【完結】スカー・リバイバー『世界渡り』による救世活動に関する報告   作:新川翔

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何度だって君に会いたい
厄災大戦 序章


「あーもしもし。クロノ、聞こえているか?」

 

 目の前の画面には俺を生み出した男と女の映像が流れている。

 ここは神野研究所。つまり、俺の故郷だ。

 

 

 ここで、俺は神になる。

 

 

 というと、語弊があるな。厄災を粉砕できる理不尽な力を手に入れるために、俺はここに来た。連れはいない、何故なら断ったからだ。というのも、ここは一人で来るべき場所であると考えたからだ。これは俺にとっての成人式だ。部外者は立ち会わないで欲しかった。

 

 

 

 ここには、本来の俺の力が眠っている。

 俺は『神にも迫る人間』をコンセプトに作られた人造人間だ。だがしかし、本来の神がかった性能は搭載されていない。何故なら、破壊衝動と言う欠陥を抱えて生まれてしまった。そのためにその力の実装が先送りにされてしまった。そして教育により衝動を抑えようとしていた最中に、この研究所は襲撃を受け、俺は逃げ出し、その力を得られる機会は失われていた。

 

 しかし、今の俺には力が必要だ。この前の大陸を消し飛ばす大爆発だって、俺の性能を最大限引き出すことが出来れば対処できたはずだ。だから、この施設のどこかにあるはずの、俺の本来の力を引き出す技術を探す必要がある。

 

 衝動の問題は解決済みだ。ストッパーは用意してある。

 最初に手を出したのは俺の両親のパソコン。

 パスワードは10年以上前から変わってなかった。

 

 手当たり次第にパソコン中のデータを探し回った。『力』だとか、『クロノ』だとか、思いつくワードを総当たりで俺本来の力を無心で探した。

 そして、いくつものデータを見た後に、正解を引き当てた。タイトルは『クロノプログラム 成長したクロノへ』とある。この『クロノプログラム』とは俺を作り上げる計画のことだ。小さい頃、何も知らずに生きていた俺に正体をカミングアウトした際に、この計画を伝えられた。

 クリックしてみると動画が表示されて今に至る。

 

「このファイルを開いているってことは、この先の本来の力について得ようってことだろう。つまりは、破壊衝動についても知っているわけだ。おい、しっかり伝えたんだろうな。未来の俺!」

 

 明るく細身でメガネの男は俺の理論を作った男、つまりは俺の父が、カメラの先にいる息子に向かって話しかけていた。そしてその言動は彼らがまだ生きていることを想定しているものだ。

 

 彼らはもう、死んでいる。とある襲撃者のせいで。

 

「別に嫌ってことじゃないの。それにこれを開いているなら、開く資格があるってことだし」

 

 髪で両目が隠れたロングヘアーの女は俺という生物を作り上げた俺の母だ。彼女は慌てて補足をした。

 彼らの楽しそうな様子を見て、嫌な思い出には蓋をしておこうという気分になる。

 

「まぁ、いい。だから、これから語ることは衝動を抑える方法じゃない。ただの、祝福だ」

 

「せーの」

 

「「おめでとう」」

 

 父の合図に合わせて彼らは俺の道程を誉めてくれた。

 

 

 思わず頬が緩む。

 

 

 彼らは俺の歩む道を祝福してくれている。

 

 

「以上だ。ああ、そう。ついで本来の力を取り戻すにやり方だが、簡単だ。薬を飲めばいい。ほら、おもちゃ箱。覚えているか?あそこの床下にある赤い錠剤を飲めば、お前の力は完成する。それじゃあな。愛してるよ」

 

「私も愛してる」

 

 父が本来の力を取り戻す方法を教え、母と共に愛を伝えることでビデオは終わった。

 

「照れるじゃないか……」

 

 誰もいない廃墟で、にやけながら呟く。

 

「誰も呼ばなくて良かったな」

 

 今の顔は誰にも見られたくない。

 

「さてと、行こうか」

 

 残骸をゆっくりと進んで俺の部屋がった場所に向かう。理事会の調査があったとはいえ、彼らはここを荒らしたりするようなことはしなかった。だから、目に映る光景は壊されたあの時の情景とほぼ一緒だ。

 

(俺の家を壊したクソ野郎は一体どこで何をしているんだろうな……?)

 

 

 と少し想像したところで考えるのをやめた。なんだって、それは無駄なことだから。

 

 

 そんなコト(復讐)をしたところで彼らは喜ばないし、そもそも俺のやりたいことじゃない。

 

「おお、これか」

 

 丁度おもちゃ箱が保管されていた場所の瓦礫をどけると、地下に繋がる小さな扉のようなものがあった。そこをゆっくり開けると、灰の被った箱に、赤い錠剤と嚥下しやすくするためのゼリーが置いてあった。

 

「ゼリーは……舐めてるでしょ」

 

 などと呆れながら赤い錠剤を手に取る。

 この錠剤を飲めば、俺は神に近づける。最高だ。

 

「んっ……うっ……!」

 

 錠剤を呑み込んだ瞬間、脳みそが弾けた。中から溢れるのは感じたこともない違和感だ。訳の分からないものの奔流が、数秒間脳内を駆け巡って────

 

 

 

 すっきりした。

 

 

 

 何事もなかったように体の調子は凪いでいく。そして残るのは、微かな高揚感。

 

「これが、力、なのか」

 

 今の俺にできること、その幅広さに感激さえ覚えた。まさかこれほどの力を与える予定だったのか。

 

「最高だ……これなら、世界を救える……!」

 

 全能感に足元だけ浸りながら、あとは希望に胸をときめかせて、穴を開けて理事会の世界へ戻る。

 いざ、俺の向かうべき世界へ。

 

 

 

 

 

 

 数日後、頼まれた世界の問題を解決した俺は、次の世界へと立ち寄った。

 その世界では生きとし生ける全ての者に役割が決められている。

 広がるのは暗い世界。しかし、とても賑やかだ。人々は役割を果たすために全力を賭して生きている。

 鮮やかな電気の光が都市を包み込む。その世界には太陽がない。けれど光はある。赤くて、青くて黄色く白い、数々の暖かな光が町を照らしているのだ。

 

「ここが輪廻都市、ルクリだよ」

 

 その街を一望できる丘の上に俺とウリエルは立っていた。

 

「それであそこが、女王がいる場所だな」

 

 都市の中央にある墓標のようにそびえ立つ巨大な四角柱。そこにこの都市を統べる役割を与えられた女王がいる。この世界を救う上で重要な協力者だ。良好な関係を維持するためにもお目通りをすることは必要不可欠だろう。

 

「そうだね。謁見の時間まであと少しだけど、どうする?もう行く?」

 

「まず、挨拶しなきゃな。今回の仕事仲間に」

 

 だがしかし、その前に挨拶をすべき人達がいる。

 俺は彼らと会うために、目の前に穴を開けた。

 

 

 

 

 

「来たね。問題児」

 

 俺を迎えるのは4人の強者。

 この星を救うために集められた理事会の最高戦力だ。

 まずは多次元宇宙安全保障理事会の長、カバナキ・タケルは俺たちを呼びながら手を振っていた。

 

「お疲レ 大変だっタネ。ウリエル」

 

 そして長い緑髪の天使、メデュエルは俺の隣にいる天使を労っていた。

 

「……強化されているな」

 

 俺に対して2時の方向にいる、長身で眼鏡をかけており、釣り目、表情は真顔で掴み所のないオーラを放つガブリエルが腕を組んで独り言をつぶやいている。

 

「…………」

 

 そして最後に、防国の乙女、ソフィア・ムラーシが何も言わず、俺の方へ向いて小さく手を振っていた。

 

 彼女は今、俺たちに協力してもらっている。というのも、理事会は俺がムラ―シを救った後、彼女に対して理事会に協力してもらうよう、猛アタックをしたのだ。俺と張り合えるレベルの実力者をこのまま見逃したくはなかったのだろう。故郷の防衛と支援を条件とした取引を双方合意の上で行っていた。今の彼女は理事会で装備を新調することで、探査軍と戦っていた頃と比べてより高い次元での戦闘が出来るようになっている。

 

「遅れてすいません。少し、頼まれごとをしていました」

 

「十分な体力は残しているか?いいか、僕たちには優先順位がある」

 

 ガブリエルは謝った俺を冷静に追求する。黒と灰のチェック柄の高そうな質感のスーツの上に白衣を着用している彼は、カツカツと黒い靴の音を鳴らしながらこちらへ歩いて来ていた。

 

「もちろんです。しっかり、ポテンシャルの全てを出し切れますよ……なんだ。ニンゲン、俺を試しているのか?」

 

 もちろんあの世界で手は抜いていない。だが、あの世界は俺が労力をかけるまでもなく問題は解決できたのだ。俺の所感だが、あの星には魔法の資源なんてものは必要なかった。

 

「……そうだ。僕は科学者で技術者。未知のモノは解き明かして理論を作ってそれを広める性質の人間だ。僕の関わっていない世界渡り、その本質を試さずとしてなんとする?」

 

 男は尋常ではない威圧感をかけながら俺の目の前、1メートルの地点で止まった。

 

「ガブリエル、本名はラズ・ライトさんでしたっけ。情報は渡しましたよね?それでは不満足だと?」

 

 ウリエルは俺と彼の一触即発の雰囲気を浴びて冷汗を流していた。

 

(クロノ、本来の力を得てからちょっとキャラ変わったな……。ストッパーとしてしっかり見ておかないと)

 

「不満足も不満足。大不満足だ。君は元の力を得てからサンプル(・・・・)としてはほぼ別物になっている」

 

 まるで他人をモノとして扱う言動はとある人間へ怒りを買う。

 

「……以前から思っていたが、貴方の言葉は嫌なものが多い」

 

 ソフィアは失礼な物言いをするラズに対して言葉で嫌悪感を示している。彼女にとっては何度目かのモノ扱い、それが恩人に対するのであったからか、内側でため込んでいたの不快感は一気に滲み始めている。

 

「おーい。ラズ、語弊があるみたいだけど」

 

 これ以上、この場の空気を悪化させる訳にはいかないと考えたタケルは眼鏡の男を制止する。

 

「語弊?そんなものはないですよ、理事長。僕はかなりポジティブ(・・・・・)な意味で言っている────つもりだったのだが、どうやら語弊があった、ようですね」

 

 理事長の言葉によって辺りを俯瞰したラズは、自身の引き起こした事態を把握し始めた。

 

「ウン、これ以上は喋らない方ガいいネ!」

 

 さらにメデュエルはウリエルの前で彼女を守るように立っている。

 

「……いや、そうはいかないぞ。メデュエル。彼は最高の……研究対象だ。僕なんかより価値がある。語り合い、情報を得て、今後の世界渡りの技術をより発展させなければならない。その開発者としての責務だ」

 

 彼の選んだ言葉は、選んだにしては高圧的なものになっている。

 

 理事会の異なる世界を渡る技術を生み出した男は、専門家としての欲を丸出しにしている。その熱が収まり切れないことを予見した俺はとある提案をすることにした。

 

「分かりました。謁見が終わり次第、俺の底を見せましょう。ただ、観測するのは貴方だ。貴方が俺と戦い。調べてください」

 

 この提案をした理由は二つ。一つ目は彼の願望を叶えるため。二つ目は俺とは(・・・)違う世界渡り(・・・・・・)の底を知るためだ。

 

「面白い。いや、最高だ。ありがとう」

 

 ラズは俺の提案を、目を見開いて開いて快く受け入れた。

 

「はい、話はまとまったね。そろそろ謁見の時間だ。謁見の間にワープで行くと、先方を驚かせてしまうから、ワープは城内まででよろしく。場所は……そこ出て右手にある階段を登ればいい。くれぐれも失礼のないように。何せ、この星のシステムそのものだ」

 

 話がまとまり安心したタケルは話題を転換して俺に謁見を果たすように勧めてきた。

 

「分かりました。ありがとうございます。それじゃあ、後で戦いましょう」

 

「ああ、魅せてくれよ。君の全てを」

 

 扉代わりのカーテンのような靄から、約束を強調して出ていく俺を、科学者は好機の目で送り出した。

 

 

 

 

(びっくりした‥‥…ラズさん、ぐいぐい来てたね。珍しい)

 

 扉から出て少し歩いて、大きな階段の手前辺りに到着すると、ウリエルがテレパシーを用いて話しかけてきた。俺たちは秘密裏の会話を続けながら階段を登っていく。

 

(普段はもう少し静かな人なのか?前、俺の力を検査した時はあんな感じだったけど)

 

(静かってよりは上の空かな?いつも別のことを考えながら日常生活を送ってる人だから、話は通じるけどどこか心ここにあらずって感じなんだよね)

 

 この場所は明るい古びた城、という印象だ。照明は十分な程室内を照らし、丁寧な清掃がされているためか、廊下には一つのゴミもないが、辺りの壁は石造りで所々にひびが入っていて年季を感じさせられる。

 

「クロノ・ノーデンス、ウリエルだな」

 

 踊り場を超え、さらに階段を進んでいくと、正面に、大きなこの世界の扉が見えてくる。その扉は中世の城のような木製のものではない。青く光る光の靄だ。それはカーテンのように揺らめいて廊下と部屋を区切っている。そして、もやの前には木こりのつかうようなサイズの斧を携えた老人が、厳かなオーラを纏いながら俺たちに話しかけてきた。

 

「はい。はじめまして。クロノ・ノーデンスです。将帥のジェネラロさんですね」

 

「ああ、女王陛下はこの先でお待ちだ。通れ」

 

 事前に渡されていたこの世界の資料によると、この扉はバリアや結界と表現するのが分かりやすい。許可した者だけを通し、それ以外のものは拒む仕様になっている。

 将帥から許可を得た俺たちは、するりとカーテンを抜けて、この国の女王の部屋に入った。

 

 玉座の間には椅子に座る女性で『女王』という役割を負ったトリノと、お世話係で侍女、銀髪ボブカットのサーベ、一人のフルフェイスの甲冑を装着した女王の近衛兵長セルサの3名がいる。

 

 この3人の情報は全て資料にあった。

 

 女王の座る椅子は王の座る玉座と言うよりは、実験の被験者が座る椅子に似ている。何故なら、彼女の首には椅子に繋がる首枷があるからだ。そして椅子の後ろには何やら文字が刻まれた四角柱の石碑があり、そこから椅子に何十、何百ものコードが伸びている。

 

 薄い桃色で長い髪で、女性らしさ全快の姿で、見る者の心を安らげる優しい顔立ちの女王は、一歩ずつ歩く俺たちに微笑みを向けていた。

 

(そういえば、礼儀作法はこちらのものでいいんだよな……。そして、女王にはある能力(・・・・)がある)

 

 さらに資料にあったことを思い出す。ここで間違ったことをしてしまったら理事会との信頼関係に傷が入るなんてこと、あってはならない。礼儀作法と相手の特長はしっかりと念頭に置いておこう。

 

((まずは……!))

 

 俺とウリエルは跪き、礼を示そうとした。

 

「ああ!跪かないでください!」

 

 すると、女王は椅子から立ち上がって俺たちを制止する。まるで王にはあるまじき慌てぶりで、彼女は更にふさわしくない言葉を口にした。

 

「ぎゅーってさせてください!」

 

 

 

「「?」」

 

 

 




お久しぶりです。

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