名前を無くした、天権の懐刀   作:久遠とわ

31 / 69
煙緋、誕生日おめでとう!!
(本当は昨日が彼女の誕生日だったんですけど、昨日の時点ではまだ完成していなかったので)



さて改めて完成したので投稿です。

いよいよ第6幕開始です。

今回は前半は刻晴視点、後半は“とあるキャラ”のシーンとなります。





 6幕:「玉衡の座に集う者達、“刻晴”過去【3節】」編
_“会って頂きたい方”……?


Side:刻晴

 

「___というわけよ。これが不承認にした理由。これで分かったでしょう?」

 

「___し、しかし…!!」

 

「___玉衡様。どうか、もう一度考え直してください…!!」

 

とある日の璃月港。真昼間の月海亭にて、刻晴は自身の元へと訪れたとある月海亭の職員達に視線を向けながらそう話す。

 

 

 

「くどいわよ!!さっきから無理だって言っているでしょう!!いい加減にしなさい!!」

 

「…っ!?」

 

「…っぅ!!」

 

刻晴は苛立ちと、そして怒りが籠った視線を目の前にいる二人の職員達に向ける。

 

対してその視線を受けた二人の職員達は一瞬息を吞みながら、そうして刻晴から感じられる怒気に身体を震わせる。

 

「そもそも、もしこんなのを強行してしまって何かあったら貴方達は責任が取れるような立場なのかしら…!?こういう危険性があるという意見や指摘を、私も他の職員達もここまで貴方達に何度もしてきたわよ……!!」

 

「た、確かにそうですが…」

 

「し、しかし…」

 

刻晴の剣幕にその二人の職員は狼狽える。

 

「しかしもなにもないわよ!!それでもなお、この案を無理やりにでも押し通そうとするのなら…!!貴方達は指摘された危険性をないがしろにし、そうして璃月に不利益や損害をもたらそうとした悪人であると、私や他の職員達は捉えざるを得ないわよ……!?」

 

「そ、それは……」

 

「それはその……」

 

そしてその二人の職員の反応に刻晴は更に激怒し、また彼女のあまりにものの迫力にその二人の職員は彼女に押されてしまって後ずさりする。

 

 

 

 

 

「___うん?あぁ、またお前達か…。本当に何度、刻晴様の元に足を運べば気が済むんだ……!!」

 

「___刻晴様の怒鳴り声…?あぁ、またあんたらか。……ほぉ、自分達の非を認められず、またそのまま強行しよう、っていう算段のつもりだったのか?」

 

と、ちょうどそこへ刻晴の怒鳴り声や気配に気が付き、そして様子を見に現れた別の職員達が刻晴に怒鳴られ、そうして彼女への恐怖で震えている二人の職員達の姿を見る。

 

 

 

「___なっ!?あ、お前達は…!?」

 

「___っ、最悪だ…!!」

 

刻晴に怒鳴られ怯えていたその二人は、その他の職員達の姿を見ると嫌悪の感情をその顔に浮かべる。

 

 

 

「はぁ…、良いわ。取り合えずもう貴方達は行きなさい。どのみちその案は不承認という事は決定事項だから。その案を大きな修正を加えるか、それともその案を諦めて別の案を持ってくるか、好きにしなさい。まぁ、どちらにしろ貴方達のその案をそのまま採用する事は無いから」

 

刻晴はまるで鬱陶しいハエでも追い払うかのように、二人の職員達へそう言い放つ。

 

 

 

「____っ!!……わ、分かりました。それでは失礼いたします……」

 

「____っぅ!!…も、申し訳ありません。失礼いたします……」

 

そして二人の職員達は、どこかバツの悪そうな表情を浮かべながら刻晴に背を向けて歩き出す。

 

 

 

 

 

 

 

「___調子に乗るなよ。“認刻晴派”…!!」

「___いつの日か、後悔する事になるぞ…!!」

 

そうしてバツの悪そうな表情を浮かべながら刻晴に背を向けながら歩いていた二人の職員が、様子を見に現れた別の職員達の真横を通り過ぎようとしたその時、その者達は後ろの刻晴には聞こえない程の小さな声量で吐き捨てるようにそう呟く。

 

「___はっ、何を言っているのか聞こえないな…。さっさと行けよ、“反刻晴派”」

「___はんっ…。お前達が何の目的で刻晴様に迫っているのかは知らん。だが、これ以上刻晴様の負担になるような事ばかりやろうとするなよ……?」

 

そうして刻晴に背を向けながら歩いていた職員達に暴言を吐かされた二人の職員達も、まるで応戦でもするかのようにそんな言葉を返す。

 

 

 

 

 

「………」

 

そして先の職員達と様子を見に来た職員達が刻晴の目の前で、どこかピリピリした雰囲気を醸し出しながら何かを言い合って全員がその場から離れると、その様子を見ていた刻晴はその場にただ一人残される。

 

 

 

 

 

「___はぁ、なんだかここ最近、職員達の様子がおかしいわね…。なんで職員達同士がこんなにピリついているのよ……。ねぇ、そうは思わない、甘雨?……あっ」

 

刻晴はそう呟きながら、いつものように刻晴の傍らに控えている甘雨の方に視線を向けながらそう言う。

 

「………」

 

だがそこには甘雨の姿など無く、ただ壁や本棚などが視界に映るだけだった。

 

「そう言えば、そうだったわ……」

(甘雨は急に“やらないといけない事が出来ました”って言って、今は私から離れていたんだったわ…)

 

刻晴はそう呟くと、寂しそうな表情を浮かべる。

 

ほぼ常に傍らにいた秘書の甘雨、甘雨が刻晴の元から離れた事による刻晴の喪失感は、彼女の想像以上だった。

 

「………」

 

刻晴は言葉に出来ない程の不安と恐怖に苛まれ、そしてそれと同時に甘雨という彼女の存在の大切さを実感した。

 

「甘雨…」

 

刻晴は独り、そう呟いて机に両肘をつき、手に顎を乗せた体勢でどこか遠くを見つめるかのように無言で宙をずっと見つめる。

 

 

 

「…はぁ、駄目ね。しっかりしないと」

(甘雨が居ないと仕事が出来ないなんて、そんなの駄目よ。いくら何でも依存しすぎよ、私は……)

 

刻晴はそう心の中で呟くと机の端に置いてあった今日の分の書類に視線を向ける。

 

 

 

 

 

刻晴と甘雨が“夜蘭”と出会ったあの日。その日の翌日から、刻晴にとって全てが変わり始めた。

 

 

 

 

 

 

 

その日から甘雨は何かを思いつめるように、深く考え事をしている事が増え、そして刻晴に内緒で何かを調べているかのような行動が目立っていた。

 

勿論、刻晴は甘雨のその行動に気づいており特に言及する事はしなかったが、ただそれでも彼女が自分から隠れるように行動している事に刻晴は少なからずの不安を抱き、そうして自分に何をやっているのか、また何を調べているのかを教えず誤魔化すように行動している甘雨に、刻晴は不満を溜め込んでいた。

 

しかし刻晴は甘雨が自分から離れて何かをしているにしても、自分に隠し事をしている事にはそうしなければならない何かしらの理由や事情があるという察しはしていたので、彼女は甘雨を信じてそれを受け入れていた。

 

そうして刻晴の傍らから甘雨の姿が消えた初日こそ、刻晴は不安と恐怖に苛まれていたが、その後は特に何をする訳でもなくいつも通りに執務や政務をこなし、月海亭や総務司等の七星八門の職員達や彼女の配下の部下達に指示や指令を飛ばし、そうして刻晴にとっていつも通りの日常を過ごしていたのであった。

 

 

 

 

 

「………はぁ」

(これで全部ね…。ようやく終わったわ……)

 

そうして月海亭にて、今日も今日とていつも通りに仕事をこなした刻晴は、机の上で広げていた書類や筆記用具を片づける。

 

「………あっ」

(はぁ………)

 

刻晴は無意識にいつものように甘雨の方に視線を向けてしまう。

 

だが視線の先には、いつも居るはずの彼女の姿は当然に無い。その事に刻晴はハッとし、そして寂しそうな表情を浮かべると思わずため息を漏らす。

 

 

 

 

 

そしてその時であった。

 

 

「___刻晴さん」

 

 

 

 

 

「___っぅ!?」

 

その時、聞き慣れた声が、刻晴は驚きで身体をビクッと震わせながら聞こえてきた方に視線を向ける。

 

 

 

「あっ……!!」

 

「お疲れ様です、刻晴さん。どうしたんですか、そんな驚いた顔をしてしまって?」

 

その声の主は勿論、彼女の秘書である甘雨であり、そんな彼女は刻晴の執務室の出入り口に立っていた。

 

「あっ……、甘雨……!?」

 

刻晴は甘雨の存在に気づくと驚いたかのように、そして安心したようにどこか嬉しそうな表情を浮かべながら彼女の名を呼ぶ。

 

「どうしたんですか、刻晴さん。本当に、そんな驚いた顔をしてしまうなんて……」

 

「そ、それは……。甘雨が急に私の目の前に現れたからでしょう……!?あぁ、もう…!!」

 

刻晴は照れ隠しなのか、僅かに頬を赤らめながらそう抗議し、そんな刻晴の様子に甘雨は困ったかのような笑みを刻晴に返す。

 

「ふふ、そうですか…。刻晴さん、今お仕事は終わりましたか……?」

 

「えぇ、ちょうど今終わった所よ……」

 

「そうですか…。でしたら刻晴さん、今お時間は大丈夫ですよね?」

 

刻晴が甘雨の質問に頷きながら答えると、甘雨はどこか意味深な笑みを浮かべながらそう尋ねる。

 

「……えぇ、大丈夫よ」

 

刻晴は甘雨のその笑みに少しだけ首を傾げながらそう答える。

 

「そうですか…。それは良かったです……。それでしたら___」

 

甘雨はどこか悪戯っぽい笑みを浮かべて、そうして言葉を紡ぐ。

 

 

 

「___よろしければ、これから“お食事”でもいかがでしょうか?」

 

「食事…?まぁ、そうね。丁度お昼時だし、今仕事も終わったばかりだからお腹も空いているわね」

 

甘雨の言葉に刻晴は頷く。確かに今の時刻は既にお昼時を回ってしまっており、刻晴の空腹感もそろそろ頃合い時となっていた。

 

「そうですか、それは良かったです。刻晴さん。実はちょうどお昼をご一緒しながら、刻晴さんに“会って頂きたい方”がいらっしゃるんです」

 

「“会って頂きたい方”……?」

 

甘雨のその言葉に刻晴は思わず首を傾げる。

 

「誰かしら、甘雨?…もしかして今まで“やらないといけない事が出来ました”と言って、私から離れていた件と関係あったりするのかしら?今までのそれは、その人物に会う為の根回しとかだったとか?」

 

刻晴はそう予想しながら甘雨に尋ねる。

 

「ふふっ、そうですね…。まぁ、半分正解で半分間違いですね。私が刻晴さんの元から離れていたのと多少の関係はありますが、それは根回しをするためではありません」

 

「え……?そうなの?」

 

甘雨はどこか意味深な笑みを浮かべながらそう答えると、刻晴は僅かに首を傾げた。

 

「えぇ。そうですね…。まぁ、まずは一緒に“彼女”との待ち合わせ場所である『万民堂』に向かいましょう」

 

「“彼女”…?」

 

「はい、刻晴さん。“彼女”は“私の自慢な後輩”であり、そうしてこの“璃月港で有名な法律家”の方なんです」

 

そうして甘雨はどこか悪戯っぽい笑みを浮かべながらそう言うと、刻晴にその待ち合わせの相手の事を紹介したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

——————————————————————

 

 

 

 

 

「___着きました、刻晴さん。…良かったです、今日はそこまで混んでなさそうで」

 

「___そうね、甘雨。昼時が過ぎたこの時間帯にもなれば、流石に人集りも少なくなるわね」

(それにしても、万民堂ね…。ここに来たのも意外と久しぶりになるのかしら……)

 

刻晴は甘雨に相槌を打ちながら、どこか物思いにふけるようにそう内心で呟く。

 

 

 

今、刻晴と甘雨がいる場所は璃月港の『チ虎岩地区』、そうして璃月港の大衆食堂である万民堂だった。

 

丁度ランチタイムのピーク時を過ぎたからなのか、それとも別の理由があってか客の数はそこまで多くはなく、甘雨と刻晴はどこかほっとした表情を浮かべる。

 

 

 

「予定では既に“彼女”が私達の席を用意してくれているとの事ですが…」

 

甘雨と刻晴は万民堂の中に足を踏み入れると、甘雨が店内を軽く見渡しながらそう呟く。

 

 

 

「___あっ、いました。あそこですね」

 

そうして甘雨は“目的の人物”が座っているテーブルの席を見つけると、刻晴に声を掛ける。

 

「行きましょう、刻晴さん」

 

「えぇ、行きましょう。甘雨」

 

そして刻晴は甘雨に頷くと、“その人物”が待っているテーブル席に甘雨と刻晴は向かう。

 

 

 

「すいません、お待たせしました。“煙緋”さん」

 

「あっ、甘雨先輩。待っていましたよ、先輩。そして先輩の隣にいる彼女が今代玉衡、刻晴殿ですね。初めまして、刻晴殿。私はこの璃月港で活動している法律家の煙緋だ」

 

テーブル席に座っていた“人物”、翡翠の瞳に薄めの朱の髪。そして金の装飾が施された赤い帽子に璃月の薄着を身に纏い、その腰に“炎の神の目”を身に着けている“彼女”、“煙緋”は刻晴と甘雨に気が付くと立ち上がり、初対面である刻晴に挨拶をする。

 

「えぇ、初めまして煙緋さん。甘雨が紹介した人物と言うのは貴女の事だったのね。貴女の璃月港で有名な法律家として日々活躍している話は、よく耳にしているわ」

 

「ふふっ、そうか。それは光栄な事だ。刻晴殿に私の事を知っていてもらえているだなんて。まぁお忙しい中、せっかく来てくれたんだ。先輩、それに刻晴殿、是非ともそちらの席に座ってくれ。そうしてお昼をご一緒にしながら、お話でもしよう。刻晴殿には、今の月海亭や七星八門の様子に関して聞きたい事があるのだからな」

 

「聞きたい事…?」

(月海亭や七星八門に関してですって…?)

 

刻晴は煙緋が発したその言葉に、僅かに首を傾げる。

 

「___そうですね、煙緋さん。席に着きましょうか、刻晴さん」

 

「___えぇ、そうね。甘雨。席に座らせてもらうわね、煙緋」

 

甘雨と刻晴は煙緋に促されるまま席に座る。

 

 

 

そうして刻晴は昼食を取りつつ、甘雨と煙緋との他愛のない話や煙緋からの様々な事を聞かれながら、彼女は甘雨と煙緋達と共に時を過ごした。

 

 

 

 

 

そして刻晴が昼食を取り終えて彼女が月海亭に戻った後、万民堂に残っていた甘雨と煙緋の二人が、なぜか彼女を巡って激しい口論が勃発したのは完全な余談。

 

また彼女達の激しい怒鳴り合いが、遂に取っ組み合いの喧嘩の一歩手前の事態にまで発展していくという様相を万民堂で呈した事で、甘雨と煙緋のその出来事の話が徐々にゆっくりと璃月港中に浸透していくように水面下で広がっていき、そうしてそれらの噂や話が璃月港の月海亭や七星八門の職員達の耳までに届いていくようになっていったのは、完全たる余談であったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

——————————————————————

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「___あの女ぁ!!今度はどこに消えやがったぁっ!!」

 

「___よく探せ!!侵入者のあの女は必ずこの近くに居るはずだ!!」

 

「___見つけ出せ!!舐めた真似をしたあの女を後悔させてやれ!!」

 

 

 

璃月港より遥か北、璃月の北端にある水国フォンテーヌとの玄関口である港町の“遺瓏埠”

 

 

 

 

 

日が落ち、灯が灯されている街灯や家々から漏れ出ている光以外に光源がないその港町の外れにある一角、古びている外見のとある“建物”

 

今では誰も使われていないように見える寂れた倉庫のような建物、そして“その建物の地下から複数の男達の声”が響き渡る。

 

 

 

「___くそっ!!あの女っ!!」

 

 

声を荒げる男達の視線の先には、男が数人がかりで探していた“目的の人物”である女性の姿を捉えていたが、建物の地下であるが故に月光等が入って来ない事。また一応は地下にも灯りは付いているものの、その灯りはとても頼りないものであった事から最低限の僅かな灯りだけでは倉庫の地下の暗がりを完全に照らし出す事は出来ず、その女性を見失ってしまった男達は周囲の薄暗さも相まって苛立ちを覚える。

 

そうしてその男達は自身の獲物である曲剣、また剣程の大きさではないものの狩猟等で使われる獣を解体する為に使われるような大きなナイフのような刃物を手にしていた事から、完全に戦闘態勢や警戒態勢に入っている男達であると推測できる。

 

そしてその男達は完全な戦闘態勢や警戒態勢に入っているからこそ、普段のようにランタン等を片手に灯りを使うという選択をする余裕もないのだろう。男達は目の前に広がる薄暗闇を鋭い眼つきで見渡していく。

 

 

 

「___ぐっ、くそがぁ…!!絶対に見つけ出してやる…!!」

 

「___よく耳を澄ませぇ…!!近くに潜んでいる筈だ……!!」

 

「___くそっ!!あの女ぁっ……!!今日で“蒼き閃光”を終わらせてやる……!!」

 

男達は灯りが不十分な中、血眼になって周囲を探す。周囲は数多くの木箱が並んでおり、木箱の大きさはそれこそ大きなものから小さな物までならんでいた。

 

その木箱の隙間や床にも目を配らせながら自分達をここまで追い詰め、そして既に闇討ちを受けた多くの仲間達の存在が男達の殺意を滾らせ、そうしてその元凶たる“その女性”に対する憎悪が男達の思考を染め上げていく。

 

 

 

「___っ、どこだ…!!」

 

「___どこにいるんだ、女ぁ…!!」

 

「___出てこい、蒼き閃光がぁ……!!」

 

男達は血眼になって周囲を隈なく探す。

 

 

 

しかし整然と並んだ木箱と木箱の隙間や床にも目を凝らし、“その女性”が隠れていそうな場所を探していくが、その“蒼き閃光”の姿はどこにも見当たらずにいた。

 

男達は探しても一向に見当たらない“その女性”の姿に段々と苛立ちを増長させていく。

 

 

 

「…くそっ!!あの女ぁ!!」

 

そして遂に苛立ちが頂点に達した一人の男達が、“その女性”を見つけられずに悪態をつくと、木箱の一つを蹴り飛ばす。

 

 

 

 

 

その時であった。

 

 

 

 

 

「___ふふっ、本当にお馬鹿さんねぇ」

 

 

 

「___っ!?」

 

「___ど、どこだ!?」

 

「___今のはどこから!?」

 

突如、女性の声が響き渡る。

 

その女性の声を耳にした瞬間、苛立ちを露わにして木箱を蹴り飛ばした男や、その男の隣にいた男達は驚きながら周囲に視線を向ける。

 

 

 

「___ど、どこだ!!おい!!姿を表せ!!」

 

「___おい!!出てこい!!この野郎!!」

 

「___逃げ場はねぇぞ!!蒼き閃光!!」

 

男達は周囲を見渡せる所を見回しながらそう叫ぶ。

 

 

 

「____“逃げ場はない”って…?ふふっ、笑えるわね?そんな貴方達は『天権の怒り』を買ってしまったというのに…。もっと自分達が置かれている状況を客観視した方が良いんじゃないかしら?」

 

男達が辺りを見渡す中、再び女性の声が響き渡る。

 

 

 

「___っ!!だ、黙れ!!」

 

「___う、うるせえ!!黙れぇ!!」

 

「___なにが“天権の怒り”だ!!そんなの知るか!!」

 

男達は僅かに身体を震わせながら、そして僅かに動揺しているかのような震えた声でそう叫ぶ。

 

そうして男達は周囲に視線を巡らせて“その女性”を見つける為に辺りを見渡していくが、木箱や荷物等以外の遮蔽物は一切なく、その女性の人影すらも見つからない。

 

 

 

「____な、なぜだ……!?一体どこにいるんだぁ!?」

 

「____おい!!出てこい!!蒼き閃光がぁ!!」

 

「___出てこい!!化け物女!!姿を表しやがれ!!」

 

男達は叫ぶ。そして自分達の背後、または死角の場所に“その女性”が潜んでいるのではないかと思い、男達はその四方八方を鋭い目つきで見渡しながら武器を構える。

 

だが男達はそう遠くないはずの彼女の姿を目視する事は出来ず、周囲に反響する男達の声だけが響き渡る。

 

 

 

「___ちっ!!くそっ!!いつの間にか逃げやがったのか!?」

 

「___落ち着け!!逃げたなら音がするはずだ!!例え息を殺しながらとしても小さな音がするはずだ!!」

 

「___一体…、どこに……?」

 

男達は周囲を隈なく見渡しながらも困惑し、そして真ん中に立っていた男が何気なく“真上の天井の方”に視線を向ける。

 

 

 

 

 

その時であった。

 

「___あぁっ…!?」

 

その男は目を見開きながら叫ぶ。

 

 

 

 

 

「ふふっ、本当にお馬鹿さんねぇ…?」

 

そこにはエメラルドグリーンのような清らかな瞳に、サファイアのような綺麗な髪の女性。そうしてそうして太ももに神に認められし者である証、“水の神の目”を装着している女性、“夜蘭”が器用に水元素の糸を自身の身体と天井の突起物等に巻き付けながら天井に張り付いていた。

 

「___き、貴様!!そんなところに!?」

 

「___そ、そんなところにいたのか!?」

 

そうして他の男達も真ん中の男と同じように天井の方に視線を向けると、驚きながらそう叫ぶ。

 

 

 

「____ふふっ…。ふっ!!」

 

そして驚愕する男達の反応に夜蘭は楽しそうに笑うと、その次の瞬間には夜蘭は男達に鋭い視線を向ける。そうしてそのまま自身の身体と天井の突起物等に巻き付けている水元素の糸で身体を振り子のように動かし、そのまま水元素の糸を解除すると同時に片足を上げたまま真ん中で唖然としている男に向かって勢いよく落下する。

 

 

 

 

 

「___ふんっ!!」

 

「___がはぁっ……!?」

 

 

 

それは夜蘭の強襲。

 

 

 

 

 

真ん中に立っていたその男は迫ってきた夜蘭のかかと落としを咄嗟にかわす事が出来ず、そのままもろに頭のど真ん中を蹴られてしまい、そうしてその男は気絶したかのようにそのまま地面に力なく倒れていったのであった。

 

 

 




次回も完全にこの続き、遺瓏埠のとある地下施設に単独潜入中だった夜蘭、そうしてそんな彼女の戦闘シーンとなります。

それでは次回の投稿までしばらくお待ちください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。