【完結】スカー・リバイバー『世界渡り』による救世活動に関する報告   作:新川翔

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作戦会議

「それではこれより、ミィーティングを開始する」

 

 ルーシの上空、宇宙と空の狭間に浮かぶ宇宙船にて、ホークスが全員集まり目下にある星を襲撃する計画を立てていた。

 

 

 会議の進行役を務めているのは、ファースト『リーパー・ジョーカー』。後方にあるモニターを操作できるリモコンを握り、不敵な笑みを浮かべている。

 

 

 そして彼以外のオペレーターを含めた8名のメンバーが、彼の話をそれぞれの態度で聞いている。また、彼らは円卓に12時の方向にいるファーストを起点として、番号順で時計回りに座っていた。

 

 

 セカンド勝気で筋肉質な女『クイーン・ロイヤル』は足を組み、ファーストの話を訝しみながら聞いている。

 

 

 寡黙でボロボロな制服を着崩して、さらにカウボーイハットを被っている男、サード『ジャック・フラッシュ』は足を机の上に放り出している。帽子を深くかぶっているので表情は伺えない。

 

 

 ホークスの制服を襟袖正して着用している、一見何の変哲もなさそうな青年、フォース『ユウタ・フルハウス』は背筋を伸ばして椅子に座り、真剣な眼差しでリーパーの話を聞いている。

 

 

 謝ってばかりで長身、さらに髪が非常に長くて陰気な女、フィフス『レイズ・ベター』は姿勢正しく着席しているものの、ぶつぶつと俯きながら何か呟いている。リーパーの言葉が耳に届いているかどうかは彼女自身にしか分からない。

 

 

 今朝、先遣隊としてフォース、『ユウタ』とセブンズ、『チェック』と共にクロノたちと交戦した、スレンダーで不気味な笑顔を浮かべ、余裕のある振る舞いをする女性、シックスズ『スリー・トゥース』はこの場でも微笑を浮かべながら腕を組んでリーパーを見つめている。

 

 

 先遣隊としてルーシに降りた、美意識の高く、長身の男、セブンス『チェック・コレクト』は髪を一つにまとめて、何か考え事をするように手に顎を乗せてこの会議に参加している。

 

 

 金髪のオールバック、鋭い目つきで何人たりとも近寄らせない威圧感を放つ大柄な男、エイズ『フォールド・フロップ』は、椅子には座っているものの、大きく足を広げ貧乏ゆすりをしている。一応、リーパーの話には耳を傾けているようだ。

 

 

 そしてオペレーターは、熱心にミーティングの開始を宣言したリーパーと、態度の悪いフォールドに挟まれながらも、何一つ顔は変えずにタブレットを右へ左へとスワイプしている。

 

「俺たちの目的はルーシの占領。もしくはアルバガスのサンプル略奪だ。そのために必要なのは、敵戦力の殲滅。そこで最大の障害となるのが、この二人だ」

 

 ご機嫌そうにモニターを指さすリーパー。そこには戦闘中に撮影されたクロノとウリエルが映された。

 

「こいつらの正体に色々と調べてみたが結局は不明だった。男は自由自在にワープの穴を使い、女は通常の炎とは性質が異なる『白い炎』を扱う。今朝の戦闘ではフォース(ユウタ)シックスズ(スリー)セブンズ(チェック)の連携に拮抗し、さらにユウタを殺しかけた。かーなーり、警戒すべき敵だ。本来ならこの仕事は、ソフィアとイエモンを俺たちで袋叩きにすれば終わったんだがな!面倒なことになっちまった!」

 

「で、どうするんだ、タイチョ?」

 

 彼らが新たに対峙することになった敵について解説していると、サードのジャックが作戦を早く言うよう催促した。

 

「俺たちは2方から攻める。チーム分けは俺とそれ以外だ。あの二人は……お前たちに任せた。お前たちがこの二人を対処するんだ」

 

 リーパーが告げた大胆な作戦に彼以外が驚いた。

 多少緩かった作戦室の空気が引き締まる。

 

「そりゃあ、イかした作戦だ」

 

 その大胆な作戦を聞いたジャックはニヤリと笑う。

 

「セカンドからエイズの全員でその男女を叩けってことか?」

 

 セカンド、クイーンの彼女にとって想定していなかった回答だ。だから、信じられないものを確認するように問うていた。

 

「ああ、その通りだぜ。相手は未知の強敵達。ギリギリの戦いを楽しみたいのは分かるが、ここは安全策を取る。理由を説明するために、まずはこの戦いでの前提を共有するぞ」

 

 そこで彼の背後のモニターには、横にズバッと二色に塗り分けられた三角形が表示された。線で分けられた三角形の上側にはリーパー、ソフィア、クロノがおり、その下側にはそれ以外のホークスとルーシ側の人間たちのデフォルメ化された絵が記されている。

 

「俺の見立てだと、この状況下で強者側の人間は俺、ソフィア、ワープ男の3人。そして弱者側はお前たちと白い炎使い、サムライって感じだな。それぞれのグループの中でのランキングは設定できるが今はいい」

 

(くそっ、まだ俺は弱い…!)

 

 その言葉を聞いたフォース、ユウタは誰にも察せられぬように、拳を机の下に隠しながら強く握り、自身の実力不足の悔しがっていた。

 

 彼は、まだ超えたい相手の背中ばかり眺めている事実に直面している。

 

「で、一見、強者が少ない俺たちが不利に見えるが、そうじゃない。なんでったって上と下、これらに絶望的な力の差はないからな」

 

「すいません。質問よろしいでしょうか……?」

 

 すると、申し訳なさそうにフィフスのレイズ・ベターが手を挙げた。

 

「ああ、いいぞ」

 

「ありがとうございます。すいません。それでも、イレギュラーたちに私たちが総出で叩く必要はあるのでしょうか?なんていうか……みんなでめちゃくちゃにするメリットが考えられないというか……邪魔なサムライをハチの巣にしてからでも遅くないかと」

 

「必要性はある。かなりな。ここで俺たちが知っておくべき優位な点を発表しよう。それは────。『数でこっちは勝っている』ってことだ。俺たちはこの長所を相手に押し付けることで、最悪を回避する」

 

「なァに、ソフィアは俺に任せてくれ。今朝の戦いで理解した。専用機(・・・)を引っ張り出せば、奴を倒せる。侍もひと捻りだ。そう、元々この仕事はこちらが過剰戦力。だからこそ、正体不明の輩たちには最大限の警戒する余裕はある。別に俺と俺以外に戦力を分けても問題ないワケだ」

 

「おい。分断する前提で戦っているが、そんなことできるのか?相手は移動系の力を使うんだろう?それにどうしてお前がソフィアを相手できると判断できる?その根拠を説明しろ」

 

 サード、ジャックは『相手が二手に分かれるということ』と『対戦相手が決まっていること』を前提に話が進められていることに違和感を覚えていた。

 

「『俺と俺以外という極端なチーム編成』をしたからだ。まず、俺たちが避けるべきことはなんだと思う?オペ子ォ!」

 

 するとリーパーは突然オペレーターに指を差して話を振った。

 

「……ソフィアとワープ男を合流させることですか?」

 

 彼女はびっくりしてから、タブレットから目を離して少し考えてから直感で答えた。

 

「正解!それだとかなり対処が難しくなる。あのレベルの実力者2人が連携でもしちまったら、こちらの戦力が端からぷちり、ぷちりと潰されて、しまいには全滅しちまう。これが最悪の状況だ。だから、強者2人が離れて戦う環境を作り出さなきゃならねぇ」

 

「中途半端な戦力じゃダメだ。侍と白い炎が抑えている間に強者2人が担当を終えて戻ってくる。脅威となる戦力として数えさせるなら、セカンドからエイズの圧力が必要だ。何としてでも、あの2人を分けさせるぞ」

 

「で、俺の質問の答えは?」

 

「分かってるぜジャック。お前の質問の答えとしては、『担当を決めて戦力を分断せざるを得ない状況にするから大丈夫』だ。分断する状況については説明したな。それから『勝手に相手が決まる理由』だが、それは簡単だ。ソフィア、サムライ、炎使いではホークス7人の連携を捌ききれない。バトルスタイル的にな。だが、ワープ使いなら話は別だ。奴は強力な攻撃を面で実行できる。だからこそ、奴はお前たちと相対せざるを得ない」

 

「そうか、説明できるならもう、何も言わないさ」

 

 答えを聞いたジャックは、顔は見せないが納得したようで、それ以上言い返すことはなかった。

 

「そういえば、同等の実力者とプラスαはお前が倒すということだが、美しい自負だな。必ず果たせよ」

 

 セブンス、チェックは主にソフィアを担当する役割を持つリーパーに圧をかけていた。もし彼が失敗すれば手負いとはいえ、この星を守り続けた女傑が正体不明の強敵と合流してしまうのだ。そうなってしまえば、ホークスの全滅は免れないと彼は考えていた。

 

「安心しとけ。俺ならソフィアとサムライ、炎使いが来ても倒せる。……さて、異論あるやつ、いるか?」

 

 その部屋にいる全員が、リーダーであるリーパーの目を見て黙る。彼が立てた二手に別れる作戦、そして彼がソフィアと残りのメンバーがクロノと戦うことを、この場にいる全員が納得したようだ。

 

「よぉし!異論なし!こっから考えるべきは正体不明のこいつらの殺し方だ。誰か、案持ってる奴いるか?」

 

「俺がやります」

 

 そこに、すっ、ユウタが手を挙げた。

 

「ほう、宣言するなら策があるんだろうな?言ってみろ」

 

 リーパーは期待の眼差しを向けながら、彼に発言を許可する。

 

「ワープ使いの脅威は正体不明の手札だ。どれ程の手段をどれだけ持っているのか、こっちは分からない。考慮したって無駄だ。あっちは常識の外にいるんだからな。だからそれを、俺の速度で封じる。強みを十全に発揮させないように立ち回るんだ。今朝斬り合った時に分かった。アイツは俺の速度を超えることはできない。俺メインでホークスのみんなで立ち回れば、なんとかなる」

 

「確かにそりゃあ、いい案だ。妹のためにも頑張れよ。……そんで、他にあるか?」

 

 リーパーが更なる意見を募ると、ジャックが帽子を被り直してからゆらりと手を挙げた。

 

「そこの小童が色々言っているが、それだけじゃ足りねぇ、と俺は考える。どうせこいつのことだ。速度以外は何も勝ててはいないんだろ?なら、俺の早撃ちが役に立つ。俺も前線を張ろう。奴の余裕を削る」

 

「そこの自意識過剰の馬鹿だけでも物足りない。奴の手札を封じればいいんだろう?ならば私の剛腕を役立てる時だ」

 

 さらにそこにクイーンもメインでの参戦を強く表明した。

 固まりかけたクロノへの作戦、その中で1人の男が新たな一石を投じた。

 

「俺としては、穴野郎の話はいい。それで白い炎を使う奴はどうするんだ?まさか、放置するワケネェだろ?」

 

 議題を投じたのはエイズ、フォールド。足の揺れをさらにひどくしながら要注意人物ではない存在についての議題を提示した。

 

「そこまで警戒する必要、あるのかしら?あの子は臨機応変に、乱入してきたところを人数の有利で叩くってことでいいんじゃない、って私思うわ。あの子は私たちと同じくらいの実力なんでしょう?なら、2対1でも相当厳しいはず。基本的には遠くで炎の援護くらいしかできることがないんじゃないかしら?サムライも同じ。もしその2人が一緒に来ても、残りメンバーの数と連携の有利ですぐに勝てると思う」

 

 彼に反論したのはシックスズのスリー・トゥース。彼女の意見に他の者たちは同意したようで、そこから特に会話が発展するようなことはなかった。

 

「…すいません。それなら私がその炎かサムライに対処します。脇役は脇役らしくサポートに徹します…すいません…」

 

「それではワタシもレイズと同じポジションでいよう。美しくサポートしてやる」

 

 するとレイズとチェックがウリエルとイエモンが来た際の迎撃係として立候補した。それに対して、この場の誰もそれに反対することはなかった。

 

「……オレは好き勝手やる」

 

「私も気ままに援護させてもらうわ。この作戦、イレギュラーが起こりそうだし」

 

 そして役割の決まっていない残りの2人、スリーとフォールドはポジションフリーとして足りない局面に力添えをするつもりのようだ。

 

「フォールド、拗ねたのか?サボるなよ」

 

 呆れているような表情のフォールドを見たリーパーは、冗談混じりに忠告を告げる。

 

「……」

 

 対して彼は目を背けたまま何も答えない。

 

「はい、それじゃぁ。解散だ。作戦決行は明日の7時から。早く準備してよく寝ろよ」

 

「「「「「「「「ラジャー」」」」」」」

 

 

 

 

 

 作戦は順調に決まり、各自、部屋に戻って行った。

 ただ1人、リーパー・ジョーカーは椅子の背もたれに身を任せながら口を開く。

 

「話は聞いてたか。今回の雇い主さんよ。俺たちはこうするぜ」

 

「ああ、十分だ」

 

 すると、モニターから老人の渋い声が聞こえた。

 その声は苛立ちと焦りで構成されている。




「ああ、そうだ。それじゃあな。…………。切れたな。よし!さってと、前金前金!」

 リーパー・ジョーカーは雇い主の老人との通話を終えた途端、ポケットから携帯端末を取り出した。

「おぉ!」

 そこには思わず涎が垂れてしまうほどの大金が振り込まれたことが表示されていた。

「打ち上げはたっけぇ焼き肉屋だな……!」
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