「んなわけねぇだろ!」
普段静かな呪術高専に、この日は罵声が響き渡った。
それが常に余裕の態度を崩さないかの「最強」のものなのだから、ますます異常さが際立っていた。
「悟、俺も……何が何だかわからんのだ」
「 っ!!」
五条悟が言いようのない怒りを抱いて歩いている。おーおー荒れてるねえ。これが「最強」かい?
「やあ五条クン、どうしたんだい?」
「……何の用だよ、雑魚が」
最強様は大変お苛立ちにあらせられるご様子。
「雑魚、とは毎度毎度ひどいなあ」
「だから何の用だって言ってんだ!」
「おっと、確かにそうだ」
いやー愉悦愉悦。人が冷静さを失ってるのはおもしれえ。
「困るなあ、と言いたかったんだ」
「は?」
「だから、困るな、と言ってるんだ。駄目じゃないか、バケモノを野放しにしちゃあ。あんなのがうろついてちゃあ、善良な術師は枕を高くして寝られやしない。さっさと始末して…うおっ」
五条が発射した呪力砲を、すんでのところで避ける。とはいっても、術式をいちいち発動しなくても感情が分かるようになってるから、実態としては割と余裕がある。呪力砲の先を見れば、校舎に大穴が空いていた。あーあ。
「今、なんつった」
「何回も言わせないでくれ。バケモノを野放しにされちゃ困る、と言ってるんだ……っと、と、と」
感情の動きを頼りにノーモーションで繰り出される無下限呪術を避ける、かわす、見切る、左、右、跳躍、伏せ、ブリッジ、回転、ちょちょちょちょちょ、「蒼」はやめろ!
「待った待った待った待った、ストッププリーズ!」
「うっせえ、黙れ」
「夏油を探す助けになってやるから!」
五条の攻撃はひとまず止んだ。……その右手に待機してる蒼いものは引っ込めてくれないのかい?
「嘘つくんじゃねえ、お前に何ができると?あいつは残穢を残しながら行動する間抜けじゃねえぞ」
「術式がちょっと特殊だからそのお目目にはわからないことだって……待ってくれ、悪かった。嘘つかないから攻撃しないで!」
黒閃を経験しても俺は「蒼」一発すら耐えられない……ああ無情。
「信用ならねえ、縛れ」
「条件:大場篤士は五条悟に嘘をつかない、五条悟は話を聞き終えるまで大場篤士を攻撃しない!これでよろしいでしょうか!」
「いいだろう」
ふう。とりあえず身の安全が確保できた。さっきはさすがに煽りすぎたか。
「さっさと話せ、下らねえ話だったら分かってんな?」
「あー、その前に」
「あ?」
怖い怖い怖いやめて!
「後ろ、後ろ」
「後ろぉ?あ、夜蛾セン」
「悟、…苛立つのはわかるが人にあたるのはやめろ。…いや、校舎にあたるのも勘弁してくれ」
「いやこれは、ああもういいや。後で来い」
「はい」
救いの神来たる。夜蛾先生に感謝。五条も時間がたてば少しは落ち着いてるだろう。