名前を無くした、天権の懐刀   作:久遠とわ

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完成したので投稿。

今回で夜蘭視点も終わりです。


_征くわよ…!!

Side:夜蘭

 

「____はっ、了解しました!!直ぐに報告してきます!!」

「___はっ!!了解!!警戒を厳にします!!」

「___はっ!!よし行くぞ!!俺達は地上の隠し階段周辺の警戒だ!!」

「___はい!!行くぞ!!ついてこい!!こっちは建物出入り口の警戒だ!!」

「___はっ!!分かりました!!」

「___はい!!了解です!!」

「___分かりました、行きましょう!!」

「___承知しました!!急ぎましょう!!」

 

千岩軍の兵士のリーダーの指示を受けた兵士達、その者達は返事と共にすぐさまその場から駆けだすように階段を駆け上って行く音が夜蘭のいる地上の物陰にまで聞こえてくる。

 

 

「…あら、来たわね。ふっ」

 

階段を駆け上がる千岩軍の兵士達の音と気配が徐々に近づいてきているのを感じた夜蘭は、立ち上がって窓枠から建物の外へと跳び出て、そのまま中の様子を探るかのように壁に背中を預ける。

 

 

「___それではこれより行ってきます!!」

「___あぁ、気を付けろよ!!よし!!俺達も行くぞ!!俺は建物の出入り口に立つ!!」

「___了解だ!!ならば俺は建物の右側に立とう!!」

「___了解です!!それでしたら建物の左側に立ちます!!」

「___よし!!俺はそこに立って見張る!!お前はそこを頼む!!」

「___分かった!!ならそこに立とう!!それとすまないがランタンをその木箱とそこの木箱の上に置いてくれ!!この周辺の明かりの確保をしたい!!」

「___はい、分かりました!!」

「___了解です!!」

 

そして階段を駆け上がった千岩軍の兵士達は、すぐさまそれぞれの配置につくべく駆けていく。

 

 

「……ふふっ」

 

夜蘭は千岩軍の兵士達が配置に付いていく様を確認すると、そのままその場から離脱するように駆け始める。

 

 

「っ、ふっ、はっ」

 

夜蘭は建物の近くにあった荷台を踏み台にして跳んで木の枝に跳び移ると同時に、木々の枝に跳び移りながら現場であるその寂れた倉庫からどんどんと離れるように木々の間を跳び駆け抜けて行く。

そうして木々の枝の間を跳び駆け抜け続けた末に遺瓏埠の街並みに入り、そして遺瓏埠中の建物の屋根の上を跳び移りながら移動していた夜蘭は、遺瓏埠のとあるやや高めの建物の屋根の上で停止する。

 

 

「……ふふっ」

 

夜蘭は目を細め、そうして笑みを浮かべる。

 

今の時間は完全に日が落ちた時間という事も相まって暗闇で暗く見えずらいが、確かにその建物の出入りを守るかのように先ほどの千岩軍の兵士達が配置に付き、また数名の兵士がその建物の周囲を巡回している姿が夜蘭の視界に入る。

 

 

 

「___予定通りに事態は進んだわね」

 

そう呟きながら夜蘭はまたほくそ笑む。

 

 

ここまでくればもう千岩軍の兵士達が夜蘭の姿を発見するなんて事はないだろう。

 

そしてあの千岩軍の兵士達の慌てふためく様子とそこから導き出された可能性を見て取った夜蘭は、この後の動きについて大方の予測を立てる事ができた。

 

 

「………」

 

そうして当初の予定通りに“事”が進んでいると判断した夜蘭は、少しだけ眉を潜める。

 

 

正念場は潜り抜けたが、最後の締めが残っている。

 

 

“現在進行中の作戦”、その作戦計画の第一段階の主目標、一番の難関であった夜蘭が担当していた先ほどの『隠蔽されていた地下施設の制圧活動、並びに露呈工作による千岩軍の発見誘導』をこうして無事完遂させたことにより、第一段階の成否は一気に成功へと高まった。

 

 

しかし、それはあくまでもこの作戦計画の第一段階の成功が高まっただけであり、ここで手を緩めては駄目なのだ。

 

 

 

「………」

 

夜蘭は先ほどまでいた建物からとある方向、“遺瓏埠の港”、“フォンテーヌとの連絡船が出ている船着き場”の方向へと目を向ける。

 

 

もう夜蘭達が乗船する予定の“フォンテーヌへの船”、“ルミドゥースハーバー行きの船”が遺瓏埠の船着き場に着岸している。

 

今は遺瓏埠からルミドゥースハーバーへの出港準備が進められている事だろう。あと数十分もしない内に彼らの乗船案内が始まる事に違いない。

 

 

「……」

 

夜蘭は少し険しそうな表情でその船着き場のある方向へ目を向け続ける。

 

 

 

___これを逃せば、もう次は無い。

 

 

次の便がやってくる頃には遺瓏埠を守る千岩軍が緊急事態であると判断し、そうして遺瓏埠全体に戒厳令を発令し、彼らの厳重な警戒網が敷かれていく事になるだろう。

 

 

 

 

「……」

(まだかしら…)

 

夜蘭は険しい表情を浮かべたまま、ただ時が過ぎるのを待つ。

 

 

 

これを逃してしまえば次にやってくるフォンテーヌとの連絡船は千岩軍の要請により出航を取りやめ、そうして連絡船の運航を一時停止してしまい夜蘭達はフォンテーヌへと渡航する事が叶わなくなってしまう。

そうなれば“作戦の第二段階”に大きな支障が、いや『その“極秘作戦”のその成果』に大きな影響が出てしまう事だろう。

 

 

 

故に、まだ千岩軍の厳重な警戒網が敷かれていない今が最大のチャンス。

 

 

逆に今しかそのチャンスは無いがためにこの機会を逃せば、もう夜蘭達にとっては後がないとも言えるのだ。

 

逃したら即座に撤退。千岩軍の警戒網や検問が敷かれるその前までに璃月港まで全力撤退しなければならない。

 

 

 

 

「……」

 

夜蘭は険しい表情でその船着き場のある方向を睨み続け、ただ静かに時が過ぎるのを待ち続ける。

 

 

 

そしてその時であった。

 

 

 

「___お待たせしました、夜蘭様」

 

「___お待たせさせてしまい、申し訳ありません」

 

その時、屋根の上で夜蘭が厳しい表情で船着き場のある方向へ目を向けていたその時、そんな夜蘭の背後より二つの声が夜蘭の耳に聞こえてくる。

 

 

 

「___いいえ、大丈夫よ。少々遅れちゃったみたいだけど、許容範囲内よ。よく間に合ってくれたわ」

 

夜蘭はそう言いながら、その二つの声の方向へと振り返る。そしてそこには___。

 

 

 

「___はい、お褒めに預かり光栄です」

「___ありがとうございます、夜蘭様」

「___目標、無事に達成できました」

「___我らの方でも、目標は達成できました」

「___我々の作戦計画の第一段階は無事、成功したと見てよろしいでしょう」

 

___夜の遺瓏埠の暗闇に紛れ込むように全体的に黒と青の装束に身を包んでいた者達が、夜蘭に向かって頭を下げていたり方膝立ちの姿勢で報告をしていたりしていた。

 

 

 

「……ふふっ、それは良かったわ」

 

夜蘭は目の前の黒と青の装束を身に纏った者達の報告を聞いて、少しだけ安心したかのような表情を見せる。

 

「___“モンド組”の彼ら、そして“スメール組”の彼らや、また“稲妻組”の彼らはどうだったかしら?」

 

夜蘭は目の前の黒と青の装束を身に纏った者達に、そう尋ねる。

 

 

「はい、“モンド方面隊”の彼らは予定通りにこの遺瓏埠を発ちました。モンドの“ドーマンポート”には問題なく予定通りに到着、活動を開始できる見込みです。そして“スメール方面隊”の方も同じく遺瓏埠を既に出発済み。予定より少々遅延が発生してしまってますが概ね問題ない模様で、予定している“バイダ港”への到着時刻は予定通り、そのまま作戦行動に移れそうとの事でした」

 

「はっ、別働で動いていました“稲妻方面隊”の特殊部隊に関しましても、璃月港から来ました連絡員の連絡により、璃月港を予定通り出発して“離島”へと到達したとの事であり、そして予定通りに離島や離島周辺でそのまま潜伏に入っているとの事でした」

 

尋ねられたその者達の中から、二人の者が代表するような形で夜蘭にそう報告する。

 

 

「そう、成る程ね…。なら良かったわ。そうであるならば問題なく予定通りに各国の現地に現着、そのまま予定通りに調査活動や情報工作活動、また“彼ら”に協力している各外国勢力達への工作活動も滞りなく行えそうね」

 

その者達のその報告を受けた夜蘭は、安心したかのようにほっと胸をなでおろす。

 

「えぇ、その通りです」

 

「はい、私どももそう考えます」

 

そして夜蘭にそう報告していた黒と青の装束を身に纏った者達もまた、夜蘭と同じように胸を撫でおろしていた。

 

 

 

「___ならば、私達も予定通りにフォンテーヌへと向かわなければならないわね」

 

そうして夜蘭は彼らから視線を外して改めて遺瓏埠の港、フォンテーヌの連絡船の船着き場の方に視線を向けながらそう呟く。

 

「はい、夜蘭様。その通りです。いよいよ例の計画、あれを第二段階へと移行する時です」

 

「はっ、予定通りに我々もフォンテーヌに入国しなければなりません。そうしてフォンテーヌにて調査活動や情報工作活動等を行わなければなりません」

 

夜蘭のその言葉に、黒と青の装束を身に纏った者達も同意の言葉を返す。

 

「そうね…。それによって、それら私達の成否の成果によって、結果的に今の璃月を取り巻く情勢が大きく決まる事となる。そして、私達のこの作戦行動の一つ一つが…、___」

 

 

夜蘭はそこで一度言葉を切り、再度遺趾埠の港にある船着き場の方を睨みつける。

 

 

 

 

「___『“凝光の策”の効力やその策の効果の具合を大きく左右させ、また大きく決定付けさせる重大な要因』となる」

 

 

そうして夜蘭は目を細めながら、そのように言い切る。

 

 

 

 

 

 

「はい、その通りです。夜蘭様…」

 

「我々の成否の成果、それが大きく左右させる事は間違いありません…」

 

「間違いありません、夜蘭様。我々フォンテーヌ方面隊、そうしてモンド、スメール、稲妻の各方面隊の部隊の動きの結果が全て繋がっていると言っても過言ではありません…」

 

「我らの動きは礎、凝光様の策が想定通り、いえ想定以上の成果を上げられるための礎とならねばなりません…」

 

「もうここまで来たら後戻りすることはできません。我らはただ凝光様の策が想定通り、いえ想定以上の成果を上げられるための礎となりましょう…」

 

黒と青の装束を身に纏うその者達は夜蘭の言葉に頷きながらそう答え、そうしてその者達は夜蘭の斜め横に立って、彼女と同じ視線の先にあるフォンテーヌ連絡船の船着き場の方を睨むように見据える。

 

 

 

 

 

「えぇ、そうね。全ては“凝光の策”。そして現在、同時進行で行われている“彼女主導の四ヶ国各国への外交”、そうして“凝光によるモンド、スメール、フォンテーヌ、稲妻への働きかけ”が有効に機能し、それらが想定通り、いえ想定以上の成果を上げるため。そして___」

 

夜蘭はそこまで言うと、一度言葉を切りそうして鋭い視線を夜の闇が支配する真っ暗な空へと向ける。

 

 

 

 

 

 

 

「___“今代玉衡”、先代玉衡である彼の娘、“刻晴”をこの璃月の裏に潜む“彼ら”の悪意から守りきり、今こうして取り纏っている璃月の不穏な情勢を終わらせるため…!!」

 

そう夜蘭は、その闇夜に向かって宣言するかのように、そう言い放つ。

 

 

 

「「「「「………」」」」」

 

夜蘭の斜め後ろに控える彼らも、彼女のその言葉に同意するかのように力強く頷く。

 

 

 

 

 

「___征くわよ…!!フォンテーヌへ……!!」

 

そして夜蘭は彼らに対してそう言うと夜蘭は駆け出し始め、そうして遺瓏埠の街の屋根を跳び駆け抜け始める。

 

「___はっ、夜蘭様……!!」

「___参りましょう、夜蘭様…!!征きましょう……!!フォンテーヌへ……!!」

「____了解です…!!夜蘭様…!!フォンテーヌにいる不埒者共、奴らに我らの怒りというものを教えてやりましょう…!!」

「___そうして万が一、フォンテーヌで活動中の璃月裏社会に属する者がいたら、その者を璃月港まで連れ出して強制帰国させてやりましょう……!!」

「___そしてその者から根掘り葉掘り情報を絞り出してやりましょう…!!“彼ら”に繋がる手がかりを……!!吐き出させてやるのです………!!」

 

そう黒と青の装束を身に纏った彼らは口々にそう言うと、夜蘭の後ろを追うかのように駆け始める。

 

 

 

そうして夜蘭達は編隊を組むかのように夜の暗闇が支配する遺瓏埠の街の屋根という屋根を駆け抜け、その闇に溶け込むように消えていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして最終的には変装を施した夜蘭達は、フォンテーヌ行きの連絡船への乗船に成功。

 

 

 

遺瓏埠全体が、数多くの異常事態の報告を受け続けて非常事態と判断した千岩軍の戒厳令による厳重な警戒網や検問が敷かれたタイミング、そのタイミングで夜蘭達を乗せた連絡船はフォンテーヌ領の“ルミドゥースハーバー”へと到着した。

 

 

 

そうして連絡船から降りた夜蘭達は自分達に与えられている“極秘作戦”、その極秘任務の”第二段階”へと移行し、その第二段階の作戦行動へと動き出すのであった。

 

 

 

 

 




これで夜蘭視点は終了です。

次回は少し時間が飛びます(夜蘭達の作戦活動が終了、凝光の策の効果が表れた辺り)。



それでは、また次回の投稿までお待ちください。(次回もおそらく当初の予定通り3日後になると思います。)
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