存在しないパラドックスポケモン   作:いちごの入った大福

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No.??? ワラウミタマ

 

 

 アンダーワールド 上層部

 そこは洞窟の奥にある巨大な地下空間である。

 

 

 空間の所々にテラスタルの結晶が突き出しており、天井もいくらか穴が空いていて日光が差し込んでいる。そのためか、岩肌の他にもポツポツと緑が見当たるエリアである。

 

 

 一見美しい洞窟だが、油断してはならない。

 ここも既に怪物達の巣窟なのだから……

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 わたしのピカチュウにはトゲがある。

 

 小さな身体に飛び出た鋭いトゲは、どうやら護身用ではなく、発電機能が備えられているらしい。通常のピカチュウはほおぶくろで発電すると聞くけど、この子は違うらしい。ただ、このままでは狭い場所を通るのに邪魔になってしまう。そのためか、ピカチュウのトゲは折り畳めるようになっている。

 

「ギュッ」

「ありがとうピカチュウ!」

 

 洞窟の狭い横穴からにょっきり戻ってきたピカチュウはキラキラしたカケラをくわえていた。これは洞窟の色んなところに落ちているもので、よく分からないけど綺麗だからハピナスが集めているようなので、こうして渡すために探している。小さな横穴の奥に見えたので、ピカチュウに取って貰ったのだ。

 

「もっと先に進んでみよっか」

「ギュー」

 

 ピカチュウを撫でてから立ち上がり、道の奥を見る。あの先は確か大きめの空洞になっていたはずだ。今日はそこを調べてみようか。

 

 

 

 

 

 

『ケタケタケタケタ!』

 

 

「……ピカチュウ」

「ギュー」

 

 

 進もうとした時、突如として洞窟内に響いた敵意のある笑い声。それはこれまで幾度か聞いたことのある声だった。ピカチュウに声をかければ、分かっていると言わんばかりに身構えていた。頼もしい相棒だ。

 

 

『ケタケタケタケタ!』

 

 

 

 声は反響して、音源を捉えにくくなっている。普通に見つけ出すのは恐らく無理だろう。

 であれば、やりようはある。

 

「ピカチュウ、10まんボルト!」

「ギュ──!!」

 

 

 ヒカルケモノ → スーパーセル

 

 

 ピカチュウが周囲の四方八方に10まんボルトを放つ。

 狙いをつけずに放たれたそれは、周囲の何かに当たるわけでもなく、壁に当たって砂煙を起こしただけだった。

 

 だが、これで周囲に粉塵が舞った。

 その一部、不自然に空いた空白も見つけた。

 

『ケタケタケタケタ!』

 

「そこだ! ピカチュウ、いけー!」

「ギュー!」

 

 

 ヒカルケモノ → アイアンヘッド

 

 

『ケタ……!?』

 

 空いた空白に向けてピカチュウが思い切って頭突きを放つ。

 その一撃を受けたソレは、透明化を解いて姿を現した。

 その姿は勉強して学んだゴーストポケモンとよく似ていた。

 

 

「やっぱり、ゲンガー!」

 

『ケタケタケタケタ!』

 

 

 

 

図鑑No.??? 【ワラウミタマ】Lv72

 

 

 

 

 青紫色の霊魂のような姿、鋭い目つきとニヤついた口、トゲトゲしたシルエット。まさしくゲンガーである。手足がない球体のシルエットに見えるが、これも個性なのだろう。

 

 

『ケタケタケタケタ!』

 

 

 ワラウミタマ → シャドーボール

 

 

 高速で放たれた影の球。あれはシャドーボール、ゴーストタイプのポケモンが得意とする技だ。だがゴーストタイプの技といえど、実体がないわけではない。

 

 

「ピカチュウ、落として!」

「ギュッギュ!」

 

 

 ヒカルケモノ → はたきおとす

 

 

 ピカチュウは飛び上がって、それを尻尾で叩き落とした。地面に激突したシャドーボールが爆発して、周囲に砂煙を起こす。

 

 

「……消えた?」

「ギュ」

 

 

 砂煙が晴れた時、そこにゲンガーの姿はなかった。

 逃げた? と思ったが、ピカチュウが警戒を解いていない。わたしよりも鋭いピカチュウを信じるべきだろう。

 

 

『ケタ──!!』

 

「……!?」

 

 

 ワラウミタマ → ゴーストダイブ

 

 

 突如として背後に現れたゲンガーが襲いかかってくる! 

 

 

「ギュー!!」

『ケタ……!?』

 

 

 だが、ピカチュウは既に気が付いていた。わたしの背後に現れたゲンガーに向けて、既に尻尾を繰り出していた。

 

 

 ヒカルケモノ → はたきおとす

 

 

 不意打ちとして頭上から放たれた尻尾に叩き伏せられる。ゲンガーはわざの出先を止められて、たまらず後ろに下がっていく。

 

 

「ありがとうピカチュウ!」

「ギュー!」

 

 

 ヒカルケモノ → エレキネット

 

 

 足が止まったゲンガーに対して、ピカチュウが電気でできた網を放り投げる。普段ならば避けていたかもしれないが、畳み掛けられたゲンガーには避けられず、電気の網に捉われる。

 

 

「今だよ、10まんボルト!」

「ギュッギュ──!!」

『ケタ──!?』

 

 

 ヒカルケモノ → スーパーセル

 

 

 完全に動きを止めたゲンガーに対して必殺の10まんボルトを放つ。初手とは違って集中して放たれた電撃を耐えることができず、ゲンガーは網の中で目を回してきぜつした。

 戦闘不能である。これで懲りたらもう襲ってこないだろう。

 

 

「やった! ピカチュウ、お疲れさま」

「ギュッ!」

 

 

 わたしとピカチュウは勝利のハイタッチを交わした。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

「これに懲りたらもう襲ってこないこと」

『ケタ……』

「いいね?」

『ケタ!』

 

 勝利後、ハピナスレスキューを呼んでゲンガーを治療してもらった後、しっかりと言い含めておく。

 半ば習慣である。これを繰り返していくうちに、洞窟内で襲ってくる個体は少なくなってきた。でも、やっぱり全員にお説教は無理なのか、こうして知らずに襲ってくる子もいる。

 ちなみにハピナスを呼んだが、ハピナスは洞窟住まいなので、むしろ外よりも中の方が迅速である。

 

「プー!」

 

 ハピナスにはお代として、さっき拾ったキラキラしたカケラを渡しておいた。とても喜んでくれた。ハピナスというポケモンは、戦うのが苦手な代わりにこうして共生関係を結ぶのが得意なのかもしれない。

 

 

『ケタケタケタケタ!』

 

 

 治療とお説教を終えたゲンガーは、笑い声をあげながら何処かへ飛んで行った。ゲンガーってあんなに笑うポケモンだったのか。この洞窟以外で見たことなかったので、知らなかった。

 やっばり探検が一番の勉強である。本に書いてないことをいっぱい知ることができる。

 

「今日はもっと進もうか、ピカチュウ」

「ギュー」

 

 ハピナスに別れを告げて、再びピカチュウと洞窟の中を進むのだった。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

【ワラウミタマ】

図鑑No.??? 

パラドックスポケモン

タイプ:ゴースト/あく

とくせい:こだいかっせい

生息地:アンダーワールド

古代のポケモンが怨霊と化して生まれたゲンガーと推測されるが、真偽不明。

球体が地面から生えたような、手足のないシルエット。背中には原種よりも鋭く多いトゲが生えている。

鳴き声が常に笑っているように聞こえるが、これは周囲への威嚇行為だとされる。

 

 

 

 

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