我が名はマルコ。不死鳥のマルコではない。   作:ゆーりふり

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お布施でかげマスの福袋ガチャに課金した。
ガンマとデルタの二択でガンマが欲しかったのにデルタが出た。
イプシロンかイータが欲しかったのにゼータとの三択でゼータが出た。
意図せぬワンにゃんカーニバル。
FGOのガチャは当然のごとく爆死した。
十二神将ハイラはガチャピンルーレット調整に失敗した。
今年の俺の運勢は果たして大丈夫なのだろうか。


強欲の瞳編③

「それじゃあ、シェリーちゃんは研究者だったお母様に憧れて学術学園に通っているのか」

「はい……それと、お義父様の病気を治す方法を見つけられたらなって」

 

 なんて良い子なんだろうか。

 幼くして愛する母親を失い、それに挫けることなく意思を継いでルスラン氏のことも慮ることができるだなんて。

 

「応援するよ。その努力と願いが報われる世界であるべきだ」

「マルコさん?」

「あ、ごめんね。俺も昔、理不尽に奪われた経験があるんだ。だから、もう二度とそうさせないために強さを磨いた。シェリーちゃんみたいに誰もが認める功績なんて出せてはないけれどね」

「いえ、私なんてまだまだです! それに私って研究ばっかりでお友達もシド君しかいないんですけど、そんな私でもマルコさんのことは耳にしたことがあります」

 

 日々の任務をこなすことは騎士として当然。それ以外だと俺はブシン祭でアイリス様に負けただけだから、なんだか気恥ずかしい。耳にしたの俺の醜聞だったりしない?

 

「シド君は大丈夫でしょうか」

「この校舎内にいたテロリストはほとんど倒されたと思う。けれど、浅くない傷を負った状態で魔力も使えない状況だ。祈るしかない。まだ学生の子供に危険な役割を背負わせてしまうだなんて、情けない限りだ」

「そ、そんなことはないですよ!」

 

 シェリーちゃん、シド君と共に副学長室に辿り着いた俺たちだったが、ルスラン氏の姿はなかった。隠し通路が使用された形跡もなく、部屋に争った跡もない。病を患っているらしいルスラン氏ではテロリストに抗うことが難しく、連行されてしまったのだろう。

 

 ならば、この後どう動くのか。 

 隠し通路を使い二人だけでも避難させたかった俺だがシェリーちゃんから待ったが掛かった。

 いま学園内に展開されている魔力阻害は『強欲の瞳』と呼ばれるアーティファクトによるもので、本来はアイリス様が解析依頼をしたアーティファクトと併せて運用するものらしい。

 強欲の瞳の能力は周囲の魔力を吸収して貯蓄するというもので、シェリーちゃんが持っている台座のような部分が制御の役割を担っている。つまり、このアーティファクトを起動させられれば魔力阻害を解除することができ、状況を好転させられるかもしれない。

 

 事態を解決する光明が見えたかに思えたが、ひとつ問題が起きた。

 あらかた解析を終えた制御装置ではあったが、まだ完全ではない。残りの工程を実施するにはシェリーちゃんの研究室にある道具と材料が必要で取って来なければいけない。しかし、叛逆遊戯のレックスなど強い相手が残っている状況で戻るのは危険が大きい。俺一人で戻ると残された二人が襲撃されたときに対処ができない。三人で戻るのは見つかったり守り切れない可能性が高まる。

 

 どうしたものかと悩んでいたところにシド君が一人で向かうことを提案してきた。あまりにも危険な選択で到底認めることのできないものではあったが、他に方法があるのかと問われると口を噤むしかなかった。

 結局、時間を掛けるほど囚われた生徒たちの状況は悪化していき、強欲の瞳に溜め込まれた魔力が決壊する可能性も高まるという彼の説得に押し切られる形となってしまった。

 いまはシド君が無事に帰ってくるの信じて待つしかない。

 

「マルコさんから見てシド君はお強いんでしょうか?」

「直接、シド君が戦っているとこを見たことがないからなあ。そこまで強くはなさそう、かな? どこか違和感と言うか奇妙な感覚はあるんだけどね」

「それじゃあ、シド君は……」

 

 しまった。判断を誤らないために事実を述べたが、シェリーちゃんは騎士でも軍人でもない。元気付けることを言うべきだったか。

 

「戦闘能力に問題がないとは言えない。けれど、彼は聡い。それに拷問にも耐え抜く強い精神力を持っている。きっと大丈夫だよ」

「シド君、拷問されたことがあるんですか!?」

 

 ……しまった、また余計なことを言ってしまった。

 

――――――

 

「ふんふんふふーん」

 

 二人の心配を余所にシド・カゲノ―は実家のような気楽さで校舎を歩いていた。なにがそんなに機嫌を良くしているのか、鼻歌交じりでスキップまでしている。

 

「いやー、学校の授業中にテロリストが襲撃してくるだけでも垂涎ものなのに、マルコ君まで来てくれるなんてなー。選択肢が多すぎてどう動くか悩ましいところだけど、ニューの件とバランスを取るために今回はテロリストを倒す側で陰の実力者プレイをしよう」

 

 そう言ってシド――シャドウは随分と静かになった校舎を進んでいく。マルコとグレンに倒された教団員、そしてシャドウのスライムの矢で撃ち抜かれた教団員。人質となった生徒が拘束されている講堂周辺の戦力を除くと、すでに大半が狩られていた。外から学術学園の校舎に目を向けたなら、テロリストの死体が黒いてるてる坊主のように幾つも吊るされているホラーな光景が見られるだろう。

 

「ボクが敵のネームドを全滅させちゃうとマルコ君の役割を奪っちゃいそうなのが難しいところだね。シェリー・バーネットの護衛ってことは彼女もニューと同じくマルコ君のヒロインなのかな? 確かに可愛い顔立ちのネームドキャラでアーティファクト研究に於いては世界でも類まれな成果を出しているって聞くと、ヒロインとしか思えないスペックだ」

 

 シャドウガーデンだとイータのポジションかー、と呟いてからシャドウは足を止めた。

 自分以外の声が耳に届いたからだ。

 

「さっさとマルコ・グレンジャーと獅子髭のグレンを探し出せ! アーティファクトは間違いなく連中の護衛対象が持ってやがるんだ。くそっ、痩騎士の野郎め上から偉そう命令しやがって。オレはチルドレン1stだぞ」

 

 ニヤリと、シャドウの口元が歪んだ。

 聞こえる足跡は五人分。

 その内の一人は他に命令できる立場でどうやらネームドらしい。

 シャドウの中で舞台の配役が決まった。

 

「ちっ、さっきよりも数が減ってやがる。やっぱ騎士以外にも潜り込んでる奴がいるな」

 

 叛逆遊戯のレックスは苛立ちながら廊下を闊歩する。

 紅の騎士団の邪魔が入ったことでシェリー・バーネットからアーティファクトの奪取に失敗した彼は、テロの首謀者である"痩騎士"から早急に奪ってくるよう厳命を受けていた。同時に、学園内で暗躍しているシャドウガーデンと思しき者たちの討伐も任されている。

 

「だが状況は悪くねえ。名うての騎士二人をオレ様がぶっ殺してアーティファクトを回収することができりゃあ、さらに上を目指せる。それこそ痩騎士なんて老い先の短い奴よりもな」

 

 反抗心に目を光らせるレックスとそれに続く四人の部下。

 その足音が二つ減った。

 

「は?」

 

 唐突に自身の背後から音が消えた事に気付いて振り返ると、そこには誰もいない。

 

「どうなって――!?」

 

 さらに音と人の気配が二つ減った。

 再度身体を反転させると、自分の前を歩いていたはずの部下の姿は、やはりなくなっていた。

 ほんの数瞬の間に、彼は長い廊下に一人きりになっていた。

 

「攻撃、なのか……? ぐあっ!」

 

 ふと、背後に気配を感じ振り返ると、視界を覆うように手のひらが迫ってきた。

 まるで軽く小突くような攻撃。

 だが、レックスの体は宙に浮いて吹っ飛ぶ。

 

「くそったれがっ!」

 

 体制を立て直し、武器を構えたレックスの視界に敵の姿はない。

 しかし、タネは分かった。

 

「自己加速のアーティファクトか! だが二度は通用しねえぞ、網を張ったからなぁ!」

 

 チルドレン1stである自身がこうも手玉に取られているのは相手が動きを加速させるアーティファクトを使用しているからだろうとあたりをつけた。

 そして、レックスは攻撃を受けながらも敵の姿を捉えていた。相手は服は血まみれで浅くない負傷がある。校舎内の手勢を倒す過程で負ったものもあるだろうが、大きな要因はアーティファクトの使用によるものだろう。

 強大な力には相応のリスクが伴う。肉体を損傷した状態で限界を超えたスピードを何度も出せば過負荷によって最終的には自滅する。

 反応すら困難な高速攻撃は非常に厄介だ。故に狙うのは戦闘を持続させることによる消耗と魔力の網を用いたカウンター。強気のハッタリも混ぜることで状況的優位を取る。

 

 叛逆遊戯の二つ名を持つに足る戦闘IQをレックスは有していた。

 もっとも、全ては敵が網の外にいるという前提の上での話でしかないが。

 

「がぁっ……!」

 

 またもや、背後からの一撃。

 網を突き破って吹き飛ばされたレックスは廊下から教室へと転がり込む。

 

「網の内側からだと! ……は?」

 

 己の目で追えず、網にすら掛からない。

 瞬間移動のアーティファクトなんてある訳もない。

 動揺するレックスだったが、そこに追い打ちを掛ける光景が飛び込んで来た。

 

「なんだよ、これ……」

 

 教室のイスに並んで座る教団員の死体。

 その数はレックスたちが把握していたものを遥かに上回る。

 

「君のリアクション、最高だね」

 

 レックスの頭上から、楽し気な声が降ってくる。

 

「ひっ……」

 

 恐怖に引き攣った声が喉から漏れる。

 

「怯えなくていい。ボクは君を殺さないからね」

「は、あ……?」

「ただ情報を伝えに来ただけなんだ。君たちにはそれを是非有効活用してほしい」

「なにを、いって……」

 

 教室の天井に逆さまに立っている男は、教団員たちが着ていたのと同じマントを羽織りフードを被っている。だが、纏う黒衣は重力に反して捲り上がる様子もなく、男の顔と体を隠している。

 異様な状況と男から放たれる圧力にレックスは体の震えが止められないでいた。

 

「探さずとも、日が落ちる頃にマルコ・グレンジャーはアーティファクトを持って講堂に現れる。なら、人質がいて戦力が揃っている状態で迎え撃った方が確実だろう?」

 

 確かに、それ自体は有用な情報だった。

 しかし、男が誰でなにを目的としているのか分からない。

 信用する根拠もない。

 それでも……。

 

「だから君には大人しく講堂に戻ってほしいんだ。アンダースタン?」

 

 首を横に振れば死ぬ。

 絶対の確信をもって、レックスは提案(脅迫)に屈した。

 

 

 

「これで準備は万端だ」

 

 レックスが去り、物言わぬ屍だけになった教室からシャドウは満足気な呟きと共に出ていく。

 

「テロリストのボスっぽい痩騎士とかいうのは陰の実力者であるボクが倒す。さっきのバンダナはマルコ君が倒す。敵対する陰の実力者と主人公、両者は弱き者を救うため一時的に手を取り合う。まさに王道ストーリーのフィナーレに相応しい展開だ」

 

 シャドウはシェリーと合流する前に学園全体の様子を確かめていた。

 主戦力が配備されているであろう講堂の状況も確かめたが、明らかに異質なのは全身鎧を纏った騎士。あれがバンダナ君から瘦騎士と呼ばれていた主犯格なのだと一目で分かる。しかし、他にネームドだろう目を惹く敵はいなかった。そこで、他とは違う衣装を着ていて偉そうにしていたレックスに白羽の矢が立った。

 

「問題はバンダナ君でマルコ君の相手が務まるかなんだよねー、ってなにしてるのニュー?」

「シャドウ様……」

 

 シャドウがシェリーの研究室に入ると、ニューがいた。

 

「無事であることは承知しておりましたが、我々も普段通りとは行かず様子を伺っておりました。報告に行けず、ご足労お掛けしてしまい申し訳ありません」

「別にいいよ。あ、そうだマルコ君も無事だよ。魔力が普段通り使えないのに無傷で切り抜けてるんだから彼も随分強くなったよね」

「強い……それはシャドウ様から見てもなのでしょうか?」

「うん。使いこなすのに四苦八苦してたみたいだけど、今はかなり馴染んでる。魔力を阻害されたことが逆に制御のコツを掴むのに一役買ったのかな? 結構、面白いことしてるよ彼」

 

 シャドウが誰かを強いと評価する。

 少なくともニューには聞き覚えのない事態だった。

 

「ガーデンはガンマ様の指揮の元、シャドウ様の号令があるまで待機しています」

「それでいいよ。ところでアーティファクトの調整に使う道具を探してるんだけど、どこにあるか分かる?」

 

 ガンマの指揮のもと配置を終えたシャドウガーデンは広域に展開する魔力阻害は長くは続かないという見立てでいた。しかし、原因と解除方法は分かっておらず、いま攻めるとなれば戦力減となることは避けられない状況だった。

 

「まさか魔力阻害の原因をご存知なのですか?」

「うん、強欲の瞳って言うアーティファクトなんだけど制御装置があるんだよ。無効化するための調整も日が落ちる頃には終わるんじゃないかな」

 

 そこにシャドウが根本的な解決策を提示したことで、シャドウガーデンは夜を待ってテロリスト撃退を実行することに決める。

 

「ニューも楽しみにしていなよ、ボクと彼の晴れ舞台をさ」

「晴れ舞台……?」

 

 それだけ言って、シャドウは楽し気にニューの前から姿を消した。




シャドウ様とマルコ君の間にはかげじつロールプレイの主人公とか抜きでも特別な繋がりがあったりなかったりする。
その繋がりとは……いや、今はまだその時ではない。
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