今日はシン・陰流の師範代と稽古をする日だ。八王子の郊外にある道場まで走っていく。何でも師範代曰く「自分の脚で通う気概が無い者に教えることはない」とかなんとか。昭和的な、全くもって意味がない行為だとは思うが俺はシン・陰なしではやってけねえ。所属してる間は「同門のよしみ」で親切にしてくれる術師もいるし、現状一番手っ取り早く強くなれるのはシン・陰流だ。文句言ってもしょうがねえ。
一礼してから道場の中に入って、挨拶。忘れるとボコボコにされる。
「おはようございまーす!」
「来たか、始めるぞ。素振り千回、10分で終わらせろ」
無茶に聞こえるだろ?できちゃうのが術師の悲しみ。強化込みで車をばらせる身体能力を駆使すれば、元の位置に戻ることを考えなければ一秒に二回刀を振ることぐらいできる。
「呪力が乱れとる!」
「ハイッ!」
やっべ。集中集中。
「抜刀百回!」
抜刀の回数が少ないのは、納刀の都合上時間がかかるのと、呪力消費が激しいから。最初の頃はここで呪力を使い切って何回も倒れた。
「終わり!三分休憩!」
ふー、疲れた。呪力も残り半分ってところか。抜刀として成立してれば一回に数えてくれるが、百もやれば馬鹿にならない量の呪力を使う。術式を使って気を紛らわしたいところだが、そんなことしてるのがバレたらこの後が倍厳しくなる。なった。体内に発動するだけの通常の「想念興術」すら見破るとかどうなってんだよ。キッショ。
「休憩終わり!さあ、どこからでも斬りかかってこい!」
「ハイッ!」
休憩が終わったら、実戦形式だ。もちろん木刀を使うが、呪力で守れってことで急所以外は寸止めなしだ。つまるところ、むっちゃ痛い。嫌だな~、嫌だn
「来ないならこっちから行く、ぞっ!」
「げっ」
カン!
しまった、師範代が待ちきれなくなったか。これは、
「抜刀!」
ガァン!!
まずい。もう腕が痺れた。普段任務で相手するような低級呪霊ならむしろ先手を譲って隙だらけのところに斬りかかるんだが、
「どうした、まさかこれで終わりだとでも?…抜刀!」
「チッ、抜刀!」
師範代はだめだ。強すぎる。地力で負けてるから、攻撃が終わるまで待ってたら次が来るし、後の先もとれない。だから、
「夕月!」
「おわっ!」
ヒュンッ!
先手を取らなきゃいけないんだが、そう簡単にはいかないよなあ。本当はもっと弱い人に師事するはずだったんだが、
「簡易領域」
「抜刀!うげっ」
クソ、完璧に読まれた。ある日稽古中に「怨心通」使ってるのがばれちまってこの師範代のもとに放り込まれた。効果はてきめんで、俺は術式の使用をやめざるを得なかった。呪力感知の精度が異次元で、体内で完結する通常の「想念興術」すら見破ってくるこの師範代の前で「怨心通」なんて使おうもんならマジギレして無表情で斬りかかってくる。恐ろしいことに、そうなると「怨心通」が効かない。一切感情を動かさずにひたすら斬りかかってくるのは恐怖でしかなかった。何とか呪力で防御したのに骨折して病院送りになった。
「抜刀!」
「あっ…」
今日も順当に負けたか。刀弾かれて終わるとはラッキーだ。後は座学と「夕月」を教えてもらって終わり、
「敵の前で考え事とはずいぶんと余裕があるじゃないか。もう十本!」
「えっ」
「何か問題あるか?」
「なにもありません、はい…」
マジで??
この後無茶苦茶ボコられた。クソが。
なんとなく始めたタイトル9文字縛りもこれで9回。これからも続けます。
師範代
準一級術師。師範と戦っても7:3で勝てるが、シン・陰使いとして強いんじゃなくて身体強化と剣術で強いだけなので師範代のまま。
主人公が強くないのは呪力出力が弱いからです。瞬間的な強化が足りないので呪力操作が良くても火力が出ません。