雷神、上鳴電気   作:一般通過呪術師

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 今はただ、皆様に感謝を……


ep.91 新時代

 

 ──耳郎響香にとって音楽とは、かつて捨てた物だった。

 

 

 ヒーローという夢を追うと決めた時、音楽を愛する自分と、ヒーローになった自分が重ならなかった。だから、物心が付いた時から手の中にあった物を手放した。趣味の範疇でしかないと線を引いた。

 

 

 それが正しいのか、間違っていたのかは分からない。後悔はあった。だが、ヒーロー活動に根差した趣味を多くの学友が持つ中で、自分の趣味が本当にただの趣味でしかないのを恥じていたのも、確かだった。

 

 

 だから文化祭でバンドをやろうと言われた時──こんな中途半端なヤツの音楽で、人の心を動かせる訳がないと思って、断った。

 

 

 結局、良い様に流され、煽てられて今に至る。楽器隊のメンバーを決める際に爆豪が締めてくれなかったらと考えると、肝が冷える。

 曲作りも、練習も、指導も、耳郎は中途半端にしたつもりはないが──本番が目前に迫る今、不安だけがあった。

 

 

 ウチがしっかりしないでどうするんだ。

 

 

 幾らそうやって自分を鼓舞しても、目の前が明るくなることはない。

 そんな中、不意に肩を叩かれて耳郎が振り返ると──ごつごつした指が、頬に突き立てられた。

 

 

「んだよ耳郎。緊張してんのか?」

 

 

「かみなっ……いやちょっと待って??」

 

 

 髪を電極の様に纏め、コスチュームの上からクラスTシャツを着るクソダサファッションの上鳴が視界一杯に映る。

 これが若手No.1、雄英ヒーロー科最強の少年の姿か……? 耳郎は笑う事すら忘れて訝しんだ。

 

 

「バンド終わったら哨戒だからな。着替えんのダリィし、上から着てみた」

 

 

 似合う? とポージングを取る上鳴に思わず耳郎は噴き出した。

 

 

「雑念は晴れたか?」

 

 

 自分を見て微笑む上鳴に、別の雑念が芽生えかけるが──それは一旦横へ置いた。

 

 

「……どうだろ」

 

 

 開演まであと五分ほどだ。

 今ここで不安を吐露しても、何にもならない。

 むしろ皆まで不安な気持ちにさせてしまうくらないなら、仕舞っておく方がずっといい。

 

 

 上鳴は「仕方ねーな」と笑った。

 

 

「何を迷ってんのか知らねぇけど、それを解決する魔法の言葉を教えてやろう!」

 

 

 上鳴はたっぷりと溜めて、言った。

 

 

「どちらもあり得る……そんだけだ」

 

 

「何それ。思考放棄じゃん」

 

 

「成功するとかしないとか、分かんない事はそのままでも良いんだよ。どっちに転んでも良い様に生きようぜ。例えば──今を最大限に楽しむ、とかな」

 

 

 俺、良い事言ったんじゃない? なぁ? と上鳴が爆豪に話を振ってウザがられているのを尻目に、耳郎は改めて自分の気持ちと向き合った。

 

 

「……どちらも、あり得る」

 

 

 その言葉はヒーローを目指すと決めた時、両親から言われた事と重なった気がした。

 

 

「好きにやれば良い、ってことだよね?」

 

 

「答えなんてねーよ。お前がそう思うんなら、そうなんだろ」

 

 

「ひどっ。自分で言った言葉くらい責任持ってよね」

 

 

「悪りぃな。これ、受け売りなんだわ」

 

 

「善院先生?」

 

 

「うんにゃ……兄貴の師匠って感じ」

 

 

 その言葉に違和感を覚えたのも束の間、先程上鳴に絡まれていた爆豪が額に青筋を浮かべながら口を開いた。

 

 

「テメェ、他人の褌でさっきのウザ絡みしてきたんか……?」

 

 

「やべ」

 

 

「雄英生殺る前にテメェから殺るぞゴラァ!!」

 

 

「かっちゃんがキレた!」

 

 

「かっちゃん言うなァッ!!」

 

 

 緊張はもう無かった。

 後はただ──楽しむだけ。 

 

 

 

 

 

 A組のバンドは大盛況の内に幕を閉じた。

 

 

 大したトラブルもなく、予定と違ったことと言えば、精々上鳴のダサファッションが観客に予期せぬ笑いを届けたことくらいだろう。

 

 

 ──これで後は哨戒に向かうだけ……来年はもっと楽しみたいもんだな。

 

 

 最後まで味わい尽くせないのは勿体無いが、それはそれ。上鳴は己が役目を全うする為に屋上へ向かった。

 

 

「こっからでも意外と見えるもんだなぁ」

 

 

 立ち並ぶ屋台を眺めていると、かつて鹿紫雲一だった頃に家族や友人と行った祭りの縁日を思い出す。

 もう、誰の顔も声も、名前すら思い出せない。色褪せた記憶は靄が掛かった様に不鮮明だ。しかし、それを気にも留めていない。やはり本質的に、自分と鹿紫雲一は殆ど別人なのだろうと思う。

 

 

「いや……それこそどちらもありうる、だな」

 

 

 ジェントルクリミナルは、何者かで在ろうとした。自分以外の何かを直向きに目指していた姿は、少し前の自分と重なる部分がある。

 何も思わなかったと言えば嘘になった。記憶の中にある両面宿儺と戦った男に憧れ、そうなりたいと思って生きてきたのだから。

 

 

「ま──過ぎた話だ」

 

 

 もう関係ない。自分もジェントルも、最後は己自身を貫くと決めたのだから。

 

 

「さてさて……ん? ありゃミスコンか?」

 

 

 ドローンからの『モーマンタイ』報告を受け取りながら眼下の景色を見回していると、見覚えのある少女が美しい手刀を披露していた。

 

 

「……物間、拳藤の手刀好き過ぎだろ」

 

 

 上鳴は演出を考えただろう男を想像して、思わず苦笑した。

 しかし、手刀でコンパネを両断する拳藤の実力と美しさは本物だ。敢えて大きな円運動を行いながら、しなやかに、それでいて大胆に演武を披露している。観客席にいるB組メンバーがステージに投げ入れる大小様々な物品を、次々に粉砕、両断していく様は見ていて気持ちが良い。

 

 

「B組の素手最強は拳藤だな……良い」

 

 

 見てくれとか異性であるとかどうでもいい。

 強い。これ以上に上鳴の興味、関心を惹く物はない。

 

 

 ──筈だった。

 

 

「次は拳藤さんと同じくヒーロー科一年! A組の葉隠透さんです!!」

 

 

 上鳴は三秒停止した。

 

 

「……出るんじゃねぇか!! 何で言わねぇ!! 応援しに行くのに!!」

 

 

 その時、上鳴に電流走る。

 

 

 ──もしかして、避けられてる?

 

 

 ある意味、正解だった。

 葉隠は恥ずかしがり、上鳴にだけは教えないでくれとクラスメイトに懇願していた。

 その顔が余りにも乙女だったが故に、嫉妬の炎に灼かれた峰田による完璧な情報統制が行われ、上鳴は見事にハブられてしまったのだった。

 

 

「ショックだ……耳郎と同じくらい仲良いと思ってたのに……」

 

 

 “親友”判定に近い位置に居たからこそ、葉隠の情報隠蔽はショックだった。

 

 

「まあ、それはそれとして応援するがよ」

 

 

 上鳴が頭を電光で光らせ、ペンライトの如く身体を揺らす。光の種類は約千六百万。上鳴が入院生活で身につけた宴会芸の一つ、ゲーミング上鳴だった。

 

 

「どんなアピールなんだろ?」

 

 

 いよいよ幕が上がり、葉隠が姿を見せる。

 その瞬間、会場が騒ついた。

 上鳴の視界にはコスチュームと同じ素材のドレスを纏う葉隠の姿が映っているが、透明化しているため観客には見えていないのだ。

 

 

「ありゃあ確か……パーティー潜入用ってことでアイテム会社が勝手に作ったヤツだな……でも見せなきゃ意味なくね?」

 

 

 ランウェイの如く葉隠が歩き出した、その刹那──葉隠のドレスが色付いた。

 

 

 最初は赤。情熱的な色に合わせ、髪色も変化している。光の屈折を調整して任意の色を見せているのだ。細やかな制御訓練と、バグの併用。透明化の個性を完全に使いこなしていると言っていい。

 赤の次は橙。色を変化させると同時に、葉隠が立ち振る舞いや表情を変える。圧巻の演技力に、上鳴も思わず口を開けて呆けてしまった。

 

 

 ──そういや前、個性出す為に服を選んで意識的に立ち振る舞ってるって言ってたような……

 

 

 林間前にショッピングモールで買い物をした際、服飾の重要性について熱弁を振るっていた葉隠の姿を思い出す。

 なるほど、こういう事か。上鳴は身体を揺らすのも忘れて目に呪力を集めた。

 

 

 暖色にもそれぞれのイメージがある。情熱、元気、可愛さ。観客に手を振ったりウインクを飛ばしながら、色に合わせた熱烈なファンサービスで観客の心を掴んでいた。

 

 

 グラデーションの如く変わる葉隠の魅力に観客のボルテージが上がり──最高潮に達した、観客に最も近くなる最前でターン。

 葉隠は同時に色を寒色系へと切り替え、今度は一瞥だけを投げ掛けていく。

 

 

「うわぁ……峰田がすごい顔してる……」

 

 

 たまたま視界に入った峰田の形容し難い様相に、上鳴は軽く引いた。男女問わずその顔の人間がいる事に改めて引いた。

 

 

「上げて落とすってヤツだな」

 

 

 所謂、ギャップ萌えである。

 漫画に造詣の深い上鳴は、その真髄を今になって漸く理解した。これは如何なる創作物も、人間も、上鳴に教えることの出来なかった情緒である。葉隠は快挙を成し遂げたと言っていいだろう。

 

 

「何だ……もう舞台裏に引っ込むのか」

 

 

 上鳴が少し残念に思った、次の瞬間だった。

 

 

「ん?」

 

 

 葉隠と目が合った様な気がした。

 いや──気のせいではない。

 葉隠も驚いたのか、目を見開いていた。

 

 

「あっ……髪光らせたままだった」

 

 

 目印がアレば気付ける、というより予想できる。文化祭当日に屋上で髪を光らせながら睨みを利かせている人間なんて、居たとしたら上鳴かヴィランくらいだ。

 

 

 だが、何にせよ、葉隠は気が付いた。

 少し引き返して、その場でドレスを見せる様にくるりと回る。単色ではない、七色に輝くプリズムの様に光を反射させて。

 

 

「……綺麗なもんだな」

 

 

 それは葉隠の色だった。

 私は此処にいるよと言うように煌めくそれが、上鳴にはステージで見たどの色よりも輝いて見えた。

 

 

 その後、波動や他の三年のアピールがあったものの、上鳴の心がそれ以上に動く事はなかった。

 

 

 しかし、葉隠は三位。

 

 

 理由としてはアピールの短さ。ファンサービスを直に受けれた者、そうでなかった者の差が激しかったから──葉隠の順位は思ったより伸びなかった。

 

 

「納得いかなーい!」

 

 

「悔しい……! 準グランプリなどカスですわ……! 来年こそ、いや来年ないじゃないのよ!! つまり敗走、ってコト!?」

 

 

 文化祭後に発刊された雄英新聞にて、『何で何で!?』と駄々をこねる様に地団駄を踏む三年二人と、その隣で苦笑いする葉隠が一面記事になる。

 その見出しは“新時代”の到来。まるで世界の情勢を予期するかの様な物だった。

 

 

 

 

 

 文化祭が終わり、十一月も下旬に入った頃。ハイツアライアンスはA組とB組の面々が全員集まった事で、混沌の坩堝と化していた。

 

 

 何故集まったのかというと、今日はヒーローを目指す者として欠かせない一大イベントがある日だったからだ。

 

 

「「どうせ楽しむなら、この際全員で集まろうぜ!!」」

 

 

 発起人はクラスで一番熱い漢。切島と鉄哲。

 

 

「個性も言ってる事もダダ被りかよ」と瀬呂。

 

 

「似た者同士は惹かれ合うんだな」

 

 

 B組の泡瀬が瀬呂の言葉に頷きながら視線を隣へやった。

 

 

「なんだい泡瀬? 言いたいことがあるなら聞こうじゃあないかァ!」

 

 

「ンだテメェ……! こっちのテリトリーに入ってきて、不躾にガン付けてんじゃねぇよ!」

 

 

 額を突き合わせて指スマ*1している物間と爆豪に絡まれた泡瀬は、スッと瀬呂の後ろに隠れた。

 

 

「しょうゆ、裏切る気か……!」

 

 

「暴れんなら梅雨ちゃん呼ぶぞお前」

 

 

 正論で叩きのめされるのが目に見えていた為、爆豪と物間は口を閉じて指スマに意識を戻した。

 

 

「仲が良いんだか悪いんだか……」

 

 

 拳藤が机に頬杖をつき、じと目を向ける。

 しかし同じ卓を囲んでいた芦戸と葉隠が口々に言う。

 

 

「まあまあまあ……馬鹿な男子はさておき、始まるまで咲かせようよ。女子トークをさぁ!」

 

 

「飢えてんのよコッチは!」

 

 

 鼻息を荒らげる二人。

 

 

「凄いアグレッシブノコ」

 

 

「恨めしい」

 

 

「ね」

 

 

「ケロ」

 

 

 何も説明せずとも誰が喋っているか分かる、素晴らしく個性的な相槌が四つ。感心とも肯定とも取れないアンニュイな返事だが、最もテンションが高い芦戸は、それを好意的に受け取っていた。

 

 

「それでは始めましょう……恋バナを!」

 

 

「昼からやるテンションじゃないでしょうよ」

 

 

「私もちょっと……アレかな……」

 

 

「耳郎、麗日……それは私から話したいですって意味?」

 

 

「都合のいい脳みそだね」

 

 

 紅茶を飲む耳郎の眉間には、深い皺が刻まれていた。

 これを突けば死ぬかもしれない。芦戸に緊張が走る中、B組の取蔭が「そう言えばさ」と話を切り出した。

 

 

「ミスコンなんだけど……葉隠アンタ、屋上の方見てから演技追加したっしょ」

 

 

「ぶほっ」

 

 

 葉隠は咽せた。

 背中を八百万が摩る。

 

 

「な、ななななななんの事かな!?」

 

 

「もうその反応が答えだとは思うんだけど……強いて言えば、あのアピールだけちょっと浮いてた。観客へのファンサがいきなり、誰かへ見せる物に変わったっていうか……」

 

 

「ああああああ!!? やめてください事実陳列罪でアナタを訴えます!! 理由はもうお分かりですね!?」

 

 

「oh!! Gold Experience Requiem ですネ!」

 

 

「ワザップジョルノで草ノコ」

 

 

「おもしろ。自白してるし」

 

 

「やめなよ。意地が悪い」

 

 

「「「すみません姉御!!」」」

 

 

「よーし、全員そこに直れ。イベント開始まで夢の中に叩き込んでやる」

 

 

 姦しい室内。

 しかし、耳郎はどこか上の空だ。

 芦戸が耳郎に忍び寄り、取蔭が個性を使って口を耳元に寄せ──

 

 

「「上鳴がいないのそんなに寂しい?」」

 

 

「おい。ライン越えたね。表出ろ」

 

 

 怒ったー!

 キャー!

 

 

 楽しそうに笑いながら芦戸達が駆け出すのを、耳郎が追いかけ回す。

 

 

「まあ耳郎と理由は違うけど、普通に疑問ではあるよね。何で?」

 

 

 それを尻目に、拳藤が八百万に尋ねた。

 

 

「仕事と聞いております」

 

 

「上鳴ちゃん凄い不機嫌そうだったわね」

 

 

「またハブるのか? 俺をよ……って拗ねとったね」

 

 

「ちゃんと教えてやりなよ……ミスコンくらいさ……」

 

 

 拳藤は上鳴に同情した。悪意があっての事でなくとも、少し不憫過ぎる。

 

 

「まあ、私たちも結構振り回されてますから」

 

 

「それを良しとしてる部分はあるけど、たまには私たちがどう思っているかを知る事も、上鳴ちゃんには大事よ」

 

 

 他所の家の教育に口を出すのもアレか。

 拳藤は「そうだね」と頷き、B組で一番上鳴に振り回されてる物間に少し優しくする事を決めた。

 

 

「そろそろ始まるよ!」

 

 

 テレビの前を轟、飯田と共に陣取っていた緑谷が声を張り上げる。

 緑谷に付き合ってテレビを見ていた二人には少しだけ疲れが感じられた。

 

 

「緑谷君、本当にヒーロー好きなんだな」

 

 

「会場にいるランキング上位ヒーローの強みと弱点が大体分かったからな……」

 

 

 そう──今日はヒーロービルボードチャートJPが発表される日。

 会場には最上位十名の功績を讃えるべく、ランキング百位以内のヒーローが集まっている。先程までされていたのはランキング百位から十一位までのヒーロー達だ。

 

 

「オールマイトのいないビルボードチャートか」

 

 

 誰かがポツリと呟いた言葉に、全員が拳を固く握った。

 

 

 オールマイトは今回、順位に関わらずそれを辞退する旨を発表していた。チャートには支持率も関わっているが、それを纏め上げる公安からハッキリと「オールマイトは集計から除く」と告知もされている。

 

 

 故に、今回のチャートは全員想像できなかった。少なくとも一位はエンデヴァーだろう、ということくらいか。

 

 

「上鳴くんとも見たかったね」と緑谷。

 

 

「興味あるとは思えないけど」

 

 

 鬼ごっこを制した耳郎は、緑谷にそう言ってから、両脇に抱えていた芦戸と取蔭を切島と骨抜に投げ渡した。

 

 

「あぶねぇ!?」

 

 

「一回沈めて引き上げれば、怪我も汚れもしない」

 

 

「柔軟な対応だ……!」

 

 

「カチコチの切島とは違うぜ」

 

 

「何で俺ディスられてんの……?」

 

 

 葉隠の隣に耳郎が陣取ると──いよいよ、番組が始まった。テレビ画面の右上に『LIVE』の文字が表示される。

 

 

『神野以降、初めてのビルボードチャート!! その意味の大きさは誰もが知る所であります!!』

 

 

 象徴の不在。事ある毎に囁かれるアイコンの喪失。それに歯痒い思いをしているのは、プロだけではない。

 

 

『これまで、発表の場にヒーローが招かれる事はありませんでした! しかし! 今回は新たに国を背負って立つ勇士を、改めて世に示すという事で! この様な場が設けられております!』

 

 

 暗い壇上に照明が当たる。

 そこに立っていたのは、黒い鎧兜を纏う老年のサムライと洗濯機だ。

 

 

『No.10!! “具足ヒーロー”ヨロイムシャ!! そしてNo.9、“洗濯ヒーロー”ウォッシュ!!』

 

 

「リューキュウ、惜しかったね〜」

 

 

「ケロ……十一位だもの」

 

 

 ライトが次々にヒーロー達を映していく。

 

 

 No.8 “樹木ヒーロー”シンリンカムイ。

 No.7 “シールドヒーロー”クラスト。

 No.6 “ラビットヒーロー”ミルコ。

 

 

 錚々たる面子だ。ヒーロー科の生徒から見ても納得の人選である。

 

 

「クソッ! ミルコは四位だと思ってた!」

 

 

「クラスト七位かぁ……神野に居てくれたら、って思っちまうな」

 

 

「シンリンカムイが十番内に入るってのは、そういうことだもんな」

 

 

 それぞれの予想を口にしたり、和気藹々とした空気が満ちる中──上位五名の発表が始まる。

 

 

『No.5!! ミステリアス&ハイスピード!! 支持率、解決数も鰻登り……“忍者ヒーロー”エッジショット!!』

 

 

「あれ? エッジショットが五位か」

 

 

「一位から三位はまぁ、分かるけど……他に誰かいた?」

 

 

「Mt.レディは?」

 

 

「二十三位だよ」

 

 

「即答すんな気色悪りぃ……上鳴の師匠がいんだろ」

 

 

「善院先生は多分出ないよ。ウチ、一回会ったことあるけど……上鳴と同じタイプだと思う。というか、本業がお医者さんだからね」

 

 

「えぇ? じゃあ一体だれ……が」

 

 

 

 

 

『──果たして、彼の名前がここに刻まれることを、誰が予想できていたでしょうか!!』

 

 

 

 

 

 ヒーロービルボードチャートJP。

 

 

 その順位は一年間の活動実績と、国民からの支持率によって決定される。半年やそこらで名を上げたとて、多くの支持を集めた所で、この頂には届かない。

 

 

『しかし、彼は到達しました。その理由は単純明快!! 己が誰よりも強いと証明したから!!』

 

 

 居るとしたらそれは──圧倒的な強者。

 

 

 他の追随を許さぬ戦闘能力を持っている事が前提条件。そして、半年足らずでトップヒーロー達に次ぐ、ヴィラン捕縛数が必要になってくるだろう。

 

 

『十五歳になって半年足らずで仮免許を取得!! 著名なヒーローは学生時代から名前を残す!? 遅い!! 彼は雄英入学前に指定ヴィラン団体を一つ潰した他、多数の検挙実績を持っている!!』

 

 

 知っている。誰よりも、その背中を雄英高校ヒーロー科一年は見てきたのだから。

 

 

『入学後も活躍は続き……日本を変えた神野の事件で、彼はその存在を改めて世界に示しました!!』

 

 

 対人訓練で平和の象徴と互角の戦いを演じた。USJ襲撃事件では、ネームドヴィランをはじめ数百人のヴィランを単独で捕縛した。体育祭での圧倒的一位、職場体験はアメリカNo.1に指名され、林間ではマスキュラーという強者から生徒を守り抜いた。

 そして、神野事変ではオールマイト達に代わって巨悪を打ち倒し、続く史上最大規模の大型組織犯罪を未遂で終わらせた。

 

 

 学生時代の逸話なら既にもう、オールマイトすら超えている。

 

 

『我々がオールマイトの敗北を嘆く間もなく、戦地に現れた……新時代の英雄!』

 

 

 ライトによって照らされた先──そこに。

 

 

『No.4!! “雷神”、ミカヅチ!!』

 

 

 上鳴電気が居た。

 

*1
名前に地域差あり





Q.上鳴は何故、四位になったのか?

①仮免時の功績を神野事変後の功績に含めたから(入学前の功績:指定ヴィラン団体の解体等を含む)
②神野事変でオールマイトとエンデヴァー他、優秀なヒーローが束になって挑んで負けたヴィランを倒したから。
③Iアイランドの事件で、アメリカNo.1のスターアンドストライプも認めている実力者だと周知されていたから。
④パトロールなどで全国区の支持率を得ていたから。

A. ⑤上記全部に加えその他諸々、公安の陰謀を一つまみ。

「支持率だけでTOP10入りする訳がない」というのをどうにか突破する為に盛り続けた、検挙実績と設定……プロライセンスに相当する特別な資格の付与……学生がランキングに乗る説得力になったかなと思います。
①の部分がバレると公安の支持率が落ちます。
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