雷神、上鳴電気   作:一般通過呪術師

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あらすじにて紹介させていただいておりますが改めまして、つくしの様から掲載許可を頂きましたのでご報告させていただきます。今はただ感謝を。

そして拙作を読んでいただいてる皆様。感想、お気に入り、評価等ありがとうございます。沢山感想貰えて最高にテンションが上がっております。


ep.10 大丈夫。俺、頑丈だから

 

「………」

 

 

モニタールームは鉛のような重たい空気に包まれていた。

 

 

デモンストレーションを映し出していたホログラムのディスプレイは、上鳴の側を飛んでいたメインドローンから中継されている物を除き、スノーノイズによって中断されていた。

 

 

その理由を理解できていない者はいない。

 

 

「スゲェ音してたな」と瀬呂。

 

 

「青天の霹靂とはこういうことか」と常闇。

 

 

モニタールームにまで聞こえていた上鳴とオールマイトの戦闘音。

2人の一挙一動で街並みが変わり、コンクリートのビルが飴細工のように砕かれていく様を見ていた1-Aの心はほぼ1つに纏まっていた。

 

 

───次元が違いすぎる。

 

 

未だアマチュアと呼ぶことさえ烏滸がましいヒーローの卵達が見た、トップオブトップが演じた戦闘。その内容を完璧に理解することは難しく、自分とプロの差を見せつけられただけの形に終わった。

 

 

しかし、それを見て何も思わなかったと言えば嘘になる。オールマイト(片方)はともかく、その対戦相手は自分達と同じ新入生なのだから。

 

 

「電荷分離、磁性の付与、生体電流の増幅による神経伝達速度及び身体能力の強化……単一の個性にアレほどまで応用の幅を持たせられるなんて尋常な努力じゃ成し得ない。入学時にヒーロー仮免を持ってるって聞いたときから薄々思ってはいたけどやっぱり上鳴くんは別格だ。その彼から色々話を聞けるなんて僥倖だぞ………放課後から忙しくなるな……自主トレも見直さないと……」

 

 

1人は冷静に今の自分が分かる範囲での推測を立て、次に自分がどうするかを考え。

 

 

「……血中の鉄分は磁性を持ちません。持っていたらMRIなどの技術が生み出されることなんてあり得ませんわ。にもかかわらず、上鳴さんはそれをやって見せた。どうやって稲妻を任意の場所に落としているのか等は定かではありませんが、最低でも電位差の類をある程度コントロールできる事は確かなようですね……いえ、だからどうしたという話なのですけど……」

 

 

「…………ッ」

 

 

同様に分析を重ねながらも自身との差に打ち拉がれる者。眼前にあらわれた分厚く高い壁を前に、自分が見ていた世界の狭さを突き付けられた者。

 

 

「スゲェ漢気だった……! 俺はッ、俺は感動したッ! 上鳴はスゲェ漢だぜッ!」

 

 

「うおー! 早く私たちもやらせろー! ね、尾白くん!? 私ちょっと本気出しちゃうもんね!」

 

 

分かる部分だけを取り込み、その戦いに強い感銘と熱を感じる者。

 

 

そして───

 

 

「2人とも大丈夫かな……ウチ、ちょっと心配かも」

 

 

「確かに。耳郎くんの言う通りだ。アレだけ激しい戦闘だったんだ。早く上鳴くんを保健室に連れて行かなくては」

 

 

「こ、こえーよオイラ。何? プロヒーローってオイラ達が知らないだけでいつもあんな感じで命張ってんのか? 心臓3つくらいあっても足んねーよ。これに3年ぽっちで追いつけってか……? 正気とは思えねぇよ」

 

 

「ウィ⭐︎」

 

 

「峰田くん、気持ちは分からんでもないけど言わん方がええと思うんよ……あと青山くんはどういう感情?」

 

 

2人の様子を見て心配をする者、畏怖を感じる者。

 

 

しかし、誰一人として心をへし折られた者はいない*1

 

 

ここは日本ヒーロー科の最高峰。ポテンシャルや向上心の高さは他と一線を画す。

 

 

それぞれが反応を示す中、轟が「あ」と何かに気付いたような素振りを見せた。

 

 

「どうかしたの? 轟ちゃん」

 

 

「いや───映像が上鳴の用意したドローンからしか流れてきてねぇって事は、核兵器のハリボテごとビルも吹っ飛んだんじゃねぇのかって思っただけだ」

 

 

「あ」と1-Aの声がハモった。

 

 

 

 

 

 

 

「君たちは本当に愚かなのさ」

 

 

「「すみませんでした」」

 

 

場所は変わって保健室。

そこで上鳴とオールマイトはベッドの上で正座をし、金髪ピアスに白衣の出立の男の肩に乗ったネズミめいた生物───校長の根津から説教を受けていた。

 

 

「まったく! あと60秒、善院くんからの連絡が遅れていたら上鳴くんが死んでいたのさ!」

 

 

「正直すまんかった」

 

 

「デンキくん、今はおふざけの時間ちゃうで」

 

 

「本当にすみませんでしたァッ!」

 

 

「その点、コガネは立派やね。よう機転利かせてくれた。流石の俺も弟子がこんな形で逝ってもうたら、この子の親御さんの前で責任取って腹を切るしかあらへんわ……なあ? どう思うデンキくん」

 

「はい」

 

 

「はいやあらへんねん。そのボケた頭捻じ切るぞお前」

 

 

青筋を浮かべる白衣の男、善院尚哉。

彼がここにいるのには訳がある───戦闘の半ばでコガネが上鳴のバイタルを考慮し、その命を守る為に緊急連絡先に登録されていた善院のいる病院に連絡を入れていた為だ。

 

 

その連絡を出先で受け取った善院は血相を変えて母校に連絡し、職員室で書類を片付けていた相澤に情報が流れた。直ぐにハンソーロボが手配され、爆心地と化した演習場で満足そうな顔で死に掛け(倒れ)ていた上鳴が保健室まで運ばれ、オールマイトが付き添いという形で授業からフェードアウトした。それがことの顛末である。

 

 

そして善院はいても立ってもいられず、白衣のまま「最高速度でぶち抜いたるッ!」と空を走ってここまできた訳である。まあ、来た時には全て終わっていたのだが*2

 

 

「ヒーロー基礎学の授業は相澤くんが引き継いで別の演習場で見ているけれど……破壊され尽くした演習場は酷い有様さ。しかも今回の解体は今年度の予算に組み込まれていない」

 

 

「申し訳ありません、校長。どうしても先達として彼に伝えたいことが……」

 

 

「未来のトップヒーローに対する、スーパーヴィランの対処法をレクチャーする授業なら満点……超一流教師と言って差し支えないのさ。でも今回の趣旨なら映す価値無しだ。八木くん、2度とオールマイトを名乗らないで欲しいのさ」

 

 

「校長本名はっ!?」

 

 

「……で、お話の最中悪いんやけど。ええですか校長」

 

 

「何だい善院くん」

 

 

ネズミに叱られて小さくなるNo.1という珍妙な絵面が保健室で生み出される中、善院が申し訳なさそうに話を遮った。

 

 

「このクオリティの低いヒョロガリコスプレおじさんがオールマイトってホンマですか?」

 

 

確かにと上鳴は頷くが、オールマイトが「ああ、6年前に……」と過去の話を切り出した次の瞬間。

 

 

「ああ─────ッ!!?」

 

 

「保健室で叫ぶなや」

 

 

「いやいやいやだってそうじゃん! そうかそういうことか……! 合点がいったぜ! あの化物に立ち向かっていた別嬪さんがオールマイトの師匠なら、なるほどそうか次は緑谷か!」

 

 

上鳴は手を打ち「読めたぜ完全に」と1人で納得した。

 

 

言葉の意味が飲み込めない善院。よく分からない内に機密事項が流出していて頭を抱える根津。

 

 

そして全てに心当たりがあったオールマイトは口から「ぶーっ!」と勢いよく血を噴き出し、保健室のベッドを真っ赤に染め上げた。

 

 

慌てふためくオールマイトが言う。

 

 

「な、何のことかな上鳴少年。私はナチュラルボーンヒーロー。緑谷少年はただの……」

 

 

「喀血の後に言うセリフとしては苦しいやろ、それ」

 

 

「ぬぐぅ……」

 

 

状況を打開しようと口を回しかけたオールマイトだったが、善院からの追撃を受けて口を閉ざした。

 

 

オールマイトとの戦いを堪能した上鳴が言う。

 

 

「教室で見た時から”弱ってるな”とは思ってたが、まさか後継者を育てる為に雄英の教師になってたなんてな……緑谷には足を向けて寝れねーよ。俺は」

 

 

その満足げな顔は最早、授業がどうだとか自分の命がどうだという事を微塵も考えていなかった。自らの欲求を満たせられれば後はどうでもいいとでも言いたげな、どこまでも自分本位なその姿勢はヒーローよりもヴィランに近い。

 

 

それを危ういと感じないほど、オールマイトの教師センスは終わっていない。

 

 

だがオールマイトが口を開くよりも先に、善院が”個性”を使い根津を丁寧に肩から下ろしてから、すかさず上鳴へと近寄って拳を振り抜いた。狙いは鼻っ柱である。

 

 

「ぬぐえっ!?」

 

 

上鳴は拳打の衝撃でひっくり返り、そのままベッドから転がり落ちた。

 

そして善院の一連の動作にオールマイトは目を大きく開いた。

 

 

───攻撃の初動はおろか、根津校長を下ろした瞬間さえ見えなかった! ただの超スピードじゃない、それとは何か別の力が働いたような……

 

 

衰えていても彼が最強であることに変わりはない。動きに緩急を作り、速く見せるような技とは異なるそれにオールマイトは舌を巻いた。

 

 

「言葉で叱るんは相澤くんに任せて、俺は拳で語ることにするわ。オラ立てやアホ弟子。命の尊さをその身に刻み込んだるわ」

 

 

「やめてくれよ先生。悪かったって。やりにくいんだよ先生とは。気が付いたら吐くまで空中でお手玉にされるしよ……」

 

 

「善院、そうか善院! 君が!」

 

 

「………今度はオールマイトかいな」

 

 

善院が肩をすくめて言う横で、根津がオールマイトに「彼を知っているのかい?」と尋ねる。

オールマイトが頷き、言った。

 

 

「ええ。少し前の話になりますが、スターアンドストライプと電話対談するテレビ番組の企画がありまして……その収録後に少しだけプライベートな話をしたのですが、スターから日本のビルボードに”アニマティック”ってヒーローがいるでしょう? と聞かされまして」

 

 

「ああ、善院くんのヒーローネームだね」

 

 

「……何て言っとったんですか、アイツは」

 

 

「え、あ、いやあ。ちょっと本人には言い難いというか」

 

 

「まあ気にせんでください。その名前を名乗るつもりはもうありませんから」

 

 

「そうなのかい? うーん。だとしたら尚更言えないが……強いて言えば、”彼女はまだ待っているぞ”とだけ」

 

 

「恋バナかい?」

 

 

「ちゃうに決まっとるやろ発情期か? ………んんっ、失礼。この口がちょっと悪さしてもうたみたいで」

 

 

「君なら直ぐにでも10位以内に入れるだろう。流石にエンデヴァーやジーニストを超えるのは難しいだろうが」

 

 

「あんなんただの人気投票でしょう。そんなもん現役やった頃から微塵も興味なんぞありゃしません。スターがその名前出したのも分かりやすいからやろうし」

 

 

遠回しにビルボードを貶す善院にオールマイトの頬が引き攣った。

 

 

「えらい脱線してもうたな………話を戻しましょか」

 

 

話はオールマイト、否、オールマイトが持つ個性の話に移った。

 

 

オールマイトが語ったのは、その身に宿っていた個性がかつてオールフォーワンという巨悪から生まれ、それを打倒する為に紡がれてきた義勇の結晶であること。

そして、聖火の如く受け継がれてきたそれの8代目の担い手としてオールマイトが生きてきた道程。

掻い摘んでの話にはなるが、オールマイトが語る話は善院と上鳴の想像を超えた物だった。

 

 

「───そして6年前、私は奴を殺した。ワンフォーオールの最大の目的は成ったとも言えるだろう。だが」

 

 

「世界にはまだまだぎょーさん悪党がおる。オールフォーワンなんてデカい奴が世界にパイプ作ってへんとは思えへんし、まだまだその力は引き継いでいかなアカンという訳ですか」

 

 

「その通りだ。奴との戦いは私に消えない傷を残した。もう長くは戦えない……たぶん今日の戦いでまた短くなるかも……だから後継が必要だった。私に近しい精神を持った、次代のヒーローの卵が」

 

 

「で、選ばれたのは無個性の中学生と……ホンマ良かったですねオールマイト。聞いてた話から推察するに、個性持ちに譲渡してたらその場で死んどった可能性もあったでしょうね」

 

 

「「「へ?」」」

 

 

根津、オールマイト、上鳴が気の抜けた返事をした。

 

 

「デンキくんの治療と個性訓練にあたって古今東西の個性学の論文を読み漁っとったらそれが高じて今は博士に………と、いうのは余談やな。まあ理由としては簡単ですわ。先ず個性というのは基本的に1つしか持てません」

 

 

複数の機能をもった一つの個性というのはありますがね、と善院は丁度いい所にいた上鳴(例外)に視線を向ける。

 

 

「個性因子は謂わば……あー、複雑な話になると遺伝子云々の話をせなアカンので今は割愛しますね。血液とか骨髄なんかと同じように思ってもらえたらそんでええんですわ。つまり」

 

 

「移植すれば拒絶反応が起こる可能性が高い、ということだね」

 

 

「流石校長、話が早い」

 

 

「いや、それなら私の師匠である先代やそれ以前の継承者達は皆、個性を持っていたと聞いている。辻褄が合わないんじゃないか?」

 

 

「拒絶反応言うても例に挙げたもんと同じになるとは限りません。例えば、個性を使用すると肉体が耐え切れずに不具合が起こるとか。あとは個性の制御を自力で行えんくなるとか、そういう形で出てくることも考えられます。そして常人を超人に変えてしまうほど溜め込まれたエネルギー。これが無個性なら全て身体能力に向かうんでしょうけど、個性持ちだった場合が怖い所なんですわ」

 

 

なるほどなと上鳴が相槌を打ちながら言う。

 

 

「ワンフォーオールを純粋なエネルギーとしてみた場合、そのエネルギーが自前の個性を過剰に強化してしまって、肉体が耐え切れなくなる可能性があるってことか」

 

 

「急に賢なるなや……まあ、逆に言えばそれさえも制御できれば、超パワーに常識外れの出力を持った個性を持つスーパーマンが出来上がるという訳やね」

 

 

「ただそれは楽観的と言わざるを得ないのさ。個性は成長と共に伸び、訓練によって拡張されて更なる成長を遂げるもの。積み重ねた時間だけが個性の扱い方を熟させるのさ」

 

 

「そういうことですね。因みに、歴代の所有者の方にオールマイト並みのパワーを持つ者は?」

 

 

善院の問いにオールマイトは首を横に振った。先代の継承者の出力でさえ、今のオールマイトの70%に届くかどうかという所だった。怪我の後遺症さえ無ければ、残火となったオールマイトでも片手で捩じ伏せられるだろう。

善院はオールマイトの予想通りの返答に「でしょうね」と返した。

 

 

「そうやなかったら歴代継承者はもっと有名やったでしょうし、オールマイトの代にまで因縁が縺れ込むことも無かった筈ですから。普通に考えたかて同じヒーローとして比べるのなら、オールマイトとオールマイトと同じパワーに加えて別の個性持った誰かなら後者の方が強いやろうし」

 

 

善院は話を切り、根津に言った。

 

 

「で、これを俺とデンキくんに聞かせたいうことは、何かあったらサポートせぇよって認識でええんですね」

 

 

「想定よりも多く情報を開示してしまったが、その通りだ。リカバリーガールを除いた教師陣にはオールマイトの制限時間についてだけ共有している状態なのさ。ただこれだと今回みたいな授業中の予期せぬアクシデントに対応できない可能性も十分に考えられる。だから上鳴くんには生徒という視点から、そして善院くんには外部協力者としてサポートをして欲しいのさ」

 

 

「デンキくんがやる分には、コミュニケーション能力とかデリカシーとかの社会性その辺を学ぶのに丁度ええですね。この子、社会生活初めてやし。デンキくん、気張りや」

 

 

「うぇ〜い」

 

 

「アホ面すんなやはっ倒すぞ……」

 

 

ふにゃふにゃの顔で返事をする上鳴に善院は青筋を浮かべた。

そして上鳴は言った。

 

 

「俺、そんな難しい話分かんねーし興味ないんだよね。それより、そろそろ演習場行っていい? 耳郎が余っちゃってるから早く行かねーと」

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ……しゃあないな。はよ行き」

 

 

「待って待って待って!? 上鳴少年、君いくらリカバリーガールの治癒を受けて回復したとは言え今日は……」

 

 

「大丈夫。俺、頑丈だから」

 

 

「理由になってなくないかい!?」

 

 

じゃ! と軽快な足取りで上鳴は保健室から出ていった。そして廊下から「コガネー」と気の抜けた声が聞こえ出し、3秒後には───

 

 

「ああ、行ってしまった……」

 

 

オールマイトが保健室の扉についた小窓から見たのは、窓から飛び出した上鳴が空を跳んでいく姿だった。

 

 

「心配せんでもええですよ。アイツ、13歳くらいまではほぼ毎日似たようなことしとったんで」

 

 

「それはそれで安心できないというか……というかあの記録マジだったのか」

 

 

オールマイトは自分の学生時代を思い出して身体を震わせた。相澤から共有された上鳴の治療と訓練の記録ほどではないにしろ、毎日の様に胃の中身を空にしていたくらいにはしんどい思い出がオールマイトにもあった。

 

 

「俺の役割は継承者の……緑谷? くんの教導ですか」

 

 

「ちょっとこの似非マッチョは頼りにならないからね」

 

 

「校長、そろそろ手心をですね……」

 

 

「仮免持っとるだけの学生が普通なら全治1年レベルの大怪我負った訳やけど、どない思うてはるん? Mr.オールマイト」

 

 

「い、いやぁ」

 

 

その後、オールマイトは延々と教育論を展開する根津と「ぶっちゃけダサいと思ってんねん。生徒に本気出す先生」と自傷を厭わない善院の言葉のナイフを受け続けた。

 

 

 

 

 

 

オールマイトが身に覚えのあるチクチク言葉に半ベソをかいている頃───

 

 

「上鳴、明日は朝5時に職員室まで来い。今日のデモンストレーションについて、朝のホームルームまでみっちりフィードバックしてやる。それと、放課後の補習時間までに反省文を原稿用紙30枚分書いて持ってくるように」

 

 

───上鳴は演習場に正座させられ、相澤からペナルティを言い渡されていた。

 

 

しゃーないと割り切っていた上鳴は反省しているのかしていないのかよく分からない態度で返事をし、相澤から「20枚追加な」と死刑宣告(デスペナルティ)を課せられた。

 

 

そして肝心の演習だが、上鳴耳郎ペアの対戦相手は瀬呂切島のペア。上鳴達がヒーロー、瀬呂達がヴィランに割り当てられた。

 

 

演習の流れとしては、先ずヒーローチームは外から耳郎の個性を生かしてヴィランチームの位置を特定。

 

 

ヴィランチームはその間に核兵器やその手前の通路に瀬呂が個性による妨害を設置。更に核兵器付近には近接兼確保担当として切島が配置された。

 

 

自身の個性を器用に使い、切島に有利な地形を意図的に作り出した瀬呂だったが、如何せん相手が悪かった。

 

 

耳郎が個性で2人の位置を割り出した段階で、上鳴は先ず瀬呂を強襲。外壁を駆け上がって窓からダイナミックエントリーをかました上鳴に対し、瀬呂は個性を使って迎撃した。

 

 

しかし、上鳴が素の身体能力で瀬呂のテープを引き千切り、そのまま殴り飛ばして気絶させてしまう。

 

 

切島に関しては上鳴が気を引きながら周囲のテープを弱い放電で焼き切って空間を確保し、耳郎がそこを移動。核に近づけはしたが触れられそうになかった為、プラン変更。

 

 

耳郎が核に近付いている間、切島は”個性”で身体を硬化させて上鳴に真正面からの殴り合いを仕掛けてきた。その度胸を買った上鳴はこれに応戦。「悪くない」と言いながら肉弾戦に興じていた。

 

 

だが、耳郎の目配せに気が付いた上鳴は「が、良くもない」と強烈な肘鉄を切島の腹に捩じ込み、切島の硬化を解きながら耳郎の足元まで突き飛ばした。

 

 

その時点で勝敗は決していた。切島が立て直すよりも早く、耳郎が「悪いね」と言って切島の身体にブスリとイヤホンジャックを突き刺した。そしてそのまま肉体の内側に音響攻撃を仕掛け、それに耐え切れず切島が意識を飛ばしたことで、ヒーローチームの勝利となった。

 

 

「ど、どんまい」

 

 

峰田がそう励ましたのを皮切りに、モニタールームにドンマイコールが流れ出した所で、初回の演習は終了した。

 

 

 

*1
ショックを受けていない訳ではない

*2
戦後処理を除く




デモンストレーション総括
1-Aの面々「仮免持ち超強い」
A君「超ヤバイ(真顔)」
かっちゃん「(呆然)(歯軋り)(悔しい)」この後緑谷に敗北する
教師陣「で、どこだよ教えた奴」






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