【完結】スカー・リバイバー『世界渡り』による救世活動に関する報告   作:新川翔

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スカー・リバイバー ③

 理事長がサタナエルの戦いにラズたちが合流したその頃、俺とウリエルは理事会で世界の再構成が行われている場所を探していた。

 世界の改造がどのような反応でキャッチできるか分からない以上、理事会のあらゆる設備と俺の能力を使って総当たりで調べるしかない。

 

「再構成はいわば魂の改造によって行われる」

 

 探索を行いながら、現状とすべきことをウリエルと確認する。

 

「えっと、トリノさんがしているような改造を全世界に対して行う、っていうことなんだよね」

 

 彼女もパソコンのモニターの前で改造の予兆を確認しながら話をしてくれている。

 

「その通り。奴の野望は人一人を生き返らせるだけには留まらない。前回と同じコンセプトで今回の作戦を行っているのなら、その後も彼女が生き続けられるように、世界の法則さえ塗り替えるつもりだろう」

 

 だけど彼は失敗した。理事長がやらかしたのか、それともサタナエルが一枚上手だったのか。そんなことは考えなくていい。今すべきことは奴の企みを阻止することだ。

 

「魂の改造をするには3つの工程が必要だ。まず、魂を知覚すること、2つ目に目指すべきものを考えること。これらは奴の頭の中に既にある。どうやっても防げない。だから対処すべきなのは3つ目の工程。全世界に対する改造だ。これが不可逆でないことの根拠は二つ。未来の見えるサタナエルがこちらと戦って時間稼ぎをしていること。これは嫌がらせの可能性も排除できなくないが、理事長と戦うデメリットや性格から考えると可能性はかなり低い。つまり、奴はこの改造を妨害されたくないんだ」

 

「根拠二つ目、改造の際には魂が変化する過程がある。俺の傷の治療の時にも瞬時に治るんじゃなくて、肉体が変化する過程があった。過程があるなら変化の起点があるはずだし、ストップできる可能性がある。もし、止められなくても、奴の手段をもう一度元の姿へ改造し直すことは確実に可能だ。これはトリノが部下にやってたことだしな」

 

「なんであれ、改造をどうやっているのかを知る必要があるね。早く探さないと」

 

「反応を見せたサタナエルは理事長たちが対処してくれている。早く……よし見つけた」

 

 会話をしている最中、存在自体が変わり始めている世界を発見した。

 

「行くぞ!」

 

 ついに予兆を見つけた俺はそこに座標を定めて穴を開けた。

 俺たちは戸惑わずにすぐさま飛び込む。

 いざ、戦地へ。

 

 

 俺は深く思考せずに降り立った。

 

 

 

 

 その世界では空が割れていた。

 

 改造が始まった世界では世界が流転している。

 地面は白く、茶色で、黒い。

 地面のまだら模様が刻一刻と変化している。

 頭上に広がる空はグラデーションがかかっており、明るい青から黒へと徐々に変化している。

 

「待ってたよ。そのルートか」

 

 そこに、マスケット銃を持つサタナエルが立っていた。

 銃には古風な彫刻が施されており、その先には銃剣が備えられている。

 

(その言動、未来が読めているのか?)

 

「クローンだな」

 

 サタナエルがここにいることについて、俺はさほど驚かなかった。

 これまでで知った奴の情報から、奴が俺たちの及ばない技術力を持っていることは分かっていた。

 だがしかし、奴の言動には引っかかる部分があった。

 奴は理事長と戦ったサタナエルと同じように未来を読むことが出来る、のかもしれない。

 クローン人間にも因子を宿せるのか、そもそも因子はコピーできるのか。

 一応、相手は未来視が出来ると仮定して動くことにしよう。

 

「それにしても、ウリエルの紛い物まで来るとはな?この戦いについてこられるのか?」

 

 サタナエルは俺の隣に立つウリエルに向けて明らかな敵意と銃口を向けている。

 

(ウリエル、世界の改造はここが起点だ。俺が足止めしている間にどうやって行われているのか調べてくれ)

 

(もちろん)

 

 そんな奴は無視してウリエルに指示を出した。

 改造がこの世界から始まっていることは分かっている。

 後はどうやって行っているのかを知り、対策を打たなければならない。

 

「お前のことはどうでもいい。大事なのは、お前だ」

 

 勝手に話を進めているサタナエルは銃口を俺に向けなおす。

 

(まずい)

 

「レッドバルチャー・パルチザン!」

 

 奴の注目が俺に移った瞬間、攻撃に入った。奴は未来を読めるのなら、喋らせてはならない。俺自身が揺らぐ可能性だってある。

 

 奴に放たれた赤い光線の雨。

 しかし、全てそれらは奴の穴(・・・)によって避けられてしまった。

 

「エンジェルアンカー!対国、九連発射!」

 

 このサタナエルも俺と同じ世界渡りが出来るらしい。

 それさえ頭に入れればいい。

 

 驚くな。

 ビビるな。

 後手に回るな。

 

 しかし奴は、次々と放つ杭を奴は世界渡りさえも使わずするりと通り抜けて。

 

「提案をしよう」

 

 俺の目の前に立っていた。

 

 

 

 

「次に作る世界にお前の要望も入れてやる」

 

 

 

 

 

「………!」

 

 それは予想外で、甘美で、魅力的な提案だ。

 つまり、それは俺が、欲しかった日常を、手に入れ、られるかもしれない、ということだ。

 

(いやまさか、そんなことが、いや理論上可能だ。今の俺が迷っている時点で奴はその先の未来を観測している。サンプルは十分にある、ということだ。あれ、だとすると……) 

 

「クロノ!」

 

「偽物は黙ってろ!」

 

 ウリエルが白い炎を伸ばそうとすると奴は彼女ごと白い炎を別の世界へ飛ばしてしまった。

 生きているかどうか、は分からない。もう、テレパシーが繋がる場所にはいない。

 

「家族を失ってからの人生。悲しかったよな。辛かったよな。苦しかったよな。そして、また会いたいよな……?」

 

 そんなことよりも、いや、そんなことで切り捨てられるものでは……

 

 

 でも……そんなifを現実にできるのなら……!

 

 

 俺は迷ってしまっている。

 

 冷静になればなるほど分かる。

 この提案にデメリットはない。

 

 そもそも世界の改造を否定する根拠が俺にはあるのだろうか。

 今のところ、サタナエルの改造によって失われる命はない。

 

 だが、この提案は断らなければならない。

 

 そのはずだ。だって、だって────。

 

 

 

 ……

 

 

 

 ………………

 

 

 

 

 ………………………

 

 

 

 

 ああそうか。

 理由はあった。

 

「待て、なんで、お前がそんなことを言っているんだ?お前は俺の家族を殺した加害者だろ?そんな言葉信用できると思うか?」

 

 とりあえず、即興で言葉を用意する。

 

「いいや違う。俺たちは被害者だからだ」

 

「……」

 

 俺はひとまず黙って奴の言い分を聞くことにした。

 

「この世界には、運命がある。どうして、未来を読める俺がこんなことをせざるを得ないのか。それは運命があるから。どんな力があろうとも、どんな知能があろうとも、運命のせいで不幸なことが起きてしまう」

 

 正直、俺はもうキレている。

 

「この改造で、僕は運命を殺す」

 

 サタナエルは両手を大きく広げて宣言した。

 

「あらゆる不幸を取り除く、あらゆる苦難を取り除く。魂から書き換えればそういった苦悩は全て消え去る。これで僕たちは幸せになれるはずだ。違うか?」

 

「…………お前が言うな」

 

 奴の言葉が、理性では制御できない程不快だった。

 

「お前が言うな。俺の家族を殺したお前が言うな!!」

 

 漏れた言葉は歯止めが利かない。

 その一切が怒涛の勢いで漏れていく。

 

「耳障りのいいことを言うな!!!!!舐めているのか!!!!!」

 

「そもそも、この苦しみも痛みも、全部、全部全部全部全部全部テメェのせいじゃねぇか!!!!お前がこんなことをしなかったら俺の家族は死んでねぇんだよ!!!!そんでわざわざ顔出して、傷をほじくり返して、その傷を治してやろうって、テメェは何様なんだよ!?せっかく直ってきた傷を好き勝手しやがって!!!!」

 

 感情を発露する瞬間、それは確固たる隙。

 そんな簡単なことは、分かっている。

 

「もう、俺は、受け入れたんだよ!!!」

 

 

 でも叫ぶ。

 これは己を定義するため。

 これ以上、迷わないため。

 

 

 あの人たちに会うと、きっと俺はこの意思を曲げる。

 まだ、その時じゃない。

 それは最期にすべきことだ。

 

「………だから、もういい。前へ進む。俺は、前に進めと、あの人たちに言われた。そして俺もそう願っている」

 

「本当にいいのか?それは彼らがいてもできることだろう?」

 

 左肩辺りに穴を作りそこから長針を振るいながら取り出す。

 俺の意志を問いただしたいサタナエルは攻撃せずに様子を眺めていた。

 奴の目は本気で残念がっているようなものだった。

 その同情が、本当に、心の底から、憎い。

 

「いいって言ってるだろ。聞こえなかったか?それとも、そう答える未来は見えていなかったのか?」

 

「……見えていたからこそ、さ。僕たちは手を取り合う未来があった。だが、交渉は決裂だ。本当に、残念だよ」

 

「俺は残念じゃないさ。レッドバルチャー・パルチザン!」

 

 俺の強みは手数があること。そこは変わらない。

 奴に未来視があるかどうかなんてどうでもいい。

 

 物量で押して圧殺する。

 

 四方八方から降り注ぐ雨を、サタナエルは受けとめた。

 奴は攻撃を受けるタイミングで手足に装甲を集中した、動物的な黒い鎧を身に纏った。

 未来視を持っている奴が、避けるのではなく受け止めた(・・・・・)

 

 この行動には必ず意味がある。

 

 整理しよう。

 奴は俺たちよりも技術で勝っていて、その鎧には見覚えがある。

 つまり─────

 

「まさか、ミカエルか!?」

 

 因子がもう一つ、奴には埋め込まれている。

 つまり因子の分割は奴が犯人ということか。

 

「バレたか、勘が良い!」

 

 自身の体について当てられたサタナエルは、銃を穴に収納し、獣のような体勢を取ってから俺に向かって真っすぐに飛び出してきた。

 奴の体にはミカエルの因子がある。ということは『バスター・ミカエル』も使えるだろう。つまり、生半可な攻撃では駄目だ。カウンターへのエネルギーを与えてしまう。これからは有効な攻撃を考え抜いて選ばなければならない。

 

「訳あるか!!!遊星、叩き込め!」

 

 ダメージはダメージだ。

 カウンターを恐れるな。

 手段を選べる相手じゃない。

 

 未来が読まれても、何であっても攻撃をしていく必要がある。

 三つの衛星を呼び出して奴に攻撃させる。

 弾丸のように飛ぶサタナエルはその攻撃さえ受けながら飛んできている。

 

「ライトニング・ウリエル・白煙雨」

 

 だから俺は目の前に炎の壁を作り出した。

 先ほど長針を振り払った瞬間、刃先を粉のように分解することで燃料を散布していたのだ。

 この炎の壁で視界を封じ奴に予想をさせる。

 

八重天雲(やえのあまくも)鳴神剣(なるかみのつるぎ)!」

 

 飛び込んでくる奴を迎え撃つために剣を呼び出して手に取ろうとしたその時、目の前に銃剣が飛んできた。奴は未来視で山を張って俺の位置を特定して突っ込んできたのだ。

 

 だが、反応できない訳ではない。俺はすぐに穴を開いて攻撃を回避した。

 それと同時に剣に触れて炎の壁へ赤い雷を撒き散らす。

 

 しかし、サタナエルが出てきたのは俺の背後だった。

 背後から、奴は銃剣を持ち出して俺へ突き刺そうとしていたので、すぐさま穴を開けて回避。剣を振るい赤い雷を炸裂させた。

 

 

 

 はずだった。

 

 

 

 奴は穴で移動させることで雷撃を回避していたのだ。

 

「危なかったなぁ」

 

 少し離れた場所でサタナエルが穴から飛び出した。

 

「嘘つけ」

 

 奴の嘘を指摘しながら、今のやり取りで得た情報を元に戦い方を組み立てる。

 

(穴を使った三次元戦闘なら俺の方が強い。そこは上手く利用していこう)

 

 組み終えた瞬間に、こちらから飛び出して斬りかかった。

 これより繰り広げられるのは幾重もの攻撃を読み合う、高次元の戦いだ。

 互いに相手の攻撃を穴に通して回避し、その攻撃を互いに敵に向けて、さらにそれらさえも穴に通して回避する。

 夥しい数の読み合いが短時間で行われる。

 

 一手遅れれば攻撃を受け続けてしまう、脳を焦がす三次元戦闘。

 

 戦いにおけるあらゆる要素を即座に判断して処理しなければ負ける。

 裏の裏の裏をかき続ける戦いで、俺は二刀を、奴は銃を振るっていた。

 その勝負の明暗を分けるのは、経験の差であった。

 

「くっ」

 

 攻撃が四方八方で飛び交う中、俺の蹴りが奴の隙を突いた。

 一手、上回った。

 

(今だ、仕掛けろ!)

 

 長針で斬りつけ、雷を浴びせて、苦し紛れの弾丸は避けて、さらに腹を蹴り上げる。

 打ちあがった奴に向けて、最後に対国のエンジェルアンカーを叩き込み、遥か遠くへ吹き飛ばした。

 

 奴は吹き飛ばされた後、目の前に穴が出現して傷だらけの奴が現れた。

 

(確信した)

 

 その傷はどれも致命に至るものではなかったが、確実に奴にダメージを与えている。

 その様子を見ながら俺は一つ、確信を得る。

 

(通常時は俺の方が強い)

 

 やはり、俺と奴には世界渡りの技術という大きな差がある。

 俺の世界渡りの穴を処理する力は、人造神としての本来の力を取り戻したことにより、未来を見ているだけでは対応できない程の差となっているのだ。

 

「意外と限界が多いな。未来視には」

 

「そうだな。だが、僕は耐えきった。これからだぞ。バスター・サタナエル・リベンジ!」

 

「来い!」

 

 ついにリベンジが発動した。

 ここからは奴のターンだ。

 

 奴が銃を地面に突き刺すと、漆黒の鎧が展開されて足と手に装甲が集中し、獣らしいフォルムになり、全体に血管のような赤いラインが入る。

 

(ついに来たか)

 

 後悔は殺しきれなかった0.5秒で切り捨ててこれから来る嵐に備える。

 この時間を逃げて凌ぐのは、ほぼ不可能だろう。奴には未来視がある。

 わざわざ攻撃を無駄撃ちしてくれるとは思えない。

 

 だからこちらが取るべき作戦は回避しながらの積極的な戦闘だ。

 

(来る────!)

 

 奴の飛び出した速度は先程とは別次元のものだった。

 辺りに常に穴を展開しながら飛び込んできた奴への攻撃を、穴を開けて防御しようとしたら、奴は拳を穴に通し防御していない別角度へと穴を出現させて攻撃した。

 

 背中に走る衝撃。

 反応できない。

 

 攻撃自体が早すぎる。

 

(カウンター時は奴の方が強い!)

 

 それを実感する頃には、二撃目が腹に入っている。

 ここは一旦距離を取るために穴を使って上空へ飛んだ。

 奴は翼を生やして上空へ飛び、銃を拾って、引き金を引きながら追撃してくる。

 

「遊星!俺を守れ!」

 

 衛星のうち一つは足場にしてより上空へ飛び、他二機で銃撃を浴びせる。

 しかしそれらは穴によって避けられていた。

 

「曇天響留」

 

 更に剣から雲を発生させて奴と俺の間に黒雲のバリアを敷いた。

 

「小癪だなぁ!!!」

 

 しかし、奴の勢いは衰えない。

 

「ふんっ」

 

 銃を穴にしまい、拳を振るうことで雲を晴らす。

 

煙倶利伽羅(えぶりくりから)……!」

 

 その隙に長針を槍に変え、白い炎を灯す。

 

灰立槍(はいたちのやり)!!」

 

 発射された槍は足を止めた奴の下へと、ジェットのような轟音を立てて飛んで行くった。

 

「爆ぜろ!!!!」

 

 そして穴で回避されるよりも早く、俺と奴らの間で炸裂した。

 長針は木々の枝のように姿を変形させながら、辺りへ破片を破裂させるように設定して、白い炎にはその破片全てを燃やすようにした。

 物理的と炎の壁が一面に広がっている。俺は出来るだけ落ちていく壁に近づいてから振り返り、奴の攻撃を待つ。

 

「青雷霹靂 起動!」

 

 振り返った視線の先には奴がいた。

 既に移動していたのだろう。

 奴の周囲に現れた数十の穴からは青い光線が発射されている。

 どうやら、奴の起動したものは光線を発射する兵器らしい。

 

「レッド・バルチャー!」

 

 対して俺は赤い光線を発射する。数、威力は同等。それら全ては衝突して掻き消える。

 大丈夫だ。俺は穴を使った攻撃ならしっかりと潰せる。

 残る問題は────

 

 

 フィジカルだ。

 

 

「くっ」

 

 奴は拳を振りかぶり、エネルギーの塊を射出してきた。

 大きな穴でエネルギーごと飛ばして、俺の姿が大きな穴で隠れている隙に、奴の四方八方へ数十の穴を作る。奴は視覚で物事を把握して、対象がどの未来にいるのかを知る以上、『視界を奪って』、『選択肢を迫る』。この二つを軸にララ勝手耐え凌ぐしかない。

 

 そして奴の右隣へ飛び、剣を振るった。

 

「読めているぞ」

 

 攻撃は奴の小手に防がれた。

 すぐに雷を使っても奴の動きは止まらない。

 腕を掴まれ、奴の右腕が迫る。そこにはエネルギーが込められていない。奴は穴を使うと考えているのだろう。

 

 だから敢えて穴は使わず、顔面で受け止める。

 

「捕まえた……!エンジェルアンカー」

 

 奴の右腕を掴み、杭を起動する。

 リベンジ形態で防御力が上がるわけはない。

 だから杭の攻撃力ならすぐに致命傷を与えられる。

 しかし、奴は強引に俺の腕を振り払うことで、再び腹にもう一撃入れる。

 

「がはっ!!!」

 

 奴の薄ら笑いがさらに歪む。

 望む未来に一歩近づく快感は何事にも代えがたい。

 

(まずい…………!)

 

 すぐに穴を使って抜け出さなければならない。

 だがこの距離では、間に合わない。

 部位の取捨選択をしなければ…………!

 

(これは全てのエネルギーを……!)

 

 カウンター形態の全ての力が込められた一撃が放たれる。

 俺は頭と胸の世界渡りの装置を覆うだけで精いっぱいだった。

 胸は突かれて、音を立てて壊れていく。

 

(クソっ!)

 

 何か、致命的なもの(臓物)が壊れた気がする。

 血を吐き、痛みに意識を飛ばされながら、地面に叩き落とされた。

 

(まずい。もう一度、これをされたら、俺は死ぬ)

 

 大の字になりながら死の予感は全身を駆け巡る。

 何とか息を整えて、頭上から降りてくる奴を見上げ、立ち上がるためにうつ伏せになる。

 

(もう一度、あの攻撃を喰らう前に決着を付けなければ)

 

「ここが、分水嶺だ。分かっているだろう。ルート次第だが、ウリエルがその発生源を見つけ」

 

 地面に伏せている俺に、奴は薄ら笑いを浮かべながら悠然と語り掛ける。

 

「だが、僕が勝つ。君の勝てる未来はこの手で潰す」

 

 目標達成できる目前だからか、油断しているようにも見えた。

 

「いいや、違う」

 

 奴の行動にすぐさま反応できるように、ゆっくりと立ち上がる。損傷した胴体は長針を変形させて補助させる。

 

「本当に残念だ。お前なら、お前ならこの決断を理解できるハズなのに」

 

 ボロボロになりながら立ち上がる俺を、奴は憐れむような目で見ている。

 

「俺は、もう、受け入れた。彼らは俺に残してくれた。……そして前へ進んだ。……お前はどうだ?」

 

「心外だな。僕も受け入れているよ。前に進んで、彼女を蘇らせることにした」

 

「通じないな。話が」

 

「別にいいでしょう?」

 

 思想の是非はどうでもいい。

 あるのは互いの信念だけ。

 

「そうだな。クリーニア・ブローニャ 起動」

 

 俺の背後に大きな穴を出現させると、そこから鎧が飛び出してきた。

 

 

 理事会が俺のために新たに生み出した切り札。

 対厄災 極限環境適応型外骨格 『クリーニア・ブローニャ』の試作型。

 自動で全身に装着され、目の前には鎧の情報が映し出される。

 その姿はヒトを模した真っ白なトカゲ型怪人である。

 尻尾は太く、長く、俺の身の丈以上の長さになっている。背中には六本のアルバガスの管が刺さっており、そこから青いラインが全身に走っている。その名の通りあらゆる環境に適応し厄災の殲滅を行うコンセプトのもと制作されており、如何なる状況下でも本人の実力を120%に引き上げ、さらに備え付けられたAIが脅威を自動的に認識しカウンターをする。

 

 

 さて最後に整理しよう。

 

 俺の強みはやはり世界渡りの熟練度、そして攻撃の手数と手段だ。

 未来視があっても避けきれない状況に追い込み、攻撃する。

 次に奴の手札だ。世界渡りと未来視がある以上、奴の攻撃手段は多い。だが、使えないもの(・・・・・・)はあるようだ。

 例えば理事長と戦った時に見せた、厄災が封じられた輪。そして、魂の改造。どちらも、使えれば戦いがより有利に進められたはずだ。しない理由がない。

 

『アルバガス完全燃焼開始。負荷を考慮した完全効率時間は3分です』

 

「いいだろう」

 

 リベンジ前のクールタイムで大手をかける。

 





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