書記と幼馴染の男の子の日常風景   作:今井綾菜

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なんだか続きましたね。
閲覧してくれている皆様方、本当にありがとうございます。


第二記録 雨音と嫉妬

 

 

その日はどんよりとした天気で外は暗い雲がかかり、屋根に当たる雨垂れの音が心地よい1日だった。

ソファに座る俺とノアの距離感はいつも通り、肩が触れるかどうかのギリギリの距離感でノアは詩集を読み耽り、俺はというと料理雑誌に夢中になっていた。

 

「そういえばさ、シャーレの先生と会ったんだろ?」

 

「ええ、この間ユウカちゃんと当番に行った時に挨拶してきました。赴任されてから挨拶する機会もなかったのでいい機会でしたし」

 

「へぇ……?どんな人だった?」

 

「……そうですねぇ。見た目はそれなりでした」

 

「それなり……?噂では結構なイケメンだって聞いたけど」

 

「巷ではそう言われてるみたいですね」

 

視線はそれぞれ手に持った書籍に固定したまま。

紙の捲る音がお互いの手元から鳴る。

 

「……気になるんですか?」

 

「まあ、それなりに?少なくともノアが会った人なら気になる」

 

「ふむ、なるほど……」

 

パタリと、視線を落としていた詩集を閉じたと思えばずいっとその整った顔が急接近する。

彼女の顔が近い距離にあるのは慣れているとはいえ、少しいたずらっぽい表情に思わずドキッとする。

 

「もしかして、嫉妬……ですか?」

 

「うぐっ……」

 

「へぇー?嫉妬、ですかぁ」

 

ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべて満足そうな表情のままソファに背を預けて深呼吸をする。

 

「安心してください。私が他の男性に目移りすることなんてありませんよ」

 

「その辺りは心配してないんだけど」

 

「本当ですか?すごく切なそうな顔をしてましたよ?」

 

「……マジ?」

 

「ふふっ、冗談です」

 

「っ〜〜!ノア〜!」

 

「きゃっ、く、くすぐったいです……!」

 

軽いじゃれあいのようなふれあいを数分間続けて、ソファの上に2人で寝転がる体勢で落ち着く。

俺が下で、ノアが上に乗るような体勢で2人の顔の距離がとても近い。

 

「……ノアは俺が他の人と仲良くしてると如何思うわけ?」

 

「それは誰とのことでしょう?トリニティのティーパーティーの方々ですか?それともアビドスの対策委員会?はたまた連邦生徒会の役員の人たち。それともシャーレ近くの公園にいるRABBIT小隊の子達でしょうか?」

 

「待て待て待て、どうしてそんなに沢山人が出てくる」

 

「ここ半年のミナトくんが学校の行事やプライベートで関わった人たちですね」

 

「それは生徒会役員として関わったのと半テロ行為に巻き込まれたときに鎮圧に協力してくれたっていうだけでしょ」

 

ノアのあげた人たちはどれも学校間の外交やキヴォトスでは日常茶飯事ともいえるテロ行為に巻き込まれたときに遭遇した人ばかりだ。

そもそも、如何して突然そんなことを……

 

「……私は嫉妬しましたよ」

 

「ノア……?」

 

「私は……嫉妬しました」

 

アメジストの瞳が不安そうに揺れている。

鼻と鼻が今にもくっつきそうな距離で、彼女は自分の感情を吐露する。

 

「キヴォトスにある数少ない男子校の生徒会役員が各校の生徒会組織と関係をもつのは仕方ありません。ミレニアムだってミナトくんの通う“ユスティティア司法学園”にはお世話になっていますから」

 

「……」

 

「でも、セミナーとしての私はそれが必要な行為だと納得できますが……私個人としてはミナトくんが他の女の子と仲良くするのはおもしろくありません」

 

「……そういうことね」

 

全く、なんだこの可愛い生き物は。

つまり、ノアは俺が他の学校の女の子たちと関わっているところを見て嫉妬したから、先生と会ったことにも嫉妬して欲しかった。

自分が不安な気持ちになったから、俺にも不安な気持ちになって欲しかったということなのだろう。

 

Je t'aime le plus au monde(僕はあなたを世界で一番愛しているよ)

 

「ッ〜〜〜!?!?み、ミナトくんがどうしてフランス語を……!?」

 

この言語、ノアが好んで読んでいる詩集はキヴォトスでの一般言語でおるものとは違い、少しばかりの勉強が必要なものだ。

はるか昔は言語の統一がされておらず、各自治区ごとに独特の言語を用いていたらしいが、そのうちの一つが『フランス語』というものらしい。

それはさておき、彼女は時折自分の心情をこのフランス語で溢したり、今日の様な雨の日には曇りガラスに書いてみたり、小さなメモ紙に記してみたりと理解の難しい言語であるのをいいことにそういうことをする傾向にある。

 

「フランス語を使えるのがノアだけだと思った?残念、ノアが使うなら俺だって覚えるために勉強するんだよね」

 

「だ、たからってそんな……直球な愛の言葉を耳元で囁くのは……!」

 

「お気に召さなかった?ノアの読んでいる詩集は恋愛系のものが多いと思っていたけど」

 

「あまりにも理想的な言葉だから動揺してるんです!」

 

「うん、なら問題ないね」

 

「大アリです!」

 

体勢は未だノアが上に居るままの寝そべり体勢。

いつまでも彼女の顔を下から見上げるのも飽きはしないけどいい加減起き上がっても問題ないだろう。

起き上がった時にノアが怪我しないように背中に手を回して起き上がり、それと同時に腰に手を回して膝の上に彼女を乗せるように動く。

 

「それで、ノアは俺が他の人に目移りするように見えた?」

 

「……みえません」

 

「うん、ならこの話はおしまいだね」

 

膝の上で赤面して視線を逸らしているノアは普段見れないような頬を膨らませた表情をしていた。

 

「……今日の夕飯はミラノ風ドリアにしようかなって思うんだけど、どう?」

 

「……私がごはんで機嫌の良くなる女の子だって思ってます?」

 

「いや、そんなことはないけど……別のにする?」

 

「それで許してあげます」

 

「オッケー、それなら今のうちから準備しちゃおう」

 

膝上にいるノアをゆっくりとソファに移動させて立ち上がる。

買い物しなければならないものなんかは特になかったはずだなとキッチンへ移動しようとノアに背を向けた瞬間、袖を摘まれて視線をノアに向けた。

 

「ノア……?どうしたの?」

 

Je t'aime aussi(私も貴方を愛してます)

 

「……なるほど、これは確かに反則だ」

 

視線をノアと同じまで下げる。

どちらかといえばやり返されたと言った方が正しいだろうが、やられっぱなしなのは自分の主義に合わない。

 

「み、ミナトくん……?」

 

「お手を拝借、お嬢様」

 

「っ〜〜!?!?」

 

彼女の白い右手に軽く口が触れる程度のキスをする。

今まで見たことない勢いで手を引いたノアを見て満足げにキッチンへ向かった。

 

「……もう、ほんとうに、ずるいんだから」

 

生塩ノア、普段はその観察力と余裕を感じさせる微笑みと的確な物言いのお陰でミレニアムでは口論において負けなしの彼女だが、唯一勝てない人もいるようだ。

 




続いたので軽い世界観のお話をしましょう。

このキヴォトスでは数は少ないものの“男子学生”がいるということで彼らが通う為の学校が少なくとも100以上は存在していることになります。
男女比の割合が約1:9程度であることから、彼らが通う学校は“男子生徒のみが通う”学校として存在しています。
拙作のキヴォトスとしては共学という文化を消し去ることで、原作に存在する学校が女子校であるということにし、原作の学校に男子生徒を混ぜないという意図があります。

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