。
奴は杭の出現に驚いたものの、すぐにその側面に張り付くことで回避していた。
「それが弱点って教えたもんなぁ!」
俺は奴がそう動くことを読んでいた。
この対処法は皇帝戦前の作戦会議で教えたものだ。
この杭は直径100メートルほどの巨大なもので誘導性能はほとんどない。
だからこそ、一度避けてしまえば後は問題ない。
この強力な一撃は回避さえしてしまえばどうということはない。
しかし、剣戟の間合いでの大きな回避行動は明確な隙となる。
「破山刀 抜刀 山嶺裂断」
すぐに山を割る刀を呼び寄せて、竜神の進行方向に横なぎにすることで回避ルートを制限する。
そして、杭と刀の間のスペースに俺が展開する全武装が叩き込まれる。
まずはレッド・バルチャーの掃射だ。赤い光線が豪雨のように降り注いで確実にダメージを与える。
「
続けて発射されるのは鎧を燃やす槍百本。その全てが最高速度で射出された。
音速に届き得る投擲の雨は、しっかりと竜神に命中しており、奴を白い炎で包んでいる。
「遊星槍 投擲!」
ドローンの攻撃を命中させる中、ある違和感に気づく。
(抵抗がない?ブレスくらい吐くだろ……。後ろか……!)
大きな穴で杭を回収しながら、勘でレッド・バルチャーの雨に飛び込んだ。
飛び込んだ時点で俺の背中に熱い何かが、左肩から右わき腹にかけて薄く走っていた。
すぐに穴からラムドシアス・マグナムを取り出して、攻撃された方向へ振り向いて引き金を引く。
そこには鎧を脱いで傷だらけ、右目が無くなったドラガが刀を振り下ろしていた。
その刀は奴が先ほど持っているものとは違い、刀身がオレンジ色だった。
不可視の弾丸は反応さえさせずに竜神の腹を貫き、対して奴は爪を発射して俺の左肩を貫いた。
すぐに背中に穴を開いて別世界に避難する。
「鎧を脱ぎやがったな……」
『エンジェル・アンカー オーバーヒート 冷却を開始』
右肩に刺さる爪を、体から出ている分だけを灰太刀で切断して、背中と共にチック・タック・ロットを覆うことで保護しながら、今の俺と奴の状態を考察する。
恐らく、槍の雨のタイミングで背中から鎧を破って抜け出したのだろう。
大ダメージを与えるハズの攻撃を途中から回避されてしまったが、確実に追いつめていることを実感している。
理由は三つある。
一つ目は奴の鎧を破壊したこと。
奴は対皇帝戦の作戦会議の際に、完全な鎧は一度しか生み出すことは出来ないと言っていた。もし奴の限界がそのままなら、奴は全身に鎧を展開することは出来ない。ただ、小手や兜などの一時的な展開は注意が必要だ。
二つ目は奴がかなり負傷していること。
恐らく、逃げ出したタイミングはギリギリだったのだろう。奴は右目を失っただけではなく、体の至る箇所に槍による切り傷がついている。
そして三つ目は、雪ノ下にくべる燃料が決まったからだ。
そして俺は五つの穴を掛け合わせて雪ノ下を生成する。
燃やすのは奴の血液。
これは槍の雨を降らせたときに採取した。
注意すべきことは鎧が無くなり、よりドラガが早くなっていることだ。
皇帝戦以上の速度は確実。こちらはどんなコストを払ったとしても対抗しなくてはならない。そして破山刀、狂い遊星、エンジェル・アンカーはこの戦いでは使用不可となった。
『ナスカ・ライへ 充電完了』
すると皇帝の大剣の充電完了の通知が入って来た。
この大剣はアンカーが使えなくなった今、非常に重要な役割を果たすだろう。
俺は次の攻防で竜神を仕留めると決意してから穴に飛び込んだ。
穴から出ると、目の前にはオレンジの刀を持ったドラガが地に足を着けて俺を待っていた。
奴の刀からはぽつぽつと液体が垂れている。
アレは溶岩のようなものだろう。刀の原材料は奴の鱗。
原理としては俺の
俺の剣の中心部で、僅かな白い炎が揺らめいている。
「どうした、仕掛けて来ないのか?」
穴から出た瞬間に攻撃してこないドラガに疑問を投げかける。
すると奴はニヤリと笑いながら問いに答えた。
「そろそろ、終わりそうだな」
「お前の夢がな」
「……いや、壊れるのはお前の理想だ」
奴の笑みは獲物を仕留める時に漏らす愉悦によるものだ。
どうやら奴は感傷に浸っていたらしい。
すぐに奴を仕留めるために更なる準備を始めていく。
足元には
首に一直線に放たれた一撃を、俺は穴を頭から肩まで移動させることで回避した。勢いのまま俺の背後に移動する奴に対して、穴をそのまま腰まで通して上半身だけ移動して切りつける。
「キレが増しているな」
「いや、お前が遅くなってるだけだ」
『俺の世界』で俺の移動の力が冴えるのは、補助する機械が発する範囲内にいるからだ。
この機械は俺が効果範囲内にいると穴の運用の補助してくれる。
俺の技が冴えるのは『世界が特別だから』ではない。『特別な機械があるから』だ。
この世界に戻って来た際に効果範囲内、かつ戦闘の被害が及ばなさそうな場所にその機械を設置している。
だからこそ、今の俺は十二分の実力を発揮している。
リスクはあの機械が破壊される可能性があること。配置には勘以外の根拠はないので、万が一破壊される可能性は存在する。
この装置は一点モノ。理事会でも現在の技術では製造不可能とされた。
もし破壊されれば俺の世界におけるアドバンテージは永遠に消滅してしまう。
だからどうした。
今、最も優先すべきはドラガを倒すことだ。
そこから始まるのは、異次元の速度で繰り広がられる剣戟だった。
奴は背から生える三角錐の翼を使って、俺は穴を移動させてワープすることによって戦闘をしていく。
主な攻撃手段は黒雲による雷撃と雪ノ下による斬撃だ。
レッド・バルチャーの速度では最早この戦いにはついてこれない。
だからこそ、並べて光線を発射し、壁のようなものを作ることでその移動を制限する方向で活用する。
この勝負は熾烈を極める。
互角であるが、先日手のような互いが傷つけられない状態ではない。
時間経過と共に、互いの傷が増えていく。
どちらも体力の消耗具合から、長い時間での戦闘を避け、多少の傷を考慮してでも敵を倒すための戦闘を行っていた。
奴の右腕を傷つけるために左足を削らせ、
奴の翼を傷つけるために左肩に傷をつけることを許容し、
雷撃を当てるために蹴りを喰らって、
奴の左足首を切るために左手の指を犠牲にする。
このくらいの傷は大丈夫だ。
理事会の施設で回復できる範囲内。
そして残ったのは満身創痍の男二人。
互いに50m程距離を取り、立っているのが不思議な状態で眼前の敵を睨んでいた。
「「ハァ─────。ハァ─────。ハァ─────。」」
俺の足元には黒雲が漂っており、まだ握る剣の白い炎は消えていない。
((次の攻防で終わらせる!))
雪ノ下を前方に出現させた穴に投擲すると同時に、ナスカ・ライヘを右手に持ち、振り上げて、そのま
ま下ろす。
その大剣の脅威を理解していたドラガは、雷よりも疾く、俺の背後に移動した。
それを読んでいた俺は大剣を穴に振り下ろすことで、斬撃と発せられる衝撃波を背後に出現させる。
しかし、竜神の反射神経は尋常ではない。
奴は斬撃を避けて背後に回った勢いのまま斬撃を躱す。
それを読んでいた俺は奴の移動した先での背後から灰立槍を発射。奴を俺のいた方向へ移動させる。
ドラガはその勢いのまま俺を殺そうとするだろう。
しかし目の前には俺の姿はない。
奴の目の前雪ノ下が飛んできている。
さらに奴の左右と上下にも穴が出現している。
全方位から迫る攻撃を、得意の反射神経で対応するしかないが、
────それは叶わない。
奴の左の翼が刀に変形した長針によって裂かれていた。
俺は槍が一度出た穴から飛び出していた。
『一度出現した穴から再び攻撃する』という手段を晒していなかったからか、この手段で不意を突くことに成功できた。
「これで、終わりだ」
さらに刀を奴の腹に刺すと、俺諸共、雪ノ下がドラガの心臓へと刃を通した。
「ガハァ!」
血液が燃え始めた奴は力なく、うつ向けに倒れた後、ごろりと転がって仰向けになった。
対して俺はゆっくりと呼吸をしながら、体から流れていく血液を感じながら、ドラガ見下ろしている。
「殺さないのか……?」
ドラガは止めを刺さない俺を見て、呟いた。
燃やす程度を調整し極度の貧血状態に陥れる。最早、意識を保つことも難しいだろう。
「お前の死に、魅力はない」
別に俺は不殺主義を掲げるつもりはない。
しかし、俺は家族たちを、親しい人たちを人間に殺されている。
だから、殺すことがどれだけ苦しみを生むかを理解しているつもりだ。
故に、無駄な殺生はしない。
だが、人を殺す必要があるなら躊躇なくその選択肢を取る。
『一人殺さなかったから国が滅亡した』
などというケースを起こすわけにはいかないからだ。
その重みを背負うくらいの覚悟はできている。
ただ、この男はそれに値しない。
「…………そうか」
俺の言葉に残念がった奴は、更に言葉を紡ぐ。
「クロノ、最後にいいか?」
「なんだ、ドラガ」
「その、生き方は、楽しいか?」
「めちゃくちゃ楽しいさ」
クロノ「ウリエル!レッド・バルチャーの脳派操作練習しているんだけど、めちゃくちゃむずいな!」
ウリエル「わかる!!!!!」