名前を無くした、天権の懐刀   作:久遠とわ

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予想よりもやや早めに完成したため、そのまま投稿。

前回の予告通り、刻晴の過去編です。

なお「刻晴過去回想編」に合わせて、本作品の章構成も変更してみました(これで多少は見出し的な意味で見やすくなっている筈…)。

暫くの間、刻晴の過去編が続きますが楽しんでいただければ幸いです…。


 4幕:「在りし日々、“刻晴”過去【1節】」編
_『璃月最古の契約』


Side:刻晴

 

「___叔父様、お茶をお淹れしました。もしよろしければ、どうぞ」

 

「おぉ、ありがとう刻晴。うむ、美味そうだな……」

 

とある日の日が暮れた璃月港、そして刻晴が住まう屋敷の“叔父様”と呼ばれた書斎の部屋にて、刻晴は年老いた男性の前にお茶をそっと差し出し、そうして年老いた男性はそのお茶を一口啜る。

 

「うむ……。刻晴が淹れてくれたお茶はいつも美味しいな……」

 

「ありがとうございます、叔父様」

 

と、そう言って年老いた男性が微笑むと、刻晴も嬉しそうな笑みを返す。

年老いた男性はそのお茶をもう一度啜ってから机の上に湯吞をそっと置いた。

 

「あの、叔父様?まだお仕事は終わらないのですか?」

(机の上がいっぱいになっているわね…。大変そうね……)

 

そこで刻晴は心配そうに叔父に問いかける。叔父の書斎の机の上には、大量の書籍が積まれていた。

 

「ん?あぁ、これか、刻晴……。これは仕事ではないな。わしが個人的に集めて読んでいるものだ」

 

「そうなのですか?…見てもよろしいですか、叔父様?」

 

「あぁ。構わないぞ、刻晴」

 

そうして許可を貰った刻晴は叔父の許しを得て、叔父の机にあった書籍を手に取り、中身を眺める。

 

 

 

「これは……岩王帝君についてですか?」

 

刻晴は机の上に積まれていた書籍の一冊を、ぱらぱらと捲って中身を確認してから叔父にそう問いかける。

 

「あぁ、そうだ。これは……、岩王帝君の偉業、この璃月港と岩王帝君との関わり、そして璃月が今のような国家となった経緯について記されたものだな……」

 

「璃月港と岩王帝君との関わり……ですか?」

(へぇ、成る程ね…)

 

刻晴は叔父の言葉に首を傾げながら問いかける。すると叔父は頷きながら、積まれていた書籍に視線を送る。

 

「あぁ、そうだ。刻晴、知っての通りわしは璃月の不動産業界の重鎮という身でありながら、璃月伝統文化の学者でもあった」

 

「はい、存じています。叔父様は璃月の文化・伝統についてとてもお詳しくていらっしゃいますね」

 

「うむ、そうだな。わしは昔から、この璃月の文化や伝統、またそれに璃月で行われている祭事が大好きでな。よく仕事が落ち着いて一息ついた時には、こうしてそのまま書斎に籠って璃月文化や伝統、そうして璃月の祭事に関する書籍を読みふけたり、実際に自らの足で訪れてそれを感じ取るのが趣味だった…。そうして先日、ふと思い立ったのだ」

 

刻晴の叔父はそう言うと、少し何かに物思いにふけるような様子を見せる。

 

「……思い立った、とは?」

(何をかしら?)

 

刻晴は叔父が何を思い立ったのか気になり、叔父に問いかける。

 

 

 

 

 

「うむ……。刻晴、この国、この璃月という国家は成り立ちからして岩王帝君と密接な関係、彼とは決して切る事は出来ないものから成り立っている。そしてそれは璃月が歩んできた歴史、そして今のこの璃月港と岩王帝君との関係、これらにも深く関与している……」

 

「はい…。それは私も存じ上げています……。それが……?」

 

「刻晴……。岩王帝君に守られながらこの璃月が成り立つことが、果たして今の璃月人達、そうしてこの先の子孫や、生まれてくる璃月人達のためにも、それは良いことなのだろうか…?」

 

「えっ?」

(岩王帝君に守られながらこの璃月が成り立つことが、果たして良い事なのか…?それはいったい、どういう……?)

 

刻晴は目の前の叔父の言葉に困惑の表情をし、叔父はそんな刻晴を真っ直ぐに見つめる。

 

「刻晴、わしが思い立ったこの素朴な疑問…。刻晴、君ならどう思う?この国が、璃月港やこの璃月の全てが岩王帝君と共に成り立っているからこそ、今のこの璃月がある。それは分かるな?」

 

「…は、はい……。分かります。ですが、その…。とても帝君がお亡くなりになられたりお隠れになる事…、それはとても考えにくいのではないのでしょうか……?」

 

刻晴は小さな声で、そして僅かに声を震わせながらそう答える。

 

「…うむ。まぁ、仕方ないか。刻晴はまだまだ幼く若いが故に世間、いやテイワット大陸の事…。特に璃月の隣国である“モンド”についてをほとんど知らないのだからな……」

 

そうして叔父は少し考えこむような様子を見せてから、刻晴に向き合う。

 

 

 

 

 

「刻晴、少し話題を変えよう。…璃月の隣国、璃月東部にある“モンド”という国家についてだ」

 

「モンド……。は、はい……」

 

叔父のその言葉に対して、刻晴は頷く。

 

「単刀直入に言おう。璃月という国が神託により繁栄を謳歌する『神と共にある地』であるに対し、モンドという国は神の姿を見ることのない『神の去った地』だ」

 

「『神の去った地』…!?」

(そ、そんな国があったなんて…!?)

 

刻晴は叔父のその言葉にとても驚いて目を思いっきり見開き、そうしてそんな刻晴に叔父は頷いて見せた。

 

「お、叔父様。そ、そのモンドという国は大丈夫なのでしょうか?神がいない国……。それはとても寂しく、悲しく、そうしてとても災難な国なのではないのでしょうか……?」

 

刻晴はそんなモンドという国が心配になり、叔父に問いかける。すると叔父は微笑みながら刻晴の頭を撫でた。

 

「いや、刻晴。彼ら、モンド人達というのは実に興味深い事に、遥か昔から自分達が崇拝している神、風神バルバトスが姿を現す事が無くとも、何も変わらずに今日も穏やかに暮らし続けているのだ」

 

「そ、そうなのですか…?なんだか、とても不思議ですね……」

 

刻晴は叔父の言葉に首を傾げ、そんな刻晴に叔父は頷いて見せる。

 

「そう、そうなのだよ刻晴。彼らは自分達が崇拝している神が自分達の前に姿を見せなくても、それは自分達が何も信仰しなくなった訳ではない。ただ自分達が崇拝する神がいなくても、自分達の生活や生き方に変わりはないのだ」

 

「へぇ…。本当に不思議な人達ですね……。モンドは神が捨てた統治なき国家であるというのに………」

 

「むっ、刻晴…」

 

刻晴はモンドという国の人々の事を思い、そうして思わず言葉を零す。すると叔父は少し咎めるような眼で刻晴を見つめ、刻晴はそんな叔父に慌てて謝罪する。

 

「あ、も、申し訳ありません、叔父様……!私ったら……」

 

「いや、何も謝る事はない。まぁ、確かにそうだ。刻晴のような何も知らない、知ろうとしない璃月人達であれば、モンドの事をそのように神が捨てた国と言っても仕方がない。だがな___」

 

叔父はそこで言葉を切って、そして再び刻晴に向き直る。

 

「___刻晴、不思議に思わないか?何故、モンドの神である風神バルバトスが民の前に姿を見せなく、そうして風神本人がわしら璃月の岩王帝君のように統治などしないのか、その理由を」

 

「えっ?……そ、それは……」

(い、言われてみれば確かに…。どうしてなのかしら……?う~ん………)

 

叔父が投げかけた問いに、刻晴は少し考える。だが、いくら考えてもその答えが思い浮かばない。

 

 

 

 

 

 

 

「それは……分かりません、叔父様……。どうしてなのですか?風神バルバトスは何故、岩王帝君や他の神様と違って民の前に姿を現さないのですか?どうして、風神バルバトスは統治などしないのですか?」

 

刻晴は素直な気持ちのまま、叔父にそう問いかける。すると叔父はそんな刻晴に優しく微笑みながら答える。

 

「あぁ、それはだな…。あくまでもわしの仮説というだけなんだが……」

 

叔父は少し間を置いてから、刻晴を見つめて言葉を放つ。

 

「それは……、風神バルバトスは、恐れたからやもしれぬのだ……」

 

「恐れた……?」

 

叔父の言葉に対して刻晴は首を傾げる。

 

 

 

「あぁ、そうだ。モンドという国の理念、そしてモンドという国家を象徴する言葉、それは『自由』だ。…若いころ、わしは時折モンドの歴史に関心を持ち、そうして実際にモンドの地を訪れてその歴史に関してを調べ回った事がある。そうして思ったのだ___」

 

叔父はそこまで言うと目を細める。

 

「___わしが思うにわしらの岩王帝君が『契約』という言葉をなによりも重要視しているように、かの者の風神バルバトスは『自由』という言葉をなによりも尊んでいる。…だが、自由というのは実に曖昧で、とても不安定なものでもある」

 

「不安定なもの…?」

 

「あぁ、そうだ…。風神バルバトスがなによりも恐れた事……。それは自身が民達の前に姿を見せるという行為、それ自体が民達の『自由』を脅かしかねないという可能性だ」

 

「『自由』を脅かしかねない……?あっ!?」

 

刻晴は叔父のその言葉にはっと気付き、その叔父に同意するように首を縦に振る。

 

 

 

「た、確かにそうかもしれません……。叔父様、神が民達の前に立つという事。それは神が民達を従えて統治する事でもあり、それはつまり見方によっては民達を支配、管理するという事にも繋がります。ですから風神バルバトスは…、自ら民達の前からを姿を消す事で民達の自由を守り、保証する為に……」

 

「うむ、その通りだ刻晴。……そしてそれはモンドという国の理念である『自由』の在り様を象徴しているようにも思える。風神バルバトスは姿を現さない事を選んだ理由。それは___」

 

叔父は腕を組みながら、刻晴を見つめる。

 

「___刻晴の言う通り自分と言う存在が民達の自由を脅かしてしまい、更にはそれが民達を支配してしまう事に繋がってしまうという事に対して強烈な嫌悪感や拒絶感を抱き、恐れた結果ではないだろうか。だからこそ風神バルバトスはモンドという国家が成立した後、自国のモンドから旅立ったのだろう…」

 

「……」

 

刻晴は叔父の言葉にしばらく無言だった。だが、やがて叔父と同じような考えに至り、それを言葉にする。

 

 

 

「確かにそうかもしれません…。風神バルバトス、風神は風神なりの考えや思い、それらの理由からモンドという国から旅立ったのですね……。あの、叔父様」

 

「うむ、どうした?刻晴」

 

「その、風神が去った後のモンドは大丈夫だったのでしょうか?私はモンドの歴史はよく分からないのですが、ただモンドの隣国である私達の璃月は神々の戦いが終わった後でも、璃月に大小それぞれの多くの危機や危険が訪れ、その度に岩王帝君の元で璃月は数多の危機や危険を乗り越えて今日まで繁栄してきたと思っています…。ですが、___」

 

刻晴はそう言うと前のめりになる。

 

「___モンドは神の去った国。姿を見せなくなった風神の元の民達の彼ら。彼らにも数多くの危機や危険がモンドを襲ってきていた筈なのですが、どうやってモンドという国家を守れていたのか。それについて、叔父様はどう思われますか?」

 

「うむ……。刻晴よ。良い質問だな」

 

刻晴の疑問に対して叔父は頷く。

 

「…確かにモンドという国は風神バルバトスが去った後でも、今日まで繁栄を続ける事が出来ている。それは何故か…、それは思うに風神のバルバトスはただモンドの民達のために姿を消しただけであって、決してモンドやモンドの民達を見捨てたというわけでは無いからだ」

 

「モンドやモンドの民達を見捨てたわけでは無い…?」

(風神バルバトスはモンドから旅立ったというのに…?)

 

叔父のどこか確信めいた言葉に刻晴は首を傾げる。

 

 

 

「あぁ、そうだ。風神のバルバトスは確かにモンドから旅立った…。だがわしが思うに何度かモンドやモンドの民達だけでは解決できない問題が発生すると、___」

 

叔父はそこまで言うと言葉を区切り、刻晴の眼を見つめる。そして言葉を続ける。

 

「___風神のバルバトスは決して表舞台に立ってモンドの民達を導く事はしなかったが、風神はその問題を解決する為にモンドにいる者達やモンド人達の中から、その問題を解決する事が出来る者やそれを解決させることができる素質のあるものを見つけ出し、その者を密かにサポートしたり新たなリーダーにまつり上げてきたのだ」

 

「な、成る程…」

 

叔父の説明に刻晴は頷く。

 

「…そうしてこれによりモンドの民達は間接的ではあるが確かな風神の庇護を受け、そうしてその問題を解決していったのだろう。そうだな、分かりやすい例で言えば……___」

 

叔父は何かを思い出すように少しの間、言葉を切り、そして再び口を開く。

 

 

 

 

 

 

 

「___ふむ……。今より千年前の出来事。五百年前に起きたかつての古国がテイワット各地に侵攻を行う前よりもモンドで起きた出来事になるが、この時のモンドは実は風神に取っては見過ごす事が出来ない程の、大きな危機が直面していたのだ…。刻晴、それはなんだと思う?」

 

「大きな危機……?風神が見過ごす事が出来ない程の出来事…」

 

刻晴は叔父から投げかけられた言葉に首を傾げ、少し考える。

 

 

 

「そうですね……。叔父の話でモンドという国、そして風神はなによりも『自由』という言葉が象徴で、そしてそれを誇りとしている事も分かりました。……ですから、風神が動く程の出来事と言うのはモンドの国民達が自由でいられる環境が失われつつある事ではないかと思います…。ですから…」

 

「うむ、良い筋道だ、刻晴。……それはつまり、どういう事だ?どういう状況だ?」

 

叔父は刻晴の答えに対して頷きつつ、更に質問してくる。

 

 

 

「えっと、自由を失う事…。っ!?」

(もしかして…!?)

 

その時、刻晴はハッとした表情を見せる。

 

 

 

 

 

「分かりました、叔父様!…つまり、その大きな危機と言うのはモンドの民達が何者かに支配されつつあり、モンドの自由が脅かされていたという事なのでしょうか…?」

 

「おぉ、正解だ刻晴。よく分かったな」

 

叔父は嬉しそうな様子を見せてから、刻晴の頭を撫でる。

 

「えへへ……。ありがとうございます、叔父様」

 

頭を撫でられながら、刻晴は少し照れつつお礼を言う。

 

「うむ、そうだな…。実は千年前当時のモンドと言うのは、旅立った風神の代わりとしてモンド人やモンドの民達の代表として“ローレンス家”を中心とする今では旧貴族達と呼ばれているローレンス家達を中心とする貴族達がモンドを治めていたのだ。だが…」

 

叔父はそこまで言うと眉をひそめる。

 

「…そのローレンス家、かの者達は腐敗していき、やがて次第にモンドはローレンス家達の者達の手によって民達の自由が奪われ、モンドが彼らに支配されていくような状況に陥ってしまったのだ」

 

「ローレンス家達と言う貴族が腐敗、そしてその者達がモンドを支配……。そんな時代があったのですか……」

 

刻晴は少し心配そうな様子で叔父を見つめる。それに対して叔父は安心させるように微笑む。

 

「あぁ、そうだ。当時は腐敗したローレンス家達の手によって、モンドが腐敗と抑圧、そして腐敗政治による圧政により民達の自由が脅かされていたのだ…。無論、モンドの民達もこのような酷すぎる状況にただ黙ってはいなかった」

 

「そうだったのですか、叔父様?」

 

「あぁ、そうだ。刻晴。だが…」

 

刻晴の言葉に叔父は頷く。

 

 

 

「…だが、ローレンス家の者達はモンドの民達を自らの権力、そして武力でねじ伏せ、そうしてまた政治の場においても私利私欲の為に腐敗した政策を取り続けつつ、それと同時に反乱の芽を潰すべく徹底的に弾圧を行っていったのだ……」

 

叔父はそこまで言うと少し悲しげな表情を浮かべる。

 

「腐敗に弾圧、それに圧政……。そんな酷い状況だったんですね……」

 

刻晴は千年前のモンド、叔父の話す腐敗したローレンス家達の圧政により民達が苦しめられていた様子を想像し、そして心を痛める。

 

「あぁ、そうだ…。そうしてモンドの『自由』が徐々に失われていく中、そんな時に一人の少女が頭角を現す……。その少女の名こそが奴隷剣闘士の“ヴァネッサ”という名の少女であった」

 

「ヴァネッサですか?」

 

「あぁ、そうだ。そしてわしの勘が正しければモンドの危機を察知し、そうして秘密裏に舞い戻ってきた風神バルバトスが目をつけた少女だ。…そして風神のバルバトスは彼女をサポートする事で最終的にはモンドを貪っていたローレンス家の者達への反乱の狼煙を、その狼煙をモンド中の至る所であげさせた傑物の名でもある」

 

「ヴァネッサ……。風神バルバトスが目をつけた少女……。彼女は、ヴァネッサはその後はどうなったのですか?」

 

刻晴の質問に叔父は頷く。

 

「あぁ、最終的には秘密裏に風神バルバトスの手によってまつりあげられ、そうして元より奴隷剣闘士として戦い抜いてきたことにより“獅牙(しが)騎士”とうたわれていた“ヴァネッサ”。そしてそんな彼女に触発される形でローレンス家達等の腐敗貴族のやり方に納得できず、そうしてローレンス家達に業を煮やし続け、遂には大々的にモンドの民衆達の味方へと回った“グンヒルド家”を中心とする同じ貴族の彼ら、反ローレンス家達派の貴族達。またそうして今まではローレンス家達等の腐敗貴族に虐げられ続けていたが、この情勢に活路を見出したことによりモンドの民衆、また奴隷達までもが一斉に立ち上がり始めたのだ」

 

「えっ、そうなのですか?」

 

叔父の言葉に暗い顔になっていた刻晴が明るくなる。

 

「あぁ、そうだ。…そうして本格的にレジスタンスを結成したモンドの民達やローレンス家達等の奴隷等に、反ローレンス派の貴族連合。それぞれ腐敗したローレンス家達への反乱のため、貴族達や平民達、そして奴隷達と言った身分という境界を越えて集った者達によるローレンス家達の者達への大規模な反乱やクーデターが成功し、ヴァネッサ達はローレンス家達と言った腐敗した貴族達を打倒する事が出来たのだ」

 

「おぉ…、そうだったのですね。叔父様。良かったです…本当に……」

 

刻晴は目を輝かせて叔父にそう言う。

 

「うむ……、そうだな、刻晴」

 

叔父は刻晴の言葉に満足そうに頷いてから、更に言葉を続ける。

 

「そしてその後には、“ヴァネッサ”達はローレンス家達のように腐敗した腐敗貴族達を追放に処した上で、ローレンス家達との争いによって荒れた戦禍の街の復興を。そして奪われていたモンドの『自由』をモンドの民達に返還を行ったのだ。そしてその上で___」

 

叔父はそこまで言うと、僅かに笑みを浮かべる。

 

 

 

 

 

「___今後追放されたローレンス家達のような暴君が現れたり、暴君になろうとする者達が現れた時に備えるため、そんな者達と戦いモンドの自由を守るために剣を振るう、『西風騎士団』がこうしてヴァネッサ達の手により創設され、そうしてヴァネッサは西風騎士団の“初代大団長”、並びに西風騎士団の“初代の蒲公英(タンポポ)騎士”として君臨したのだ」

 

「西風騎士団…。それに“初代大団長”に“初代蒲公英騎士”…。叔父様、西風騎士団って、もしかして…」

 

「あぁ、そうだ。今のモンドを統治している統治機構、王や主君等を持たない騎士団であり、ただモンドやモンドの民達の『自由』を守るためだけに剣を振るう『西風騎士団』は、元はヴァネッサが設立した西風騎士団に端を発するのだ」

 

「そうだったのですね…」

 

刻晴は感心したように呟く。

 

 

 

 

 

「…璃月の歴史は長く、そしてとても深い物ではありますが、隣国のモンドも負けず劣らずのものであったとは…。モンド…、凄い国ですね……」

 

「あぁ、そうだな。……さて、刻晴よ。話を元に戻そう」

 

「はい、叔父様」

 

そうして叔父の言葉に、刻晴は頷く。

 

「…何故、モンドの神である風神バルバトスが民の前に姿を見せなく、そうして風神本人がわしら璃月の岩王帝君のように統治などしないのか…?それは先までの話に合った通り、風神は何よりも『自由』を大切にしてきたからであり、『自由』に生きる民達やモンドの民衆達の事を大切に思っていたからだ。つまりそれは___」

 

叔父はそう言うと目を瞑り、そうして深く頷く。

 

「___風神、バルバトスは自らの理念と自らの民達を心の底から愛しているという事に他ならないからだ…」

 

そして叔父は目を見開き、また改め深く頷いたのであった。

 

 

 

「自らの理念、それに自らの民達を心の底から愛している…。成程、だから風神はモンドの民の前に姿を現さないという事なんですね……。叔父様」

 

「あぁ、その通りだ。刻晴よ……」

 

叔父は刻晴の言葉に頷く。

 

 

 

「…このように風神バルバトス、そうしてわしらの岩王帝君や他の国の七神達は七神事にそれぞれの考えに違いはあれどもそれぞれの理念、そして自らの民達を愛し、そしてその民達のために力を尽くしている事はこれで分かるだろう…。では最初に述べた事……。岩王帝君に守られながらこの璃月が成り立つことが、果たして___」

 

叔父はそう言うと、目を細める。

 

「___今の璃月人達、そうしてこの先の子孫や、生まれてくる璃月人達のためにも、それは良いことなのか。その件についてだが…」

 

そして叔父はそこで一呼吸置いてから、再び話を続ける。

 

 

 

 

 

「刻晴よ。……わしらの岩王帝君、そしてわしらの先祖である古の璃月人達が結んだ『璃月最古の契約』。この契約の内容、その内容が分かるか?」

 

「『璃月最古の契約』…?以前、叔父様の部屋の書物を読み漁った時に見たような……」

(ええっと……)

 

刻晴は目を瞑り、思考する。

 

 

 

 

 

「…あっ、思い出しました!叔父様!!」

 

「うむ、そうか。それでその内容はなんだ?」

 

そうして叔父は真剣そうな表情を浮かべながら、刻晴に問いかける。

 

 

 

 

 

 

 

「『璃月最古の契約』……。それは『世の塵を払い、民を守る』。それが岩王帝君と当時の璃月人達との間に結んだ契約内容だったはずです」

 

「うむ…。そうだな、刻晴よ……。」

 

叔父は頷く。

 

 

 

 

 

 

 

「『世の塵を払い、民を守る』…か。わしらの岩王帝君、いや岩神“モラクス”、かの者は___」

 

そして更に言葉を続けていったのであった。




GW中に纏まった時間が取れたのは、本当に大きい…。

前回、「GW中に毎日連続投稿するというのは不可能でありますが、少なくとも5月中は先月3月の2回よりも投稿回数は超える見込み」と告知しましたが、現在の状況であれば『このGW期間を活用し、毎日の投稿は厳しいですが2日に1回、もしくは3日に1回のペースで投稿』は出来そうです。(理想はGW期間中に、刻晴が玉衡の座に座る事になった出来事、もしくは玉衡就任直後辺りまで一気に随筆していきたい…)

取り合えず次回の投稿は、このままのペースを維持できれば明後日の月曜日辺りか、火曜日辺りに投稿できるかと思われます。
そのため次回の投稿まで、今しばらくお待ちください…。
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