その子と会ったのはきっと運命なのだろう。
わたしが日課の探検をしている日。その日は雨だったので、傘を差して散歩している時だった。隠されたようにあった秘密の洞窟、その入り口にその子はいた。
その子はポケモンだった。黄色の毛皮、尖った耳と尻尾を持つ、黄色のネズミみたいな見た目のポケモン。その特徴から、それが【ピカチュウ】だと思い至った。
わたしはポケモンが好きだ。まだオレンジアカデミーにも通っていない年だけど、いつかアカデミーで名物の宝探しをしたいと思っている。そのための勉強もたくさんしているから、そのポケモンはピカチュウだとわかったのだ。数こそ多くないが、パルデアにも生息しているポケモンだから、間違いなく野生のポケモンだろう。
その子は全身ズタボロに怪我をしていて動けない様子だった。洞窟の出入り口で雨宿りしながらも、その洞窟の奥には決して行こうとしなかった。かわいそうだと思ったわたしは、きずぐすりを使おうとピカチュウに近付いた。
気が付けば、わたしは大怪我をして転がっていた。
ポケモンのわざ、あれは【たいあたり】だったのだろうか? ただのずつきに見えた攻撃、それでわたしは真っ赤な血を吐いて、遠くまで転がった。たまたま野生の【ハピナス】が通りかからなかったら、わたしは死んでいたかもしれない。
なんだか
そんなわたしを、ピカチュウは洞窟の入り口から睨みつけるばかりだった。親切なハピナスはピカチュウも治療しようとしたけど、ピカチュウは【10まんボルト】らしき技を放って近寄らせなかった。ハピナスは困ったようにオロオロしていた。
そんなピカチュウに、わたしはもう一度近付いた。
ピカチュウは驚いて固まっていた。ハピナスは絶叫しそうなほど真っ青になっていた。
思えば、とってもバカなことをしたと思う。でもこの時のわたしは、こうすべきだと信じて疑わなかった。
「だいじょうぶだよ」
わたしは手を差し伸べた。
◆
あれから1年後、ピカチュウはわたしの家族になっていた。
「おはよう、ピカチュウ」
「ギュー」
朝、ベッドの上で擦り寄ってくるピカチュウを撫でて目を覚ます。まだ眠いのか上に乗っかってくるので、ころんと横に転がして起き上がる。
あれから1年、ずっと一緒に過ごしてきたピカチュウとはすごく仲良くなった。あの時のハピナスのおかげで怪我が治ったピカチュウだが、恐怖か寒さかで震えていて、わたしは迷わず家に連れて帰った。お母さんはそれを見て快く受け入れてくれた。感謝してもし足りない。元気になったピカチュウは、他のピカチュウとは
しかし今日はのんびり感傷にひたっている場合ではない。まだオレンジアカデミーに通っていないわたしは家のオリーブ園を手伝っている。繁忙期になると家族総出で休みなく働くが、無事に繁忙期を終えたので、しばらく自由時間をくれたのだ。
つまり探検である!
「遊びにいってきまーす!」
「ギュー!」
「気をつけなさいね〜」
動きやすい服装に着替えたわたしは、リュックを背負って家を飛び出す。まだ遠出は許されてないけど、【あの洞窟】は幸い近所にある。暇があればピカチュウと一緒に冒険している場所だ。
今日は快晴、実に探検日和な天気だ。
「今日も探検しようね、ピカチュウ!」
「ギュー!」
◆
家の近くにある裏山、そこでわたしとピカチュウは出会った。この裏山には隠されたように洞窟の入り口があり、そこにいたのがピカチュウだ。その出入り口にたどり着いたとき、見覚えのある姿を目にした。
「あ、ハピナス!」
「プ?」
洞窟の出入り口の近くでのんびり日向ぼっこしていたのは、あのときわたし達を助けてくれた野生のハピナスであった。このハピナスは洞窟周辺をナワバリとしているらしい。しょっちゅう洞窟に出入りするうちに顔見知りになっていた。
「プ!」
「大丈夫、持ってるよ!」
以前このハピナスに貰った笛を見せる。このハピナスが仲良くなった子に渡す物らしく、これを洞窟で吹けばハピナスが助けに来てくれるのだ。わたしは『ハピナスレスキュー』と呼んでいる。
代わりにわたしは、外で拾ったきのみや、洞窟の中にいっぱい落ちているキラキラしたカケラを渡すようにしている。どうやらこのハピナスはキラキラしたカケラが好きらしく、すごく喜んでくれるのだ。
◆
しばらくハピナスとお喋りしている時だった。突然、周囲にドスドスとけたたましい音が鳴り響いた。
「プー!?」
「ギュッ」
「この音、たぶんケンタロスだ!」
その予想は的中。山の斜面を駆け降りるケンタロスの群れが近くを通った。そのうちの2頭がこちらのいる場所に突っ込んできた。
「グオォォォン!」
どうやら走る先に居たので邪魔だと怒っているようだ。こちらとしてはたまったものじゃない! ここはお灸を据えて落ち着いてもらおう。
「行くよピカチュウ!」
「ギュッ!」
「ハピナスも手伝って!」
「プ!」
野生のケンタロス(通常) Lv25
野生のケンタロス(炎) Lv25
vs
ヒカルケモノ(ニックネーム:ピカチュウ) Lv83
野生のキラメクハネ Lv77
「グオォォォー!」
ケンタロス達がすさまじい勢いで突進してくる。うち一体は炎を纏っている。炎タイプのケンタロス! 珍しい!
ケンタロス → レイジングブル
ケンタロス → レイジングブル
「ピカチュウおねがい!」
「ギュッ!」
ピカチュウはその突撃を跳んで避けて、炎を纏っていない方へ尻尾を叩きつけた。
ヒカルケモノ → はたきおとす
「グオッ!?」
その衝撃でよろめき、ケンタロスが持っていたらしいきのみを叩き落とした。
「今だ! 10まんボルト!」
「ギュッギュー!」
ヒカルケモノ → スーパーセル*1
ピカチュウから無数の稲光が放たれる。それはいくらか拡散しながらもケンタロスに命中して吹き飛ばした。
「プー!」
一方、ハピナスもケンタロスの
そのまま横に投げ飛ばして、懐の玉から光線を放つ。
キラメクハネ → はかいこうせん
「グオ──!?」
炎を纏っていたケンタロスもまた光線を受けて転がっていった。
「「グオーン!」」
ケンタロス達は敵わないと悟り、群れの方へ逃げ去っていった。
これでもう襲ってくることはないだろう。
「いえーい!」
「ギュー!」
「プー!」
1人と2体でハイタッチを交わす。ハピナスは野生のポケモンだが、友達として認識してくれているのか、こうして手を貸してくれる。
それにピカチュウも、もう怯えて震えていた頃のピカチュウではない。共に過ごして勇気づけられたピカチュウは、むしろ好戦的とも言えるほどに逞しくなった。
この子は家族である上に、心強い相棒である。
「よし、改めていってきます!」
「プー!」
ハピナスの見送りと共に洞窟の中へと足を踏みいれる。
その洞窟の探検を始めてだいたい半年。わたし達はまだ洞窟の踏破に至っていない。
◆
少女が進む洞窟、そこに灯りは必要ない。
無数の発光する宝石のような結晶があるから。
少女が進む洞窟、そこに侵入者はいない。
野生のポケモン含めて、誰もが本能的に避けるから。
少女が進む洞窟、そこに住むのは無数の未知なる怪物である。
パルデアの大穴 エリアゼロ 番外地区
アンダーワールド
【例の壮大なBGM】
【ヒカルケモノ】
パラドックスポケモン
タイプ:でんき/あく
とくせい:こだいかっせい
生息地:アンダーワールド
ピカチュウによく似た謎のポケモン。原種よりモサモサしててトゲがある。
発光することで獲物を追い詰めて、痺れさせて捕らえる。より狡猾な生態を持つ。