ところで話が変わりますが葉隠ちゃんの過去を捏造していますので何卒……何卒………
期末試験は滞りなく進み時間通りに終わった。
強くなったA組メンバーはそれぞれの課題を試験までの1ヶ月で把握、改善の為に動き出していた事もあり、無事に全員クリアとなった。
そして期末試験翌日の朝。
「いやあ、全員とりあえずは大丈夫そうじゃね?」と瀬呂。
「緑谷と爆豪がオールマイトに挑んだ時は悲鳴出たけどな」
「上鳴が『狡いぞ2人だけ!』って叫んだの忘れらんねーよ……」
「試験で全治3日の大怪我*1が発生したのは10数年ぶりだったそうだな」
砂藤、切島、障子が『1番問題があった試験』について言及する中、件の問題児たちは。
「あはは……本当は逃げを主体に立ち回りたかったんだけどね」
「ケッ! 最強とやれんのに芋引いてられるかよ」
緑谷は真っ向勝負を避けたがった。しかし、爆豪がそれを拒否。
本来の歴史ならば会話にならないレベルだったのだが、騎馬戦での共闘や爆豪が第三競技で完全燃焼していた事もあり、蟠りが少しばかり軽減されていたのもあって意見の擦り合わせは行われた。
その結果───オールマイトにも熱が入ってしまったのだが。
「正直めちゃくちゃ心配したよ!」
「麗日くんの言うとおりだ! 全く君はいつもいつも無茶ばかり!」
緑谷は肋骨を2本、腰骨に罅、全身打撲の怪我を負った。爆豪も似た様な重傷を負っている。今もまだ怪我が治りきっておらず、今日は保健室通いが確定していた。
ただ、これに関しては2人だけが悪い訳でも無く。
「まあオールマイトも悪いよね」
「全くですわ……」
「上鳴じゃねぇけど、俺も止めに行こうかと思ったぜ」
「いや、上鳴はただ戦いたかっただけでしょ……ね?」
耳郎に話を振られた上鳴は「ソンナワケナイゼ」と棒読みで答えた。
「嘘下手だなお前!?」
「沈黙は金」
予鈴が鳴るギリギリまでA組の喧騒は続いた。
そして相澤が教壇へと上がり、一言。
「赤点はいませんでした。よって林間合宿には全員で行きます」
「やった───!!!」
万雷の喜びで教室が揺れた。
舞い上がる生徒たちに相澤も今日ばかりは水を差さず、その姿を眺める。そして暫くして波が引いてきたのを見計らってから咳払いをし、話を進めた。
「ただし、筆記は何人かかなり怪しい点を取ってる奴がいる………名前は言わない。自分で分かってるだろうからな?」
「「「うっ」」」*2
「これからは毎日コツコツとやるように。さあ、今日も頑張っていこう」
そして、諸々済んだ後の休み時間。
教壇の上に上がった半透明少女の葉隠が「注目ー!」と声を張り上げた。
「ねえねえ皆! 明日休みだし、テスト明けだし……ってことで林間の買い物行こうよ!」
「おお! 良い! 何気にそういうの初だな!」と瀬呂。
「爆豪お前も来いよ!」切島が爆豪と肩を組んで誘う。
爆豪は切島の腕を払いながら「行くかよかったりぃ」心底面倒そうに断った。
「轟くんも行かない?」
「休日は見舞いだ」
「上鳴、アンタは?」
「俺か………まあ暇だしな。行くか」
「じゃあ決まりだね!」
そう言って葉隠は教室を見回し、笑顔を物理的に光らせた。
ヒーローの卵達が殻を破り始め、更なる躍進を遂げようとする一方。
悪もまた次のステージに向けて動き出していた。
「死柄木さん」
カランカランとバーの扉の上に付いた鈴を鳴らしながら入ってきたのは、季節外れのマフラーを巻いた男。男はカウンター席で写真を眺めていた死柄木の名を呼び、手を挙げてニヤリと笑った。
「義爛か」
「ご無沙汰……という程ではないか。いやあ、こっちじゃ連日あんたらの話で持ちきりだぜ? また何かでけぇことが始まるんじゃないかってな」
死柄木から義爛と呼ばれた男は所謂、ブローカーだ。人材から武器まであらゆる物を手配する死の商人。
USJ襲撃の際に黒霧から相談を受け、ヤクザを紹介したのもこの男である。
「で、そいつらは」
死柄木の視線の先。義爛の後ろにいた2人が店内へと足を踏み入れる。
1人は薄い金髪を団子にした女子高生。もう1人は黒いジャケットを羽織っている、目につく肌の殆どが焼け爛れている青年だ。
「ステ様! ステ様はどこですか!?」
「コイツに大義はあるのか? とてもそうは見えないが」
本来の歴史ならば───死柄木は一度ここで2人を追い返そうとする。まだヴィランとしての気付きを得ていない死柄木は、力のある子供に過ぎず他を牽引するカリスマを発揮できない。
しかし、USJでの完全敗北。テレビで見た雄英体育祭。そして学生に敗北したステインを見た今の死柄木は、幾分マシになっていた。
「俺には嫌いな物が幾つもあるが……その中で特に嫌いな物が3つある。餓鬼、礼儀知らず、オールマイト。お前らは今のところ2つ該当してる」
首を掻きむしりながらも、死柄木は彼なりに冷静さを保とうと声音を一定にしながら2人に問い掛ける。
「で、お前らは何なの?」
「トガ! トガヒミコです! ステ様が好きです! ステ様になりたい! ステ様を殺したい!」
「今は荼毘で通してる」
破綻者と名前すら分からない不気味な青年。
死柄木は義爛を見た。その目にはもう殺意が宿っている。
「まあ………人格的に問題があるのは否めないが、それは日陰者らしさってことで許してくれ。一応会話は成立するし、それなりの経歴もある」
義爛の口から語られた経歴は渡我だけで、荼毘については個人の見解が多分に含まれた物だった。
それが死柄木の神経を逆撫でする。
「そこの破綻者JKはともかく、そっちの男は名前も経歴も不明。コンビニのバイト面接すら落ちるだろうぜ……何で俺たちが引き取ると思った?」
「俺だってお前の下に付くなんて一言も言ってないだろう」
「あ?」
「俺はステインの意思に同調してここに来た───お山の大将に興味はない」
瞬間、死柄木が動いた。
音を立てず、風すら起こさず、瞬き一回の間に距離を詰め、その右手の照準を荼毘の首に定める。
対する荼毘も目の色を変えて身体から蒼炎を放つ態勢へと移る。死柄木の動作より僅かに遅いが、炎は手で触れることでしか個性を発動できない死柄木にとって無視できない壁となる。
最悪は死柄木が炎を無視して荼毘を掴み、荼毘が命を守る為に本気で炎を使うこと。その場合、両者相打ちとなり死柄木を失ったヴィラン連合は瓦解───否、雲散霧消する。
黒霧が仲裁しようとワープゲートを開く、が間に合わない。死柄木の方が速い。
「ハァ………世話の焼ける」
気怠げな声と共に薄暗いバーの中で剣閃が走り、ほぼ同時に死柄木と荼毘は揃って地に伏した。
「あっ、あぁぁぁぁぁ!」
歓喜の声を上げる渡我の視線の先で赤いマフラーが揺れる。
「2度はない。これで借りは無しだ」
どこからともなく現れたのは、本来ならば娑婆にいない筈の男───“ヒーロー殺し”のステインだ。ステインは2人が激突するよりも早く腰に差した刀で浅く斬りつけ、その血を舐めとることで“凝血”を発動。殺し合いを止めた。
血走った目で自分を見る死柄木にステインは。
「もう一度だけ言おう───信念なき殺意に意味はない………ハァ………よく考えることだな」
そう言い放ち、返事を待つことなくバーから去った。
暫くして凝血の効果が切れた後、死柄木もまたバーから出て行った。
考える時間が必要だった。
自分の胸の裡にある欠けた何かを埋める為に。
木椰区ショッピングモール。
雄英高校を要する静岡県で最大規模の複合商業施設。若者を中心に県内外を問わず人を集めるそこに、轟と爆豪を除いたA組の生徒たちが集まっていた。
暇だから、という理由で買い物に付き合う事にした上鳴は、見慣れない施設と想像を超える人の数に眉尻を下げている最中。
やめときゃ良かったかも───と若干の後悔が滲み始めた中、服の裾が引っ張られた。
「………で、上鳴。その格好は?」
楽しいショッピングの時間とは思えない低音ボイスで上鳴の服装を指さしたのは耳郎だ。
そして。
「上鳴くん。ないよ」
個性の限界を知り、解釈を広げることで自身の透明度をある程度調節できるようになった半透明少女、葉隠透。
今を生きる女子高生の2人から見て、あり得ないというファッション。上鳴は首を傾げて問い掛けた。
「何が?」
「何が、って……」
「「芋ジャーはヤバいよ」」
声をハモらせる耳郎と葉隠。
上鳴は所謂芋ジャー、つまり学校で指定されているようなデザインのジャージ上下でこの場に赴いていた。
「緑谷のシャツもヤバい*3けどアンタ程じゃないからね」
「尾白くんもヤバい*4けど上鳴くん程じゃないよ」
うっかり関係ない2名が被弾して胸を押さえる中、鼻でもほじりそうな空気で上鳴が言う。
「つっても、服なんてこれしかねーよ。そもそも服なんて別に何でもいいだろ。裸じゃなければ」
「ちっが─────う!!!」
ちっが────う!!
ちっが───う!
ちっが──う
木霊だろうか。否、葉隠の魂の叫びである。
葉隠は激怒した。
必ずやこのファッション無頓着男を更生させてやると決意した。
葉隠には上鳴の内心など分からない。透明故に特に着れない服もなく、自由なファッションをして過ごしてきた。
しかし、服飾の重要性については人一倍敏感であった。
「上鳴くんいい!? ファッションはね………個性なの! 自分がどういう人間で、何が好きかを端的に表現するツール! その上他人からの第一印象まで決めちゃう物なんだよ!?」
「お、おう」
胸ぐらを掴む勢いで捲し立てる葉隠に上鳴は半歩退がった。
援護射撃を送るように耳郎が言う。
「別にジャージが悪いって訳じゃないけどさ、近所のコンビニに行く感覚で友達と遠出はしないよね」
「そう! TPO! TPOなんだよ上鳴くん! もっと個性出してこ!?」
「逆に個性的ではあるが」と常闇。
「別にそこまで言わなくても……」2人の剣幕を見て上鳴に同情するように八百万。
「常闇くんとヤオモモは黙って!」
「「すみません」」
「でもジャージ以外の服って動き難いしなぁ」
シャドーを軽く行いながら言う上鳴に呆れ声と溜息が重なった。事情はある程度知っても、深刻な戦闘中毒を受け入れられるかは別の話だった。
「じゃあ動きやすければいいってことだよね!?」
葉隠はグイッと上鳴の腕を引いた。
「これより第1回ジャージズマ*5ファッションバトルを開始する!!!」
「はい?」
困惑する上鳴を無視し「面白そう」とファッションバトルに名乗りを上げたのは芦戸、瀬呂の2人。そこに葉隠を加えた3人でセンスを競い合う。審査員は八百万、耳郎、障子の3人が抜擢された。
「俺はこういった物とは無縁なんだが……」
そう言う障子を審査員に選んだのは葉隠だ。
「自分に似合う服を選べるのはセンスがあるということ。その上で自分の
と褒めちぎって障子を審査員の席に着かせた。本来の目的を考えれば割と迷惑であるが、障子は良い奴なので葉隠の無茶振りにも応えた。
ファッションバトルの制限時間は45分。
この制限時間は葉隠が勘で設定した。
条件は頭からつま先までのコーディネートを税込5000円以内。評価基準は動き易さ重視。そして当然ではあるが上鳴に似合っていること。審査員1人につき10点。満点は30点。
上鳴に1人1回まで試着させることができ、その際に3人の審査員からコメントをもらうことができる。
───何だこれ。
渦中の上鳴は
そんな中始まったファッションバトル。
最初に動きを見せたのは男子代表と化した瀬呂範太。
「ストリート系かな。やっぱ」
「被った……!」と芦戸。
ストリートファッションとは若者を主体に生まれてたジャンルの1つである。一言で括れないファッションスタイルではあるが、今回瀬呂と芦戸が真っ先に思いついたのは源流、即ち1970年代から1980年にかけてアメリカで生まれたとされるスタイルを汲んだ物だ。
その最大の特徴はオーバーサイズのアイテムを選びながらも、決して機動性を損なわない点である。スケートボードとヒップホップという2種のカルチャーに強い影響を受けているファッションであるため、身動きの自由度は高い。
そうやって2人がストリート系で攻める事を考える中、葉隠が目を光らせた。
「スポーティな感じ一択だね!」
そして2人と被らないラインを瞬時に見抜き、アイテムを探し始める。
「帰っていい?」
上鳴は審査員達にそう尋ねたが、全員がゆっくりと首を横に振った。
「えぇ……」
上鳴は大人しく着飾られることを受け入れ、ベンチに座り込んだ。
暫くして、最初に服を持ってきたのは葉隠だ。
「simple is best……」
「何で英語?」
ネイビーカラーのオープンシャツ。
無地の白Tシャツ。
黒地に白いサイドラインが入ったパンツ。
靴は今上鳴が履いているスニーカー。
「使いやすそうなアイテムで纏めてみました!」
葉隠のコメントを聞き、試着を済ませた上鳴を見て審査員達は一言。
「シンプルだが、それが元の良さを引き立てている」
「よくお似合いですわ。爽やかですわね」
「いいんじゃない?」
「動きやすい。ジャージほどじゃないが、下半身の可動域は殆ど変わりないな………っと」
上鳴が軽くその場でステップを踏むなどして動きやすさを確かめていると、視界の端に三段アイスを片手に転けそうになっている少女を捉えた。
彼我の距離は約40m。
風と共に駆け出した上鳴は少女が顔面から地面とコンニチハし、アイスを蟻の餌にしてしまうよりも早く現着。身体を支え、その手から飛び出したアイスをコーンできっちりと受け止める。
「気を付けろよ」
「ありがとうお兄ちゃん!」
「すみません! 助かりました………アレ? もしかして雄英の───」
「それじゃ。服、試着のやつなんで」
値札の残像だけをその場に残し、一瞬の内に休日の家族連れの視界から消えて上鳴は服屋に戻った。トータルで僅か10秒。人助け自体に掛かった時間は2秒前後といったところだろうか。
「悪くない」
そう言って更に動きの感触を確かめる上鳴に、葉隠は舌を巻いた。
「これなら確かに動きやすさを重視するよね……でも素材に拘ると予算が………ぐぬぬ」
「俺からしたらもうこれでいいけどな。ジャージとそう変わらないし……というか、何で俺の格好をそんなに気にするんだ?」
上鳴が首を傾げながらそう言うと葉隠は。
「えっと……やっぱり迷惑だった?」
「いや、ただ疑問に思っただけだ」
───所詮他人だろう。
上鳴は内心でそう付け加えた。
「そうだよね。理由、理由か………答えになってるか分からないし、ちょっと自分語りになっちゃうけどいいかな?」
葉隠はそう前置きし、上鳴が頷くのを見てから話し出した。
「私、小さい時はあんまり友達いなかったんだよ」
明るく社交的なイメージしかない上鳴からすると、葉隠のその言葉は意外だった。
「透明だから表情とか分かんないし。その時は自分がどう見られるか何て気にしないからさ! ぶっちゃけ浮いてたんだよね!」
表情が分からないというのはコミュニケーションにおいて大きなデメリットになり得る。怒っているのか楽しんでいるのか、それとも悲しんでいるのか。顔の動きで判断する部分は多い。
それをカバーする技術もあるが幼い葉隠にそんな技量があるはずも無く、集団から孤立するのにそう時間は掛からなかった。
「でもね、親と一緒に行った遊園地でこう………気付きを得まして!」
「気付き?」
「着ぐるみの人が転けて頭が外れちゃうアクシデントに遭遇しちゃってね。その時に汗だくのおじさんが見えちゃったんだけど、私にはそれが凄い衝撃だったんだよね」
確かに子供にとっては凄い衝撃かもしれない───と茶化す者はいなかった。
基本、着ぐるみのサイズにもよるが遊園地に限れば中の人は女性である場合が殆どだ。これは老若男女を問わず近い距離で接する機会が多く、問題が起こり難い為だ。
しかし、サイズの大きい着ぐるみや着ぐるみスタッフの出勤状況によって例外は発生し得る。葉隠が出会したのはその珍しい一例。
「中に居るのが誰なのか分からないのに、着ぐるみを着てれば人気になれるって凄いなって………あ!? ただ着ぐるみ着てるだけだなんて今は思ってないからね! 仕草とか凄い大事なのは分かってるから!」
それは葉隠が透明人間であるが故の感想だった。
「……私にとって服って着ぐるみみたいな物だったんだよ。だから最初は動きが映えるような服とかよく着てたし、明るめの色とか選ぶのが多かったの」
私はこういう人間ですと、はっきり目で見て分かる様に伝えなければ誤解される。
私はこういう人間ですと、人より口調や態度で示さなければ伝わらない。
見えないというのは非常に分かりやすい脅威である。監視カメラに映らないなら悪事も簡単だろうと、そう考える人間も少なくない。葉隠は着飾ることで個性を殺して生きてきた。
「でも今、すっごく楽しいんだ!」
転機となったのは体育祭か。それとも自分の姿が見える少年に気付いた時か。はたまた個性のオンオフができる様になった時か。
何にせよ全ての起点は上鳴だ。
「だから………改めてお礼! 私を見つけてくれてありがとう!」
誰の目からも透けて見える自分と正面から向き合ってくれた。
だから感謝を伝える為に、自分にとって1番大切なモノを人に贈りたかった。確かにこれ以上の親愛表現はないだろう。葉隠にとって服とは自分の人生を語る上で最も重要で思入れ深い物であるし、そういう意味では最上に近い。
上鳴があまりにも身嗜みに無頓着過ぎたからか
「そっか」
上鳴は頷いた───そして少し前までなら素気無く「いや、別に気にしなくていい」と答えただろう。
しかし、上鳴はこの学生生活と峰田の一件で学んだ。礼と謝罪は素直に受け取った方が話が速いと。
「なら、どういたしましてだ」
「………! うん! なので今回のお代は私が」
「それは自分で払う」
「なんでぇ……?」
「当たり前だろ」
程なくして芦戸と瀬呂も服を持ってきたが、審査員達の間に漂う空気に「「これって……?」」と訝しんだ。
2人の肩に手を置いた障子は穏やかな目でこう伝えた。
「ああ、葉隠の勝ちだ」
しかし、穏やかな時間はそう長く続かなかった。
『雄英高校よりお越し頂いております上鳴電気様、上鳴電気様。至急本施設中央、本施設中央にある警備室までお越しくださいませ』
「耳郎すまん。財布渡しとくから支払い代わりに頼んだ。スターから貰った金入ってるから、3人が選んでくれた物は全部買っといてくれ」
ちょっと上鳴!? と財布を押し付けられた耳郎の声を背中に受けながら、上鳴は警備室まで向かった。
そこに居たのは首を押さえる緑谷とそこに寄り添う麗日だった。
「何があった?」と上鳴が端的に問う。
「ヴィラン連合の死柄木とそれから………今の僕じゃ絶対に勝てないヤツに、会った」
緑谷は強くなった。
並のプロよりずっと。
その緑谷をして絶対に勝てないと言わしめる者。
その名は───
「“血狂い”マスキュラー」
歯を食いしばって耐える様に緑谷が名を口にした、その次の瞬間には上鳴は警備室から飛び出していた。
そして全方位に索敵を仕掛けるが反応はなく。
「完全に逃げられた。あるいは、俺みたいな索敵できる奴の対策を持ってるか。何にせよここは逃すしかないな………暴れられたら死人が山程出る」
残念だ。
上鳴のその言葉を聞いた者はいなかった。
「……全く。あんな殺気ばら撒かれたら食いつきたくなっちまうぜ」
ショッピングモールがある方角に目線を向けたマスキュラーがそう言って首を鳴らす。
いつものマスキュラーなら迷わず戦いに行っただろうが───そうしない理由があった。
「俺を呼びにきたんだろ、お前……」
死柄木がそう言って肩を落とす。
マスキュラーが「それはそれだろうがよ」と唇を尖らせながら不満げに言葉を返すと、死柄木は。
「少し我慢できるなら戦う場を作ってやる」
「へぇ、随分とヴィランらしい顔になってきたじゃねぇか、大将」
「
風が吹く。
「オールマイトを殺しに行こう。そして奴がこれまで積み上げてきた物全てを、その眼前で1つ1つ、丁寧に壊すんだ。俺は今日からそれを信念と呼ぶことにするよ」
「いいねぇ………そうこなくっちゃ。そん時は俺にも一声かけてくれよ?」
悪の華は芽吹いた。
終わりの始まりは直ぐそこにまで来ていた。
以下、本筋に関係なくて端折られたシーン。
帰宅した死柄木はパワポを使って今後のヴィラン連合の方針を纏め、後日荼毘達を集めてプレゼンテーションを行った。
タイトルはズバリ『目指せヒーローのいない自由な世界〜暴力が世界を変える〜』
無駄なアニメーション、やたら文字が多いなどクッソ見にくいと不評が集まったものの、死柄木の展望は伝わった。これは義爛が人を紹介する度に行われ、回を重ねるごとにパワポは洗練されていった。
人数が集まった所で死柄木はは交流を深めチームワークを高める為にLoLによる交流会を敢行。果てしなくギスリながらも荼毘他数名を沼に引き摺り込む事に成功する(スピナーはLOL経験者でマオカイをメインで使うというだけで連合に採用された)
尚、この交流会にステインは参加しなかった。呼んだら来たかもしれないが、呆れて抜けられても困るため黒霧が呼ばなかった。
※作者のLoL知識は情報が動画のみ+ニワカのため適当に流してください。