木のある世界の小さな配信者   作:こんこんВерныйカワイイヤッター

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てすとってこわいね。ほんとこわい。ちょっとこわかったちがくきそはだいじょうぶでした。もうなにもこわくない。


白野とアルバトロス 後編

「罠部隊…ですか?」

そう谷口那由副隊長が言った。…隊長が戦死したあと私が隊長になって次点で状況判断能力に優れた谷口が副隊長になった。

「そう、罠部隊」

「どうしてそんな部隊が必要なのですか?」

「いや、隊長が死んだとき、撤退するところに足止めのためのものが無かったなって」

「まあ、確かにそうですね」

そう、何も無かったのだ。撤退時足止めになっていたのは撤退中の小銃部隊による射撃。それ以外は何も無かった。

「これから嘴部隊の戦術を変える。これまでの銃撃戦を重視した戦闘だと前の戦闘のように近接戦闘のとき被害を受けるからね」

「まあモンスターに銃弾は利きづらいですからね…最低でも近距離から中距離なら5.56mmの+P弾薬、長距離なら7.62mmが望ましいです」

「少なくとも攻撃力に優れた弾でないと戦闘だと難しい。攻撃性能の良い弾は大抵反動が酷い。なら、トラップはどうか?」

そう、トラップなら戦略の時点で十分主力に入れられる。

「トラップなら、十分な攻撃力を得られるし作戦段階から視野に入れられる。最も恐れるべきは接敵後に判明する敵の戦力だ。それを作戦段階で殆ど壊滅させられるというのは大きい」

「なるほど…しかし今までそんなトラップを主体にした戦闘なんて嘴部隊は経験していません。これに関しては誰も専門外ですよ」

「いや、高橋が居る。あいつの家系は昔からハンターをやってたらしい。もしかするとヒントが得られるかもしれない」

「では、取り敢えずは試験的に運用しますか」

 

それは成功した。部隊の損耗は従来の戦闘より3割ほど少なくなった。しかし全ての戦闘において成功することはなく一定の損耗はあった。これはある作戦のときのこと。

「前衛部隊へ、こちら後衛第一部隊。敵は見えるか?」

「こちら前衛第二部隊。異常を発見できず」

「こちら前衛第一部隊。足跡を発見した。これより追跡を開始する」

「こちら後衛第一部隊。了解。これより前衛第一部隊を除く全隊はポイントαへ集結せよ。前衛第一部隊はターゲットをポイントαへ誘導し罠へ掛けろ」

「こちら前衛第一部隊。了解」

このとき後衛第一部隊を中心に後衛第二部隊、第三部隊と前衛第一部隊、第二、第三部隊が放射状に展開していて前衛第一部隊は前方左翼に展開していた。そしてポイントαはその後ろの地雷やワイヤートラップが設置されているポイントである。現在は敵大型モンスターをポイントαに誘導している。そして今罠の起動が確認された。

「こちら後衛第一部隊。全隊射撃開始。繰り返す射撃開始」

そう命じると全員が罠に掛かった地点を集中的に攻撃する。すると数分と持たずに目標は沈黙した。

「目標沈黙。警戒しながら待機」

そうして数十分間経った。もういいだろうと思い接触命令を出した。瞬間、前衛第一部隊の周囲に砂ぼこりが立ち上り数人が倒れた。

 

戦場ではいつも予想外のことが起こる。ここまで対策しても戦死者は出る。これはたった一例でしかない。あるものは吹き飛ばされ首がへし折れ、あるものは私をかばって音速で飛んできた種に貫かれ出血多量により死んだ。人が死ぬ、その度に名簿表の名前に横線が引かれていく。あるとき持っていた万年筆が手から転げ落ちた。ふと鏡を見るとそれは表情が無かった。

「今回の被害ですが「やめてよ!!」…」

「もう…やめてよ…」

あるとき谷口から渡された報告書を弾き落としてしまった。多分私はそこで心が折れたんだと思う。私は結局2年程で隊長の座を谷口に譲り渡して大阪に逃げてしまった。知らない人がみたらその程度で何言ってんだと思うかもしれないがとにかく私はもう何もやりたくなかった。

 

大阪に帰ったあと最初に出迎えたのはヨッパだった。ヨッパは疲れ切った私を見て驚いた顔をしていた。ヨッパは最初からやり直そうと私をヨッパ達のパーティーに誘ってきた。私はその誘いを受けてゆっくりと日々を過ごしていた。

 

「シロちゃん…起きてください…」

ふとホノさんに起こされた。確か大阪のシェルターを出て外で1泊したんだっけ。

「…?シロちゃん?」

「えへへ…折角同じパーティーですから愛称でもどうかなって」

「なるほど…」

眠い目を擦りながら起きる。

「まだ夜中だけどどうしたの?」

「索敵に出てた紅さんが何か変なものを感じるって言ってました」

「変なもの?」

「多分モンスターだと思う」

「なるほどね…」

野営用の器具を撤去する。

「取り敢えずモンスターが見つかった以上危ないから移動するよ。そういえば暗視装置って持ってる?」

「暗視装置?高いから結局買ってませんでしたね」

「じゃあライトは?」

「それは持ってます」

「じゃあそれ付けて、取り敢えずもう移動しちゃうよ」

 

偵察に出ていた紅さんと合流し京都へ急ぐ。しかし目の前に足跡があった。

「獣型…中型だけど統率が取れてる?」

基本的にモンスターは狂暴で集団で居るのは少ない。集団で居るのは大抵感染してから時間が経っていないかより強いボスが居るときしかない。

「…念のため倒してから進もう」

そこから1km程歩くと足跡が新しくなった。皆に無線で注意を呼びかける。ライトをカチカチと点滅させて索敵する。すると唸り声が微かにした。その方向にライトを向けるとモンスターが居た。発砲しようとしたその瞬間、暗闇から突然影が動きモンスターが刺されたあとそのまま真っ二つに切り裂かれ斜め45°で吹っ飛ばされる。

「…紅さん、暗闇だと危ないからちゃんと言ってから動いて」

「…なんかやだ」

「えぇ…」

確かさっき見つけた足跡は3体分だったか?そう考えていると1体のモンスターがライトで照らしだされる。それをホノさんと十字砲火で倒す。あと1体。後ろから飛びかかってくる。それをライフルでいなしてハンドガンを抜きハイポジションで撃つ。どうも今回は感染してからまだ若かったようだ。2、3発撃つとすぐに沈黙した。念のため頭をナイフで刺しとどめを刺す。

「これで全部か」

「変な感覚が消えたわ」

「急ぐよ、足元に気を付けてね」

「大丈夫よ」

戦果を確認したあと急ぎ足でその場を離れる。

 

京都には早朝に着いた。大阪のより少し大きめの階段を降り、エアロックを過ぎるとギルドのカウンターがある。やっぱり変わらないなここは。

「本日はどのようなご用件でしょう…か?」

「移住届を提出しに来た」

「…今まで一体どこに居たんですか?」

「大阪のほうに少しね」

「死んでるんじゃないかと思ってましたよ」

「そうそう死ぬような人じゃないって知ってるでしょ?」

「まあそうですね。安否不明状態の解除を確認しました。ようこそ京都へ」

「ん、ありがと」

「谷口さんなら執務室に居ますよ」

「わかった」

そう言ってカウンターを離れる。アルバトロスはいくつかの部屋を占有している。他の冒険者に迷惑を掛けているのかと思うかもしれないがこれは単純に棲み分けなだけで別に他意は無い。アルバトロスの部屋が連なっている場所まで行き嘴部隊の執務室の前で立ち止まる。

 

止まった記憶が流れ出す。

「今回の作戦よろしくね。準備が終わり次第外で集合して点呼が終わったらそのまま出発するよ」

「了解です」

そう言って私は倉庫へと急ぐ。そして補給を済ませたあと集合地点へ進む。

「全員居るね?」

そう言いながら数を数える。今回は三個小隊、総員18人で次作戦で必要になる地図の作成、及び脅威の確認する。つまるところ偵察だ。今回のコールサインは隊長率いる部隊が第一小隊のレッド、私が率いる第二小隊がイエロー、第三小隊がブルーだ。

「全部隊の集合を確認しました」

「よし、行くよ」

隊長の軽い言葉で全部隊が出発する。

「レッドからイエローへ、左翼前方に移動せよ」

「イエロー、左翼前方に移動、了解」

「レッドからブルーへ、右翼前方に移動せよ」

「ブルー、右翼前方に移動、了解」

隊長の指揮で部隊が展開される。

「隊形を傘型隊形へ移行」

「傘型隊形了解」

部隊を偵察に向いた隊形へ移行させる。そうして北東に数km進むと目標の地点が見えてくる。

「レッドから全コールサインへ、その場で警戒。マッピングの用意急げ」

その言葉の通りその場で待機しながらマッピングを始める。そうしているうちに数時間が過ぎる。

「イエローからレッドへ、マッピング終了。また脅威を北西1km先に確認」

「レッドからイエローへ、脅威を地図に示せ」

地図に赤い丸を書きその位置を示す。

「イエローからレッドへ、地図に示した」

「レッド了解。ブルー、マッピングは終わったか?」

「ブルーからレッドへ、マッピング終了」

「レッド了解。全コールサインへ、作戦完了と判断、撤収する。集合地点はレッドの座標へ」

そうしてレッドの元へ集合してシェルターへ帰還する。

「みんなお疲れ。さあ休んでね」

デブリーフィングが終わり全員が解散する。

「さて、私は頭の人達に報告に行くから先に執務室に行っといてね。さあこれから忙しくなるよ」

「分かりました」

そうして隊長と分かれて執務室に帰る。隊長が帰ってくるまで暇なので積まれてある書類を整理していく。数時間後、廊下から足音が聞こえてくる。

 

「ただいま」

 

ガタッと谷口が椅子から立つ。そして書類の整理をしながらこちらを見てくる高橋。

「調子は…」

そう言おうとした瞬間、谷口が抱きしめてくる。

「もう帰ってこないって思ってましたよ、隊長!」

「隊長はやめなって。今は谷口が隊長でしょ?」

「はい…!」

「あとまぁ…友人から誘われたらNOとは言えないじゃん」

「ありがとうございます…!」

「…ちょっと離して…」

そう言うものの離そうとしない。

「高橋…ちょっと剝がしてくれない?」

「はぁ…わかりました」

そうため息をつきながら高橋は谷口を引き剝がす。それでもまだ足りないのか谷口は拘束を解こうともがいている。

「谷口ってこんなだったっけ…」

「あなたのせいですよ?」

過去の記憶と似ても似つかない谷口の様子に疑問を浮かべていると高橋は自分のせいだと言った。

「私のせい?」

「あなたはもうちょっと慕われてることを自覚してください…」

「…そんなに慕われてたの?」

「まあ…週一で名前が出るレベルでは慕われてましたよ」

「…えぇ?」

「あと勝手にどっか行ったことについてあとで ゆ っ く り と お話しましょうか」

「ウッ…」

…こわい。




人物紹介のコーナー。
谷口那由
今の嘴部隊の隊長。黒髪のショートボブ。使用武器はM4A1にバーティカルグリップとチューブ型のドットサイトを付けているものとバックアップのMK.23。黒く塗装されたSPC(ボディアーマー)を着用している。

高橋和也
今の嘴部隊の副隊長。黒髪眼鏡マン。使用武器はM4A1とMEUピストル。カスタムは無い。SPCS(ボディアーマー)を着用している。
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