雷神、上鳴電気   作:一般通過呪術師

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ep.39 SMASH

 

 

翌日、耳郎は地面に大の字になって倒れていた。

 

 

「どうした! まだまだ寝るには日が高いぜ愚妹(シス)!」

 

 

「お、おぉ……っす!」

 

 

個性圧縮訓練。

それは個性を極限まで酷使することでその力を高めるトレーニングである。

超常の力ではあるが個性もまた身体機能の1つ。使わなければ育たない。応用も進化も一定水準にまで達さなければ成し得ない。

当然、一朝一夕でどうこうできる事ではないのかだが───ここに1人だけ例外がいる。

 

 

アメリカNo.1ヒーロー、スターアンドストライプだ。

 

 

彼女が有する個性”新秩序”は対象に触れた直後に名前を呼ぶ事でそれに新たなルールを付与できる。個性という枠を逸脱した無法の力その物だ。尤も、生物に対して使った場合は効力に下限こそないが、上限が生まれるデメリットがあるが───それは原則、無生物には適応されない。

 

 

そこでスターは1つのルールを設定した。

 

 

基地内の時間の流れは外の時間の流れと比較して12倍の速度で流れる

 

 

つまり外で1分が経過する間に基地内では12分の時間が流れるということ。

これにより加速した基地内で耳郎と上鳴は既に6日もの時間を訓練に費やしていた。

 

 

流石の上鳴もこれには頬を引き攣らせるしかない。

 

 

「精神と時の部屋かよ。そもそも何で触れないのにルールを付与できんだよ。話が違うだろ」

 

 

「解釈次第さ。流石にノーリスクって訳じゃないし、この手の概念干渉にも上限があってね。私の行動や能力に幾つか”縛り”を設けることでしか発動できないのさ」

 

 

「敢えてルール付与にデメリットを混ぜることで上限を嵩まししてる訳か───もしかして、先生の入れ知恵?」

 

 

「………何で分かったんだ?」

 

 

「この手の発想は生まれながらに持った人間からは出てこねーもん」

 

 

「し、師弟揃って同じこと言いやがって……デンキはどうなんだ? 順調か?」

 

 

「順調も何も───これ、何の意味があんの?」

 

 

上鳴は身体中に計測器を付けた状態で、身体を動かさずに胴体でフラフープを回しながら尋ねた。

 

 

フラフープはプラスチック製の輪をフラダンスのような動きで腰を使って回す事からそう呼ばれるようになったのだが、上鳴が使っているのは金属で出来た特別製だ。

 

 

それを一切身体を使わず、個性を用いた磁性の制御のみで廻す。上鳴は6日間、入浴と就寝時間以外は常にその状態をキープし続ける事を訓練として課されていた。

 

 

チベットスナギツネのような顔を浮かべる上鳴に、スターが言う。

 

 

「君さ、体の調子悪いだろ?」

 

 

「………何でわかんだよ」

 

 

「見たら分かる………極短期間で君の身体は自身の個性によって数回に渡り死に瀕した。当然、因子はそれを克服する為に躍動を始めるよな?」

 

 

圧縮訓練に近い原理である。

 

 

「その進化に君の身体がついていけてない。デバイスと使い手の認識の齟齬が不和を生んでいるんだ。だから上手く身体を動かせない。本来、君が万全なら私達の訓練で汗をかくことすら無かったろうぜ」

 

 

「で……これ結局なんだよ教官」

 

 

「訓練で身体のバランスを整える為のデータを計測した。その結果から最も効率よく鍛えられると出たのがそのマグネットフープだ。君がそれを10個同時に回せるようになれば、今までどおり───いや、それ以上に動ける筈だぜ?」

 

 

「おお……! ならいっちょウルトラすっか!」

 

 

「出来なかったら戦いの場で死ぬだけだ!」

 

 

「何だいつもと変わんないな!」

 

 

「私にも覚えがあるぜ!!」

 

 

「「HAHAHA!!」」

 

 

2人は笑っているが側から聞いている人間は笑えない。

 

 

耳郎は2人の会話にドン引きしながら圧縮訓練を続けた。

 

 

耳郎に課せられた訓練は2つ。

1つはプラグその物を鍛えて音質の向上を目指す訓練。もう1つはプラグから放つ音の周波数を任意の物に変える訓練である。

 

 

耳郎の個性イヤホンジャックは耳たぶから伸びるプラグから心音を流し込んだり、そこから周囲の音を拾ったりできる個性だ。しかし、心音を流し込むだけで岩やコンクリを粉砕する事はできない。当然プラグは”増幅“や”周波数の変換“に類似した機能を有している事に他ならない。

 

 

───イメージ、イメージ。

 

 

耳郎がプラグを突き立てているのは手榴弾めいた形の強化プラスチックの塊だ。外殻は非常に硬質で、内部には特殊な液体が満ちている。外殻にピッタリ共振する波形の心音を流し込むか、共振せずとも破壊できるだけの音量を注がなければ破壊できないようになっている。

この6日間で段階的に強度を引き上げ力を高めてきたのだが、ここに来て完全に詰まっていた。

 

 

うんうん唸る耳郎を遠目に、ヒソヒソと上鳴とスターは言った。

 

 

「困ってんなぁ……大丈夫かな」

「心配ならアドバイスでもしてやったらどうだ?」

「つっても個性なんて内的なもんだろ? 俺がどうこう言ったって耳郎がピンと来なけりゃ却って混乱させるだけだし」

「自分がどうやって応用を身につけたかを教えてやったら良いじゃないか」

「死に掛けることだけど、それでいいのか?」

「OK、今言った事は忘れてくれ。私が悪かった……悪いのか???」

 

 

「うるさい気が散る!!!」

 

 

「「sorry」」

 

 

「ハモるなぁ!」

 

 

バキ、と音を立ててプラグの先にあった物が割れた。

 

 

 

 

 

そうして時は過ぎ───基地内時間で12日が過ぎた。

 

 

スターの個性が上限を迎え解除され、3人はスターズと合流。情報共有を行うべく会議室に集まっていた。

 

 

「で、奴らの動きは?」と開口一番にスターが尋ねた。

 

 

それに資料を見ながらイーサンが答える。

 

 

「どうもIエキスポのタイミングでブツを奪いに行く予定らしい。それまでにとっ捕まえてしまいたいが……ナオヤが言ってた裏で手を引いてる輩ってのが相当頭のキレる奴みたいでな。組織の方は兎も角、そっちの方の足取りは掴めてない」

 

 

「今分かってる奴らは釣り餌か」

 

 

「だろうな。正直、ナオヤからの連絡がなかったら存在にすら気づけなかったろうぜ」

 

 

「……舐めやがって」

 

 

奥歯を噛み締めるスターに、上鳴が尋ねる。

 

 

「教官、話の流れが見えねぇんだけど」

 

 

「そうだな……最初から説明しようか。ウェッジ、頼める?」

 

 

「OK、スター。先ず事の発端はFBIが掴んだ『個性を増幅する装置がIアイランドで研究されている』って言う情報からだ」

 

 

「個性の増幅、トリガーみたいなヤツか?」

 

 

「そうだ。その装置は個性因子に作用し、着用者の力を劇的に高める。しかもトリガー等の薬物とは違って心身に負担は無く、装置が壊れるまで半永久的に続くって話だ」

 

 

「嘘くせぇだろ。有り得んのか?」

 

 

「あり得るんだな、それが。何せ研究主任はオールマイトのサポートアイテムを手掛け、幾つもの特許と研究成果を挙げている天才デヴィッド・シールド博士だ。その情報を単なる眉唾と断じるには、あの人が現在進行形で積み上げている功績はデカ過ぎる」

 

 

「……で、それを狙ってるテロリストの動向は分かるけど、テロリストの裏で手を引いてる奴の動きが掴めないって話ね」

 

 

「そゆこと!」

 

 

───となると手を引いてる輩っての先生が追ってるヴィラン。オールマイトの仇敵って訳か。

 

 

上鳴は頷き、耳郎の腕を肘で押してから言った。

 

 

「らしいぜ耳郎」

 

 

「……うん。大丈夫。ありがと」

 

 

上鳴が「話の腰を折って悪いな」と手を合わせて謝るのを、スター達は笑って受け入れた。

そして、イーサンが話を本題へと戻す。

 

 

「俺たちには時間がない。そして情報も少ない。チームアップしたヒーローと警察の頑張りで敵さんのアジトらしき物を幾つか見つけたが……スター、どうする?」

 

 

その問いにスターは猛禽類の様な鋭い眼差しを向け、答える。

 

 

「当然───SMASH」

 

 

「……だと思って、既に用意は進めてる。各エリアのヒーロー達にスターアンドストライプの名の下に召集を掛けた。大捕物だ。ついでに下水道にいる小汚ねえ溝鼠共も一網打尽にする」

 

 

「そいつはいい! 今年のアメリカは犯罪発生率が1桁になるだろうぜ!」

 

 

「で、日本から来たニュービーの調子はどうなんだ? 俺たちを基地から追い出して鍛えたんだ。仕上がってんだろうな?」

 

 

イーサンは上鳴と耳郎に視線を投げた。

2人は口角を上げ、口々に言った。

 

 

「オールマイトが敵に出てこない限りは負けねーよ」

 

 

「やれる事は全部やり切りました。あとは結果で示します」

 

 

「いいね。上等だ。なら明日の夜に「明朝にしよう」…………待て待て。スター、そいつは無理だ」

 

 

イーサンが顔を右手で隠し、天を仰ぐ。

スターズは「また始まった」と苦笑。それを見た上鳴と耳郎も何となく流れを察した。

 

 

「用意する時間がない。声は掛け終わってるがそんなに直ぐは動けない」

 

 

「だがそれ以上に、ヴィラン共にこれ以上の準備をさせたくない。叩くなら今だ。本当は今日の夜中にでも奇襲を仕掛けたいくらいだ……だが、それよりも明朝。今日の夜は来ないと油断する一瞬。最も世界が暗い時間に───奴らを叩く」

 

 

スターの纏う空気がオールマイトに近しい物に変わる。

 

 

「付いてこられない奴は置いて行け! 私たちならそれでもやれる。そうだろう!? お兄ちゃん(ブロス)たち!」

 

 

スターの言葉を受けた兵士たちは一斉に拳を天に突き出し雄叫びを上げた。

それを見て折れたイーサンは申し訳なさそうに、置いてけぼりになっていた上鳴と耳郎に言う。

 

 

「悪いな2人とも。心の用意は今日の夜までに済ませてくれ」

 

 

イーサンがそう言うとスターが2人の肩を抱いて言葉を返した。

 

 

「大丈夫だ───2人は強い」

 

 

 

 

 

作戦開始までの時間を休憩時間として貰った上鳴は、耳郎に呼び出されて彼女が宿泊している部屋を訪ねていた。

 

 

「どしたん。話って」

 

 

「……体育祭でウチと戦った時の話、覚えてる?」

 

 

「……………………………………覚えてるぞ? アレだよな………あれ」

 

 

そう言う上鳴の目は泳いでいた。

 

 

「はい、嘘。それ絶対覚えてないヤツじゃん……善院先生の話だよ」

 

 

上鳴は「ああ! アレか!」と手を叩いた。

そして呆れた様子の耳郎に語り出した。

 

 

「善院先生は俺の地元のお医者さんでさ。俺が4歳の頃から色々と世話になってる恩人なんだよ。個性の事とか、身体の事とかさ。親身になって相談に乗ってくれたり、身体を鍛える時は組手してくれたり。それから」

 

 

「いや、その話は一旦置いといて欲しいっていうか……」

 

 

「何で? 善院先生の話を聞きたいんだろ?」

 

 

こてん、と首を傾げる上鳴。

 

 

───聞け、耳郎響香。聞くんだ。

 

 

自分を鼓舞する様に内心でそう呟きながら、耳郎は口を開いた。

 

 

「ごめん。ウチ、アンタと善院先生の話を聞いちゃって………だから、そのっ、体質の話を………聞きたくて」

 

 

それは勇気が必要なことだった。

手を失った人間にその理由を問うことが憚られるように、何かを失くした者に理由を尋ねる事は難しい。それは同情や哀れみではなく、心が優しい者であれば“聞かれた人間が辛い想いをするのではないか”と考えてしまうから。

 

 

「え? そんな事をか?」

 

 

だが、本人は存外気にしていなかったり、あるいは“そんな事か”という感覚の場合もある。

少なくとも上鳴はそうだった。

意を決した質問に想像とは全く異なる返事が来た耳郎は、何か抗議でもするかの様に口を開けたり開いたりしていた。

 

 

「餌欲しい魚みてぇだな」

 

 

「デリカシー!」

 

 

「悪い悪い……で、体質か───ちょっと長くなるぞ?」

 

 

「まあ、座れよ」と上鳴が椅子に腰掛ける。

そして、耳郎がベッドに座ったのを見てから話を切り出した。

 

 

4歳の頃、目覚めた個性の限界が気になって暴発させたこと。それがキッカケになって脳機能の一部が損壊し、五感のパラメーターが狂い、更には脳内麻薬の過剰分泌により肉体のリミッターが外れ───余命宣告を受けたこと。

 

 

「で、そこからヒーローを目指すために入院して、くしゃみで弾ける可能性がある肉体を改造する治療を受けた」

 

 

「……どんなの?」

 

 

「筋トレと同じだよ。壊れた肉体は再生を経て強くなる───だから、身体が壊れなくなるまで壊し続けた。内臓以外を一通り。何百、何千と砕き、千切ってきた。リミッターが外れた肉体が己の力で砕けないように、何度も何度もな」

 

 

同年代の友達はいない。

治療という名の拷問じみた訓練で1日の大半を使い、少しの自由時間にアニメや漫画を見て過ごした。

 

 

青春にもそれなりに興味はあったけど、それ以上に戦う事が好きだった。自由に動き回れる時間が何より楽しくて、空想でしか無かった存在の動きをなぞることで身近に感じられた。

 

 

そう話す上鳴の言葉全てが、耳郎にとって別世界の人間の話にも聞こえた。

 

 

実際、今耳郎の目の前にいる少年は奇跡のような運命に導かれてここにいる。何か一つ足りなかったら途中で死んでいた事は間違いない。

 

 

「何で、そんなに頑張れたの?」

 

 

耳郎の疑問に上鳴は唸った。

 

 

───流石に前世の記憶は話せないな。こればっかりはな……

 

 

あまりにも突拍子がない。

幾ら上鳴でもこの場面で話すことは憚られた。

 

 

「……上鳴?」

 

 

何も喋らない上鳴に、まさか地雷を踏んだのでは? と耳郎は顔を青くする。

 

 

「戦いたい奴が居るんだ」

 

 

「戦いたい……?」

 

 

「世界で1番強い奴」

 

 

上鳴は目を閉じて、1番最初に見た記憶を思い出した。荒廃した日本を舞台に空飛ぶ雄英の動力と化す自分。そこで戦う人々の姿を。

 

 

「なっ………何それ…………スター、とか?」

 

 

「違う。スターでも、オールマイトでもない」

 

 

 

 

魔王か勇者か。勝った方が世界最強なら、俺は───そいつと殺し合って、勝っても負けてもそこで死にたい。

 

 

 

 

上鳴がそう言おうとした瞬間、耳郎と目が合って言葉に詰まった。

 

 

 

 

“興味ないなんて、言わないでよ………アンタに挑戦したいんだから”

 

 

 

 

“放っておいたら、死にそうだし”

 

 

 

 

“だから1人じゃないんだよ───アンタもさ”

 

 

 

 

「………先生。そう、先生な。あの人メチャクチャ強いんだよ。俺一回も勝ったことなくてさ。やっぱ勝ちたいじゃんか? 気が付いたらこうなってたんだよ」

 

 

この日、上鳴は産まれて始めて嘘を吐いた。

 

 

善院に勝ったことが無いのは事実であってもそれだけでは頑張れない。だが、本心を語る事ができなかった。

 

 

───何でだろうな。先生には言えたんだがな。

 

 

入学前、上鳴は善院にこの話をして、顔面が陥没するのではというほど殴られた事を思い出して身震いした。

 

 

鬼神の如き形相で向かってくる善院の姿は上鳴の心に“戦い難い相手”として深く刻まれた程だ。

 

 

だが、善院には同じ事を聞かれても変わらず答えを投げられる自信があった。

 

 

───流石に嘘だってバレるよな? 怒られる、よな……?

 

 

上鳴の予想は当たっている。そのあまりにも下手くそな嘘に気付けないほど、耳郎の目は節穴ではない。

ただ。

 

 

「そう、なんだ……次は、勝てるといいね」

 

 

困った様に笑う耳郎を見て、上鳴は胸の奥に鋭い痛みが走ったような───そんな気がした。

 

 

 

 

 

スター達が作戦会議を始める少し前。

アメリカ西海岸沿いにある港の一角、巨大な倉庫の中を男たちが慌ただしい足音を立てて行き交っていた。

口元以外を覆う鉄の仮面を付けた赤髪の男───ウォルフラムは、部下が進める撤収準備を眺めながらウィスキーの瓶に口を付けていた。

 

─── Iアイランドにある規格外の発明品を狙ったテロだ。細心の注意を払ってきた。なのにこの体たらくか。

 

 

「……ったく。日本のフィクサーが聞いて呆れるぜ」

 

 

計画もいよいよ終盤に差し掛かる、というタイミングでヒーローに警戒され始めた。

ウォルフラムは国外に支援者を抱えていたが、その支援者の動きに気づいたヒーローが本国のヒーローにコンタクトを取ったのである。

しかも、よりにもよってそのヒーローは“スターアンドストライプ”である。警戒しない訳にはいかなかった。

 

 

苛立ちを隠しきれないウォルフラムは飲み切ったウィスキーの瓶を床に投げ捨て、次の酒瓶へと手を伸ばそうとした。

 

 

「ボ、ボス! お電話です!」

 

 

そんな時だ。仕事に使っている端末を持った部下が、慌てた様子でウォルフラムに駆け寄ってきたのは。

ウォルフラムは苛立ちを隠そうともせず、声を一層低くして言った。

 

 

「今忙しいんだ。後にしろ」

 

 

「そ、それが日本の………例の人物からで」

 

 

「何? ………チッ、貸せ」

 

 

乱暴に部下から端末を奪い取り、ウォルフラムは電話に出た。

 

 

『いやあ、忙しい所すまないね! どうだい、ウォルフラムくん。計画は順調かな?』

 

 

「おかげさまで滞りなく───最近ヒーロー共に嗅ぎ回られてはいますがね。しかも、この国最強のヒーローに」

 

 

嫌味ったらしくそう言うウォルフラムに、電話の主は「そうかい、それは困ったな」と大仰に同情した。

 

 

───うざってぇな。

 

 

『君の計画、いや、君たちの計画が失敗するとなると僕も心苦しい。何せ彼女が動いているのは、僕らの周りをうろちょろしているヒーローのせいだ。責任を感じてしまうよ』

 

 

「はぁ、そちらも大変ですなァ。で? 今回は何の用で? 私共は今撤収準備で忙しいのですが」

 

 

『それはすまない。なら早速本題に移ろう。今からウチの者に戦力を届けさせる。実験の失敗作ではあるが、極短時間なら成功作よりも強い。君なら上手く使える筈だ』

 

 

倉庫の中に発生した黒い霧。

そしてそこから現れた2体の怪人を見て、ウォルフラムは戦慄した。

 

 

───何だこの薄気味悪い連中は? 人間か?

 

 

『新しいご主人様だ。2人とも、挨拶をしなさい』

 

 

2人と電話の相手は言うが、それは明らかに人間ではなかった。異形型個性ともまた違う。人間ではない物を無理やり人間に寄せた様な、そういった造りをしていた。

 

 

人型の蝗と蜚蠊のような外見の2体は言葉を発さず、ウォルフラムに芝居掛かったお辞儀をしてみせた。

 

 

「───これは?」

 

 

『元は僕の体細胞を移植した虫だよ。適応した個体同士を掛け合わせていたら極短期間で進化してね……虫人間といった所かな? 蝗の方は蝗GUY、蜚蠊の方は黒漆死と名乗らせているよ』

 

 

「……随分とお茶目なネーミングですね?」

 

 

『だろう? 僕の弟子が考えてくれたんだ』

 

 

───こんなイカれ野郎の弟子なんて、そいつの人生に同情するよ。碌な目に合わないだろうぜ………いや、碌な目にあってないからこその今なのか?

 

 

ウォルフラムは目の前にいる2体に一瞥をくれた後、直ぐに部下に指示を出した。

 

 

「命あっての物種だ! 撤収作業を急げ! 事が済めば買い換えられる物は置いていけ!」

 

 

『いいね。判断が早い───それらは使い捨てて構わないよ。何なら捕縛された時に備えて証拠を隠滅するための仕込みもある。貴重品だけ持っていけばいいよ』

 

 

「……天国には行けそうにないな」

 

 

『お互いにね』

 

 

 

 

 





いつも拙作を読んで下さっている皆様、ありがとうございます!
賛否あるかと思いますが、呪霊キャラの中でもデザインが好きなキャラと面白くて好きなキャラを引っ張ってきております。何卒……何卒……

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