【完結】スカー・リバイバー『世界渡り』による救世活動に関する報告 作:新川翔
ガスで灰色な世界
『ホークス・ファースト。投下準備、完了です』
ここはとある傭兵たちが拠点にしている宇宙船。眼下の灰色の星をたった一人で見下ろしている。
船内には女性による放送が響き渡っていた。
「ありがとう、オペ子ちゃん!それじゃあ、先行ってくるぜ!」
ダボっとしたパイロット服と顔全体が覆われているヘルメットを被った男は、眼下の惑星を見下ろしながら放送に反応して、星々を移動できる戦闘機に乗り込んだ。
「あばよバカ共!また会おうぜ!」
操縦席に座った彼の目の前には様々なスイッチや機器、そしてハンドルがある。
彼は鼻歌交じりに起動に必要ないくつかのスイッチを押す。
「さて、こっちも準備完了。下ろしてくれ!」
そして戦闘機の直下にある床が開き、対象を宇宙へと射出した。
広がる、灰色の雲に覆われた星。
男は雲の果てにどんな強者がいるのか胸を馳せながら、その星に向かって行った。
「到着したな。ここがルーシか。それでこの下に厄災がある、んだよな……」
俺は穴を通して世界を移動し、目的地である灰色の大地に踏み入った。
この世界の空は一面に灰色の雲が広がっている。ただ、所々雲が薄い場所もあり、そこから光が差し込んでいる。そして、俺たちが立っている場所はクレーターのようにくぼんでおり、俺はその中心、一番深い場所で空を見上げていた。
この大地の奥底に超大陸級、爆弾タイプの厄災が眠っている。
「集合までのあと一時間。まずはこの辺りを探索しよう」
俺のすぐ後にこの世界に足を踏み入れたウリエルは、1mの黒い筒を抱えていた。
「ウリエルそれって」
「そう、厄災レーダー」
その土地の人々を脅かす厄災をより詳しく探る『厄災レーダー』。
彼女は先遣隊が揃えてきた情報と差異がないかを確認するために、そのレーダーを使おうとしていた。
「待て!」
すると、前方50m程に一つの衝撃が発生して土煙が立ち上る。
「お前たち、ホークスだな!私たちの土地には近寄らせない!」
長身で、暗くて青い長髪、髪はポニーテールのようにまとめている女性が、怒号を上げながら俺たちの前に現れた。鋭い目つきで俺たちを睨んでおり、その右目には涙ぼくろがある。そして右手には白いアタッシュケース、左手には銀色の筒を持っている。
「ん?」
「え?」
俺とウリエルが困惑していると、彼女は白いアタッシュケースを振り上げ、左手に持つ銀色の筒を持ち手の近くにある穴に挿入した。
「M・A・C起動!ブレイドシグマ!」
彼女の声と共にアタッシュケースがガチャガチャと変形して一つの大きな剣となった。その刃は水色のエネルギーらしきものが走っている。切れ味は良さそうだ。
(なるほど、あれが……)
そして、水色のエネルギーに警戒する要因はもう一つ。
あのエネルギーは今回の厄災に深く関わっている。だからこそ、どうしても、必要以上に警戒してしまう。
「ウリエル、多分、彼女はこの地域の人間だな」
「そうだね。先遣隊たちが話を通していたはずだけど……」
「あちらの気が変わったか、それとも勘違いか。まずは敵の対処だ。……ウリエル、俺だけでやる」
ウリエルの前に一歩踏み出した。
俺は1人で、あの女性の気を鎮めることにした。
取れる手段は戦闘中の言葉による説得、武力による完全な屈服。出来れば前者を取りたいが、どちらにしろ、彼女との戦闘は避けられない。
「どうして?」
「あちらのホークスという言葉が気になる。彼女が言っているのは、恐らく敵勢力だ。今回の厄災のことを考えると、不自然なことじゃない。第三勢力の介入がないか、警戒してくれないか?」
彼女に問われて根拠を答える。この場所の厄災についての情報は、先遣隊から既に知らされている。だからこそ出来る推測だ。
「分かった。注意して見とく」
「……頼んだ。さて、待たせたな!」
彼女に周囲の警戒を任せてから彼女に近づいていく。
「作戦会議は終わりか?」
地域の女性は俺に刃を構えながら言葉をかけた。どうやら彼女は俺たちの話し合いが終わるのを待っていたようだ。
「先手を譲ってくれるのか。随分と優しいな」
「これは優しさじゃない。先手を譲った上で完膚なきまでに叩き潰して絶望を埋め込み、二度と攻め入ることのないようにするための作戦だ」
軽口を交わす間に、彼女の持つ剣の水色の刃がより一層大きくなっていることに気づいた。
(準備していたか。時間を与えたんだ。当然か)
「言っておくが、俺たちは敵じゃないぞ。多次元宇宙安全保障理事会の者だ」
頼み込むような必死さは見せず、しかし真剣な眼差しで彼女に俺たちの身分を明かす。
「……くだらない嘘を!そうやってお前たちは私たちを騙してきたんだ!」
(彼女は警戒してる。……対話は難しいな)
「後悔するぞ。そのおもちゃの破片を眺めながらな。『レッド・バルチャー』」
対話のみでの解決という選択肢が薄れていくのを感じた俺は、すぐに戦闘に入った。
音声認識により、彼女の周囲に現れた複数の穴から、赤い光線が照射される。
彼女は前方に飛び出し、光線の間を縫うように躱しながら大剣を振り上げ、振り下ろした。
水色の刃から発せられた斬撃は俺と彼女の間にある40mの間合いを優に埋めた。
俺は驚きながらも衝突の瞬間に穴を開けてそこに逃げ込むことで回避し、彼女の背後から長針を持って現れ、それを振り下ろす。
しかし彼女は反射神経でそれに反応して、両手で持つ大剣の柄頭で俺の長針を受け止めた。
『ダブルブレイド!』
機械音が鳴ると大剣は二刀に変形して、片方の刃で長針を受け止め、もう片方の刃で俺に切りかかって来たのでそれを飛び退くことで回避する。
俺は飛び退きながら彼女の実力に驚いていた。
(ワープを初見で対応する反射神経、柄で受ける戦闘センス、そしてそれを実現する力。この三つが極めて高い。ここまでの攻防で直感した。得意分野での差はあれども彼女は俺と同等の実力を持つ!)
『ダブルショット!』
再び響く機械音。
今度はそれぞれの剣がアサルトライフルのようなものに変形して、その銃口から水色の弾が雨のように発射された。
俺は前方に大きな穴を開けることでそれらを回避する。
『カタナナイフ!』
右手に持つ銃をナイフのように変形させてから、着地する俺に向かって斬りかかる。
水色の刃に触れたくない俺は、落下する先に穴を発生させて、地に足を着ける前に上空で移動し、少し離れた場所に降り立つ。
「手を変え、品を変え、忙しそうだな!壊して楽にしてやろか?」
「黙れ!」
この場面、出来れば俺の武装の火力でゴリ押したいところだが、この足元にあるとされる厄災を考慮すると、杭や破山刀を使用することは出来ない。
『ダブルブレイド!』
彼女は再び、武装を双剣に変えて襲い掛かってくる。
「かかって来いよ。
俺は左手に雷の剣を持ち、それを振るう。
放たれた雷は見事命中して女性を怯ませる。
「くっ」
「再び告げよう。俺はお前の味方だ!」
彼女が怯んでいる隙に、剣を地面に刺しながら呼びかけてみる。
こういったことは何度もアピールすることが必要だ、と思う。
「
呼び声と共に、剣の刃から黒い雲を吐き始める。
『クラス……ナイト』
俺の忠告など耳を貸さない彼女は、武装を変形させて右手には薙刀、左手には銃口が備え付けられた小さな盾を持った。薙刀は刃の部分を水色のエネルギーが走っており、盾からは蝶のような配置で四枚の平行四辺形のエネルギーが展開されている。
「少し殴り合って冷静になろうか」
俺が今後の方針をはっきり決めると、彼女は盾からエネルギー弾を発射した。
(カウンター狙いがバレたか)
曇天響留は解除せず、剣を引き抜いて構え、長針と雷の剣の二刀流で彼女に応対する。
全てのエネルギー弾は避けて、すぐに彼女の懐に滑り込もうとする。しかし彼女の槍捌きはそれを許さない。彼女は後退しながら俺の剣を薙刀か盾で弾き、隙があるタイミングで突いたり、弾を発射したりしてくる。
「!」
すると薙刀の穂先が俺の頬を掠めた。
(俺の動きに慣れ始めているのか?このまま戦い続けると動きが完全に読まれるかもな)
戦いの中で彼女の動きがより洗練され、着実に追いつめられていることに気づいた俺は、再び彼女の戦闘センスの高さに驚いていた。
(それだけじゃ、終わらないけどな)
黒い長針の形が変わり、白い炎を刃に灯す刀となる。
くべる薪は、決まっている。
それはあの水色のエネルギー。名はアルバガス。
非常に高い効率で燃焼される魔法のガスかつ、今回の厄災だ。
白い炎と水色のエネルギーが衝突すると、白炎がそれを燃やし始めた。
その隙に雷の剣を投擲。
ぎりぎりで反応されてしまい、エネルギーを放出しなくなった盾に阻まれる。
しかし、その剣が放つ黒雲は防げない。
不可避の雷が再び彼女を襲う。
「くっ」
彼女が悶えている隙にワープで移動し、剣をキャッチしてそのまま振り下ろそうとしたが、彼女はすぐにバックステップでそれを回避した。
さらに回避した先で武装が再び姿を変える。
『ザンバラ・ロット』
手に持つのは長い三節根。両端にはエネルギーではなく武装から展開された銀色に光る刃がある。
彼女はその棒の端を指でつまんで持ち、剣の間合いの外から攻撃してきた。
(これに間に合うのか!)
この攻撃は体捌きでは回避不可能。
そう感じた俺はすぐ目の前に穴を出現させてそこに飛び込むことで回避した。
そして現れるのは40m離れた先。
(近距離だと少々分が悪いか。ならば、遠距離で仕留める)
「狂い遊星」
背後に三つの穴を顕現させると、それぞれの穴から銃剣付きの銃型自立操縦ドローンが現れた。
『ハートバイト』
その間に彼女は武装を大弓に変更させていた。
水色の弦が張っており、さらに彼女の手には水色の矢が握られている。
「
俺はすぐに、アルバガス焼却する炎を纏った槍を複数顕現させて打ち出した。
ドローンによる銃弾の斉射と槍の投擲、それらが彼女に着弾する前に、矢は放たれる。
驚くべきはその矢の速度だった。
その矢は物理的に不可解な軌道を描きながら、彼女に向かって飛んで行く全ての障害を叩き落した上で、俺の心臓めがけて飛んで行った。
その無駄のある軌道と竜神との戦闘経験があったからこそ、俺はその矢の異常性を察知し長針で弾くことで防御することが出来た。
(なるほど、燃やし尽くすより早く叩き落したということか!)
防御を終えた上であの矢の考察を済ませる。
「厄介だなぁ!」
その速度は竜神の全速に匹敵する。
追撃が来ないところから、あの弓の弱点は連発が不可能なのだろう。
ならば、いくらでも対抗できる。
「レッド・バルチャー・パルチザン!」
俺はすぐに彼女の辺りに穴を出現させて、そこから赤い光線を発射した。
他の武装と比べれば威力も速度もお粗末。ただ、彼女を防戦に回すことが出来る。
俺の強みは攻撃の手段と密度。それはこの世界でも変わらない。
防戦に回った敵に更に多数の手段を叩き込んで彼女を無力化しよう。
そのように、作戦を立てて再び彼女と戦おうと飛び出そうとした、その瞬間、白炎の矢が俺たちのずっと上を飛んで行った。勿論、それは俺ではなくウリエルが放ったものだ。
そして彼女の攻撃が意味することとは────
(第三者の介入!)
俺はすぐに穴に入ってレッド・バルチャーに対応している彼女から距離を取り安全を確保したら、白炎が放たれた方向を凝視した。
「あっぶねぇな!ヘルメットが燃えちまったじゃねぇか!」
そこから現れたのは戦闘機乗りが着用しそうなパイロットスーツを着た、黒髪でワイルドなセンターパートの男だ。身長と手足が長く、その目つきは鷹のように鋭く悪い。
「……ああ、そこの女がソフィア・ムーラシか!……ん、着ぐるみ着てないのか?まぁ、いいか」
彼はその場を見渡して俺が相手をしていた女性を見ると、名前らしきものを呼びながら指を差している。どうやら彼は彼女を探していたようだ。
「タッパとケツとムネがでかい女は大好きだぜ!」
さらに大声で彼女の容姿を誉め始めた。
俺の世界では問題になりそうな物言いで。
「な、な…………誰なんだ。何なんだお前はァ!」
それに対して彼女は少し顔を赤くしてから、0.1秒で怒り満面の顔となって怒鳴っていた。
この章は全て書き終わってますので……!
チェックしていただけると……!
お気に入り、感想、評価、お待ちしています!!!!!