【完結】スカー・リバイバー『世界渡り』による救世活動に関する報告   作:新川翔

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「誰って分かるだろ『ホークス』ファースト、リーパー・ジョーカーだ。知ってるだろ?情報がどっかから漏れてたらしいからな。さって、そこのお前とお嬢ちゃんは誰だ?」

 

 男はそっけない顔で自身の正体を明かした。

 

「え……」

 

 明かされた正体に対して、彼女は唖然としている。

 

「んだよ。別に良いだろ?あ、なんだって?」

 

 そんな彼女など気も知らず、男は耳に手を当て、声を上げ始めた。どうやら誰かと通信をしているようだ。

 

「切り替えますよ!」

 

 言動からして奴は俺の敵であり、他にも仲間がいる可能性が高い。

 もし仲間がいるのならすぐに見つけなければならない。こんな不確定要素を残したまま戦えない。すぐに呆然としている彼女へ呼びかけて現状の把握を催促する。

 

 今は本来、仲間である者たち同士で戦っている場合ではない。

 

「あ、ああ!分かった!」

 

 彼女はすぐに反応してくれた。どうやら俺が敵であるという認識が薄れているらしい。ここで俺たちは一時的かつ薄い共闘関係となる。ただ背中を預けることは出来ない。まだまだ信頼は足りない。ならばここで信頼関係を構築する一手を打つ。

 

「ファーストは頼みます!」

 

 そう叫び、俺は穴に飛び込んだ。

 もしここに仲間がいるのなら、今すぐに見つけ出して攻撃する。それが最も彼女から信頼を得られる手段だ。

 

「他にいるんですか⁉」

 

 彼女が疑問を投げかけている頃には、クレーターの上空から辺りを見下ろしていた。

 今は彼女の問いに自信をもって回答することは出来ない。だから、その問いには返さない。

 行動でこれに返答するとしよう。

 

あんなこと(・・・・・)もできるのかぁ?────おっとぉ!」

 

 急に空に飛んだ俺を見て驚いている『ホークス』ファーストに女性の大弓による一撃が飛んできたが、イナバウアーのように上半身を大きく逸らして回避した。

 

(初見じゃないにしろ。アレを見切る実力者!)

 

 奴の放った言葉から、奴が俺たちの戦いを見ていたことが分かる。ある程度手札は割れていると見ていい。

 

「そんなことより、…………見つけた」

 

(ウリエル、やるぞ)

 

 テレパシーでウリエルに合図を行い、俺は俺の仕事を行う。

 俺の目線の先には岩陰に隠れている男女3名がいた。これといった特徴のない普通の青年、腰には刀。赤のショートヘアの女、刀とアサルトライフルを持っている。そしてもう一人、身長と黒髪が長い……細身の男、腰には身の丈以上に長い太刀を佩いている。

 

「捕捉された!」

 

 ロケットペンダントを首から下げた何の変哲もない普通の青年────いや、瞳の奥に漆黒の炎を宿した男が、俺に捕捉されたことに気づいて戦闘態勢に入った。

 

 俺を見上げる奴らの背後とウリエルの目の前に穴を出現させ、ウリエルが白い炎を放射。さらに、奴らの上空から赤い光線の雨を降らせるが、それら全ての攻撃が回避されてしまっている。

 

(彼らも精鋭だな。最低でも皇帝の配下くらいの実力はある)

 

 光線の雨により生まれた土煙から現れたのは長髪の男だった。奴のすぐ隣に出現して長針を振りかぶる。

 対して奴は黄色の太刀を抜き、その長針を受け止めた。

 

「美しいというよりは、無駄のない太刀筋だな。非常に無機質だ」

 

「人の一挙手一投足を品定めするな。気持ち悪い」

 

 奴の言葉を返すと俺に向かって一直線に黄色の刀が滑る。これは目つきの悪い男のものだ。バックステップで回避をしながらその男の得物が何なのかを観察する。形としては一般的な刀と変わらない。刀身は長髪の男同様、黄色いものとなっている。

 

 速度は早め。ただ、竜神未満。しかし脅威だ。

 

「早いな」

 

「それが取り得なもんで」

 

 特筆して注意すべきは彼ら個人の技能ではない。この者たちのチームワークである。

 またバックステップで攻撃を回避していた俺に対して、アサルトライフルの弾の雨が降り注がれている。

 その雨に対しては穴を前方に開けて回避して、次の手を打つための準備をする。

 

「ウリエル!」

 

 連携には連携で対応する。大声でウリエルを呼ぶと、彼女は俺の後方から翼を生やしてこちらに飛んできている。長針を掲げながら彼女の元に走っていくと、彼女は俺の意図を理解したのか、右手に白い炎を出現させた。

 それを確認したら、すぐに長針を地面に突き刺して振り返る。この間にもあの足の速い男は俺の命を断ち切るためにこちらに向かってきていた。

 長針の柄の部分は分裂させて短剣に変形させて応対する。

 

 奴の刀による剣戟を、俺は最小限の動きで防いでいく。そして俺と刀の男の戦いに参戦しようと、長髪の男はこちらに走ってきていた。赤いショートヘアの女は薄い笑みを浮かべながら俺たちに銃口を向けている。引き金は引かずに、いつでも撃てるというポーズを取るだけで俺の警戒を少しでもそちらに向けさせているのだろう。

 

(竜神との戦いで速い敵との戦闘に慣れておいてよかった。拮抗するくらいなら苦じゃない)

 

 そして攻防の間にウリエルが準備を完了させる。

 俺が先ほど地に突き刺した千変万化の長針は、姿を葉のない針葉樹のようなものに変えていた。そして、その枝葉にウリエルが白い炎を灯している。

 炎が樹全体を燃やした瞬間、枝たちが彼らの敵に向かって飛んで行った。

 

「ユウタ!」

 

「言われなくとも!」

 

 長髪の男が青年に呼びかけると、奴は俺との剣戟を強制的に終えて、長髪の男を抱えて赤髪の女性の方へ戻っていった。

 

「うふふふふふ!」

 

 彼らの一時撤退を確認した赤髪の女は、マシンガンを掃射することである程度枝を打ち落とし、残りの危害のある枝は青年が叩き落している。

 

「それでは……参ろうか!」

 

 対して長髪の男は鞘に太刀を収め、腰を低く落としていた。

 それは、明らかに抜刀術の構えだ。

 

「来るよ!」

 

 響くウリエルへの呼びかけ。

 

 放たれるのは目にも留まらぬ抜刀術。

 俺と彼らの距離、50メートルを優に埋める一撃。

 奴は太刀の刀身を伸ばすことで、その刃を俺の首に届かせようとしていた。

 

 しかし、速度はそれ程早くない。対応は可能だ。

 

 長針で上手く受け止めてその斬撃を回避。しかし、防御の隙に付け込むように青年が再び攻撃してくる。その攻撃に対してはウリエルが白炎の弓矢を射ることで青年の移動ルートを制限していた。

行動の制限により青年の行動を読みやすくなったので、短剣を長針に変形させて奴の刀を避けながら武器を振るって攻撃する。

 

(なるほど、瞬発力が高いということか)

 

 剣戟を通して俺は青年についての分析を行っていた。

 

(その速さは足が起因か。瞬発力で圧倒するタイプだな。なら、足元を狙う)

 

「レッド・バルチャー・パルチザン」

 

 刀を受けながら音声認識で赤い光線を降らせる。

 狙いは青年の足元。

 

 奴はこの攻撃に上に跳ねることで回避した。

 

 そこに、山を裂く刀剣がたった一人の人間を仕留めるために抜刀される。

 

「破山刀 隆起」

 

 被害を出す攻撃は出来ない。それは攻撃の余波で厄災を呼び起こしてしまうから。つまり、厄災を呼びこさない攻撃を行えば、それらの攻撃を行うことが出来る。

 

 

 条件は整った。灰の平地に剣山が顕現する。

 

 

 飛び上がった奴に対して左手を突き出し、足元から穴を出現させて、破山刀を展開。

 今まで出してこなかった手の内、その切り札に青年は驚愕していた。

 

 反応することもできずに、山を裂く一撃をその身に受け止めてしまう。

 

「ぐおおおおおおおお!」

 

 叫びをあげながら青年は吹き飛んで行った。

 どうやら生きているようだ。

 

 防御している刀が壊れる前に、破山刀を踏み台にしてジャンプすることで回避したらしい。だが、彼への一撃はホークスとやらに対して大きな衝撃を与えたようだ。

 

「総員!撤退!」

 

 大地より現れた巨大な刀を見て、ソフィアという女性と戦っているファーストとやらが大声をあげて退却を指示した。その呼び声を聞いた彼らはその判断を受け入れ、すぐさま足元に灰色の球体を投げた。

地面に叩きつけられた球体からは灰色の煙が出現している。

 

「逃がすか‼」

 

 俺はその煙に赤い光線を放ったが、手ごたえはない。

 どうやら逃げられてしまったようだ。

 

(相手にはワープのような力を使えるのか?戦闘中に使わなかったってことは、緊急脱出用のものか)

 

(ウリエル、これ以上の深追いはしないでおこう)

 

 目の前で起きたことはすぐに把握できたので、すぐにその技術の性質を考察しながら、ウリエルに今後の方針を提案することにした。

 

(そうだね。先ずは現地の方々としっかり足並みを揃えよう)

 

 俺たちの目的は奴らの殲滅ではない。

 当初の目的である『厄災への対処』のために、俺たちはソフィアと呼ばれたこの星に住んでいると思われる彼女の方へ向かった。

 

 ホークスのファーストとやらが登場するまではこちらに敵意を向けていた彼女だが、今はその感情を向けていない。

 

「どうも、俺たちが敵でないこと、お分かりいただけましたでしょうか」

 

「…………すいませんでした!」

 

「殿~!大丈夫でござるか⁉ホークスが攻め入ったと……!」

 

 そこに1人の道着に袴、ガスマスクを付けたちょんまげ男が走って現れた。

 その男はまるで時代劇の登場人物のような口調で喋っていおり、俺たちを視界に入れた途端、警戒度を上げて、とんでもない速度で俺たちの前に移動し、その手に持つ槍の水色の刃先を俺に向けている。その速度は先ほどの青年と同じ程度だった。

 

「イエモン!この方々は味方だ。どうか敵意を向けないでくれ」

 

 殺意を向けるイエモンと呼ばれた男をソフィアは制止する。

 

「本当でござるか……?」

 

「本当だ。先ほどホークスの奴らと戦ってくださった」

 

「えっと、多次元宇宙安全保障理事会です。先遣隊の者がアポを取っていたはずなんですが」

 

 ウリエルは俺たちの立場を明らかにしながら、理事会がしていたはずの約束を確認する。

 

「ふむ。某は剣客故、そういった話は聞いておらぬ。そちらのソフィア様の方が詳しいと思うが……」

 

 話を振られたソフィアは赤面をしながら右手で顔を隠している。

 

「…………それのことについても謝っておきたい。私は勘違いをしてしまった。その、理事会は一時間後に来るものだと思い込んでいて……それに大気圏外から謎の物体の突入を確認して、それにホークスが来るという情報もあったので……情けないことに勘違いをしてしまいました。本当に、申し訳ない」

 

 そう言って彼女は背筋を伸ばし90度まで深々と頭を下げた。

 

「そういうことですね。いや、その勘違いは仕方のないことですから……頭を上げてください」

 

「そうですよ。そのくらいじゃ理事会は縁を切りませんよ」

 

 俺とウリエルは特に気にしていないことを伝えるが、彼女が頭を上げることはない。

 

「いえ、そういう訳には!大切な方々なのにこのような非礼をし働いてしまうのは、あってはならないことです!」

 

「やめるでござる。ソフィア様。一国のトップがこうも易々と頭を下げ続けてはいかん。当目はメンツ、というものを保たねばならぬ!」

 

 そこにイエモンと呼ばれた侍のような者が忠告に入る。

 

「そんなことはいい!まずは!誠意を!示すべきだろう!」

 

 しかし、彼女は忠告に聞く耳を持たない。

 

「ああもう、まったく殿は……!」

 

 そこで彼は彼女の頭を鷲掴みにして上げさせようと試みたが、彼女の力は非常に強くビクともしない。

 

「理事会の方々、お恥ずかしいことではあるが、我が主の頭を上げさせるのを手伝っていただけないだろうか。この通り、びくともしない」

 

 その様子を見ていた俺たちに、彼は協力を求めた。

 

「……ウリエル、やろうか。イーブンで話し合いしたいし」

 

「そうだね」

 

「「「せーのっ、ぐぐぐぐぐぐぐぐ」」」

 

(俺たち……何をやっているんだ?)

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