五条悟を泣かす   作:部屋猫

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1:始まりあるいは回想

1:始まり

 

俺は、五条悟の先輩だった。

そこに至るまでに特に変なことはなかった...まあ、この世界に術式持ちとして転生した奴で原作を知っているような奴なら生まれに関係なく当たり前にしたことって意味だが。呪霊を見て、術式に気づいて、蠅頭を祓って、呪力操作をしたり、身体強化をしたり、術式を使ったり、術式の解釈を広げたり、領域展開に憧れて試行錯誤したり、反転術式を習得しようとして挫折したりして、高専からの勧誘が来た。

 

呪術界の名家でもなければ、特異体質なんかあるわけもなく、呪力特性はいたって普通で、領域展開はできなかったし、反転術式もさっぱりだった。まあ「あの」現代最強サマでも手古摺った代物だ、正直最後の奴はできると思ってなかったが。

 

2003年に高専に入学して、保守派が幅を利かせてる高専にネットなんかあるわけもないので少々どころじゃなく退屈だったし、一般家庭出身だから推薦がなかなかもらえなかったりはしたが、任務を数こなしているうちに二級にはなった。上層部は置いといて、呪術経験者から学べるというのは大きかった。式神も使えるようになったし(といっても術式由来じゃないから弱い奴だが)、シン・陰流もかじってみたし、結界術もそこそこ以上に使えるようになった。まああくまで周囲と比較してというだけで、天元とか羂索みたいなやつらとは比べるのもおこがましいレベルだったが。

 

術式は、御三家の相伝か何かというわけでもなく、まあはっきり言って原作キャラの大半に負ける性能だったけど、あるだけで違った。身体強化は割と得意だったから、補助監督になるしかなかった先輩とは違って、ちゃんと術師としてやっていけるぐらいにはなった。優しくしてくれた先輩には悪いけど、正直補助監督にならずに済みそうでほっとしてた。だって補助監督ってナレ死多そうじゃん?(偏見)百鬼夜行でミミナナに首絞められて死んだ複数のスーツ姿とかさ、ああいうのにはなりたくなかった。五条と上層部の板挟みにされるのも勘弁だ。

 

まあそんなわけで二級術師として給料をもらいつつ、色々学んで鍛錬して、さしす組が入学するのを待った。五条抜きで上層部とにらみ合い始めるとか悪夢でしかないからな。いつから羂索とつながってるかわからないし、そうでなくとも敵に回したら呪詛師認定からの秘匿死刑、ひょっとしたら公開処刑もありうるかもだ。この辺の基準は名家出身じゃないとさっぱりわからん。まあそこはどうでもいい。問題は、俺ではとても勝てない奴らが割とたくさんいるってことだった。たとえば禪院家だけでも、禪院直毘人なんかには勝てる気もしなかったし、普通にその前に炳、灯、特に強い術式じゃないからはっきり言って躯倶留隊の段階で危なかった。

 

だからあの時の俺は動くにしてもさしすが入学してから、主に「す」のメンタルケアの方向でのつもりだった。これもまあ誰もが考えることだろう。「す」が落ちなければ羂索はだいぶ困るし、人柄もまともだ。呪霊組も取り込んでしまえば50年は羂索も動けなくなるぐらいじゃないか、と思ってた。羂索が動かなければ宿儺の器は空っぽのままだし、俺が死ぬまでは安泰に暮らせそうだ、と。

 

だけどそうはならなかった。理由は簡単だ。

 

 

「こんなのが先輩?雑魚じゃん」

 

いきなり教室にやってきたかと思えば3年生全員を吹き飛ばしておいて、奴が、五条悟が、最初に言いやがった言葉がこれだ。

 

「悟、弱い者いじめはよくないよ」

 

夏油のセリフだ。お前もか。

 

「強い奴いじめる奴がどこにいるんだよ。だけどそうだね、雑魚にかけてる時間がもったいないや。行こうぜ、傑。」

 

それだけ言って、奴らは出て行った。呪力放出だけだったから、処罰はそれはそれは軽かったらしい。クソが!奴は、奴らは、俺を、「無価値」だ、と言いやがった!そりゃ「さ」や「す」みたいに強い術式を使えるわけでもなければ、「し」みたいな特異技能を持ってるわけでもないが、転生者らしく、真面目に鍛錬を積んで、懸命に工夫して、時々ヤバイ呪霊にぶち当たっても必死になって生き残ってきた俺を、こともあろうか「無価値」だ、とそう言いやがったんだ!これでようやく理解した。真の『邪悪』とはッ!他人の努力を踏みにじる者だ……!!人の積み上げてきたものを踏みにじり、平気で笑っていられる奴だ…人の努力も、知らないで!!てめーだけの都合でッ!ゆるせねえッ!奴らは俺の心を『裏切った』ッ!

 

お前らがどうなろうが知ったことか。だいぶ苦しむことになる夏油はまだいいとして、五条悟、てめえだ。宿儺に殺されて笑って死ぬとか許せねえ。

 

俺は奴らにブチ切れた。それだけだ。今から考えると高専時代の五条の性格を忘れてたのは俺が明確に悪いんだが、少なくともその時は本気でそう思ったし、今もあの時を思い出す度に怒りが湧いてくる。俺のモチベは五条を泣かすことに切り替わって、今もだ。

 

俺は、呪詛師堕ちした。

 




短かったですかね...?

あ、主人公は割と自己中のクズです。
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