雷神、上鳴電気   作:一般通過呪術師

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 ヒロアカアニメ、最高!! 
 ヒロアカアニメ、最高!! 
 アナタもヒロアカアニメ最高と叫びなさい!!


ep.93 祭りの終わりと宴の始まり

 

 罪人の様な扱いを受けている二人を無視して、上鳴が玄関の扉を開けると、真っ先に葉隠が出迎えた。

 

 

「上鳴くん!! こういうのはちゃんと教えてよね!! お祝い出来ないじゃん!!」

 

 

「……カイゼル髭みてぇなつけ髭に、トリコロールカラーの浮かれたメガネまでかけて、その上で指の間にクラッカーを幾つも挟んで言うことじゃねぇよ。というか葉隠。元はと言えば、お前がちゃんと」

 

 

「あああああああああ!!? 聞こえない聞こえない聞こえな──い!!」

 

 

 クラッカーを上鳴に向けて放ってから*1、葉隠は駆け足でその場から去ってしまった。

 上鳴は仕方なく、近くに居た耳郎に声を掛けた。

 

 

「なぁ、耳郎。お前からも何とか言ってやってくれよ」

 

 

 耳郎は上鳴の目を見て、真顔でこう言った。

 

 

「何とか」

 

 

「いやいや、そんなベタな奴じゃなくて」

 

 

「ふんっ。いつも親友、親友って言うくせに……肝心な事は何も言わない人の声なんて、聞こえないから。ヤオモモ。紅茶のお代わり頂戴」

 

 

「あらあら……嫌われてしまいましたね、上鳴さん」

 

 

 その言葉は上鳴にとってショックだった。

 しかし、八百万は微笑みながら上鳴にも紅茶を淹れる。

 

 

「それはさて置き、ランキング入りおめでとうございます」

 

 

 級友のランキング入りは素直に喜ばしい物だ。上鳴の想定を超えて、ヒーロー科は盛り上がっている。

 何せ、物間と緑谷を磔にした主犯は八百万である。道具類が寮に常備されている筈もなく、手軽にそれを生み出せる八百万が、場の空気に当てられてヤッてしまう程度には皆浮かれていた。

 

 

 寮の外から「裏切り者ォ!」と物間の悲痛な叫びが聞こえてくるが、上鳴はそれを聞きながら紅茶を一口。

 お高い紅茶の余韻までしっかり楽しんだ後、溜息混じりに言った。

 

 

「さておけねぇ……こんなに凹んだのは、ヤックルの(ケツ)に矢がブッ刺さった時以来だよ……」

 

 

「良い人生を過ごせていそうで何よりですわ」

 

 

「ご機嫌な人生だね。アンタ」

 

 

 まあ、否定はしないな。

 上鳴がそんな意味を持たせて、ニヤリと笑っていると──扉の隙間から異形の者が入り込んできた。

 ギョッとして臨戦態勢を取る八百万達を上鳴が手で制していると、それは上鳴に向かって言った。

 

 

『ねいとが可哀想! 早く解放してあげて!』

 

 

「ネル。別にお前が外してやりゃいいじゃんか。ついでに緑谷も」

 

 

『イツカちゃんがダメって。私たちが買い出し終えて帰ってくるまで反省してろって』

 

 

「尻に敷かれてんなぁ……まぁ、緑谷も物間もその気になりゃ自分で抜け出せるし、放っておいてもいいだろ」

 

 

 全日本お前が言うな選手権でもあれば、そこそこ上位に入れそうな発言である。

 元凶の癖に、上鳴はこれっぽっちも悪びれてはいなかった。

 

 

「……上鳴さんは、ひょっとして私には分からない高等なギャグを仰っているのですか?」と八百万。

 

 

「違うよヤオモモ。ただ単に人の心が欠けてるだけだよ。緑谷がアフロになってるのも気にしてないくらいだし──というか上鳴。その子は?」

 

 

 耳郎が警戒を解かずに上鳴へと尋ねる。

 

 

「ダークシャドウ、マスキュラー、物間の娘」

 

 

 それは答えこそ端的であったが、内容は支離滅裂な物だった。

 

 

「家庭環境が魔境過ぎるでしょ」

 

 

「複雑怪奇にも程がありましてよ」 

 

 

 声を揃えて内容を不気味がる二人に、ネルは慣れた物と言わんばかりに朗々と語り出した。

 

 

『ねるです。好きな食べ物はアップルパイです』

 

 

「自己紹介とか出来んだ」と少し感心した風に上鳴が言う。

 

 

『バカにしないで!! ちゃんと、ねいとたちが教えてくれたもん!!』

 

 

「心なしか、知能まで上がってないか……?」

 

 

 訝しんだ上鳴は個性を使ってネルを診ようとして──やめた。楽しみを自ら潰すような真似は、出来なかった。

 文化祭が終わった。しょうもないセレモニーも終わった。なら、次にあるのは何だ?

 

 

「楽しみだなァ……お前たちと闘える日が」

 

 

 獲物を狙う肉食獣の目付きに、ネルはゆっくりと後退した。

 

 

『こわ〜』

 

 

 ──この後、買い出しを終えたB組と合流してめちゃめちゃパーティーした。

 緑谷は翌日までアフロのままだった。

 

 

 

 

 

 上鳴のランキング入りを祝う会が行われた数日後。

 上鳴が部屋で彌虚葛籠について思案している時だった。机の上に置いていたスマホが震え、けたたましいアラートを響かせた。

 

 

「な、なんだよいきなり……地震か?」

 

 

 慌ててスマホを手に取り、画面を覗き込む。

 通知は地震などの災害を報せる物ではなく、ヒーローネットワークを介して送られてきた、緊急応援要請だった。

 

 

「九州……エンデヴァーとホークスが、ヴィラン連合の脳無と思われるヴィランと交戦中……」

 

 

 上鳴は興味を失い、スマホを机の上に置いた。

 脳無は確かに強い。だが、強いだけだ。今を生きている人間ならば誰しもが持つ、未来に向かおうとする熱がない。戦ってもつまらないし、その程度の輩にエンデヴァーが負ける筈がないという確信さえある。

 

 

 彌虚葛籠についての思案を再開しようとした上鳴だったが、今度は扉をノックされて中断された。

 

 

「おーい! 上鳴! ニュース、ニュース見てっか!?」

 

 

 扉を叩いていたのは切島だった。

 

 

「んだよ。見てねぇけど……何かあったか?」

 

 

「脳無だよ、脳無!! 今九州でエンデヴァー達が戦ってるっつー脳無!!」

 

 

「お前もか……切島、あのな。脳無なんかが」

 

 

「USJとかの奴よりずっとヤベェんだって!? エンデヴァーがずっと押されっぱなしになってんだよ!!」

 

 

「……なに?」

 

 

 切島の言葉に上鳴は眉間へ皺を寄せた。

 そして、切島に促されて、ロビーのテレビ前まで足を運んだ。

 そこには既にクラスメイトが全員集まっており、相澤の姿もある。

 

 

『否が応でも思い出させられます……神野事変を……これが、象徴の不在……?』

 

 

 キャスターの声が嫌に静かなロビーに木霊する。

 テレビ画面には炎が噴き上がっている様が映し出されているが、それ以上に民衆のパニックにフォーカスが当てられている。

 

 

 誰しもが固唾を飲んでテレビ画面に釘付けになる中、切島が言う。

 

 

「先生! 上鳴連れてきました!」

 

 

「……悪いな切島。上鳴、見ての通りだ。スマホにHN経由で緊急応援要請が来ていると思うが」

 

 

「断る」

 

 

 上鳴は相澤の言葉に被せる様にしてそう言った。

 相澤から弓を射る様な鋭い眼光を向けられても、上鳴は気にせずに言う。

 

 

「これはエンデヴァーの為の戦いだ。どうなろうと、割って入るのは野暮ってもんだ」

 

 

 No.1ヒーローとしての存在価値。今後のヒーロー社会を牽引するに値するのかどうか。エンデヴァーは今、それらを問われている。

 若輩の手助けなしでは勝てないなど、あってはならない。

 

 

「お前らもよく聞け。これから先の戦い、今エンデヴァーが血反吐ぶち撒けながら戦ってる様な輩が、大量に出てくる可能性がある」

 

 

「それは……」相澤は口を噤んだ。

 

 

「脳無の強みは戦闘力じゃねぇ。時間さえあれば数を用意出来るって所だ。あのクソジジイが量産の目処も立ってねー状態で、のこのこ表舞台に顔を出す訳がない」

 

 

 朧げな記憶──そこには脳無ハイエンド数体と戦っている誰かの姿がある。オールフォーワンが居なくても、調整と起動くらいは出来るのだろう。セブンがいる時点で増産している可能性は高い。

 故に、求められる最低ラインはここだった。

 

 

「お前たちには、アレを倒せるくらいになってもらわなくちゃ困る」

 

 

 何気なく言い放った言葉だったが、それは壁をハッキリと突き付けたに等しい。

 現役No.1、エンデヴァーが苦戦する敵を倒せる様になれ──それを普通のヒーロー科に言った所で、失笑を生むだけだろう。

 

 

 だが、ここは雄英高校だ。

 

 

 画面を食い入る様に見始めた友達に、上鳴は破顔した。

 そして、相澤に近寄って小声で言う。

 

 

「一応、現場には向かうっす。轟には悪いが……本当にギリギリまで出るつもりねぇけど」

 

 

「……お前な」

 

 

 相澤は溜息こそ吐けど、それ以上、何も言わなかった。

 

 

 そうして、上鳴は手早くコスチュームに袖を通し、九州まで飛び立ったのだが──到着する少し前に、エンデヴァーとホークスのコンビが脳無を撃破し、無駄足に終わってしまった。

 

 

「ったく。しっかりしてくれよ」

 

 

 蜻蛉返りにはなったが、上鳴は帰宅後にエンデヴァーのスタンディング映像を見て、式典後よりはマシな顔つきになっている事に気付いた。

 

 

 ──模擬戦、少しは期待できそうだな。

 

 

 赫灼熱拳の完成系を生で体感すれば、クラスメイトや自分のトレーニングに活かせるかもしれない。

 強者との戦いと、強くなる事で、今日も上鳴は頭が一杯だった。

 

 

 

 

 

 そして、翌朝。

 

 

「例年ならAB合同練習があるのですが、諸事情により延期します」

 

 

 上鳴は相澤の言葉を聞いて、机の上に額を叩きつけた。何でだ。どうしてだ。これを楽しみに生きてきたのに。不服がありますという顔で、相澤を睨む。

 上鳴ほどではないにしろ不思議に思っている人間も少なくなく、無闇に騒ぐ様な真似はせずとも、それは空気に現れた。

 

 

 相澤は「疑問はもっともだな」と前置きをし、瞳を紅く光らせながら言った。

 

 

「理由は簡単です。まず前提として……そこのNo.4がメディア越しに現役ヒーロー達を煽り倒した事で、公安と雄英に方々のファンから叱咤激励(クレーム)が届きました」

 

 

「身から出た錆じゃん」と耳郎。

 

 

「二度とテレビに出ンじゃねぇぞ静電気野郎」爆豪がいつになく不機嫌そうに相槌を打つ。

 

 

「いつになったら学ぶんですの……?」最後に八百万が戦々恐々とした面持ちで上鳴を見た。

 

 

「俺、弱い癖に自分が守られる立場だって分かってない奴きらーい」

 

 

 上鳴は中指だけを伸ばしたり曲げたりしながら、どうでも良さげに言った。

 

 

「やめとけって!! 誰にも聞かれてなかったとしても!!」

 

 

 そして、砂藤の苦言に手をひらひらと振って返事とした。コイツ、やっぱ一人で野に放っちゃいけない奴だろ……とA組生徒たちが意見を合致させる中、相澤が咳払いして言う。

 

 

「それに対し、我々は『ミカヅチの発言は全て事実に基づいた物である』というのを、世間に知らしめる方向で動いていく事を決定した」

 

 

「雄英も大概不敵だな!?」

 

 

 しかし、不敵なのは雄英だけではない。

 瀬呂が頬を引き攣らせながらそう言う一方で、常闇と芦戸が口を揃えて言った。

 

 

「ならばこちらも、敵が燃え尽きるまで戦い続ける所存」

 

 

「ショゾン!!」

 

 

 上鳴が二人にサムズアップした──次の瞬間、相澤の捕縛布によってNo.4はミイラマンへと変えられた。

 相澤が何事も無かったかの様に、話を再開する。

 

 

「次に、被害規模を想定するとグラウンドを一つ潰す覚悟が必要になりました。今回は訓練内容が対抗戦で、互いをヴィランと想定して行う予定だからな。多少派手に動き回る事を黙認している」

 

 

 それは暗に「諦めています」と言われているも同然だった。騎馬戦を勝ち残った面々は上鳴を除いて揃って苦い顔をした。体育祭の惨状は、あまり褒められた物ではない。自覚はあるのだ。

 相澤は捕縛布を固く縛り付けながら、結論を口にした。

 

 

「それらの事情を加味し、AB合同授業は配信する運びになっている」

 

 

「まさか投げ銭でグラウンドを……!?」と峰田。

 

 

 相澤が首を横に振って言う。

 

 

「上鳴が色々とヒーロー名を出した事で、世間の雄英に対する注目度が異様に上がった。それに応えつつ、次世代の成長を世界に示して連帯感を高める……というのが、今回の全世界公開授業の表向きのお題目だ」

 

 

 捕縛布に上鳴は屈した。両手を挙げて降参の意を表す。緩んでいく捕縛布の下から出てきた顔は、何も考えていなさそうなアホ面で──耳郎がツボに入って吹き出した。

 相澤は疲れた様子で、言葉を吐き出した。

 

 

「……カリキュラムも色々と変更点が出来た。しばらくの間、ヒーロー基礎学は一部を一般教養に変更し、一年次の必修科目を先に消化していく」

 

 

「放課後の自主練は続けていいんすか?」

 

 

 上鳴の言葉に相澤が頷く。

 

 

「勿論だ。そこに関しては俺の方で場所を確保してある」

 

 

「具体的に合同訓練はいつからに?」と八百万。

 

 

「二週間後だ」

 

 

 二週間。おうむ返しの様に、相澤の言葉を切り取って誰かが呟く。

 そうなれば、やる事は一つしかない。

 

 

「特訓するヤツこの指とーまれ!!」

 

 

 上鳴が掲げた人差し指の下に、全員が集まるのは必然だった。

 

 

 

 

 

 そして、あっという間に二週間という時間が経ち──当日。

 

 

「さァ、A組!!! 今日こそシロクロつけようか!?」

 

 

 物間の宣誓と共に、グラウンドγの上をドローンが舞う。雲一つない快晴、絶好の訓練日和に奮い立っているのは、当然A組も同じだ。

 雄英最強として、上鳴は物間を指差して言う。

 

 

「勘違いしてるみたいだから言っとくけど、お前らが挑戦者(チャレンジャー)だからな」

 

 

 迎え打つは現役ヒーロー番付四位、上鳴電気(ミカヅチ)が率いるA組。

 同接数は配信開始時点で約三十四万人。メーターは尚も止まらない。

 

 

 果たして、垢BAN無しで走り切れるのか──体育祭の流れだと、高確率でオフィシャルアカウントは爆破解体される事になってしまう。

 校長室で根津が人知れずアカウントの無事を祈っている事など、上鳴達が知る由はない。

 

 

 そんなやり取りをしていると、グラウンドに男の声が響き渡った。

 

 

『BGMと実況なき催しにィ!! 宿るSoulなどナァイ!! 今回は雄英高校オフィシャルチャンネルから、全世界へ向けての特別生配信!! 秋の体育祭、改め──雄英高校ヒーロー科クラス交流戦ッ!! 実況はこの俺、プレゼントマイクがお届けするぜェ!!』

 

 

 実況とかあんだ。

 上鳴はハイテンションなプレゼントマイクを尻目に「先生も見てっかなぁ」と、未だ病床にいる恩師をふと思い出した。

 

 

 ──あんま体調が良くないって()()()来てたしな。

 

 

 ビルボードではっちゃけたにも関わらず、大したお叱りもなかった事が気になった。怒られる前に先手を打とうと、折を見て連絡を入れて見たら……そんな返事がきたのを思い出す。

 反転術式による治療は善院本人が「嫌だ」と言っているからまだ行っていない。だが、そろそろ強行した方が良いのかもしれない。上鳴はこの交流戦を心行くまでしゃぶり尽くしてから、善院を無理矢理ぶっ生き返すくらいの気持ちで治療する事を心に決めた。

 

 

『第一弾は、現在何かと話題沸騰中!! No.4お墨付きというか、No.4がいる意味不明な生意気な奴ら!! 雄英高校ヒーロー科一年!! 解説はそれらの担任であるイレイザーヘッドと、ブラドキングに来てもらってるぜ!!』

 

 

『既に大分ワチャワチャしてるが、いいのか?』

 

 

 ブラドキングの視線の先で、物間と爆豪がガンを飛ばしあっていた。

 

 

『おぉい高校生共ォ!? エンタメの段取りっちゅーモンを軽視してんじゃねぇぞ!!』

 

 

 実況席は離れている訳ではなく、すぐ側の見える所にある。

 交流戦と銘打たれようと演習である事に変わりはない。何かあれば教員から指導が飛ぶし、フィードバックは適宜行う方が合理的だ。そういう意味では、エンタメ成分の殆どはプレゼントマイクに委ねられていると言っていいだろう。

 

 

『ま、マァ気を取り直してメンバーの紹介をしていくぜ! 何てったって今回はコスチュームも冬仕様にバージョン変更されてる訳だしYO!』

 

 

『いや、視聴者には分からんだろ』と相澤。

 

 

『デビューもまだなヒヨコが大半だからな。あと、今回はあくまでも授業である為、ヒーロー名に関しては字幕で対応していきます。気になる人は各自チェックしてみてください』

 

 

 ブラドキングが補足を入れる。

 

 

『水差すねぇ先生ェ!! もういいよ!! とりあえず生徒の紹介していくぜ!?』

 

 

 ──そういや、結構装いが変わってるな。

 

 

 上鳴は夏も冬もなくいつもの格好だ。

 その一方で、クラスメイトを始め厚着になっている面々の割合がかなり増えている。相変わらず寒そうな者(ヤオヨロズ)もいるが、それでもマントを装備するなどして何らかの対策を施していた。

 

 

 しかし、一人の男の姿が大きく変わっている事を、上鳴は見逃さなかった。

 

 

「尾白」

 

 

「どうしたんだ?」

 

 

 首を傾げる尾白の背後で、黒い影が揺れる。

 

 

「その尻尾のヤツ……イカすじゃねぇか」

 

 

 黒い鎧の様な物に覆われた尾が、凄まじい威圧感を放っていた。一体どんな機能が備わっているんだろう。確かめたい。闘志を漲らせる上鳴に、尾白が半歩下がる。

 そんな上鳴の好奇心に、二人の少女が待ったを掛けた。

 

 

「はいはい。後にしようね〜」

 

 

「ウチらの対戦相手はあっちでしょうが」

 

 

 左右から現れた葉隠と耳郎に耳朶を引っ捕まれ、上鳴はズルズルと引き摺られていく。

 それは配信にバッチリ映っており、上鳴に対するコメントや、葉隠を謎の美少女扱いするコメントが散見されるようになった所で、プレゼントマイクは声を張り上げた。

 

 

『紹介も終わって、羨ましいぞNo.4のコメントが増えてきた所で……交流戦のルールを説明だァッ! リスナー&学生諸君、準備は良いかァッ!?』

 

 

 プレゼントマイクの説明を要約すると、こうなる。

 

 

 これから約十五分、A組とB組はそれぞれで話し合って五つのチームをつくり、一チームずつ戦う。人数や戦力のバランスは自由。結成されたチームにはそれぞれ番号が割り振られる。

 チーム決めの際、剣道の団体戦の如く先鋒から大将まで決め、それに沿って対戦を行っていく。

 双方の陣地には『激カワ据置プリズン』が設置されており、そこに対戦相手を投獄した時点で「拘束した」と見做される。

 そして、試合終了時に拘束している人数分のポイントを獲得し、その多寡を競う。

 

 

 上鳴は思う。

 

 

 ──極端な話、一人で敵チーム壊滅させたとしても、リカバリーされる可能性があるな。

 

 

 仮に上鳴や緑谷が無傷で対戦相手を投獄し切っても、対戦相手の数が少なければ大したポイントにならない。

 人数をただ増やすだけでは、相手により多くのポイントを取られてしまう可能性が高まる。少ない消耗でどれだけ効率よくポイントを回収するのかが、焦点になるだろう。

 

 

「無難に四人くらいで固めるのが良いな」と鉄哲。

 

 

 それに取蔭が首を横に振る。

 

 

「上鳴、緑谷、爆豪、轟、常闇……単純に戦力を分散されるだけで、コッチは結構キツイよ。単独の戦闘力でそこに太刀打ち出来るの、物間くらいでしょ」

 

 

 取蔭の言葉に、骨抜が相槌を打ってから言う。

 

 

「コッチの方が連携向きだからね。上手い事、組み合わせで勝らないと」

 

 

 個人の強さが光るA組。

 連携と相乗効果が強みのB組。

 この対戦形式は、これまでとこれからのヒーロー社会の方向性を暗示しているかのようだった。

 

 

 即ち、どちらがより力として磨き上げるのに値するのか。

 

 

 ──ある意味、俺や緑谷の存在は新たな方向性の否定ではあるか。

 

 

『それじゃあ生徒諸君、シンキングタイムだァッ!!』

 

 

「何にせよ……ちょっと拍子抜けになるかな、こりゃ」

 

 

 物間と上鳴が当たる可能性は少ない。

 上鳴以外の強敵を物間に倒させ、上鳴は無視する。それがB組の最も利口な勝ち筋だ。No.4より爆豪や轟を相手にする方が、ずっと勝算が高い。無理に上鳴と戦う必要なんてない。出来る限り少ない人数をぶつけ、得点させない事が重要になってくる。

 

 

「上鳴」

 

 

 既に話し合いを始めているA組のメンバーがいる方へ向かって歩き出した所で、物間に声を掛けられた。

 

 

「僕は大将戦に一人で出る。だから──君も一人で来い」

 

 

 普段の煽り癖は鳴りを潜め、体育祭の頃よりずっと強烈な熱量が込められた眼差しだけが、上鳴に注がれていた。

 よく見れば、物間だけではない。B組全員から物間と同じ様な熱視線を向けられている。

 

 

 彼我の実力差は圧倒的。

 贔屓目を抜きに、上鳴を数えなかったとしても、A組とB組では個々の戦力差にも明確な隔たりがある。決して対等ではない。

 

 

 ──同じだ。体育祭前、教室で向けられた目と。

 

 

 こういう目をしている人間は、いつだって最後まで勝ちを諦めない。更に向こうへの精神で、自分を楽しませてくれる。

 

 

「いいんじゃない?」

 

 

 だから上鳴は獰猛な笑みを浮かべて、そう言葉を返した。

*1
特殊な訓練を受けている人間以外にやらないでください





 いつも読んでくださる皆様。感想、ここ好き、高評価を惜しみなく投入してくれている皆様。大変励みになっております。
 エンデヴァー回を大幅にカット(苦渋の決断)しつつ、ちょっとルールが変わった交流戦をこれから一気に駆け抜けていきます。

 あと心操くんファンの方には大変申し上げにくいのですが、今回は彼の出番がありません。普通に戦力差が激しいのに加えて、タネが割れている以上、まともに活躍させてあげる事が出来ないからです。
 私の技量不足です。深くお詫び申し上げます。
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