勉強についてはカット。シン・陰の師範代とか、式神使いの人や結界術がうまい人、場合によっては補助監督なんかに頭を下げまくって教わるだけだ。夜蛾先生はいい人だから無償で貸してくれたが、他の人はそうもいかない。呪術師は基本自分のできることは秘匿するからな。実際俺も術式は秘匿してる。そこで役立つのが「縛り」だ。破る奴がいない約束ってのはだいぶ信用がある。口外禁止の縛りだけで教えてくれる人もいるし、ちょっと金を積めば教えてくれる人も多い。それでもダメな人はだいぶ多いが。チッ。術式でなんとかするのも考えたが、今の俺のレベルだとまず間違いなく気付かれるからナシだ。
そうそう、俺の術式について説明しておこう。俺の術式は「想念興術」。感情を作り出す術式だ。何もないのに意識的に笑ったり、怒ったり、泣いたりできる。
えっ、それだけ? って思うだろ?俺もそう思った。オカルト一切関係なしにできる奴がゴロゴロいるし、俳優とかならまずできるレベルだからな。術式としてはあまりにしょぼすぎる。見た目エグい呪霊を見ても冷静になれたり、格上にあたっても勇気が出せたりするのは便利だが、実際に強くなれるわけじゃない。
さすがに幼児期から頑張ったこともあって、拡張術式は四つほど作れた。
一つ目は「念送」。相手に適当な感情を勝手に送り付ける術で、最初はどんな感情になるか制御できなかったが、今ではおおむね選べる。「恐怖」「怒り」なんかがシンプルで使いやすい。手間がかからないし、反応が読める。ただ問題は、格上にはまるで通らないってとこだな。呪霊相手だと二級までならまあ通じるが、準一級相手だと成功率が30%切ってくる。はっきり言って呪言の下位互換。あっちはちゃんと殺傷力もあるし、格上にも通じる。血を吐けば花御にも通じるの、反転覚えればチートだろ。話が逸れたな。これを使って頼みを聞いてもらうってのを考えたんだが、「何かされた」ぐらいなら補助監督でもわかるみたいだからナシだ。
二つ目、「反感相殺」。対呪霊用の術、っていうか技だな。ぶっちゃけ一つ目と変わらないんだが、どういう技かっていうと呪霊に「喜び」とか「幸せ」とかの正の感情を送り込む。呪霊は負の感情の集合体だから、正の感情を与えられるとアイデンティティが揺らいで弱体化する。待望の「ダメージがはいる」技だったんだが、どうも呪力で「正の感情」を作り出すってのの難易度が高いらしくて、、一つ目よりもさらに成功率が下がる。反転のアウトプットみたいに火力が出るわけじゃないし、ぶっちゃけこれが通る奴なら普通に殴るなり斬るなりして祓った方が早い。結論。役立たず。一応遠距離攻撃ではある。
三つ目。「覆意」。だいぶ頑張って作った、格上にも一応は通じる術だ。効果としては、「雰囲気が変わる」。それだけ。つまるところ、はったりだ。自分の周りに「殺意」とか「覚悟」とかの感情をまとわせる代物で、後は勝手に相手が感じ取ってくれる。戦闘力が上がるわけじゃないが、格上の呪霊から逃走するのには便利だ。シン・陰の師範代にも一回は効いた。二回目からはバレたが。
最後、「怨心通」。他と比べ物にならないくらい便利な術式だ。ざっくり言うと劣化読心術。負の感情限定で相手がどんな感情を持ってるかなんとなくわかるようになる。戦ってる最中に「あ、こいつなんか企んでるな」ってわかるし、攻撃の予兆が捉えられる。負の感情の塊である呪霊相手だと感度を調整する必要があるが、それでも便利だ。さらにいいのが、体内で完結して、呪力消費量が少ないことだ。呪力が隠蔽できるようになれば人と交渉してる最中とかにも使えるだろう。一般人相手には何回か使ったが、クッソ便利だった。これを使ってギャンブルするのもありだ。ポーカーとか。相手の反応から手札が割れるだろう。攻防力が上がるわけじゃないのが難点だが。
これで全部だ。四つあるのは多いほうなのかもしれんが、赤血繰術とかのほうが多いし、四つも作らないとまともに術式が戦いに使えないことの裏返しだ。基礎と合わせて五つ使えても実際に攻撃力ある奴ないし。これで五条を倒すとか指一本で逆立ちしても届かないから、せめて物理攻撃力がある技が欲しい。とりあえず使いまくって考えるしかないだろう、というわけで現在任務中。
今回の相手は、古い墓場にいるらしい。近くの町の子供が行方不明になって警察に通報され、手分けして捜索してた警察官の一人が突然行方不明になったから「窓」に話が回ってきたんだとか。そんなことを補助監督の人が言ってた。推定等級は準二級らしいが、怪しいもんだ。警察官が動くのは大体昼間だし、ちゃんと鍛えた人間だ。死に瀕すれば非術師でも大体呪霊は見えるようになるんだから、というか見えなくても急に襲われたら悲鳴を上げるなりなんなりするだろう。昼間から積極的に人を襲うレベルで活発で、なおかつ警察官を悲鳴も上げさせずに殺すなり連れ去るなりする準二級?そんなのがいてたまるか。後者に関しては口をふさいでから連れ去ったのかもしれんが、そこまで頭が回るならどのみち二級は確実だ。
つまるところ、よくある「窓」怠慢案件だろう。頻発するし、術師の命にもかかわる大事故だが、問題視はされていない、というか、できない。
まず、「窓」は人手不足だ。呪いが見える人間がそういるわけない。だから、事故を起こした奴を排除するとまわらなくなる。
次に、「窓」に優秀な人材は少ない。格上がどのくらい格上なのかわかる奴は少ない。ヤムチャにとってはフリーザも魔人ブウも戦ったら絶対負けるって点で大差ないからな。フリーザと魔人ブウの区別がつくなら大体戦えるから呪術師か呪詛師になった方が稼げる。
最後に、上層部がさせないだろう。いつでも都合が悪くなった奴を特級案件にぶつけて消せるように、完璧な「窓」システムなんか作られちゃ困る。ぽっと出の宿儺の器を殺したりするときとか。
こういう理由をみんな察してるから、「窓」のせいで格上を相手することになっても文句を言う術師は少ない。だけじゃなくて、格上に当たったら物理的にものが言えなくなることが多いからますます文句は出ない。こういう積み重ねの結果として、ナナミンは将来友達を失うことになるわけだな。
っと、現場についたようだ。帳は補助監督の人が下ろす。術師が下ろすのは基本的に許されない。なんでかっていうと、術師が死んだときに外から丸見えになるからである。五条の野郎が自分で下ろすっつって許されるのは、奴の権力と、無敵性ありきだ。畜生。
まあ五条への恨み言は置いといて、今は任務だ。墓場っていうのは割とよくあるシチュだが、今回はなかなかに呪力が満ちてる。四級がそこらに沸いてる。四級ならさすがに祓うのに苦労はしない。墓場らしく、ゾンビ的な奴が多いな。まあどこでもゾンビはなかなかに多いが。
で、本命はあっち、ここから北東のほうか。
ここからでも呪力が感じ取れるあたり、まあ予想通りではあるが二級は確実だ。場合によると一級を覚悟しなきゃいけないが、戦わずに逃げるわけにはいかない。そんなことじゃ術師は何のためにいるのかって話になる。無理にでも祓うか、うまくケガして逃げるか、だ。
さて、そんなことを考えてる間に到達したな。呪力量は二級以上、おおむね人型、大きな体、死人のような青みがかった肌の色、多腕、角みたいな突起のついた複顔、手と融合した複数の刀……待て、刀?墓場からどうしてそんなものが出てくる?
あとは術式と知性の有無だが…戦ってみないとわからん。術式の開示はなしで、「怨心通」を使って、いざ!
長くなったので分割します。
主人公の現在のスペックは真希と三輪を足して割ったくらい。でも読心術もどきができるので真希ともそこそこ戦えます。逆にパンダとは相性が悪い。刀の効きが悪いし、タックルで押し倒されたら打開策がなくなるので。