我が名はマルコ。不死鳥のマルコではない。   作:ゆーりふり

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この作品がランキングに乗ると言うことはそれだけ原作のマルコ・グレンジャーが魅力的なキャラクターということだ。いずれ、かげマスにフェス限マルコが実装されることであろう。

Q:ルーナ商会ってなんだよ。
A:ミツゴシ商会の前身となった商会だよ。だからガンマは表の顔としてルーナという偽名を使っているよ。


ゴリラには勝てなかったよ

「セイッ! ハァッ!」

 

 衣服に吸収し切れなくなった汗が肌を伝い、地面へと落ちていく。

 それを意識してしまっている時点で集中力が足りていない。もっと研ぎ澄ませろ。魔力を刃に収束させろ。

 力だけ、技だけ、速さだけ、そういった偏りを取り除き最善の一太刀を常にイメージしろ。

 

 そうしなければ――届かない。

 

 ()は甘ったれだった。

 前世というアドバンテージがあって、実際に平均値を大きく上回る実力を持っていて、そこに満足していた。

 だが、俺の力はアイツらに遠く及ばなかった。

 

 ニコレッタを連れ去ろうとした怪しい教団とかいう連中。

 その教団すら圧倒した黒衣の女たちとシャドウと名乗った実力者。

 

 どれ一つにさえも届くことはなく、一生守っていくと誓いあう筈だった人を奪われることしかできなかった。

 あの屈辱と後悔の日から幾らかの時が経ち、俺は学園を卒業して騎士団へと入った。侯爵家ではニコレッタの存在が無かったことになり、俺との婚約は立ち消え。実家に戻る意義にも悩んだが、今後様々な活動をしていく上で貴族と騎士の立場は有用だ。悶々とする思いはあったが、俺はグレンジャー家のマルコとして力を蓄えることにした。

 自分なりに悪魔憑きについて調べてもみたのだが、徹底的に情報が消されているのか新しい発見のようなものは一切なかった。前世持ちの転生者などと言っても所詮は元一般人。世界に大きな影響を与えるようなことは出来そうにもない。

 ならばと、まずは一から実力を磨き直すことに力を注いだ。同じことを繰り返さないために。

 

「俺は……弱いっ!」

 

 ――剣を振るう。

 

 この世界の裏には大きな闇が存在する。

 その闇は一つではなく、互いを食らい合いながら蔓延り蠢いている。

 

「次は……負けないっ!」

 

 ――剣を振るう。

 

 闇は暴力を行使して奪っていく。

 弱き者たちから大切なものを一方的に。

 

「必ず……守ってみせる!」

 

 ――剣を振るう。

 

 もう守りたかったものはこの手の内にない。

 二度と戻ってはこないかもしれない。

 それでも、まだ俺には剣を握る両の手がある。

 

「精が出るなマルコ」

「グレンさん、お疲れ様です」

 

 声の方向を振り向くと、熟練の騎士であり"獅子髭"の異名をとるグレンさんがいた。

 

「良い太刀筋だ。新進気鋭どころか、すでに手練れの騎士であってもお前に勝利することは難しいだろう」

「ありがとうございます。ですが、私が守りたいものを守り切るためにはまだ足りません」

 

 剣の腕、魔力の扱い、戦術の巧みさ。

 全てが未熟。

 奴らに勝利する。それも己一人で誰かを守りながら。

 そんな無理無謀を押し通す強さを手に入れてみせる。

 シャドウ……お前を超えてボクはニコレッタを取り戻す。

 

「その向上心、俺も負けてはいられんな。……ところで、腕を磨くには修練を積み上げることが最も肝要だが、実践も欠かせないと思わないか?」

「それはそうですね」

 

 なんだろう。魔物や盗賊討伐と言った任務への同行依頼だろうか。願ってもないことではあるが態々本人が誘いにくることとも思えないが。

 

「ブシン祭。出てみるつもりはないか?」

「は? ブシン祭ですか」

 

 ブシン祭は数年に一度、ミドガル王国で開催される剣術大会だ。

 各国から腕に覚えのある魔剣士が挙って参加する、世界でも有数の催し物で祭事の側面もある。ミドガルに居ては知る機会もない様々な流派の剣技を見て体感できる。それはきっと有意義な時間になるだろう。最近は訓練と任務ばかりで、そういった情報の入手が疎かになっていたな。

 

「ブシン祭には興味ありますね」

「おお、そうかそうか。では俺が出場申請をしておいてやろう」

「えと、有難いですがなぜそこまで?」

「個人的に見てみたいからだ。今のお前とアイリス様、どちらが強いのかな」

 

 え、ゴリラ様……じゃないアイリス様も出るの?

 学生時代に散々試合して、しこたまボコられた経験があるので勘弁願いたいのですが。

 

「お前の剣にはブシン流と異なる繊細な技巧が窺える。対するアイリス様は王都ブシン流を修めてはいるが、タイプとしては優れた才能を思うままに揮うパワー型だ。技術でどこまでスペック差に対抗できるか、俺としては興味が尽きん」

「はぁ……まあ、それが騎士団の実力向上に役立つというのなら構いませんが」

 

 そんな話をしてグレンさんと別れる。

 

「ブシン祭か」

 

 アイリス様と戦うのは正直飽きているのだが、あの日からの修練がどれほど実を結んだのか試すという意味ではアイリス様ほど適任な相手もいない。自国の魔剣士がブシン祭で優勝すれば国威発揚にもなるから、理想はミドガル王国騎士団で上位を独占することだろうか。

 どうせなら優勝を狙いたいなと考えながら訓練場を後にすると、なぜか背後からグレンさんに強く見られている気がした。

 

 

 

「あの齢であそこまで鋭い斬撃を放つとは。ミドガル魔剣士学園の黄金世代と呼ばれるだけのことはある」

 

 アイリス・ミドガルとマルコ・グレンジャー。

 力と技。

 得意とする方向性の違いはあれど、両者はいずれミドガル王国を背負って立つ人材になると評価されていた。王族であるアイリス様は当然として弱小貴族でありながら魔剣士として卓越した実力を有し、驕ることなく邁進するマルコの存在は騎士団にとっても良い効果をもたらしている。

 

「学生時代から交友があり、素行も至って良好で正義感に溢れた若者。アイリス様が信頼する部下として手元に置きたいと考えるのも道理か」

 

 マルコ・グレンジャーにブシン祭への参加を打診した理由は二つ。

 一つは、並みの魔剣士で測ることのできない彼の実力をブシン祭を通して明らかにすること。

 そしてもう一つは、アイリス様とマルコがブシン祭で出した実績を以って、アイリス様が指揮権を持つ騎士団設立の下準備をすること。

 これはアイリス様から直々に託された任務でもある。

 

「反対ブロックになってワンツーフィニッシュしてくれるのが一番良いが、こればかりは抽選次第だからな」

 

 まさか開催国が抽選でズルをする訳にもいかない。

 なんにしても若い世代が活躍してくれることを願うばかりだ。

 

 

 

 なお、アイリス・ミドガルとマルコ・グレンジャーは抽選の結果ブシン祭本線トーナメント一回戦で激突することが決まり、アイリス・ミドガルに軍配が上がることとなる。

 

――――――

 

 こんにちは、マルコです。

 先日のブシン祭は無事に本線トーナメント一回戦で敗退いたしました。

 

 意気込んで参加したのに結局戦った相手が予選の大して強くない人と見知ったアイリス王女だけとかなんの意味があったんでしょうかね。

 言い訳させてもらうなら意義は大いにあったのだ。俺と王女の戦いは観客からは事実上の決勝戦と言われていた。最終的に優勝したアイリス王女であったが、その中でまともなダメージを受けたのは俺と戦った初戦のみ。拮抗した戦いの趨勢は誰にも読めず、会場も大盛り上がりだった。

 

 まあ、最終的には追い詰められたアイリス王女がブチ切れて放った全力の一撃によって、俺はデカいクレーターにヤムチャしやがってのポーズを取ることになった。本当に勝てなかったのかと言われれば、やり様はあったのだが俺とアイリス王女なら後者が勝ち上がった方が国益が大きい。無理して勝つ必要もないと考えたのだ。

 

「それに、今はまだ借り物の力みたいで好ましくないからな」

 

 肉体に魔力を流す。

 その魔力の流れは以前の自分では考えられない程に強大だった。 

 

 以前――シャドウによってニコレッタを奪われる前との比較だ。

 あの時、俺の体は瀕死の重傷を負っていた。朦朧とする意識と霞んでいく視界の中、シャドウは強大な魔力を宿した手をこちらに向けていたことを覚えている。そして意識が戻った俺の体には僅かな傷さえ見当たらなかった。それどころか体の奥底から湧き上がるような力を感じた。

 

 俺は大切な者を奪われるだけでなく、施しさえ与えられてしまったのだろう。

 有する魔力量はかつてと比較にならない。

 魔力の扱いは微睡む意識の中であったからこそ、如実に感じ取れた。

 筋繊維の一本に至るまで掌握して手指を動かすかの如き繊細さ。それが神経を伝う電気信号の如きスピードで行使される。

 

「これが俺の超えなければいけない相手が立つ領域……」

 

 桁……否、次元が違う。

 魔力で肉体を頑強にするのは魔剣士として常識的な運用だが、死に瀕した肉体を正常状態まで復元させるなど聞いたことがない。魔力の神髄は俺が思うよりも遥か先にあって、ニコレッタを取り戻すには背さえ見えない相手に追い付いて勝たなければいけない。

 だが、諦めることはしない。奴の誇る埒外の強さの一端に触れることができた。それは地平の彼方にあるのかも知れないが、決して理解できない存在などではない。どれだけ遠くにあろうとも俺は進めるのだ。例え小さな一歩であろうと、彼女の元へ。

 

 今日もまた、俺はその一歩を踏み締めるために行動している。

 

「ここが、まぐろなるど」

 

 "まぐろなるど"。

 ここ最近、猛烈な勢いで出店数を増やしているチェーンのバーガーショップだ。主力商品はマグロのフライにタルタルソースをかけたバーガーで、前世で言うところのフィレオなフィッシュに近い。それだけでなく揚げたポテトやオニオンのリングなど、どこかで見たことのあるような商品が多くある。それだけなら、この世界でも前世と似たような商品開発はされるんだなと郷愁の念を感じるだけで済んだのだが、店舗の名称があまりに露骨だ。

 

「俺以外にも転生者が居るってことだよな」

 

 ここ最近、警備のため王都を巡回していると包装された食品を食べ歩きしている人を見掛けることが多いなと不思議には思っていた。油で揚げられた衣と甘酸っぱいソースの臭いに懐かしさを感じて調べてみたところ、このパクり事業を見つけた訳だ。創作キャラのパクりだけではなく知識チートをしている奴まで居るとはと戦慄すると共に、俺はある考えに思い至った。

 もしや綾波レイのパクりが居た組織とまぐろなるどは裏で繋がっているのではないか、と。

 知識の出処が同じであるという可能性はあり得ないと断言できるものではない。確かめる必要があると考えた俺はこうして店舗まで足を運んで実食をしていた。

 

 うーむ、スケソウダラではなく異世界マグロを使っているから少々クドい感じはあるが、代わりに腹に溜まる。タルタルソースではなく醤油ベースのタレを使った和風バーガーもあってこちらも中々に旨い。

 

「店員さん、少しお話を伺っても大丈夫でしょうか」

「あ、あなたはもしかして騎士団のマルコ様では!?」

「そうですが、どこかでお会いしたことがありましたか?」

「先日のブシン祭での活躍、とてもカッコよかったです!」

「ああ、応援していただいたのですね。ありがとうございます」

 

 俺のことを知っているらしい店員にアルカイックスマイルを浮かべて会話を続ける。性格の良い実力者という評判があると、こういった時に色々と得だ。とは言え、ここが悪の組織の資金源となっているフロント企業なのだとすれば構成員が表の顔として従業員に扮している可能性もある。油断せずに行こう。

 

「初めてバーガーを食べたのですが、とても美味しいですね」

「ありがとうございます! 弊社のバーガーは画期的なファストフードとしてミドガル王国以外でも大人気なんですよ!」

 

 明るい笑顔で元気に応対する従業員に怪しい点は見られない。流石にただの従業員が裏事情まで知ってはいないか。

 

「この美味しさなら納得です。不勉強で申し訳ないのですが、まぐろなるどの創設者のお名前を伺えないでしょうか」

 

 まずは、本当に転生者が作った会社なのか念のための確認だ。

 主力商品にマグロを使っているから店名にマグロが入るのは理解できなくもない。

 では『なるど』はどこから来たのか。前世に於いてはそのまま事業の根幹となった兄弟の名前から取られていた。

 

「はい、まぐろなるどはルーナ商会が展開する事業の一つです。ですので、創設者は会長のルーナ様になりますね」

 

 ルーナ商会……聞き覚えがあるな。

 確か服飾事業をメインにしている商会だったはずだ。直接的な交友があった訳ではないが、服を購入する際にルーナ商会の製品だという説明を受けたことを覚えている。

 そこから全く異なる食品事業で大成功を収め、店舗名に関連性のなさそうな『まぐろなるど』を付けた訳だ。

 

「ルーナ商会は服飾が主な事業だったと記憶しているのですが」

「今も服飾事業は展開していますよ。ただ、支配人のルーナ様が代替わりした折に事業の拡大を図られたとかで」

 

 代替わりした商会長。怪しいのはソイツか。基盤のある商会を転生者が乗っ取ったという線は大いにありそうだ。

 

「ありがとうございました。また買いにきますね」

「今後とも御贔屓に」

 

 従業員と挨拶をして別れる。

 怪しくはあるが悪事を働いている証拠がある訳ではない。調査はできても家宅捜索のような強引な真似はできないか。

 やはり、目的を果たすためにはもっと強権を行使できる立場がいる。幸いにも俺はアイリス王女の覚えがめでたい。彼女が新設を目論んでいる騎士団の中で功績を上げて権力を得るのが最も近道となるだろう。

 

「当面は力を付けながら、平行してルーナ商会に探りを入れていこう」

「いい勘をしているじゃないか」

 

 確認のため、今後の目標を呟きながら歩いているとすれ違う人の声が耳に届く。

 その声を忘れたことなど今日まで一日たりともなかった。

 

「シャドウッ!」

 

 咄嗟に振り返った先に黒衣の男はいなかった。

 魔力も含めて周囲を観測するが、異常な魔力の持ち主も武の練度が窺える体捌きをする者もいない。

 

「なんの目的で王都にっ!」

 

 道行く人の流れに向けて声を張り上げるが、返ってくるのは訝しむような視線だけだった。

 だが、奴はルーナ商会を探ろうとする俺の勘を褒めるような発言をした。それはつまり、シャドウたちが敵対していると思われる教団とやらが関係している可能性が高いということ。なんのために俺に助言するような真似をしたのかは分からないが、教団を探っていくなかでシャドウたちに繋がる情報も見つけてみせる。

 

 余裕の表れか驕りか知らないが、軽率に声を掛けてきたことを後悔させてやる。




〇シャドウガーデンの皆さまからのマルコ君への評価。
シャドウ様:主人公っぽいから是非かげじつプレイの役に立ってほしい
ガンマ・ベータ:人格としては好感だが、個人的に被害を受けたのでちょい嫌い
デルタ:弱いので興味ない
他の七陰:ガーデンの邪魔にならない範囲でなら高評価
ニュー:???

シド君がルーナ商会のこと知ってたのかよく分からないけど、まぐろなるど知ってるなら服飾と食品事業してるのは分かってた、はず。
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