雷神、上鳴電気   作:一般通過呪術師

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あけましておめでとうございます。
私は今、赤いゲージが見えて猛烈に感動しています。サンキューカッシー、サンキューゼンイン。



ep.03 がんばり賞ってとこやね

上鳴の治療は順調に進み、1年と少しの月日が流れた。

 

 

最初はあらゆる自由を縛られ、身体も満足に動かせず、味のしない食べ物を30回噛んで食べる苦行に涙を流した夜もあった。

 

 

しかし、青年の経験が邪魔をして慣れるのに苦戦を強いられたものの、無事に上鳴は現在の生活に適応し始めていたのだが───

 

 

「先生ぇ……暇だわ………」

 

 

「漫画でも読んどき。何やったら適当なん貸したるで」

 

 

治療の最中にボヤく上鳴に、善院が適当に返す。しかしその答えに納得がいかない上鳴が口を尖らせる。

 

 

「いや漫画じゃなくてさ。刺激が欲しいんだよ。スペクタクルがさ」

 

 

「おおよそ病院には無縁のもんやな」

 

 

上鳴の治療風景が常人にどう映るかを考慮すればあながち無縁という訳ではないのかもしれないが、当事者からすれば慣れきった物だ。

 

 

「そうかしら……そうかも……うっ」

 

 

未だ慣れずに気絶を繰り返す付き添いの上鳴母だけが正常だった。

 

 

家入が上鳴母を長椅子に寝かせている間に善院は「あ、せやったせやった」と治療を中断して席を外す。

 

 

「そんな君に今日はプレゼントや」

 

 

程なくして戻った善院の手にはプレゼントボックスがあった。

 

 

「マジ? 誕生日なら2ヶ月前だぜ先生」

 

 

「がんばり賞ってとこやね」

 

 

起きあがろうとする上鳴を善院はデコピンで制し、プレゼントボックスを開封。中から薄緑色のモノクルが特徴的なヘッドマウントディスプレイが出てきた。

 

 

「スカウターじゃん!!!」

 

 

スカウターはドラゴンボールでお馴染みのサポートアイテムである。目標の存在位置を特定する”索敵機能”、目的地までの距離や方角を算出して誘導する”ナビゲーション機能”、対象の戦闘力を計測する”分析機能”、そして無線音声通話が可能な”通信機能”。これらを包括した機能を持つ優れ物である。

 

 

尤も、上鳴に渡された物は少し違う。

善院は上鳴の頭にスカウターを装着させ、電源を入れた。

 

 

「すげぇ! かっけぇ!」

 

 

「ええか。今見てるのは君のバイタルや。これまでの間に集積したデータから今君がどれだけ力を出しても大丈夫なのかが一目で分かるように幾つかの項目に分けて表示しとる」

 

 

「この短くなったり長くなったりする横棒か?」

 

 

「そうや。それがゲージ一杯まで伸び切ったら危険域、振り切ったらアウトや。逆に言えばゲージ内に余裕を持って収められたらどんだけ動いても身体は壊れん」

 

 

「それって……!」

 

 

「せや。動いてええで」

 

 

「いやっほぅ!」

 

 

上鳴は跳ね起きた。

垂直に3mほど飛び、床に3点着地。笑いながら床を転げ回る姿は健康そのものだ。

 

 

「……って、ちょいちょいはみ出とるやないか!」

 

 

「いいじゃんちょっとくらい〜」

 

 

「ええ訳あるかボケ」

 

 

色違いのスカウターを付けた善院に取り押さえられ、上鳴が文句を垂れる。勿論それは受け付けられない。

 

 

「俺のスカウターには常時君のバイタルが映る。無茶したら1発で”位置”まで分かるからな」

 

 

スカウターに備え付けられたGPSで位置情報の確認が可能になっている。

 

 

「へーい。あ、戦闘力は分かったりすんの?」

 

 

「君の戦闘力だけしか分からへんな」

 

 

「いくら?」

 

 

「5」

 

 

「ゴミじゃん……」

 

 

5歳児が成人男性と同じくらい強かったらそれは十分なのでは? とツッコミを入れる人間はここにはいない。

 

 

「今後はこれを使いながらトレーニングして、データを更新していくで。その中でスカウター無しでも力加減がこなせるように感覚を掴んでもらう」

 

 

「個性の訓練は? なんか2ヶ月くらい前に色々採取してたけど」

 

 

「まだアカン。今君の血液やら細胞やらとご両親の個性情報からより正確な個性の情報を割り出しとるとこや。それが分かってからトレーニングメニュー組んで、肉体に負荷を掛けずに制御できる方法を探していかなあかん」

 

 

「いや、俺ヒーローになるから負荷がどうとかあんま気にしなくても……」

 

 

「ブッパだけでヒーローやれるほどプロは甘ないで。というか細かい制御できんと人殺しになってまうで? ええんか?」

 

 

「よくはない……か」

 

 

「そこは言い淀んだらあかんやろ。ヒーロー志望として……まあ身体が出来上がるまで個性の訓練はお預けや」

 

「ま、何でもいいけど。先生に任せておけば大丈夫なんだろ? 俺は俺にできることだけやるっスわ」

 

 

「……今はそんでええか。よし、ほんなら今日は慣らしや。久々に外でも歩くか? 言うても病院の敷地内やけど」

 

 

「よっしゃ! 早く行こうぜ先生!」

 

 

「引っ張るな。服が伸びる」

 

 

リハビリルームから出た2人が向かったのは病院の中庭だ。

 

 

「ふっ、戦闘力5か……ゴミめ」

 

 

病衣を着た小太りのおじさんを見ながらラディッツになりきる上鳴は、控えめに言って失礼なクソガキだった。

 

 

善院は頭を下げ、「すんません。これ自己紹介なんで気にせんとってください」と謝りながら、上鳴の頭を引っ叩いた。

 

 

「失礼やろ。やめとけ」

 

 

「はい」

 

 

上鳴は元から素直な子供だ。

青年が混じり少しばかり変わってしまったが、根っこまで変わった訳ではない。善院に注意された後、おじさんにも頭を下げて謝った。

 

 

「かまわないよ。ドラゴンボールが好きなのかい?」

 

 

「大好きだぜ!」

 

 

上鳴はジャンプ漫画が好きだ。

青年の影響か特に超常黎明期前の漫画を愛している。青年の世界で連載されていた漫画の全てがこの世界にある訳ではないが、何作かは全く同じ作品が世に出ていた。ドラゴンボールはその中の一つであり、この世界では最も有名な漫画の一つにして100年以上も擦られている伝説の作品となっていた。

 

 

上鳴と善院はおじさんとドラゴンボール談義に10分ほど花を咲かせた後、おじさんが家族に呼ばれたタイミングで話を切り上げて散歩に戻った。

 

 

善院が上鳴に尋ねる。

 

 

「因みに今ハマっとるんはなんや?」

 

 

「機動傀儡メカ丸」

 

 

「おもろいんかそれ……?」

 

 

「主人公がライバルと戦って死んだ後、ぶっ壊れた主人公の機体から回収された遺言を聞いたヒロインが泣き崩れながら復讐を誓う所とか良かったッスよ」

 

 

そんな会話を重ねながらぐるりと庭を周り、散歩時間は終了になった。

 

 

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