我が名はマルコ。不死鳥のマルコではない。   作:ゆーりふり

9 / 30
評価数が100を超えてるぅー↑↑↑↑
良く見たら評価1がめっちゃ増えてるぅー↓↓↓↓
って感情のジェットコースターで遊んでた。
皆さん、評価と感想ありがとうございます。
評価はされると嬉しいし、感想は読んでて楽しいです。


強欲の瞳編①

 皆さん、こんにちは。

 愛しいあの人が無事であったことが分かり気力充実なマルコ・グレンジャーです。

 

 ニコレッタの放つ魔力の籠った黄金の右拳で地に沈んだ俺は、買い物を断念して腹を擦りながら宿舎へと帰った。なにが気に障ってしまったのだろうか。アイリス様の心証を良くすることは俺が力を得て彼女を取り戻す上で大事なことだというのに。

 

「ニコレッタもチョコレートを食べたかったのかな」

 

 もしかしたらシャドウガーデンでこき使われて粗食しか食べられない日々を過ごしているのかもしれない。シャドウ、やはり奴を一刻も早く殺さなくては。

 

 ちなみにニコレッタを見つけたことや俺が過去に教団およびシャドウガーデンと接触していることはアイリス様含めて誰にも話していない。悪魔憑きに対して国王陛下や国家の重鎮たちがどういったスタンスなのか不明瞭でリスクがあると考えたからだ。少なくともマルケス侯爵は娘を教団とやらに引き渡す選択をし、それ以降も平気な面をして生きている。

 アイリス様個人のことは信頼しているが、あの人は猪突猛進なところがあるので迂闊に情報を共有はできない。

 

 そして、チョコレート購入のリベンジもあって再度ミツゴシ商会を訪れた時にはニコレッタの姿はどこにもなくなっていた。ルーナ会長にもそれとなく探りを入れてみたが、惚けているのか本当に知らないのかニコレッタが扮していた姿の店員自体が存在していない。

 

「また、会いたいな」

 

 抑えられない想いはあるが、俺と彼女が頻繁に接触することをシャドウガーデンがどう捉えるかも分からない。俺と会うことでニコレッタの身に危険が及ぶ可能性があるのであれば、どちらにしろ会いに行くことを控えただろう。とにかく急いでシャドウを殺し、彼女を取り返そう。

 

「ここね。用意はいいかしら、グレン、マルコ」

「勿論です」

「はい、問題ありません」

 

 そんな俺はいま、アイリス様、アレクシア様、グレンさんと共にミドガル王国にある学術学園の副学長ルスラン・バーネット氏の部屋を訪れていた。

 目的はアレクシア様誘拐事件解決後、ディアボロス教団の施設から押収されたアーティファクトの解析を依頼するためだ。しかし、その相手はかつて魔剣士としてブシン祭優勝経験を持ち、研究者としても名を馳せるルスラン氏ではない。

 

「ようこそおいでくださいましたアイリス王女殿下。シェリー、ご挨拶なさい」

「いらっしゃいませ、アイリス様」

 

 依頼相手は桃色髪から一房だけ跳ねたアホ毛が特徴的な美少女シェリー・バーネットちゃんだ。

 魔剣士学園に隣接する学術学園の生徒であり、若干十六歳の身ながらミドガル王国随一の頭脳との呼声も高い才女である。苗字から分かるようにルスラン氏とは親子関係だが、実子ではなく養子であるらしい。

 

「シェリー・バーネット、あなたにこのアーティファクトの解析を頼みたい」

「え……? しかし、私はまだ学生ですし……」

 

 席を挟んで座ったアイリス様は単刀直入にシェリーちゃんへ依頼内容を伝えた。

 返ってきた反応は萎縮と疑問。

 王女が二人でやってきてアーティファクトの解析依頼をされるなんてプレッシャーだよな。

 

「あなたの研究成果は国内外に広く知られています。この分野であなたに勝る研究者は少なくともミドガル王国にはいない」

「いい機会だ。受けてみてはどうだね」

 

 シェリーちゃんの反応は芳しいものではなかったが、ルスラン氏からアシストが入った。

 自身の能力に自信がないのか、依頼を請けることを躊躇しているシェリーちゃんの頭を撫でながら激励する。血の繋がらない親子だが、両者のやり取りには血に劣らない強固な繋がりがあるように思える。

 

「これは君にしかできない仕事なんだ」

「……わかりました」

 

 了承の言葉と共に、シェリーちゃんはアーティファクトを受け取った。

 

「万が一に備え、警備には『紅の騎士団』をあたらせます」

「確かアイリス様が新設された騎士団ですね」

 

 今回の調査依頼に俺とグレンさんが同伴した理由がこれである。

 このアーティファクトはディアボロス教団に狙われている。

 教団の施設から押収された物はこのアーティファクト以外にも多数存在していたが、何者かの手によって保管庫ごと全てが焼失させられてしまっていた。

 

 ……俺の正直な所感を述べるならば、内部の犯行だと思っている。つまり国に仕えながら国を裏切る内通者が存在しているということだ。これが国王や重鎮に悪魔憑きの話を伏せる判断をした理由のひとつでもある。さらには紅の騎士団の予算案が通らないという事態も発生している。文官から()()マルコ・グレンジャーを抱えているのだから、充分でしょうなんて嫌味まで言われた。

 

 あのマルコってどのマルコだ。俺は数いるマルコの中でも知名度が相当低い。ちびな丸子ちゃんや不死鳥なマルコさんに勝てる気はまるでしない。

 

「まだ小規模ですが信頼できる者たちです」

「それほど既存の騎士団は信用できませんか」

 

 ルスラン氏の問いにアイリス様は答えなかった。第一王女が自国の騎士団を信用できないとか言える訳がないので、これはルスラン氏の意地が悪い。

 

「ふむ、いいでしょう。二人までなら許可しましょう」

 

 あ、でも気が利く人のようだ。

 これ見よがしにアイリス様の後ろに二人控えているのを汲んでくれたのだろう。

 

「グレン、あなたに一任します。マルコと共に警備を頼みます」

「ほう、あの"王女の懐刀"をお貸ししていただけるとは」

 

 ……んん?

 王女の懐刀?なんだそれ?王族専用の装備品だろうか。

 

「姉さま、なら私も協力します」

 

 頭にクエスチョンマークを浮かべる俺を放って話しは進んでいく。

 あれ、全員なんの疑問も抱いてなさそうだけど、そんなに有名な刀なのだろうか。

 俺、アイリス様が短刀を持ってるのとか見たことないんだけど。

 

「姉さま、私は知りたいのです。彼らの目的が何なのか」

 

 懐刀のことが気にはなったが、話に置いて行かれそうだったので意識を会話に戻す。

 どうやら、シャドウによって命を救われたアレクシア様はシャドウガーデンの目的がどこにあるのか気になっているらしい。確かに連中は教団に殺されかけた俺の命も助けてくれたし、ニコレッタの悪魔憑きも治してくれたと思われる。正義の集団には見えないが、私利私欲を貪る悪党でもないだろう。良く考えたらアイツら何がしたくて存在している組織なんだろうか。

 

「わかりました。学業に支障の出ない範囲で、かつ危険の少ない任務でのみ協力を要請します」

 

 ……そこ許可しちゃうんだ。

 アレクシア様の腕前は決して悪くはない。悪くはないのだが、巷を騒がせている人斬りの被害に遭って負傷しており片腕が使えない状態だ。人斬りは漆黒の衣装を纏いシャドウガーデンを名乗っているようだが、連中のこれまでの動きとやっていることが合致しない。恐らくは教団が罪を擦り付けるため自作自演していると思われる。

 そんな経緯もあって現在のアレクシア様は戦力として数えるには不安だ。シャドウのことは俺が知っているから人相確認目的でいてもらう意味も薄い。薄いんだがシャドウガーデンのことは誰にも伝えていないので断ることも難しい。

 

 守る対象が無駄に増えてしまいそうだが、騎士としては望むところか。

 

「アーティファクトの件、よろしくお願いします」

 

 そう言って席から立ち上がったアイリス様と共に、俺たちは部屋を後にした。

 

――――――

 

「さて、流石に怪しいところはないな」

 

 押収した物品が狙われたことからも教団はコチラの情報を入手する術を持っている。

 学術学園の生徒にアーティファクトが預けられていることを知っているのだとしたら、奪取するための下準備として学園内になにか細工をする可能性があるため調べて回っていたのだが、異常はない。

 

「小腹も空いたし、学園のカフェテラスで何か食べて戻ろう」

 

 護衛任務してんじゃないのかよ、と思われるかもしれないがシェリーちゃんは年頃の女の子だ。ムサい野郎が二人も付きっきりでは精神的に疲れてしまうし、解析の邪魔だ。そんな訳で交代制で一人が傍に付いて、もう一人は休憩を取りつつ周辺巡回する体制を敷いている。

 

「懐かしい。……ニコレッタとも一緒に食べたかったな」

 

 年齢差の問題で俺と彼女の魔剣士学園在籍期間はあまり被らないのだが、それでも短いながら同じ場所で同じ時間を過ごせるはずだった。行き交う学生の中にはニコレッタと交流のあった生徒も少なくない。だが、彼ら彼女らからニコレッタの名が出ることはない。彼女の婚約者の座を巡って俺と争った貴族の子息たちは今は別の女の子に夢中だ。

 それも仕方のないことだろう。悪魔憑きとなり、何処に行ったとも知れぬ相手に愛を保つことは難しい。貴族として次世代へ血を繋げる役目は大切だ。だから恨み言が言いたい訳じゃない。

 

「俺もそうなっていた可能性があったんだよな」

 

 あの時、家を飛び出してマルケス領に向かわなければ。

 侯爵家から現れた教団の連中を追い掛けなければ。

 俺はニコレッタ・マルケスのことを記憶の片隅に追いやって、能天気に別の子の尻を追いかけ回していたのかもしれない。

 そう考えると恐怖に体が震えた。

 

「それにしても、ニコレッタより美人な子は一人も居なかったな」

 

 呟いた瞬間、ガンッという鈍い衝突音が耳に届いた。

 

「んあ?」

 

 運ばれてきた食事を口に入れながら振り返ると、植え込みの向こう側からブラウンのお団子髪がひょっこり飛び出した状態でプルプルと震えている。

 

「ニコレッタ……?」

 

 名を呼ぶとお団子がビクンと大きく跳ね、植え込みに沿って高速で移動し始めた。

 ニコレッタ!?ニコレッタが何故ここに……逃げたのか?自力で脱出を?ニコレッタ!

 つい先日、全く同じようなことをやった気がするが、なぜか彼女がミドガル魔剣士学園に居る。

 食事を中断し、慌てて彼女を追い掛けようとすると俺の肩に手が乗った。

 

「お客様、お会計がまだです!」

 

 それどころじゃないんですけどおぉおぉぉぉぉーーー!!

 一番高い金貨を机に叩き付け、俺はカフェテリアを出た。しかし、もう視界のどこにもニコレッタの魔力とお団子髪は存在しなかった。

 

「あ"ぁあ"ぁぁぁぁっっーー!! ニコレッタといっじょに学食デートができるチャンスだっだのにい"ぃぃぃぃっ!!」

 

 俺は泣いた。

 人目も憚らず、赤子の如く泣き喚いた。

 ミドガル王国騎士の証であるマントを羽織った状態でギャン泣きした。

 

 なぜ彼女がこんなところにいるのかは分からない。シャドウガーデンもアーティファクトの情報を聞きつけて奪取しようとしているのか。それともアーティファクトを餌にして誘き寄せた教団を相手になにかしようとしているのか。

 

 だが、今だけはそんなことどうでもいい。

 俺の少年期と思春期はニコレッタという存在によってある意味破壊されたと言える。

 彼女との青春をどれだけ夢見ていたか。

 制服デートをして学園の行事を共に回って、寮生活というちょっとした非日常の中で季節のイベントを一緒に過ごす。婚約者なのだから、学生時代だけの火遊びではない一生の思い出をたくさん作れるはずだった。だというのに現実は数年ぶりに変装した彼女の姿を見られただけ。

 

 許さねえぞ……よくも俺の青春を奪ってくれたなディアボロス教団。

 殺してやる。

 

「殺してやるぞシャドウ」




アニメでグレンさんが叛逆遊戯のレックスに即堕ち二コマみたいに負けたの笑うとこなのか未だに判断に困ってる。
学園テロ編は全六話になってます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。