【完結】スカー・リバイバー『世界渡り』による救世活動に関する報告   作:新川翔

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厄災大戦第二戦 女王出陣

『悪いな。お前たち。俺も出陣だ。ついでに女王陛下』

 

 俺は穴を開けて、最前線であるカタヴァルス出現場所に降り立った。

 

『ああ、少しの遅刻なら気にしな……おい。陛下もここに来るのか?』

 

 厄災達を砕いているマイケルは俺の言動に驚いていた。どうやら、女王が出陣するとはいえここに来るとは思いもしなかったらしい。

 

『はい。本来はクロノ、マイケル、アレクサンドル3名が本体を持ってきて私が封印するという手筈でしたが、私も戦って直接魂を書き換えます。その方が犠牲者をより少なくできますから』

 

 肉体が朽ち果てたり粉々になってしまうと魂の改造による治療もできなくなる。そのような人間が一人も出ないとは限らない。彼女はそれを嫌がっている。

 

『任務変更かな?構わない。取り敢えず目の前の化け物どもを、殺せれば!』

 

 厄災を屠り続けるアレクサンドルは申し出にすぐに順応した。

 

『だそうです。理事長。いかがですか?』

 

 念のため理事長にも許可を取っておく。

 

『ははは!いいよ!そっちの方が早く終わりそうだ。次の厄災もあることだし、とっとと終わらせてくれ!』

 

『了解!』

 

 同意が取れた俺はすぐに最前線に繋がる穴を開いた。

 

「ジェネラロ、サーベ。力を貸して!」

 

「「承知!」」

 

 自身と石碑を接続しながら部下を呼ぶ女王の呼び声に呼応した二人は彼女の傍に立つ。

 彼女が彼らに触れると、将帥は槍へと侍女は盾へと姿を変えた。

 

「行ってきます。いい子で待っててね」

 

 接続を解き、女王は穴の前に立つ。

 

「行ってらっしゃい。早く帰ってきてくださいよ」

 

「もちろん」

 

 留守番をする近衛兵長に笑顔を見せて、彼はそれに複雑な笑顔で返していた。

 

「行くぞ!」

 

 役割を果たさんとする二人は戦場へと飛び込んでいった。

 

 

 

 

 

『理事会全員に伝達!これより、女王陛下カチコミによるカタヴァルス速攻殲滅作戦を実行する!援護に回れるものはすぐに回れ!空いた穴は私が何とかしよう!』

 

 理事長の通信が入る。それはやや劣勢の均衡状態を崩すための一矢が放たれることの予告だった。

 

『行ってきなさい!』

 

「カタヴァルスを封印したのは横道、と呼ばれる洞窟の中です。場所は────」

 

 上空、最前線の真上から降下する。

 

 目標はカタヴァルスの本体。

 

「厄災発生地点の真下!」

 

 俺はそこに向けて穴を穿つ。

 

「対国エンジェル・アンカー全弾発射!」

 

 冷却を終えた9本の誅罰の杭は厄災を貫きながら、横道に突き刺さりより大きな穴を穿つ。

 これで横穴の中腹までのショートカットができた。

 そのまま穴を使って杭の先まで到着する。

 そしてそこには二人の仲間がいた。

 

「遅刻!奢れよ!」

 

「遅れは働きで取り戻せ!」

 

 マイケルは丁度いい位置取りにより、杭から丁度いいくらいのダメージを受けていた。

 アレクサンドルは吸血鬼の権能により霧化することで杭の攻撃を無効化していた。

 厄災が蠢く敵地にて三人の男が女王を囲んで背中を合わせる。

 辺りには蠢くカニ型の厄災達。

 

 

「バスターウェアウルフ・リベンジ!!」

「煙倶利伽羅 灰太刀 双刀」

「ダーティ・デッド・モンスター!」

 

 

 狼は本領を発揮し、続く神は厄災を焼き殺すために二刀を携え、最後に化け物狩りは借り受けた因子を解放して姿を闘争に特化させた。

 

 

「潰す」

「斬る」

「死ね」

 

 

 それぞれが能力を発動させて稲妻のように走り、厄災を殲滅させていく。

 女王は俺たちの後ろを確実について来ている。

 

『ギャァァぁぁァ!!!!!!!!!』

 

 少し奥から巨大な咆哮が轟く。すぐさま音のする方向を目視で確認すると、そこには巨大な頭だけ深海ザメと挿げ替えたような巨大な犬のような化け物がいた。

 横穴が崩壊するくらいの爆音を撒き散らした後、厄災は俺たちに向かって駆けてくる。

 

「邪魔だ」

 

 しかし、その化け物は道半ばで分解されてしまう。

 ラズ・ライトが既にその場所に到着していたのだ。彼は奴の頭を掴んで分析・解体を瞬時に行い、ついでに辺りの化け物さえ分解し始めた。

 

「しかしこのままではまずいぞ!敵の数が多すぎる。最奥に辿り着けるのは僕くらいになってしまう!」

 

 彼は辺りの敵を分解しながら現状に対する推測を語っていた。

 厄災の分裂と進化の速度が早まっている。物量の圧力のせいで中腹からほとんど進めていない。今すぐにでも勝負を決めないとこの星が厄災まみれになる。俺たちは生き残れるだろうが、ルクリの民たちの滅びは確実となってしまう。

 

「ラズさん?陛下だけ連れて行けるか?」

 

「出来るが、身の安全は保障できない!あそこが一番勢いがあるからな!」

 

『このままじゃジリ貧だね。なら、僕の出番だ。みんな、これから厄災を一度全滅(・・)させる。その隙に最奥部に行くんだ!』

 

 俺の提案をラズが断ったその時、理事長が大きな声でとんでもないことを言い出した。

 

 

 

 

「さて、ここまで飛ばしてくれてありがとうソフィア。そろそろ降下するよ」

 

『どうぞ、私は一旦整備に入った後、武装を変更しますので』

 

「分かったよ」

 

 カバナキは地上の戦況を一望できるほどの上空を漂ってミサイルを吐き出し続けているクリーニアの上に乗っていた。

 

「五重葬。御魂(みたま)は静かに。お手を拝借」

 

 クリーニアの肩から、ふんわりとカバナキは落下する。

 

(しの)ぶ皆は頭を垂れて、弔う私は言葉を囁く」

 

 滅ぼす敵は視界に入れて。

 

空空(くうくう)寂寂(じゃくじゃく)、生者の間にて死者の門を開きましょう」

 

 一匹漏らさず滅ぼすために。

 

霊葬(れいそう) 異界参詣(いかいさんけい)朽果(くちはて)あぜ道」

 

 彼はこの戦いにおける一度きりの大技を放った。

 この技は指定した生物を問答無用で殺す道を作り出す。

 黒い道を踏んでしまった生物に対して絶対殺害権を獲得、行使して、そのまま地面から呪いを流すこむことで屠る、カバナキの大権能。

 

 

 

 これで地上に溢れる1千万の厄災は死に絶えた。

 

 

 

『今のうちに一か所に固まれ!カタヴァルスはカウンターの進化をする。その前に本体へたどり着くんだ!』

 

 死者の道は横道にも届き、本体までの厄災を道が開けた。望遠機能で目的である本体が見える。

 話に合った通り、カタヴァルスの本体はどくどくと蠢く紫色の肉塊だ。

 びちゃり、と洞窟の奥で捨てられているそれは触手のように肉を伸ばして新たな生命を作り上げている。

 

 作り上げられた化け物は四体。どれも、ニンゲンのような二つの腕を有した二足歩行ではあるがそれは正確な表現は適切ではない。頭は深海ザメ、体は甲殻類、腕には禍々しい鋏、足は狼、まさにキメラだ。

 

(事前情報にあった通り、本体は生物じゃないな)

 

 黒い道の攻撃が効かなかったコトで一つ、敵の特長が分かった。

 

「分かっている!合わせろお前ら!」

 

 だが、悠長に分析などをしている暇はない。

 既に厄災は絶滅に対するカウンターの進化と分裂を行っている。

 瞬きをするよりも早く、肉は本体を覆っており、触れることは出来なくなった。

 ただ、俺たちと奴の間で道は出来た。

 

「煙倶利伽羅灰立槍 突撃式」

 

 白炎の槍を作り出す。

 形は巨大に、ジェットは大きく。

 

「飛んでけぇ!!!」

 

 すぐにマイケルが槍を掴んで本体へと投擲した。

 

「ナイスピッチだ。流石アメリカ人!」

 

 その間にアレクサンドロスは俺の穴で本体のすぐ隣へ移動して槍を掴む。

 

「苦しめぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

 そして怪物規模の力で本体を守る肉壁へと槍を突き刺した。

 白い炎はアレクサンドルが肉壁の一部を採取することで条件を満たし、厄災を守る壁を薪にして燃え盛っている。

 

「ギャァグバァ!」

 

 本体の危機を察知し、すぐさま最初に分裂した四体がアレクサンドルへと襲い掛かる。

 

「五月蠅い。計算の邪魔だ」

 

 その四体全てをラズは分解した。

 しかし、それでは終わらない。厄災はたった今死を超克した。

 死して尚、粉々になって尚、厄災は進化を遂げる。

 

「まさか、死なずに進化するのか!?」

 

 ついにカタヴァルスは分子レベルへの分解へ適応した。

 彼と同等の緻密さによる再構成(・・・)により分解を無効化する。

 攻撃手段を失った科学者へ化け物の凶刃が迫る。

 

「任された!」

 

 それを阻むのはミカエルの因子を受け継ぐ狼。

 マイケルは攻撃を受け止め力に変えて、化け物一体を横道の中腹まで殴り飛ばした。

 

「頼んだぞ。ミカエル!」

 

 ラズは振り返り肉壁の対処へ向かう。

 

 

 

 残りの3体はどうしたのだろう。

 

 

 

 答えは簡単。

 女王が触れることで、護衛の3体は魂を『二度と動けない魂』へと改変したのだ。

 奴らは攻撃直前のモーションで固まって動けなくなっている。

 

「拘束しました。監視お願いします!私は、この壁を改変します!」

 

「マイケル了解!」

 

 女王はカタルヴァスの前にまで移動し、そのポジションにはマイケルが入る。

 吹き飛ばされた1体、動けなくなった3体。

 完全に防御に徹するカタヴァルス。

 

 これは厄災を討伐する絶好のチャンスだ。

 

 トリノは肉壁に触れて魂の改変を開始する。

 

「すいません。時間かかります!」

 

 肉壁は何百もの層になっていて、柔らかいものへと魂を改変したとしても次々と新しい壁が生成されていく。

 

 だからこそ、魂の改変以外のアプローチで壁を破る必要がある。

 

「失礼します!」

 

 ウリエルが穴を通して再び戦場に現れた。俺は彼女と厄災を挟むように立ち、同時に肉壁を殴る。

 

「「ライトニング・ウリエル、最大出力!」」

 

 このまま、攻撃を畳みかける。

 まだ、この炎は適応されていない。

 ならば、進化が来る前に有効活用する。

 

「おいおい、動き出しているぞ!」

 

 その時、マイケルが信じられない事実を報告し始めた。

 なんと、3匹の化け物どもは魂の改変に適応し始めていた。

 

(なるほど。危険度で順序づけて一つずつ進化しているな)

 

 カタヴァルスの進化の条件を分析しながら、次の策を考える。

 

「間に合っターーーーーーー!!!!!!」

 

 怪物2匹は蹴り飛ばされた。

 人造天使メデュエルが遅れて参戦したのだ。

 

「二ヒキ任せテ!」

 

 彼女は魂の改変に適応した2体と戦い始める。

 勝負は互角。崩すこともなければ、崩されることもない。

 もう一匹の適応した化け物に対してはマイケルが対応する。

 

 先ほどマイケルが吹き飛ばした一体が戻るまでがタイムリミットだ。

 その間にこの肉壁を破壊してカタヴァルス本体の魂を改変する。

 

「穴が開くぞ。女王陛下!」

 

 最大火力で焼き続けると、やがて壁は薄くなり、攻撃一つで破けるほどになった。

 

「随分と、長かったね」

 

 女王は一言呟いてから足元に突き刺していた槍を振りかぶって───。

 振り下ろす。

 

 ぐちゃり、と音を立てて肉壁に壁が開いた。

 すぐに穴に手を突っ込み、忌まわしき厄災の本体に触れた。

 

 

 

 

 どうして、一時封印という手段を取ったのか。

 

 

 

 それは私に覚悟がなかったから。

 敵を倒していいのかという覚悟が足りなかった。

 

「敵は、倒す!」

 

 本体に触れる。

 粘っこい液が気持ち悪い。ただ、そんなことを考えている間に魂の形を変える。

 今度は進化などできないように念入りに形を変えてしまおう。

 

 今は違う。覚悟はできた。ただ、見守るだけじゃない。私は守護者だ。あの子たちを守らなければならない。

 

 そうして、第2の厄災カタヴァルスはゼリー状に崩れ去った。

 

「女王である私が宣言します。第二の厄災カタヴァルス、討伐完了です」

 

 

 

 

 

『ブーーーーー!!!!!』

 

 横道の外でカタヴァルスの殲滅を確認したソフィアの下に、クリーニアからの警報が入る。この音は厄災レーダーのものだ。

 

『レーダーに反応アリ。第3の厄災出現を確認』

 

 画面に表示される『3rd Disaster』の文字。

 

 彼女はレーダーに促されるまま、遥かな暗い宙を見る。

 

『なるほど、最後の厄災は、確かに超惑星級ですね』

 

 カメラで拡大し鮮明な状況を把握したあと、まだ横道にいる主戦力に向けて通信を繋げた。

 

『こちらソフィア、次の厄災は巨大隕石です』

 

「そうか、隕石、隕石か……」

 

 報告を受けたラズは言葉を反芻しながら笑っていた。

 

「なるほど簡単だな」

 

 続けてこのようなことを宣う。

 

「不謹慎ですけどね」

 

 俺は苦笑いをしながらそ、彼の意見に同意する。

 恐ろしいほど固い上に絶大な破壊力を誇るワイバーン、無限に進化、増殖を繰り返す化け物。それに比べたらただの隕石など容易く対処できる。

 

「粉微塵に壊せばいいんだでしょう?俺とソフィアが砕きます。ラズさんは破片の分解をお願いします」

 

「それじゃあ、俺たちは、万が一のための防衛ラインを張っておこう。いいかアレクサンドル?」

「ああ」

 

 マイケル達も一息ついてから、余裕の笑みさえ浮かべながら次の戦いに臨もうとしていた。

 

「まず、全員を横道の入り口へ送ります。陛下はそこからさらに玉座の間まで移動する、ということでよろしいですか」

 

「はい、お願いします」

 

 そして、横道に移動した直後、隕石は巨大な風の弾丸に貫かれた。

 

「!?」

 

 見間違えるはずもない。これはウラガノの能力。だが、奴は既に死んでいるはずだ。

 再現?蘇生?今起きていることの原因が分からない。理解できない。

 

『こちらソフィア、ウラガノの亡骸が、動き始めています』

 

 丁度その時、ソフィアが状況を報告してくれた。

 原理はこの際どうでもいい。

 

 

 ウラガノが蘇ったのなら───

 

 

『クロノ!俺が来たら陛下、俺、君で玉座の間へ!』

 

 さらに、今度はカバナキからの通信が入る。

 

『何を言って……、了解!』

 

 あえて俺は悩まずに彼の指示に従うことにした。

 この焦り具合と指示の具体性から、彼はこの事態の輪郭を俺よりも把握していているかもしれないと考えた。

 

『ラズ、隕石の後処理は頼んだ!』

 

 着地して、クレーターを作りながら指示を出す理事長に、女王陛下と共に駆け寄っていく。

 

「それでは移動します!」

 

 

 

 

 

 そして玉座の間に戻ると、目の前には───────────────

 

 

 

 

 

 

「やはりそうか……」

 

 言葉が出ない。あの時以来だ。思考が真っ黒に染まったのは。

 

 どうやら、理事長は1人で勝手に納得していた。

 

「セルサ……なの?」

 

 トリノは何とかその男のことが何者なのかを考えようとしていた。

 

 俺にとって、奴は、

 

 

 

 

 

 

 見覚えのある─────どころじゃない。

 

 

 

 

 

 

 あの光景はいつになっても焦げ付いて離れない。

 

(こいつが、関係しているのか?どうして……?いや、そんなことは考えなくていい。こんな奴(・・・・)が関与しているのなら──────────)

 

 各々の反応をセルサだった男はまじまじと見つめている。

 

「サタナエル!」

「どうして!?」

「殺してやる……!」

 

 

 一斉に各々男へと感情を突き立てる。

 黒服はずっと前に呑み込んだ覚悟を吐き出し

 女王は困惑を投げかけ

 人造神は殺意を投射した。

 

 

 

 

 

 どうして、俺の家族を殺した男がここにいる?

 

 

 

 





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