キヴォトスにて『悪魔』は散る   作:あのお方

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1.不死身の悪魔、キヴォトスにて散る(1回目)

 ◆OPENING◆“悪魔”散る(n回目)

 

「おのれ! UGNよ! あとは任せたぞ!」

 

「ぬ、ぬおおおおお!!!」

 

 白いスーツに赤いネクタイ、青いシャツに身を包み、鍛えられた強靭な肉体と不屈の精神を持つ男。

 

 その名を『ディアボロス』春日恭二。

 

 己の矜持の為、その体に爆弾の悪意を一身に受け、望まぬ被害を抑えるために巨大な爆弾を抱きかかえ込んだ。

 

 爆弾は特別製、建物一つ余裕で吹き飛ばす威力を持っていた。

 その爆発を抑え込む肉体は当然無事では済まず、爆炎に巻かれ、ちぎれ飛び、消滅する……筈だった。

 

(な、なんだ……これは、光? 違う! なんだ!!?)

 

 爆風を抑え込み、掛けていた眼鏡を吹き飛ばされながら、春日恭二はその炎の中に何かを見る。

 

(風景? これは、まるでスラム街のような……いや待て、吸い込まれていないか!!?)

 

 反射的に春日は逃げようとするも元々抑え込もうとしてしていたのだ。つまりは、もう遅い。

 

「ぬ、ぬわあああああああ!!!!」

 

 情けない悲鳴を上げながら春日恭二はその光の中、爆発の中心点に吸い込まて行く。

 

 直後、轟炎が舞い上がる。その大きさは春日恭二という巨大な男一人を呑み込んで有り余るもので……

 

 炎が収まり、その場に残されたのは砕け、使い物にならなくなった眼鏡とその想定された威力からはありえない程に小さな焦げ跡だけだった。

 

 その日、『ダブルクロス』という世界から、一人の男が消滅した。

 

 ◆MIDORU-PHASE.1◆“悪魔”降り立つ

 

 春日恭二が光に呑み込まれた次の瞬間に感じたのは強烈な熱、光、衝撃だった。

 全身を侵食するような痛みがじわじわと湧き上がっているのを理解し、瞬時に自らに何があったのかを理解した。

 

(爆発をまともに受けたのは確かか……だがこの痛みは、まるで高い場所から叩き落されたような痛みではないか)

 

 慣れた痛みに耐えながら周囲の確認をするためにうっすらと目を開ける。爆発の衝撃で脳が揺らさせている春日恭二は、ぼやけた視界の中で誰かが近付いてくるのを認識した。

 

(ガスマスク……?)

 

「大人の人? どうして、こんなところに……」

 

(何だ? 声からして、女子供か……んん!?)

 

 春日恭二は驚愕した。

 何故ならば、少女の頭に見たこともないものが浮いていたからだ。

 

(天使の輪!?)

 

 光の鋭い線が4本、スクエアを描くように重なり、青白く光ながら少女の頭上を浮かんでいる。

 春日恭二の語彙力ではそれを天使の輪と表現した。

 

(ここは天国!? いやしかし……クソ、意識が……)

 

「凄い怪我……取り敢えず、手当てしないと」

 

 春日恭二は、自らの体を持ち上げられる感覚と共に意識を失った。

 

 本人の感覚では一瞬、しかし実際には半日程の時間が経過し、春日恭二は再び意識を取り戻す。そして苦悶の声を漏らしながらながらも目を開けると、そこは廃墟……にしか見えない部屋だった。

 まず、一部天井や壁が消滅している。カーペットや壁紙などの装飾が軒並み存在せず、無骨なコンクリート面が剥き出しになっている。

 

(あ、頭がぐらぐらする……何故私がこんな所に居るのだ……と言うより、なんだ? 毛布かこれは……後は、包帯?)

 

 春日恭二は極めて冷静に自身の置かれている状態を分析していく。

 体の下に引かれている毛布は粗末なもの、包帯も古く、これでは最低限菌が入らない程度の期待しかできない。

 

(多分助からないけど……一応の手当てはしてやるか。という意図が透けて見えるぞふざけおって天使め……しかし、助かったのは事実か)

 

 揺れた頭で立ち上がる春日恭二。それだけにとどまらず、常軌を逸した生命力と精神力を発揮して扉らしき存在の元へ歩いて行く。

 

(ついでに現在の力を確認しておくか)

 

 扉に手をかけ、開くと同時に春日恭二はもう片方の手に力を込めていく。

 春日恭二の右手が、異形のモノへ変化していく。

 

 それは春日恭二が元居た世界で『破壊の爪』と呼ばれる(エフェクト)

 レネゲイドと言われるウイルスに侵された者達が行使する12種あるシンドローム(超能力)の内の一つ、キュマイラ(獣の権能)の一端。

 この世界、キヴォトスには存在しない未知の力。

 

 この時、春日恭二には二つのミスが有った。

 一つ、最低限の回復だけを済ませて即行動を開始したこと。

 二つ、自分を手当した存在が近くに居ると思いあたらなかった。

 

 そして最後に……この男、単純に間と運が悪いのだ。

 

 

 ◆MASUTA-SCENE.1◆最初の邂逅

 

 同時刻の同じ場所。そこには二人の少女が居た。

 少女らは重火器で武装をしており、その上で2人とも頭の上にはそれぞれ独自の形を持った光輪(ヘイロー)が浮かんでいた。ヘイロー含めてこの場所、この世界において至極真っ当な事で、疑問に抱くこともない。

 フードをかぶり、ガスマスクを付けたアツコとその片割れである黒髪と引き締まった肉体を持ったサオリという少女はアツコが連れてきたという『大人』が寝かされている場所に向かって歩いている最中であった。

 

「アツコ、本当に大人だったのか?」

 

「うん、凄くボロボロで、何時死んでもおかしくなかった怪我だったけど」

 

「ヘイローも無かったんだろう」

 

「うん、話しに聞く『先生』と一緒だね」

 

「私達の次の任務は聞いているだろうなら尚更……」

 

 どうして殺しておかなかったのか、という言葉を寸でのところで飲み込み溜め息を吐く。

 

「まぁ、治療したのはともかく直ぐに指示を仰ぎに来たのは正解か」

 

 サオリは無理矢理自分を納得させる言葉を吐き出しながらその『大人』が寝かされている部屋に繋がる最後の曲がり角を曲がって、見てしまった。

 

 己の右腕を悪魔の物へ変化させていく男の姿を。

 

「なんだ、貴様、その腕は……!?」

 

「ん……天使が二体だと!?」

 

 これが少女達と『悪魔』との最悪な出会いだった(ファーストコンタクト)

 

 

 ◆MIDORU-PHASE.2◆“悪魔”散る(キヴォトス1回目)

 

「姫! こいつか!?」

 

「う、うん……でもサッちゃん」

 

「話しは後だ、説教もな!」

 

 サオリが引き金に手を掛ける。弾は装填済み、安全装置など初めから外れている。だが、致命の鉄玉が放たれようとしているその時ですら春日恭二は気にする様子もなく別のことに思考を割いていた。

 

(後ろのガスマスク。あいつが私をここまで運んで治療したのか)

 

 銃を向けられているのにも関わらず、緊張感の欠片すらない。あまりにも自然体で佇む春日恭二のその姿にサオリはその姿から二つの可能性を導き出す。

 

(自らの置かれている状態すら把握できない大バカ者か……この程度の状況すら日常になっている狂人か……後者か!)

 

「戦闘開始、制圧する。援護しろ」

 

「うん……」

 

 サオリは指示を出すと共に引き金を引く。後ろに控えていたアツコも戸惑いながら手榴弾のピンを抜く。

 強力な弾丸は正確に春日恭二の胴体目掛けて飛翔し……春日恭二は静かに構えを取った。

 

レネゲイドとエフェクト(超能力)の気配は無しか。ふん、この程度の攻撃など……」

 

 春日恭二は今度は獣の権能(エフェクト)の一種である『イージスの盾』を使用しようとする。

『イージスの盾』は瞬間的に限界を超えた獣の力で強引に攻撃を逸らすという力業すぎるエフェクト(超能力)。春日恭二はその力を以てして弾丸を叩き落そうとした……しかし

 

「───体が、思うように動かん……ッ!? ぐわああああ!!!」

 

 エフェクトの失敗。同時に着弾し赤い鮮血をまき散らす。

 

「え」

 

「あれ?」

 

「ぐおおおおお…………っ! な、何故だ!? どうしてエフェクトが使えない!?」

 

「……えっと、サッちゃん?」

 

「あ、あぁ……一旦攻撃を中止す───」

 

「あのね、もう、投げちゃった」

 

 ころころと痛みと驚愕に混乱する春日恭二の足元を転がる小さなパイナップル(手榴弾)

 

「わ、私の力が……弱体化、している!? バカなぁああああああ!!」

 

 春日恭二の悲痛な叫びと共に、この日二度目となる爆発を身に受けた。

 キヴォトスにて……“悪魔”が散った(1回目)。

 

 

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