本来の予定であれば中編も今回で最後。そしてある意味後編の導入回です。
また今回は本作のあらすじにある通り、前半後半として分割して投降する事となりました。(後半部分は5分後に投稿予定)
当初の予定では分割をしないで投稿しようとしたのですが、出来上がった今回は非常に長い(分量的に2話分以上3話分以下程度の長さ)です。
ですが今回で色々と明らかになっていきます。
そして今回、タグの“考察ネタ(モンドのドーマンポート関連)”や“独自設定”が、今回はかなり強く発揮しています。
余談ですが、本来の分割投稿前であればあまりにも長くなりすぎたために分割する必要があると考え、今回と次回とではしっかりとした区切りを付けたいため、シーンの途中スタートではなく、ちゃんと新たなシーンからのスタートにするために分割は無しで投稿する予定でした。
ですが上記にある通り、余りにも長大な分量(文字数的には1万8千字程度)になってしまったため、急遽分割して本日纏めて投稿することしました。
またそれに伴って、本来の予定ではそのまま5幕の後編に軽く入る予定でしたが上記の通りに長くなりすぎたため、今回は変則的に5幕の最終回と当初の5幕後編である6幕の導入回を兼ね備えた話としています。
なおそれとは別に、第5幕の章タイトルを『「雷霆の玉衡『壱』、“刻晴”過去【2節】」編』から、『「玉衡の下で蠢く‘影’、“刻晴”過去【2節】」編』に変更を行いました。
前編と中編の時点で1幕分に勝る程の分量になってしまっている事。そして今回を基点に話の展開が大きく動き始める事。またそうしてこの時点で“雷霆の玉衡”に関連するエピソードまで辿り着かなかったためです。
以上の理由、また色々と丁度タイミングも良かった事から、前編と中編の第5幕はここで区切り、本来の後編や終盤を改めて『6幕:「雷霆の玉衡『壱』、“刻晴”過去【3節】」編』として投稿していきたいと思います。
そうして今回は、あらすじの連絡事項にて書かれていた通り、解説ではありませんが補足説明として“とある図表”を後書きに置いています。
そしてその“とある図表”ですが、これは本幕の『5幕:「雷霆の玉衡『壱』、“刻晴”過去【2節】」編』で今までに起きた出来事をかなり大雑把に取り纏めたものと言えますので、もしも本幕を全部見ていなかった場合、場合によっては強烈なネタバレに繋がりかねませんので、一度本幕の今までの話を読んでみる事をお勧めします。
それでは今回も前回の甘雨の会話の続きと“とあるキャラのシーン”となります。
まずは前半です。
Side:甘雨
「___今出回っている様々な情報の真偽を明確にしたり、私の情報と煙緋さんの情報を組み合わせる事で気づけなかった新たな事実や可能性と言ったものを見出していきたいと思っています。そうして彼ら“反刻晴派の実態把握”を急いでいきます」
「“反刻晴派の実態把握”ですか?」
「はい、その通りです」
甘雨は煙緋の言葉に頷きながら煙緋の顔を見つめる。
「…“反刻晴派”。彼らは元々は良識的な人物や真っ当な考えを持つ人達の集まりが多数でした。ですが、その中には『刻晴を強制排除せよ』と言った‘危険思想を唱えた者達’や‘その思想に賛同した者達’が存在し反刻晴派の中に混じってしまっている事、またその中の一部の人物達は『月海亭や七星八門で扇動を行って“刻晴”さんや“認刻晴派”の人達に反感を持たせたり、反刻晴派に属している人達が暴走するよう仕向けている節がある』という事実が、私の方の調査で明らかになりました」
「なっ…!!なんと…!!そ、それは本当ですか甘雨先輩!?」
煙緋は甘雨の言葉に目を見開き、そうして身体を前の方に傾けながら甘雨にそう尋ねる。
「はい、本当です。間違いありません。煙緋さん。それにその事実からもしかすると、いえほぼ確実に『認刻晴派にも似たような事として、認刻晴派内に潜り込んで扇動を行って事態が苛烈化するように仕向け、そして最終的に“認刻晴派”と“反刻晴派”の対立を激化させる事を企てている』可能性が極めて高いと思われます…。そうしてその『対立の激化の末と言うのが、先の“玉衡暗殺危機”の件なり、“反刻晴派千岩軍のクーデター画策”に繋がってくる』、そう言う事、それを彼らは狙っているのではないかと、私はそう考えました……」
「うむ、なるほど。そう言うことか。そのように繋がってくると言うわけか…。甘雨先輩、十分あり得るかと思います」
煙緋は甘雨の仮説に納得するように頷く。
「ありがとうございます、煙緋さん。この一連の流れを鑑みるに、それらは反刻晴派達の後ろにいる“過激派”、もしくは“急進派”や“強硬派”と密かに呼ばれている者達の暗躍と見て間違いないはずです。…正直、私もここまで話が大きくなってくるとは思いもしませんでした」
甘雨はそう言うと、その顔を歪ませる。
「『“あの日以降”、私がそれらを知ってしまったその次の日から更に出来る限り、私が常に刻晴さんの側に控える事で、反刻晴派の皆さんが変な事や変な気を起こさせないようにしてきました』。ですが、今起きてしまっている反刻晴派と認刻晴派の酷い言い争いや、激しい怒鳴り合い等の散発的な衝突の数々…。これではいずれ彼らと彼らの間で大規模な衝突が発生してしまい、それが連鎖していく事でこの璃月が大変な事態に陥ってしまう事は容易に予想できてしまいます……。そうしてそれがきっかけで刻晴さんの責任問題に発展してしまい、そして彼女が非常にまずい立場に追いやられてしまう事になってしまうのは簡単に想像できてしまいます………」
甘雨はそこまで言うと、真剣そうな表情を浮かべながら目を細める。
「うむ、成る程。今起きている散発的な衝突…。それがやがては報復が報復を呼び、憎悪が憎悪を焚きつける。そうしてその連鎖の果てがあのような“玉衡暗殺危機”や、“反刻晴派千岩軍によるクーデター挙兵”等と言ったこの璃月を揺るがしかねない大事件へと発展、それらの噂のいずれか、もしくは最悪一気に全てが実現しかねないと言う事か…。まずい、十分にあり得る話だ……」
そうして煙緋も甘雨と同じように苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。
「はい、そうです。煙緋さん。今のこの璃月…。言うなれば今の璃月は至る所に時限爆弾が仕掛けられた火薬庫のような物。そしてその爆発はいつ起きてもおかしくありませんし、そう遠くない内に起爆してしまって大爆発してしまう事は目に見えています…。そうなってしまえば、この璃月は自らが自らを酷く傷つけるような未曾有の大惨事へと発展していきます。それにそれだけではありません。……かつての、生前の、“彼”。“先代玉衡”様であるあの御方は仰っていました」
甘雨はそこまで言うと言い淀むように口を噤んだ。
「先代玉衡…?それって…もしかして“彼”の事か……?娘である今代玉衡の……?」
そうして甘雨の言う彼にまるで心当たりがあるかのように煙緋はそう呟く。
「はい、煙緋さん。その通りです。“先代玉衡”、“刻晴さんの叔父上”である彼です。…そうして彼は亡くなる前にこのような感じの事を言っていたのを覚えています。___」
甘雨はそこまで言うと、息を大きく吸い込み、そして吐き出だす。
そしてそのまま口を閉じて一息つくと、改めて言い直した。
「___『璃月、特に璃月港から望舒旅館までの通りとは、璃月の大動脈や璃月経済の生命線だけではなく、テイワットの物流の大動脈、もしくはテイワットの流通の生命線とも言える』、と」
「………はっ!?ま、まさか!?」
そうしてその言葉、先代玉衡が遺したその言葉、甘雨が発したその言葉の意図に気づいた煙緋は、あまりにも恐ろしい事実に気が付き、背筋が一気に凍りつく感覚を覚える。
「はい、そうです……。煙緋さん」
甘雨はそう言うと、その目を鋭くさせ、そうして甘雨自身も“今の璃月の状況”と“その言葉の事実”が最悪な意味で嚙み合わさってしまったことに対し、まるで呼吸する事すら忘れてしまったかのような、そんな息苦しさを感じてしまう。
「この璃月の惨状というのは璃月がテイワット最大の貿易国であるという側面、また周辺国であるモンドやスメール、フォンテーヌや稲妻と言った各国同士の貿易や交易の陸路と海路を結んでいるが故に各国同士を結んでいる中継地であるという側面を考えれば…、これはもはやテイワットの諸外国にまで悪影響を波及しかねない大問題へと発展していきかねません……!!」
甘雨はそこまで言うと、顔を俯かせながら悔しそうに唇を噛み締める。
「ま、まずい…!!それは非常にまずい…!!甘雨先輩の言う通りだ……!!この璃月は色んな国との貿易、そうして他国と他国を結ぶ中継地点とも言える…!!そ、それに……」
煙緋は甘雨同様に顔を俯かせながら頭を抱えて考え込む。
確かに甘雨の指摘した通りだ。
璃月という国はテイワット最大の貿易国という側面、またテイワット大陸における璃月の国の位置と言うのは丁度モンドやスメール、フォンテーヌや稲妻の中間に存在している事によって、テイワット大陸の交易や貿易、また交通や輸送に大きく関与している。
そして、それだけではない。
「___うむ、私は正直こういう地政学的な事は専門外であるからこういう事は深い見識は持っていないのだが…。だが地政学的な意味でも璃月という国は甘雨先輩、そして先代玉衡であった彼の言う通り、本当に流通や物流の大動脈、そして生命線とも言えるな……」
煙緋はそこまで言うと、その顔を俯かせながら考え込むような仕草をする。
仮にモンドの中心地であるモンド城から、スメールの中心地であるスメールシティまで行くとしよう。
この場合は勿論、モンド城からアカツキワイナリー、アカツキワイナリーから璃月の石門へと歩みを進め、南下して
___つまりこの場合、東側のモンドと西側のスメールを璃月という国が繋いでいるという事である。
「___やはりどう考えても、フォンテーヌと稲妻の両国の場合、これらの国々の交易や貿易、それに交通や流通は璃月の陸路を介した方法でないと駄目だ。璃月を介さずにモンドやスメールを経由する方法も出来るが、その場合はそれぞれに大きなリスクやデメリットを受け入れる必要がある…。やっぱり確実な貿易や物流を行うには璃月を経由しなければ厳しいのではないか…」
「___はい、璃月を介さない交易や流通方法となると、煙緋さんの言う通り璃月北端のフォンテーヌと璃月南端の稲妻の両国の交易や貿易が最大の難関、特にスメールが最大の難関で、そうして安定した交易や流通は璃月を介した方法では無いと不可能ではないのかと思います」
「うむ、そうですね。甘雨先輩。これは難関、いや難関と言う言葉で済ませられるほどの生易しい事ではありませんね、スメールを経由したその方法は…。やはり、璃月を介さない方法など不可能に近いのではないか……」
煙緋はそこまで言うと腕を組み、難しそうな表情を浮かべて考え込む。
そうして今度はフォンテーヌのフォンテーヌ廷から稲妻の離島まで行く事を想定してみよう。
フォンテーヌ廷から離島までを行くにはそれぞれスメール、モンド、璃月を経由する3つの方法がある。
まずフォンテーヌ廷からスメールを経由して稲妻の離島に向かう場合。
この場合、まずはフォンテーヌ廷からフォンテーヌとスメールの玄関口とも言えるロマリタイムハーバーまで南下する事になる。そしてロマリタイムハーバーとスメールのバイダ港を結んでいる連絡船に乗ってスメール北端のバイダ港まで南下していきバイダ港に到着したら、今度は北端のバイダ港から南端のオルモス港というスメールの北から南までを陸路で進んでいき、そして最後にはオルモス港から稲妻の離島まで海路で進んでいく事になる。
そうしてスメール経由の場合であればその“スメールの北から南までの道のり”こそが、先の『難関と言う言葉では済まされ無いほどの生易しい事では無い』という根拠なのだ。
「うむ…」
煙緋は深刻そうな表情を浮かべる。
スメール北端からスメール南端までの陸路。即ちスメール領の長大な距離の陸路を進んでゆくには地政学的な理由で大きなリスクやデメリットを受け入れなければならない。
そしてその最大のリスクやデメリット、それはスメール独自の内情。
「確か今のスメールは……」
煙緋はそれらを思い出すかのように思考する。
一つにスメールには“エルマイト旅団”と呼ばれる傭兵団がスメール各地で活動している事だ。
このエルマイト旅団と呼ばれる者達は多数の派閥が存在し、その派閥はそれぞれが抱える事情や内情によって“三十人団”と呼ばれる都市の警備を行えるほどの治安維持を担っている者達もいれば、目的のためには手段を選ばないゴロツキ紛いの過激派、果ては盗賊も同然のならず者も存在するのだ。
これはテイワット各地で活動している宝盗団よりもたちが悪いとも言えるだろう。彼らは基本的に数多くの場を経験してきた戦闘のプロと呼べる傭兵集団であり、スメールの都市の治安維持を行えるほどの実力者なのだ。
そんな彼らエルマイト旅団の数多くの派閥の中に野盗や盗賊紛いのならず者達は多く存在する。つまり荷物の運搬中や輸送中に、野盗や盗賊と化した彼らエルマイト旅団の襲撃を考慮しなければならず、そのためフォンテーヌや稲妻から出国する前に最初から彼らに対抗できるほどの実力者である護衛達を用意、または別の派閥のエルマイト旅団の傭兵達や戦士達を雇うなり、もしくは遭遇して襲い掛かろうとしてきた野盗や盗賊のエルマイト旅団達を懐柔できるだけの交渉材料や保険を多数用意しておかなければならないのだ。
「……」
甘雨もまた煙緋と同じように、スメールのそれらを思い出すように思考する。
またもう一つは、最近の璃月でも一部の商人達らの間で話題になっているスメール領内で発生しているとある“異常危険現象”の増加傾向だ。
『雨林の植物を枯らして動物や人の命を脅かす“それ”』は璃月の商人達がスメールへの輸出入や流通等を行う際のルート選定にも大きく左右させてしまっており、以前までは輸送路として使われていた道も“それ”のせいで商品や運搬員達の安全の確保を行うために遠回りをしたり、また迂回したりしなければならなくなってしまっている。
幸いにもそうした“異常危険現象”はスメールの“レンジャー”と呼ばれる者達や先ほど挙げた“エルマイト旅団”のとある一派達が日夜共同でそれの対処を行っている事、また増加傾向であると言っても微々たる程度という事なので、それを1個片づけたら2個増えたみたいな事にはなってないので璃月とスメール間でも交易は特に大きな問題も無く行えているのだ。
それにスメールのバイダ港やオルモス港、スメールシティ周辺、またそれだけでなくガンダルヴァー村と言った人が住む地であれば、レンジャー達やエルマイト旅団達の彼らの入念な巡回によって一度も発生しておらず、スメール人達の生活圏内は危険に脅かされずに済んでいるのだ。
だが、この“異常危険現象”が発生している範囲や規模が将来的に徐々に大きくなってしまうかもしれないという話であれば話は変わってくるだろうし、逆に言えば彼らのその尽力が無ければスメールは大変な事態に陥ってしまって、スメールを経由するどころかスメールとの貿易自体も危うくなってしまう。
___つまり先ほど挙げた二つの事、それらが意味する事はスメールを経由するルートでは大きなリスクとデメリットが付きまとい、付きまとったそれらを対応する為だけのコストパフォーマンスや確実性を考えた場合、スメールを経由するルートでの貿易は避けた方が無難であるとも言えるだろう。
「___うむ、やはりどう考えてもスメールは、まぁ無理だろう、やめた方がいい。だがかと言って、モンド…。この場合、モンドの“ドーマンポート”を中継地点としたルートでも厳しいのではないか……」
煙緋はそう呟きながら、次にフォンテーヌにモンドに稲妻というルートで考えてみる。
先ほどの流れと同じように考えてみるとフォンテーヌのフォンテーヌ廷、フォンテーヌとモンドの玄関口であるフォンテーヌの滝の中腹に作られた海岸エレベーターと展望台まで進んで、そこでフォンテーヌとモンドの連絡船に乗って、連絡船の水路でモンドの“ドーマンポート”という港町まで行き、そうして今度はドーマンポートから稲妻の離島まで海路で進んでいく事になる。
だがそこで『“ドーマンポートから稲妻の離島まで海路”で進んでいく事』、それがモンドを経由した場合の最大の難関、最大の問題点なのだ。
「うむ…。や、やはり……」
煙緋は険しそうな表情を浮かべながらそう呟く。
その最大の問題点、それはモンドのドーマンポートと稲妻の離島の海路を結ぶ直通便や直通船等はドーマンポートには存在しないという事である。
モンドのドーマンポートを行き来している船と言うのは主にフォンテーヌと璃月の二か国だけであり、肝心の稲妻へと直接行ける船は無いのだ。
そしてその最大の理由というのは、モンドのドーマンポートから稲妻の離島間の距離。モンド北部に位置するドーマンポートからテイワットの最南端とも言える稲妻の離島までの距離と言うのは璃月の璃月港から稲妻の離島までの距離はおろか、スメールのオルモス港から稲妻の離島よりも断然遠い超長距離的な距離と言えるのだ。
そうしてその長大な航行距離を航海していくとなると多くの問題が立ち塞がる事になる。
それは長大な距離を航海して行けるためのしっかりとした輸送船という一定以上の高性能な性能を持った帆船、そしてその帆船を巧みに操り海上で遭遇したトラブルを冷静にかつ迅速に処理する経験豊富で航海技術に優れた優秀な船員達が多数必須となり、後はそれに加えて航海時の天候や波の高さと言った、気象条件や気象状況がどれだけ恵まれるかも左右される事だろう。
このようにドーマンポートから離島までの航路を行おうとすると、まずはそれを行いきれるだけの優れた船や優秀な船員達を用意しなければならないという求められる水準のハードルが非常に高く、そうしてどれだけ航海中の気象状態に恵まれるのかと言う不確実的な要素までもが絡んでくる。
___このようなモンドを経由した海上輸送、明らかにコストパフォーマンスが見合ってない気もするし、そもそもリスクとリターンさえ合っていない気もしなくもない。そうなるとモンド経由の方法も外す事になり、そうなれば残る選択肢。それは、璃月を経由する方法しかなくなり………。
「___ま、まずい…!!本当にまずい…!!そんなとても重要な役割を璃月は担っているのにも関わらず、本当にそのような大惨事が起きてしまえば……!?」
煙緋は甘雨同様に顔を俯かせながら頭を抱えて考え込む。
もう現実的に考えて璃月しかない。璃月しかありえない。
確かに璃月でも宝盗団やヒルチャールを始めとする魔物は日々出没している。だがそれらは璃月の治安を守る“千岩軍”、また金品の護送等を担う“
そして璃月港から稲妻の離島までの海路は璃月と稲妻の定期便の連絡船が運航されているほど、安定した海上輸送が行えるとも言えるのだ。
___それ故、璃月で煙緋や甘雨が述べたような大事件や大惨事が起きてしまえば、ある意味でテイワットの交通網や物流は一瞬で麻痺し、大混乱に陥る事になるだろう。
「___はい、その通りです。煙緋さん。この璃月でそのような大惨事が起きてしまえば、先ほど挙げた四国のそれぞれの貿易や交易に甚大な影響を及ぼしてしまうと共に、テイワット全体にとっても決して無視できない事態になっていきかねません…」
甘雨はそう言いながら、静かに顔を上げる。
「あぁ…、これは非常にまずいな。璃月がそんな大惨事になってしまえば、確実に他の国々にも多大なる影響が出る事は間違いない。それどころか、この璃月の惨状が他国にまで波及していけばテイワット全体を巻き込んだ大変な事態に陥ってしまうんじゃないか…」
煙緋はそう言うと、そのまま険しい表情を浮かべながら顎に手を当てて考え込む。
「はい、その通りです。璃月で大事件等が起きなかったとしても、一時的でも璃月の陸路が使えなくなるだけでそれは璃月はおろか、ある意味でテイワット全体にとっての一大事に繋がっていきません。ですので、それを防ぐ為___」
甘雨はそう言うと真剣な表情を浮かべ、そうして覚悟の籠った瞳を宿しながら煙緋を見つめる。
「___『早急に反刻晴派の実態を解明、そしてまずはその反刻晴派を隠れ身にし、そうして月海亭や七星八門の裏に潜んで暗躍をしている“過激派”や“急進派”、“強硬派”達等についての実態や彼らの全体像を一刻も早く把握』していきます。まずは正しい状況の把握、です。これが出来ていなければどうしようもありませんし、出来ていなければ下手に動けませんので」
甘雨は煙緋にそのように告げる。
「ふむ、成程。反刻晴派と言っても全員が全員敵ではない。本当の敵、『真の敵は反刻晴派を隠れ身とし、そうして彼らの背中で暗躍している“過激派”や“急進派”、“強硬派”達である。それ故に正しい敵味方の識別や判別を行うため、反刻晴派の実態把握を急がなければならない』、という事か…。分かりました、甘雨先輩。先輩、それではその『頼み事』、引き受けさせていただきます」
そうしてその言葉を聞いていた煙緋も、覚悟を決めたかのように頷くと、甘雨に向かってそう言った。
「ありがとうございます、煙緋さん。それでは『とある依頼』の件です。煙緋さんに依頼したいと考えた『とある依頼』。それは“_____”という事です」
「っ!?そ、それは…!?」
煙緋は甘雨のその依頼内容に、驚愕にも似た表情を一瞬浮かべる。そして煙緋の身体が僅かに震える。
「はい、これは煙緋さん。貴女にしか出来ない事です。璃月港で有名な法律家である煙緋さん。貴女であれば、それが出来る。いえ、貴女にしか出来ません。反刻晴派を隠れ身にし、___」
甘雨は真剣な表情を浮かべながら、煙緋のその目を見つめる。
「___反刻晴派達のその影に潜んでいる“過激派”、それに“急進派”や“強硬派”達。“彼ら”に最終的な終止符を打てるのは、完全な引導を渡す事が出来るのは、私や刻晴さんではなく、煙緋さん。貴女しかいません。法の力を巧みに利用し、強かに弁舌を振るってきた煙緋さん。最終的にこの状況を打破するには煙緋さん。貴女の協力が必要不可欠であると、私はそう確信しています……」
そうして甘雨は強い意志を感じさせる声色で、そして真剣な表情を浮かべて強い意志を感じさせる声でそう話す。
「そ、そうですか、先輩…!!ま、まさか…!!こ、こんな形で先輩の…!!甘雨先輩の役に立てる時、この時が来るなんて……!!」
煙緋の震えは今や興奮の域まで達し、その煙緋の口から発せられる言葉にも熱が籠り始める。
そう、それは歓喜にも近い感情であり、彼女の武者震いは止まらない。
「___甘雨先輩…。その『依頼』…!!是非、是非とも……!!」
煙緋は静かに、そうして強い意志が籠った瞳で甘雨を見つめる。
「はい、煙緋さん」
そしてそんな煙緋の視線を甘雨は正面から受け止める。
「是非、私に引き受けさせてください…!!先輩の期待通り、いえ期待以上の働きをしてみせましょう…!!そしてこの問題を平和的解決へと導き、最悪な未来を回避してみせます…!!」
煙緋はそう堂々とした態度で、そう甘雨に向かって答える。
「ありがとうございます、煙緋さん。頼りにさせていただきます。私も全力で煙緋さんのそれをサポートさせてもらうため、反刻晴派の実態把握が完了しだい、“________”と思います。」
「なっ、そ、そこまでやるんですか…!?先輩!!甘雨先輩!!それは、とても危ない橋を渡る事になりませんか!?本当にそんな事をやるのですか!?」
「ふふっ。はい、そうですね。煙緋さん」
驚愕する煙緋の前に甘雨は嬉しそうに微笑み、そうして不敵な笑みを浮かべる。
「ですが、煙緋さん。やるからには徹底的に、そして確実にです。私は本気です。覚悟もできています。ですのでどうかよろしくお願いします、煙緋さん」
そうして不敵な笑みを浮かべていた甘雨は、目を見開いて甘雨の方に身体を傾けていた煙緋にそのように告げる。
「な、成る程…。ふっ、分かりました。甘雨先輩。こちらこそありがとうございます。でしたら、私も先輩のそれが上手く行けるようサポートさせていただきます。月海亭や七星八門の職員達、そして“反刻晴派”達の耳に届くよう、あらゆる手段を使ってやってみようと思います。先輩___」
そして煙緋も嬉しそうに、そうして不敵に笑むと同時に席から立ち上がって甘雨に手を差し伸べる。
「___私と共に“今代玉衡”、“刻晴”、彼女を守り切り、そうして今迫っている璃月の危機、璃月の未来を救いましょう…!!甘雨先輩……!!」
そして煙緋は甘雨を見つめながら力強くそう答える。
「…!!はい、煙緋さん!!そうですね……!!___」
甘雨も真剣な表情を浮かべながら席から立ち上がると、煙緋の差し出された手に自身の手を伸ばす。
「___“玉衡様”、“刻晴さん”を守り切り、そして今この危機的状況ともいえる璃月を、そうして璃月の未来を救いましょう…!!煙緋さん……!!」
そして甘雨も握手を交わしながら、決意に満ちた表情でそう答える。
そうしてその日の夜、璃月七星全体の秘書を務めている秘書官の“甘雨”、璃月港で有名な法律家である法律家の“煙緋”、両名はお互いの手を取り合い、そして互いに『“契約”』を交わした。
『刻晴に迫る危機、そうして璃月に迫る前代未聞の災禍、これらに終止符を打つ為の“契約”』を。
「___招集があったという事は、いよいよという事か…?」
「___さぁな、そんなのは自分達の知る事ではないな」
「___普段は集まらない者達がここまでこうして集まっているとはね…」
とある日の月が真上に上がった頃の真夜中の璃月港。大勢の人々が寝静まり、星月が瞬く中。
璃月港の郊外にあるとある一角。まるで人目を避けるようにそこに集まっている者達が、璃月港郊外にある廃れた廃屋の中に集まっていた。
そこにいたのは千岩軍の兵士の格好をした者達や、総務司等の七星八門や月海亭の職員の格好をした者達。また冒険者協会の冒険者の格好をした者から、商人の格好や釣り人の格好をしている者達といった多種多様な様々な格好をした者達だった。
「___もうそろそろか?」
「___あぁ、もうそろそろ”あの方”が来るだろう」
そうしてその中でも異様な雰囲気を醸し出している者達、今の璃月港の闇夜に紛れるように黒と青の装束に身を包んでいた男達がお互いに話し合いながらそう呟く。
「___待たせたわね」
そして月が真上を通り過ぎたその時、廃屋の中に一人の女性の声が響き渡る。
「___来たか」
「___来たわね」
「___あぁ、そうだな」
その女性の声を聞いた黒と青の装束に身を包んだ二人の男達を含むあらゆる格好をした者達は一斉にその女性の方に視線を向ける。
「___ふふっ、ごめんなさいね。“彼女”との話が長引いちゃって、遅れちゃったわ」
そしてその女性はその場にいる者達に視線を向けながら、おどけたような口調でそう言い放つ。
「___いえいえ、お疲れ様です。“特別情報官”殿」
「___お疲れ様です、“夜蘭”様」
そうしてその場にいた者達は一斉にその女性、“夜蘭”に頭を下げたり敬礼をしたりしたのであった。
後半の夜蘭のシーンは5分後に投稿予定です。