詰んだ、か。
相手は俺と同じく精神干渉系の術式を使うが、一応同系統の俺がここまで気付けなかったことからわかるように、明らかに格上。
対してこっちは意識のない足手まといが三人、戦力は俺一人。
こいつらをわざわざかばってやる必要はないが、役に立てる方法もない。飛び切り強い呪具を持ってるわけでもなさそう。
役立たずは置き去りにして逃げたいところなんだが、それはできない。チームが壊滅してるから撤退してもお咎めがあるわけじゃないが、それ以前の問題だ。
術式にかかってる間に、既に、包囲されてる。二級が12体と、親玉とおぼしき一級。どいつもこいつも浮いてる。4体が前衛、8体が後衛で大体均等に囲んで、親玉は少し奥だ。いっちょ前に戦術なんか使いやがって。
「アナクオシ、ケヤブツ。サカシビイネ!」
なんかしゃべった。いや、本当に喋ってるのか?だけど喚き声って感じじゃないしなあ。とりあえず、
「日本語話しやがれ!」
襲い掛かってきた4体を「怨心通」で察知してその間を抜ける。抜けた先には後衛だった奴がいて、左腕とは不釣り合いにでかい右腕ではたこうとしてくるから、それを避けるともう一体が体当たりを仕掛けてくる。その場に伏せてやり過ごすと、陣形が元に戻ってて、初めからやり直し。
今度は初めに抜ける方向を変えたが、はたきおとしが薙ぎ払いになっただけで、むしろ悪化した。
どういうわけか、というか親玉が操ってるんだろうが、連携攻撃は卑怯だろ!一回も反撃できなかった。
「俺の拡張術式『怨心通』は、相手の敵意を察知することができる!」
「ナゴノタソ、バニ!」
何言ってるのやら。まあ、術式開示ができたのはよかった。敵の攻撃がよけやすくなったし、対してデメリットはほとんどない。日本語しゃべれない奴が1、知能が足りない奴が12、気絶してるのが2、死んだのが1。こいつらが気絶してて良かった。「怨心通」は俺の手札の中では現状最高のものだ。ばらされちゃたまらん。いや、こいつらがしっかりしてればそもそも俺はこんなに追い込まれてない。ゴミどもが。年功序列はどこ行ったんですか?あ?働けや!
グシャッ
あっ。薙ぎ払いで湯崎がつぶされた。死亡確認が楽になったな。できれば杉本とかいうゴリマッチョもよろしく。こんなの担いで移動したくない。リーダーの吉村さえ生き残ってれば俺には責任がかからないからな。
しかし、逃げるにも隙が無い。連絡用の式神一体逃がす余裕すらなさそうだ。連絡したところでこの状況が変わるか、と言われればNOなんだが。とりあえず、奥でふんぞり返ってる親玉目掛けて「飛斬」!
……なんで今取り巻きに防がせた?俺が不安定な体勢から放った「飛斬」は、一級呪霊相手に通じるような威力と速度じゃない。避けるなり、防ぐなり、なんとでもできたはずだ。何ならノーガードでも弱点に直撃さえしなければ平気だろう。なんで「怨心通」だけじゃなく肉眼でもわかるぐらい慌てた?
まさか、でも、なるほど。こうすると辻褄が合う。なーるほど、わけわからん言葉はそれかあ。ククク、ネタが割れた以上はもう怖くねえ。
「お前、術師の怨霊だろう。それも、この遺跡と同年代の、カビの生えた実に1300年も前の!」
そういうことだ。哀れにも、実に哀れにも、おそらく天元の存在すら知らないレベルの骨董品なこの元術師は、「儀式が省略できない」。後方でふんぞり返ってると見えたのは、実は儀式中で動けないから。「飛斬」が飛んできて大慌てしたのは、「儀式なしで発動する呪術」の存在すら知らないからだろう。よく見ると存在する「手」らしき部位は頑張って呪印を組み続けてるし、地面には陣が敷いてある。どんなからくりで現代まで生き残ってたかは知らんが、遺跡が発掘されたときに目覚め、調査員を襲った。言葉がわからんのも当然だ。しっかり体系化された平安時代の日本語だって現代人からしたら意味不明なんだ、それ以前の時代の田舎訛りなんかわかるわけなかろう。
ごちゃごちゃと語ったが、一番大事なのはこいつがたった今「二級呪霊を12体も従えて、戦闘は部下任せにする強キャラ」から「部下を支配するのに必死で、実は余力がほとんどないコケ脅しのキャラ」にランクダウンしたってことだ。
こうなりゃあ後は「飛斬」放つだけで追い込めるだろう、勝ったなガハハ。
まあこのままあっさり勝てるわけないので次回も戦闘です。