木のある世界の小さな配信者   作:こんこんВерныйカワイイヤッター

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過去回です。


白野とアルバトロス 前編

私は大阪のとあるシェルターで産まれた。家族関係は良好だったけど母が病弱で父は家族を養うために忙しかった。ヨッパは親戚のおじさんみたいな位置で別に血縁ではないが父と仲が良く母と私の世話を父の頼みでしてくれていた。しかし4歳の頃、流石に一人で養うことが辛くなってきたのか父がもっと収入の良い冒険者に手を出した。前までは晩には帰ってきて皆で食卓を囲んでいたけれど冒険者になってからは1週間に1回帰ってくる程度になった。それでも家族仲は良かった。

 

5歳。母が他界した。その頃シェルターで流行していたインフルエンザに罹ってただでさえ病弱だった母は途端に高熱を出した。初めは39.6℃ぐらいで高いねぇ…と少しぐらいなら話せるぐらいだったけれど少しずつ40℃を超えるようになってきてある日何を話しても言葉を返さなくなり遂には脈が止まった。私にはあと父とヨッパしか居なくなった。父は帰ってくるたび笑っていた。でもその笑顔は貼り付けたような笑顔で見るからに悲しそうだった。父はといえば冒険者として大成して良い装備や頼りになる仲間が居た。この仲間は後にヨッパとパーティーを組んだ人たちだ。

 

6歳。父が戦死した。中型のモンスターに跳ね飛ばされたらしい。それを聞き急いでヨッパと父が拠点としていたシェルターに向かった。父が着ていたプレートキャリアのプレートはバキバキに破壊されチェストリグの中のマガジンからは弾があふれ出し、父の心臓は肋骨と一緒にぺちゃんこになっていた。遂に私は養ってくれる人を失った。笑い合える味方を失った。最愛の家族を失った。もうこうなったら私が冒険者になるしかない。そう思い父の装備を身に纏いヨッパと一緒に冒険者になった。

 

冒険者になって1年目。父の仲間に支えられながら冒険者としての心構えと戦い方を覚えた。初めて手に入れた灰色の果実の味はまだ覚えている。…あんまり美味しくはなかった。けど何か癖になる味だった。この頃から私の戦い方は定まった。ヨッパがドジって貴重な果実を全てラットに与えてしまって発狂していたのはここに記しておく。

 

冒険者になって2年目。ある組織からスカウトされた。その組織の名はアルバトロス。京都を中心に活動しているクラン…クランとは冒険者たちの派閥の一種だ。まあアルバトロスからスカウトが来た。何でも偶然来ていたアルバトロスの嘴部隊の隊長の目に留まったらしい。アルバトロスは頭、目、嘴、鉤爪、主翼、尾翼から構成されている。頭は全体的な意思決定をする代表。目は精鋭揃いのオペレーター達の部隊。嘴はクランのために死地にも赴く百戦錬磨の斥候部隊。鉤爪は絶対的な強さを持ち「鉤爪部隊とは、勝利である」と言わしめた最強の戦闘部隊。主翼はそれら全てを数でサポートする主力部隊。尾翼は金の卵が揃う将来有望な部隊。アルバトロスに入るだけでも難しくアルバトロスに入れる時点でベテラン以上の強さだということは確定している。そして最初に入るのは尾翼部隊。そして一定の戦力だということを証明できれば主翼部隊に入れる。そして更に部隊長から認められることで目、嘴、鉤爪に入れる。そう、アルバトロスは精鋭部隊なのだ。アルバトロスに入ることになってヨッパとは一度別れた。「帰ってくるときは良いものをお見上げに買って帰るね」と約束して別れた。

 

アルバトロスに入って半年、早くも尾翼から主翼へ、そして更に嘴部隊に入ることができた。嘴部隊ではまだひよっこ同然だったが嘴部隊は暖かく迎えてくれた。嘴部隊として初めての作戦は覚えている。主翼部隊の第2大隊が出撃したがその一部が帰らずその部隊の捜索をするというものだった。その作戦での主翼部隊の生き残りは行方不明になった14名のうち5名だった。その他は3名は死亡、6名が感染し嘴部隊の前に立ちはだかった。嘴部隊はそれを殲滅、生存者の救援に成功した。

 

アルバトロスに入って1年が過ぎた。副隊長が戦死した。そのとき私は待機中だったためそれを知ったのは出撃していた第一中隊が帰ってきたあとだった。失った副隊長の穴を埋めるために急遽選抜が行われた。その結果選ばれたのは私だった。それからの日々は今までとは比べ物にならないほど多忙になった。

 

隊長は何というか突拍子もなく不思議なことをしだす人だった。突然買い物に行こうだとか紅茶買いに行こうだとか言い出す。

「ねえ白野ちゃん。この服かこの服、どっちが良いと思う?」

「服は私わかりませんよ?」

「まぁまぁそう言わずに。ほら、どっちが良い?」

「…右ですかね」

「じゃあこれにするね!」

そう言ってレジに行こうとしたその刹那、

「あっ!これいいじゃん!」

と突然言い出し、お金が足りないからとせっかく選んだ服を置いてしまったりあるとき買い物に行ったときは、

「この紅茶、どうかな?」

「飲めればいいんじゃないですか?」

「それじゃつまんないじゃん!ほら!」

そう言って無理矢理籠のなかに紅茶のパックを入れてきたり、

「白野ちゃんはご飯好きなの何?」

と任務中に言い出し終わったあと、報告書を書かないといけないのに

「豚骨ラーメン食べよう!」

「ちょっやめてください!頭の人達に顔合わせないといけないのにそんなもの食べないでください!!」

しかも報告書を書き終わって頭の人達に報告したあと

「うわーん!豚骨ラーメン食べちゃったからあんまりお腹すいてないよー!」

「そんなもの食べるからじゃないですか!」

「あっサンドウィッチある。これ食べよう」

「あぁもぉぉぉ…!」

…まあ色々あったけど楽しい人だった。母が病弱じゃなかったらこんな感じだったのだろうか。

 

「ねえ皆で写真撮ろうよ!」

突然そう隊長が言いだした。まあそんな感じで嘴部隊の第一中隊の皆と写真を撮った。同期の谷口とか後輩の高橋も一緒に入って隊長も私の後ろに立って抱きついてきたりしてそんなこんなで写真を撮った。その写真に写ったみんなは輝いてみえた。

 

執務室で仕事をしているときにふと、そういえば隊長の前任の人はどうなったんだろう、と思って隊長に聞いてみた。

「前の隊長?あぁ…」

少し隊長は言いよどんだ。

「前隊長はね…逃げたんだ」

「逃げた?」

「うん」

隊長は肯定したあとこう言った。

「実はね、嘴部隊の隊長って長続きしないの」

「それは…どういうことですか?」

「嘴部隊って斥候部隊でしょ?敵地に入って偵察したりちょっかいかけたり…」

「まぁはい」

「要するに…死地に向かうってことじゃん」

「…あ」

わかった。いや、わかってしまった。

「そう、みんな死んじゃったり心が折れて行方不明になっちゃうんだよ。私は5年以上隊長をやれているけど大抵の場合3年も保たない」

彼女は手元の名簿帳に書き込んでいた手を止めて閉じる。

「写真、撮ろうか」

「え…でも仕事が…」

「いいから、撮ろうか」

そう言って彼女は席を立ち傍らに置いていたスマホを手に取る。そしてタイマー機能を使ってカメラをセットする。そして私の傍に立ち私を寄せる。シャッター音がなる。スマホに写っていた彼女はなんというか…アンニュイな笑みを浮かべていた。

 

ブリーフィングを開始する。今作戦の目的はソロの冒険者の証言により判明した驚異的な強さを誇るモンスターの捜索、そしてその殲滅。今作戦は我々嘴部隊第一中隊と鉤爪部隊第一中隊、主翼部隊、第三大隊と連携して事に当たる。我々の任務は目標の捜索。戦闘は鉤爪部隊に任せる。モンスターの奴らにより高く、長く飛ぶのは我々アルバトロスだということを教えてやれ!!以上だ。総員掛かれ!

 

「嘴部隊、嘴部隊。こちら鉤爪部隊。応答せよ」

「こちら嘴部隊。どうした?」

「戦況はどうなっている?どうぞ」

「未だ目標は確認できず。どうぞ」

「了解、以上」

無線を切る。

「隊長。鉤爪部隊から目標の捜索をせかされてます」

「せっかちだなぁ。第一中隊!前へ!」

隊長はそう言って部隊を前進させる。

「もうそろそろ発見が報告されたところだけど…」

隊長はそう言いながら頭を掻く仕草をする。

「こちら前衛第一部隊。目標のものと思われる足跡を発見。どうぞ」

「こちら後衛第一部隊。その場で待機。前衛第二部隊、前衛第三部隊と合流後捜索を開始せよ。以上」

「…見つかったね」

「そうですね」

「ふぅ…これより前衛第一部隊と合流する!続け!」

 

「前衛部隊!見つかったか!?」

「いえ、まだ発見できてません」

まだ発見できない。流石に焦りを感じてくる。

「焦らないでね白野ちゃん。焦ったら負けるよ」

どうやらバレていたようだ。隊長からそう言われて少し落ち着く。

「こちら前衛第二部隊、足跡を発見。かなり新しい。どうぞ」

「了解。すぐに合流…」

なんだ?何かおかしい。足跡がこの辺にしかないのに足跡が更新されてる?

「前衛第二部隊へ、その足跡はどこへ向かっている?」

「…はっ!?そちらへ向かっている!警戒せよ!」

突如後ろから轟音が聞こえる。見ると後ろに居た5名が吹き飛ばされ倒れていてその近くには右腕が肥大化した3m超の熊のようなモンスターが居た。そしてその周りには狼のようなモンスターが大量に居た。

「鉤爪部隊へ!目標発見!救援求む!」

「こちら鉤爪部隊、現在そちらへ向かっている。戦線を維持せよ」

「前衛部隊!突入!後衛部隊!前衛部隊を援護せよ!」

前衛部隊が突入し前線を張るもののなぎ倒される。

「こちら嘴部隊!前線を維持できない!後退する!」

ライフルを撃ち、止めようとするが勢いが全く止まらない。集中砲火で対処しようとしても取り巻きが多く対処に困る。

「隊長!これ以上は無理があります!隊長!隊長?」

「指揮権を白野副隊長へ移譲する。第一中隊、撤退せよ」

「隊長!?」

見ると隊長のマスクの半分が欠けていた。

「隊長…?」

「はは…もう無理だね…ほら、ここは任せて。ほら…ね?」

そう言って割れたマスクを完全に取り払いにっこりと笑う。

「…っ!」

 

「鉤爪部隊、現着した。指示を…」

「うあああああああああアアアアアアアアアアァァァァァ!!!!!!!!!あぁ…」

慟哭する。

「くそ…くそ…くそ、くそ!くそくそくそ!!!!」

「ああああァァァァ!!!」




白野、存分に苦しむのだ(邪悪な笑み)
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