個性圧縮訓練。
それは、個性の上限と出力を向上させる為の訓練である。
個性は身体能力だ。個性に適応する肉体を育てるにはそれその物の成長段階から手を加える方が効率が良く、着手が早ければそれだけ成果に直結する。
幼少期から個性の出力と上限を高め続けてきた上鳴や轟などは良い例で、彼らが他の生徒らと比べると頭一つ飛び抜けた力を持っている事がその証明。
故に───その訓練が過酷である事は言うまでもなく。
林間合宿2日目、朝。
雄英高校ヒーロー科1年B組一同は、その個性圧縮訓練真っ只中のA組を見て唖然として言葉も出なかった。
「……どうしたお前たち。早く訓練に取り掛かるんだ」
ブラドキングが口を開けて放心する生徒らに訓練を促すと、拳藤がおずおずと手を挙げた。
「……正気ですか?」
彼女らが目にした物は───正しく、地獄であった。
魔獣の森に併設された広大な訓練場に入って直ぐの場所。そこには超大型特殊車両のタイヤを引き、玉のような汗を流しながらエンジン音を響かせる飯田がいる。
その真横には五右衛門風呂に入り炎と氷結の力を使ってトレーニングする轟。
そして彼の頭上では麗日が、轟の個性の影響を受けて生じた大気の対流を利用している真最中。個性を自分自身に使い、今にもキラキラを吐き出しそうな表情を浮かべ身体をぐるぐると回転させながら宙に留まっていた。
これくらいならまだ良い。
B組メンバーの視界にはフードファイトをしながら個性を使っている砂藤と八百万。無限にテープを射出している瀬呂。個性の解釈を深めている蛙吹や、ひたすら頭の葡萄を捥いでいる峰田なども映っている。前述の生徒らも含め、まだ理解が及ぶ範囲の訓練である。肉体への負荷が凄まじいのも理解できる。
しかし、だ。
少し視線を外へと向ければ、毛色が違う訓練が嫌でも存在を主張してくる。
先ず洞窟から断続的に響く破砕音と絶叫。
これは常闇とダークシャドウの特訓だ。内容は素手で殴り合って友情を深めてこいという無茶の強要。目的は最大出力のダークシャドウを制御出来るようになることである。
その洞窟の近くでは、血塗れになりながら殴り合う切島と尾白がいる。このマッチングは互いの個性を高める為だろう。尾白の尻尾に刻まれた夥しい数の切傷も、切島の体表から剥がれ落ちる硬化した皮膚も、見ていてとても痛々しい。
森方面では芦戸が1人、酸を放出している。溶解され原型を失った木々の中心にいる芦戸の肌は普段のピンク色ではなく、色素が抜け落ちて白くなっていた。それだけ個性を酷使しているという事なのは、あまり芦戸を知らないB組メンバーでも簡単に想像がついた。
空を見上げれば、大量の服を纏い着膨れして雪だるまの様になった状態で地上20mの高度を保ったまま「クソがぁぁぁぁぁあ!」と言いながら飛び続ける爆豪がいる。
空中での姿勢制御と持続的な負荷による汗腺の拡大が目的ではある。笑いを誘う有様だが、人相が極悪過ぎて笑えない。
そして───訓練場の最奥。
「緑谷ァ! なに寝っ転がってんだ! サボってんじゃねぇぞ!」
「ウボァ───ッ!? オェェッ! ゲホッ、ゲホッ、ちょっと、まっ、ゔっっ!?」
全身に錘を付けた緑谷を、上鳴が容赦なく殴り飛ばしている。
口からキラキラが止められない緑谷に対し、上鳴は。
「ったく。だらしねーな。最近のはこんなんばっかか………虎さん! お願いシャッス!」
虎さん───プッシーキャッツの武闘派、他の3人とはジャンルが違う筋肉担当の虎に90度のお辞儀を見せた。
「うむ───立てい緑谷! 我&上鳴'sブートキャンプに伏せたままピクつく訓練などない! プルスウルトラだろォ!? しろよ! ウルトラ!」
フリフリの魔法少女的コスチュームを着たナイスガイの低い声が青空に響き渡る。
「イ、イエッ、ゲホッゲホッ!? ッッァァアイ!」
「構えろ緑谷! パンチの打ち方を知ってるんならなァ!」虎が手で緑谷を挑発する。
「っぐ、はいっ! フルカウル、20%! デトロイトスマッシュ!」
「うぉぉぉお!!? 殺す気か!!」
「ぇええ!? うわ、待っ、アバ───ッ!?」
咽せながら必死に訓練に食らいつく緑谷を見たB組の心は1つ。
───怖すぎる。
他の生徒も大概だが、これと比べればまだマシだ……マシか? 本当か? 麻痺していないか?
まだ常識と良識を兼ね合わせている一般的優等生が多くを占めるB組には、この光景はあまりにも刺激が強過ぎた。
不安そうな顔で自分を見る生徒たちにブラドキングは言う。
「…………“Plus Ultra” だ!!」
ちょっと言い淀んだ事を誰も指摘はしなかった。
そんなこんなでB組も合流を果たした所で、圧縮訓練は加速した。
「単純な増強、近接主体の個性持ちはこっち来いよ!」と上鳴が手招きをする。
「いっ………いやだ!」と回原。
「まだ死にたく無いですぞ!」宍田が激しく頷く。
その2人の肩に手を置いて拳藤が言う。
「腹括んなよ……覚悟はいい? 私はできてるよ」
「け、拳藤氏!」
「大丈夫だ! 死にやしねぇよ……多分な!」
「鉄哲……! だよな! 頑張ろうぜ宍田!」
その後、上鳴と虎による指導を受けていた緑谷に、B組だけでなくA組の近接組として尾白、切島、飯田が合流。更に「徒手格闘も大事だから」と葉隠も参加した。
追加の
そうして圧縮訓練を包括する基礎トレと模擬戦を交互に繰り返す永久機関が完成した訳だが───生徒たちが戦う相手は上鳴のみ。
「弱い! 弱過ぎる! 何でその個性でこんなにもフィジカルが弱い!? 甘えんなよ個性に!」
上鳴は全員を相手に個性なしでも無双できる地力がある。
甘い行動は全て潰し、心も身体もしっかりと叩きのめしていく。フィードバックこそ行っているもののその光景は所謂“初狩り”に近い様相を呈し始める。*1
最初はノリノリだった虎の顔も段々と翳っていく。それに反比例する様に熱が増していく上鳴に対し、拳藤がぼやく。
「ねぇ……上鳴なんかキャラ違うくない?」
「ゲホッ、ゲホッ、多分楽しくなってるんだと思うよ」
「ああ。彼は本当に戦うのが好きだからな」
「何駄弁ってんだ拳藤緑谷飯田ァ!」
「その上、地獄耳だもんな」と切島。
上鳴が竹刀で「教育的指導!」と言いながら切島を叩く。もちろん切島は個性で防御。
上鳴はその反応速度にニヤリと口角を上げ「これよりポン刀持ったヴィランとの戦いを想定した模擬戦を行う!」と言って竹刀を中段に構えた。
「というかそれどこから持って来た?」
拳藤が思わず口を挟み他の面子も激しく頷く。
上鳴が切島をめった打ちにしながら「八百万バケツ作ってー!」と叫んだことで、出所は直ぐに判明した。
「少々お待ちをー!」
八百万がレーションを頬張りながらバケツを作り、隣の砂藤が角砂糖を貪りながらそれを上鳴に向かって投げる。
「サンキュー!」とそれを受け取った上鳴はバケツを被り、切島と再び相対。
「来いよ」
「それは舐めすぎだろ!」
視界が消え、バケツ内で反響する音で聴覚が機能しなくなっても───上鳴の強さは変わらない。切島の打撃を一度も受ける事なく、竹刀のリーチを最大限活かして完封する。
尻餅をついて呼吸を荒らげる切島に手を差し伸べながら上鳴は言った。
「先ずは打撃を打つ瞬間と、攻撃を受ける瞬間に最高硬度を発揮できるようになれ。全身硬化はその後だ」
「お、おっす……」
「次、鉄哲! 来い!」
「お、おぉ!」
それからも上鳴主体の模擬戦を交えた訓練は続いた。
切島、鉄哲、尾白、回原、緑谷、拳藤、葉隠、飯田、宍田で一巡。模擬戦をしていない間は基礎トレを含む圧縮訓練を行う。
丁度、それが3周目に入った頃、生徒らのやる気が少しずつ下がり始めた。あまりにも上鳴が強過ぎた為だ。幾ら彼らが日本で指折りの向上心と負けん気を持っていたとしても、ただ叩きのめされているだけの現状でモチベーションを維持する事は難しい。
緑谷と尾白が模擬戦としての体裁を成り立たせていたのもあって、特に上鳴をよく知らないB組メンバーのメンタルへのダメージは計り知れない。
───むぅ。想定以上の傑物か、上鳴電気。
虎が腕を組んで唸っていると、鉄哲が上鳴の卍蹴りを受けて宙を舞った。
「武器持ってる奴がそれしか使わねーなんて甘えたこと考えてるからぶっ飛ばされるんだ……テメェの強みを理解しろ。ぶん殴られそうになったらそれを受け止めて殴り返せ。切島と同じだ」
「お、オッス……」
この模擬戦が始まって以降、上鳴は一度も休んでいない。立ち止まっている時間はそれこそ水分補給をしている間だけ。
上鳴は500mlのペットボトルに入ったスポーツドリンクを一気に飲み干し、空のボトルをビー玉サイズにまで丸め拳に収めてそのまま電熱で焼却した。
───そもそも上鳴の個性は現状、短期集中型の訓練で伸びる領域にはない。我々プロと同等かそれ以上というのは、そういう事だ。
轟も単純な個性の出力で言えば上鳴と同クラスではあるが、彼は如何せん扱い方が稚拙過ぎた。今行なっている訓練が他の生徒とは違いコントロールを上げる事を重視しているのもその為だ。
───で、あるから……こうして基礎トレを重視する増強型や近接軸の生徒らを相手に、縛りを課した状態で模擬戦をさせているのだが……駄目だな。本人も早々に自分のスキルアップは頭から外している。
「立てオラァ! 今から腕立て伏せ! 俺が“はい”って言うまで腕曲げたままキープ! さあ、構えろ!」
───ふむ。我の立つ瀬どこ?
(そこになければないわね)
虎の疑問に答えたのはマンダレイだ。
テレパスで虎にしか聞こえない様に囁かれた事実は、その心を鋭く抉り抜くのには充分すぎた。
こうして明朝から夕方まで行われた圧縮訓練により、生徒らは1名を除き満身創痍の状態にまで追い込まれた。
しかし、彼らの訓練はこれで終わりではなかった。
「さあ! 自分達のご飯は自分達で用意しな!」
「だからって雑なネコマンマは作っちゃダメね!」
激動の訓練の後に待ち受けていたのは、夕食の用意である。返事をする気力さえない生徒が大半だった。
「確かに……災害時など、避難先で消耗した人々の……はぁ、はぁ……腹と心を満たすのも、救助のっ……一環!」
足のマフラーから黒い煙を吐き出しながら懸命に夕食作りに意義を見出そうとする飯田。
「無理すんなよ」と上鳴が飯田の背中を摩る。甘さ控えめの飴と鞭でしかない。
「ありがとう、上鳴くん……だが委員長たる者、俺がこんな調子ではいけないな───んんっ! 皆、もうひと頑張りだ! 世界一旨い夕食を作ろう!」
相澤が「飯田便利」と小さく声を漏らしているのを上鳴は聞かなかった事にした。
作る料理はこの手のアウトドアの王道であるカレー。クラス毎に食材を扱うメンバー、火を扱うメンバーとざっくり二手に別れた。
上鳴は火を扱うメンバーに分けられ、指先に纏わせた電力と熱で火を起こすなどして貢献した。
個性や調理経験が無ければ時間も掛かっただろうが、A組は料理経験が豊富な蛙吹と砂藤を筆頭に手際よく調理をこなし、程なくして完成した。
「……ん?」
そして誰よりも速く、飲み干すようにカレーを平らげた上鳴は食卓に緑谷がいない事に気が付いた。
辺りを見回す上鳴に「どうかした?」と耳郎が尋ねる。
「緑谷の姿が見えなくてな───あっちか」
「キッショ、何で分かるんだよ……」耳郎が呆れた様子で言う。
「ちょっと行ってくるわ。こういうのは、皆で食った方がいいだろ」
「真っ先に飲み干したヤツの台詞じゃないからね、それ。仕方ないかもだけどさ」と拗ねた様に耳郎が言葉を返す。
「悪い悪い。今後気を付けるわ」
上鳴は耳郎との話を切り上げて緑谷を追った。
とはいえ、距離は然程離れていない。上鳴は宿泊施設の側にある山を幾らか登った先で、直ぐに緑谷を見る事ができた。
そしてその側にはツノの意匠が特徴的なキャップ帽。
───あれは………プッシーキャッツの。
緑谷は洸汰少年にカレーを渡そうと持ってきていたのだ。
───まあ理由はそんだけじゃなさそうか。
上鳴の聴力ならば態々聞き耳を立てずとも、話は聞こえてくる。
「バカみたいにヒーローとかヴィランとか言っちゃって、殺し合って……頭イカレてるよ。みーんな……」
ヒーローもヴィランも等しく嫌う洸汰少年の言葉を真摯に受け止める緑谷。
沈痛な面持ちで彼は自分の、否、無個性の友人の話を切り出した。
しかし、彼の言葉は洸汰少年には響かない。
突然現れた自分が嫌っている側の人間の話だ。聞きたくないというのもあるだろうが、緑谷が言葉に詰まり、何が言いたいのかが分かりにくい取り留めのない話をしてしまっているのも大きかった。
ただ。
「そこまで否定しちゃうと、君が辛くなるだけだよ」
上鳴は緑谷がどうしたかったのかを悟った。
───お人好しめ。オールマイトが後継にお前を選んだのも納得だよ。
「うるせぇ! ズケズケと! 出てけよ!」
洸汰少年が緑谷に向かって声を荒らげる。幼いなりに心当たりがあったのだろう。緑谷はそれ以上何かを言うことなく、カレーを置いてその場を離れていった。
上鳴は緑谷の背中を見送り、ふぅと息を吐いた。
───にしても、因果ってのは廻るもんだな。洸汰くん、アンタのガキだったのかよ………なあ、ウォーターホース。
それから乱暴に頭を掻いて、上鳴は緑谷の後を追って走り出した。
そうして林間合宿2日目が終わり、全員が寝静まった直後のことだった。
『起きて』
耳元でそう囁かれ、沈んでいた緑谷の意識が一気に浮上した。
緑谷は思わずうわぁ!? と叫んだつもりであったが、口元が黒い影に覆われていて声が漏れる事は無かった。
───どこだ、ここ?
目の前にあるのは打ちっぱなしのコンクリートの床に8つの椅子。見上げれば深い闇を色鮮やかな光が流星の如く尾を引いている。
後ろを振り返ればそこには何もなく、底の見えない暗闇が広がっていた。
そうしてキョロキョロと目を動かす緑谷の耳に、また声が聞こえてくる。
「そうか……まだ馴染みきってはいないのか」
椅子の1つから声がして、緑谷は思わず目を剥いた。
「ごめんね、驚かせてしまって。僕は君の敵じゃないよ」
緑谷が目を凝らせば、その椅子に腰掛ける白髪の青年の姿がボンヤリと浮かび上がってきた。
青年が穏やかな声音で緑谷に語りかける。
「目が合ったね。チャンネルが合ってきたのかな? 初めまして……いや、体育祭で一度だけ会ったから2度目ましてだね。9代目緑谷出久くん」
───体育祭で1度、ってことは歴代継承者の面影……!?
「驚いてるね。それもそうか……僕らは死人だからね」
青年がそう言った次の瞬間、椅子のそれぞれに異なる色の炎が灯る。
青、赤、緑、橙、紫、桃、金の炎が表すのは歴代継承者達の面影───否。
「まだ喋れないとは……大変だな」
「仕方ないですよ。1年前まではまだ器ですら無かったんだから」
「寧ろ器を完成させてから僅か3ヶ月でよくここまで磨き上げたと褒めるべきか」
炎が人の形を成し、ハッキリとした姿へと転じていくのを見て緑谷は確信する。
───彼らは、ワンフォーオールの中で生きているのか!
「少し話をしよう。これから先……君の身体に何が起こるのかを」
青年の言葉の後、緑谷の喉が音を立てた。
「……ふぅん」
クラスメイトの寝息といびきが大合唱を奏でる中、苦しそうに何度も寝返りを打つ緑谷の側で上鳴は胡座に頬杖をついてそれを眺めていた。
───感じる。コイツの中にある力の胎動を。
緑谷に宿る力“ワンフォーオール”。
オールフォーワンを打倒するため、8人の勇士を渡り緑谷に継承された義勇と力の結晶。
縁も所縁もない上鳴がその胎動を感じる事は本来あり得ないのだが。
「……見えるんだよな」
上鳴の掠れて消え入る様な声が寝息といびきの大合唱に飲まれて消える。
───霊感、第六感的な奴か?
あり得ない話ではない。
上鳴の視覚は尋常な人間とは異なり、光を屈折させて透明になる葉隠の姿形を判別できる様な特異性がある。
そこに生来の人間離れした聴力、嗅覚が合わさり、10余年にも及ぶ訓練で養った空間認識能力が組み合わされば、科学では解明できない何かを感覚的に捉える事も不可能ではないだろう。
そして入学当初、上鳴は戦闘訓練のデモンストレーションで7色の炎がオールマイトの拳に宿る光景を幻視した。
更に今、それに黄金を加えた8色の炎が緑谷の中で揺らめいているのを見ていた。
ワンフォーオールは緑谷がオールマイトから受け継いだ力だ。その性質から考えて、黄金の炎がオールマイトを暗示しているのは火を見るよりも明らかである。
何より、上鳴は知っている。
───未来でコイツは6つの個性を操ってた。
目を閉じれば鮮明に思い出せる、存在しない記憶。
───もしアレらが歴代継承者の個性だったとすれば……無い話じゃない。むしろ扱える方が自然か。ワンフォーオールの能力は力を溜め込み、誰かへ譲渡すること。身体能力の蓄積が真骨頂なら、それに個性がカウントされないとは思えない。
上鳴は思う。
───緑谷の器としての完成度は、オールマイトと比較して約20%前後。無理をすれば40%近い力を引き出すことだって出来る。この進捗がワンフォーオールの定着率の様な物と考えるべきか……
思考の海に潜る上鳴だったが、服の裾を誰かが引っ張ったことで意識が現実へと戻ってきた。
服の裾を引っ張っていたのはダークシャドウだ。
「マブシイ……」
目尻を下げて指で上鳴の目を指すダークシャドウに、上鳴は「すまんすまん」と片手を上げながら謝った。それから忍び足で部屋から出て、洗面台にある鏡で顔を確認した。
「……何か、光ってんな」
鏡の中の上鳴は瞳が青白い電光を発しており、確かに暗闇にいれば目立つ様な状態になっていた。
ダークシャドウ以外の誰にも気づかれなかったのは、シンプルに圧縮訓練の疲労でそれどころではなかったからだろう。
上鳴は暫く鏡の前で悪戦苦闘しながらも瞳の電光を消し、部屋へと戻った。
緑谷は変わらず寝苦しそうにしながら「麗日さんとはそんなんじゃないです……」と寝言を漏らしていたが、緑谷を見ても上鳴の瞳に8つの炎が映る事は無かった。
「かっちゃんはそんな事言わない」
「……何の話してんだろうなぁ」
誰かに人間関係を根掘り葉掘り聞かれているのだろう緑谷を尻目に、上鳴は欠伸しながら自分の布団に潜り込む。
「明日からもっと厳しくやらねーとなぁ」
何気なく言い放った上鳴の言葉に、眠っている筈の近接組の身体がビクリと跳ねたのは余談である。
大変ありがたい事に、皆様のおかげで原作総合評価順検索で1ページ目に拙作が載るようになりました!これからも頑張って更新を続けていこうと思います。あと1話、連合側の描写の後に肝試しとなります。漸く49話で出したサブタイトルらしい回が始まりますので……何卒お手柔らかに……