仮面ライダーオルフェウス/ファントムタナトス 作:ボルメテウスさん
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最初の記憶は暗い太陽だった。
まるで、外にある何かを引き千切るように出てきた俺が見た最初の記憶だった。
何も覚えていない中で、最初に見たその太陽に対して、俺は見つめながら、同時に周りの景色を見る。
それは、俺と同じように、内側から現れてきた奴ら。
同時に聞こえてくるのは、耳障りな何か。
それを聞く度に、感じる不愉快な声。
それが、俺は、今でもたまらく大嫌いだった。
「何をしているのかしら、タナトス」
そんな、最初の記憶を思い出していた時、俺に話しかけてきた奴がいた。
そこにいたのは俺と同じような怪物。
俺が生まれた日、サバトで、同じく生まれたファントムと呼ばれる怪物の一人であるメデューサだ。
「……なんでもない」
「そう、だったら、すぐに仕事をしなさい。あなた程の力があれば、すぐにゲートを絶望させられるから」
メデューサの言葉を聞き流しながら、俺は俯く。
「ゲートを絶望させて、ファントムを増やして、何の意味があるんだろうか」
「再びサバトを行う為よ」
メデューサが答える。
「……なんで、そんな事を」
「あなたが気にする事じゃないわ、全てはワイズマンの為に」
そう言ったメデューサは、そのまま俺の頬を撫でる。
「それがあなたにとっても幸福なのよ、タナトス」
「……幸福」
「そう、あなたは他の奴らと違って、力はあるし利口よ。だからこそ、今こそワイズマンの期待に応えて、ファントムを生み出しなさい」
「……俺がやるのか」
「えぇ、あなたの力はこれまで強すぎた。だからこそ十分に使えるまで待っていた。今こそ、あなたの出番よ」
そう、メデューサは、俺の目を見る。
「私とワイズマンの期待に応えなさい。ゲートに関しては、既にケプリが見つけているから、そいつに聞きなさい」
それに対して、俺は立ち上がり、そのままゲートと呼ばれる人を探す事にした。
ケプリと呼ばれた奴と合流する必要がある。
そう思いながら、俺は初めて、街の中を歩く。
「これが、人間」
あのサバト以来、俺は街を歩く事はなかった。
だけど、それと共に街の中に光景は、俺にとっては新鮮だった。
「なんだろう、これ」
これまでにはなかった感情。
街の中の笑顔。笑い声。
それらは、他のファントムと一緒の時には感じなかった。
だからなのか、俺はその光景に見惚れていた。
こんなにも楽しい場所があったなんて知らなかった。
それに比べたら、今までの場所は何も楽しくないと思っていた。
ただただ、退屈だと思ってた。
でも、この人達を見てると、なんだか楽しそうだと思った。
そして、それは同時に、自分の目的を思い出す。
そう、俺は、ワイズマン様の為に、ファントムを増やす為にここにいるんだ。
だから、まずはこのケプリという奴を見つけないと。
けど。
「絶望って、どういう意味なんだろうか」
未だに、その意味が分からなかった。
すると。
「おい、お前がタナトスか」
「……お前が、ケプリか?」
後ろから声をかけられ、振り返る。
そこには褐色の肌の男がいた。
「あぁ、そうだ、まったく、こんな所で何をぼーっとしているんだ」
「……別に、それでゲートは」
なぜだろうか、さっきまで楽しかった気分が、こいつのせいで台無しになった。
不機嫌になりながらも、俺は質問すると。
「あの餓鬼だ」
そう、指を指したのは3人の人間だ。
ゲートと呼ばれた子供が、手を繋いでいるようだけど、あれは。
「さて、さっさと絶望させるか」
「絶望って、どうするんだ?」
「あぁ、そんな事も知らないのか? 決まっているだろ」
そう、ケプリが笑みを浮かべる。
「ゲートを絶望させる方法なんて、深く考えるな。あの餓鬼だったらそうだな、あの両方いる人間を殺せば良い」
「……ころす」
その言葉に、俺は、なぜか止まった。
「まぁ、お前さんなら簡単に出来るだろ? あいつらの大切な人を殺しちまえば良いんだよ」
「たいせつなひと?」
「例えば、家族とか恋人とか友人とか」
「でも、それだと、みんなこまるよ」
「あぁ、それがなんだって言うんだ?」
俺の一言にケプリは、まるで関係ないように言う。
「それが俺達の役目だろうが」
「っ」
それと共に、俺は顔を歪ませる。
この楽しい場所を壊すのが、俺達の役目。
「仕方ないなぁ、まずは手本を見せてやるよ」
そう、ケプリは、人間の姿からファントムとしての姿へと変わる。
クワガタムシに複数の昆虫が合成され誕生したキメラを思わせる不気味な外見をする奴を見た周りの人々は一斉に逃げ始める。
それから聞こえるのは悲鳴。
「これはっ」
同時に感じたのは嫌悪感。
その感覚を、俺は知っている。
サバトの、あの時。
俺が生まれた日に、聞こえた声。
そして、同時に周りを見れば、先程までの光景が壊されている。
同時に、俺の心の中には嫌な感じがした。
「いやだっ」
見れば、ケプリは、先程の親子へと向かっていた。
親は、子を守ろうと必死だった。
そんな様子を見て。
「良いなぁ、さっさと悲鳴をあげろよなぁ」
ケプリは、その親へと手を伸ばす。
そこからの先の光景は嫌でも分かる。
「ヤァァメェェェロォォォォォ」
同時に、俺は叫びと共にファントムとしての、タナトスとしての姿に変わると同時にケプリの身体を掴む。
「なっ、お前っ何をしやがるっ」
ケプリが何かを叫ぶが、関係ない。
お前は、この景色を壊そうとした。
「ガアアァァァァ」
俺はそのまま、ケプリを地面に押さえ込む。
同時に、その手に刀を出現させる。
そのまま、ケプリへと刀を叩き込む。何度も、何度も叩きつける。
ケプリの身体は、それによって、砕け散り始める。
「ぐっ、貴様ぁ、うらぎっがぁ」
ケプリが、俺へそう叫ぶ。
だが、すぐに、その言葉も途切れる。
そして、その身体は完全に崩れ去る。
「はぁはぁはぁ」
やがて、俺は息を吐きながら、そのまま、先程の親子の方へと目を向ける。
「だいじょ「ひぃ」えっ」
その悲鳴を向けているのは、俺だと分かる。
なぜっと思った。
だが、そう困惑している間にも、俺の周囲にいた人間達は逃げていった。
「なんで、俺は」
そう、言おうとした瞬間に思い出す。
「ファントムだから、俺も」
それが分かると共に、俺は、その場から消える。
これ以上、ここにいたら、俺が、好きな光景が消える。それを見たくなくて、俺は、その場から離れる。
あの時の光景は、二度と見たくない。
あそこにいる人達が殺されるところなんて、絶対に、見たくなかった。
俺の好きな場所を壊さないでくれと願った。
「オレハドウスレバヨインダ」