名前を無くした、天権の懐刀   作:久遠とわ

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完成したので投稿。

前回の予告通りに夜蘭達の作戦活動が終了後、凝光の策の効果が表れた辺りの話となります。


_そうですね、“終わりの始まり”ですね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

___なぁ、聞いたか?あの“七星全体の秘書”の話をよ?

 

___七星全体の秘書の話?それって“彼女”に関する話の事か?

 

___“甘雨”の噂の事か…?あぁ、知っている。正直、今でも信じられないな。

 

___玉衡の“刻晴”、彼女とあんなに親しげだったって言うのに…な?

 

___あぁ、本当にだ。でもその話は間違ってないらしい。璃月港中でその話が出回ってるらしいし。知り合いの商会の奴もそう言ってた。

 

___そうなのか、なら間違いないな。確か“璃月港で有名な法律家”が話の出どころだったか。あの人、そんな有名人と知り合いだったとは思わなかったな。

 

___あぁ、そうだな。話によれば、なんでも甘雨さんとその法律家の“煙緋”さんが刻晴を巡って口論になり、激しい喧嘩になりかけたとか。

 

___そうらしいな。それに彼女、法律関連の仕事で商会の人達と仕事をし、そして休憩中の時や商会の法務関連の商会員の人と雑談をしている時に、よく甘雨に対しての愚痴を漏らしているようだったからな。

 

___成程、それは初耳だったな。出どころがその法律家の煙緋、それに璃月港の他の者達もそのような話をしているのであれば、もうその話は間違いないな。…それにしても人というのは、本当に分からないものだな。人は見かけによらずとはこの事だったりするのか?

 

___さぁな。だがまぁ、まさか彼女が隠れた“反刻晴派”側の人物だったとはな。

 

___あぁ、そうだ。しかも信じられないがどうやら筋金入りの反刻晴派で、“彼女”の事を深く恨んでいたほどらしいしな。

 

___そうだったみたいだな。完全に騙されていたな、彼女に。いつものあの笑顔、あの顔にそんな恐ろしい裏の顔があったとは。

 

___あぁ、そうだ。それに俺達よりも認刻晴派の連中の方が驚愕、激震が走ったみたいだからな。そりゃあ、そうなるだろうな。

 

___あぁ、そうらしいな。認刻晴派の連中も酷く動揺しているみたいだ。まさか彼女の内心があんなんだったとは、ってな。

 

___あぁ、そうだな。ある意味彼女の存在と言うのは、彼らにとっては象徴的存在、もしくは彼らの旗頭みたいな存在でもあったからな。

 

___彼女の存在が彼らの心の支えになっていた事は間違いないしな。それが今や仇となってしまったとは…、な?

 

___そうだな。はんっ、何が正当性が無いだ。認刻晴派の奴らめ。認刻晴派や、中立の立場を取った裏切り者達め。

 

___あぁ、こっちには甘雨さんがいるからな。これでどちらに正当性があるかなど、一目瞭然だろ。

 

___ははっ、あいつらの悔しがる顔や表情が、今から見れると思うと楽しみで仕方ないぜ。

 

___そうだな、とりあえずこれで今の反刻晴派も巻き返しも図れるし、いずれ今代玉衡の席に座っているあの女を引き摺り下ろすには、甘雨さんという存在が大きな力になる。

 

___あぁ、そうだ。今では甘雨だけが反刻晴派を有利にしてくれる存在だからな。本当に助かった。最終的にはこれで、少なくとも情勢を均衡状態程度には戻す事が出来るはずだからな。

 

___あぁ、本当にだな。…“彼ら”とは未だに上手く連絡が取れていないんだろ?“あの日”以降から…。

 

___あぁ、そうだな…。“遺瓏埠事変”だったか。あれが起きた日から、連絡が上手く取れなくなっているな……。

 

___そうだな。その日の遺瓏埠が大変な事になってたらしいしな。なんでも遺瓏埠で拳銃が見つかったとか。

 

___そうだったな。あれには驚いた。それにどうやらその日の当日や数日間の間の遺瓏埠や遺瓏埠周辺の千岩軍達は大騒ぎになっていたらしいしな。しかも後日にフォンテーヌから警察隊達らの面々が遺瓏埠にやってきて、そのまま千岩軍の調査に協力したらしいじゃないか?

 

___あぁ、そうだったな。確か璃月の千岩軍とフォンテーヌの警察隊による国際共同捜査だったか…?結構、大々的な調査や捜査を行ったという話らしいな。それに警察隊だけでなく、確かその騒ぎを聞きつけたフォンテーヌのスチームバード新聞を始めとする記者達もこぞって遺瓏埠にやってきて、街は色んな意味で大変な事になっていたとか…。

 

___そうだな。それにそれとほぼ同じタイミングで、なにやらモンドから西風騎士団の使者達が璃月港にやってきたとの話もあったらしいしな。…なにか璃月で大きな事でも起きようとしているのか?

 

___さあな、それは分からん。だがまぁ、その中でも極めつけはあれだろ?なんか捕縛された者達の一部、本格的な尋問や取り調べを行う前に口封じされたって噂…。しかも口封じされた者達というのは、捕縛された者達のリーダー格であったり、なにか重大な情報を持っている可能性が高い者達だったという話じゃないか……?

 

___あぁ、そうらしいな。本当に怖いな、物騒だな…。そう言えば話は変わるが、今日ここまで俺達、“強硬派”や“急進派”、また“過激派”の連中に支援を、また必要に応じて知識や知恵まで与えてくれた“彼ら”とは、まだ連絡が取れないのか?

 

___あぁ、“過激派”の連中は必死になって“彼ら”と連絡を取ろうとしていたみたいだが、上手くいかないみたいだ。

 

___やっぱりか…。本当に不味いな。俺達は“彼ら”を頼りにしていたところもあったのに…。今までやり取りが直接出来たのは“過激派”の連中だってのに…。

 

___そうだな。本当に、相当不味い。本当に謎が多い彼らと今まで直接やり取りが出来ていたのは、ここにはいないあのイカレ狂った集団の“過激派達”だけだ。

 

___あぁ、そうだな…。あぁ~あ、まったく、何が「璃月のために、刻晴を排除しよう。彼女を消そう。暗殺するんだ」とな。本当にイカレ狂っているよ。暗殺などと言う手段、それは璃月の歴史に汚点を残す事に繋がりかねない。いくらなんでも彼女に直接危害を加えるという手段を訴えるのは理解できないな。あの狂人共の主張は。

 

___ははっ、お前達が言える事か?“強硬派”。「璃月の歴史に汚点を残す事を防ぐため、ここは刻晴に不満を持つ千岩軍の兵士達に呼びかけて反刻晴派千岩軍のクーデターを引き起こして、そうして反刻晴派の千岩軍達とそれに賛同する反刻晴派の月海亭や七星八門の職員達で彼女にその席を降りるように要求しよう」とな? …何が璃月のためにだ。どこが璃月の歴史のためだ。聞いていて、反吐が出るわ。

 

___はんっ、そういうお前達はやる気があるのか、“急進派”?「刻晴を玉衡の座から引き摺り下ろそう。その為には、彼女が自ら席から降りる事を決断する必要がある。そのためあらゆる方法を用いて彼女は決して有能な人物ではないと証明し、その上で彼女にその座を降りるように迫ろう」、だったか? ほう、それで?“急進派”のお前らのそのやり方に何かしらの効果や成果があったのか?むしろ彼女はどんどん仕事が出来るようになっていき、その結果有能であると証明されて認刻晴派の勢いは増す一方では無かったか。んん?

 

___はっ…、まぁ確かにお前達強硬派の指摘通りだ。彼女の粗を探し、そこを突くというつもりであったが、致命的な粗らしきものは完全に無い。だから少し前から方針を変えたんだ。

 

___ほぉ、方針を変えた?是非ともまた、俺達強硬派に教えてもらいたいものだな。

 

____ふん、相変わらず態度がでかい事だ。だがまぁいいさ、教えてやる。簡単な話だ。「刻晴の政務や公務に妨害や工作を仕掛けて、人為的に彼女の粗を作り出してそこを突く」。どうだ、お前達“強硬派”の拘る‘確実性’は遥かに向上しているだろう?この方法であれば刻晴がその座を降りた後に起きる‘決行時混乱’や‘実行時動乱’と言った要素のリスクや危険性を最小限にする事もできる。

 

____ほぉ、随分と考えた物だな……。だがまぁそれでも俺達“強硬派”の方法よりかは、遥かに‘確実性’は劣っていると言いざる終えまい?確実に降りてもらうならそこまでしないと駄目だろう。そうしてその後刻晴様には、モンドやフォンテーヌ、スメールや稲妻、いずれのそれぞれ諸外国にでも移住をしてもらえたなら理想的で完璧だな。

 

___はんっ、お前達は本当に分かってないな?璃月港や璃月でクーデター騒ぎなどを引き起こしてみろ?そんな事をしてしまえば、何も関係のない璃月の一般人達や璃月を訪れている外国人達が混乱するだろう?璃月の情勢も相当不味い事になる。

 

___はんっ、あぁ、そうか、そうかそうか。だから混乱や動乱を最小限に抑えるための、その『人為的に彼女の粗を作り出してそこを突く』というわけか。

 

___あぁ、そうだ。お前達のようなそんな方法を取ってしまえば、璃月は色んな意味で浅くはないダメージを負ってしまう事に繋がりかねないぞ。だからこそ後先の事も考えて、俺達はその方法で席を降りてもらおうと考えているんだ。そしたら後はもう刻晴様が璃月の政治等に口出しさえしてこなければ璃月港で静かに暮らしてもらっても構わないし、もしくは璃月港を引っ越して璃月港の北の方にある軽策荘という田舎とかで穏やかに暮らしてもらうのも悪くはない。

 

___へぇ、そうかい。だがこれは確実にできるのか?正直かなり確実性に欠けると思うが?

 

___あぁ、それに関しては俺達“急進派”も考えてた。そこでその穴を埋める為、先日に強力な『助っ人』を迎え入れる事に成功したんだ。

 

___強力な助っ人だと?ふむ…、で、その助っ人とは一体誰なんだ?

 

___はっ、そう焦るなって。その助っ人の“彼女”は、今日この場にやってくる事になっている。

 

___なに?今日この場にか?

 

___あぁ、そうだ。もうそろそろじゃないか…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

___すみません…、遅れました……。えっと………。

 

 

 

 

 

 

___おっ、来たか?“彼女”が…!!

 

___うん?この声…、まさか……!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある日の璃月港。完全に闇夜に包まれたその時間帯の璃月の総務司。

そして薄暗い総務司のその一角。

 

 

 

 

 

「___もしかしてタイミングが悪かったでしょうか…?“急進派”や“強硬派”の皆さん、どうやらお取込み中のようで……?」

 

総務司にある普段使われる事が無く、完全な空き部屋と化して総務司の臨時の倉庫と化しているとある部屋。

とある者達の秘密の会合と化したその部屋の扉が開かれ、”彼女”の姿が現れる。

 

 

 

「___いやいやお待ちしていました!!“甘雨”さん…!!」

「___さぁさぁ、こちらにお座りください…!!」

「___う、嘘だろ!?“甘雨”だと…!?」

「___甘雨さんがお前達“急進派”共の仲間になったとでも言うのか…!?」

 

秘密会合にいたその者達は彼女の姿を見て、それぞれ希望を見出したかのような表情を浮かべる者達、強硬派に勝ち誇ったかのような表情を浮かべる者達。また予想が出来なかった助っ人の正体が甘雨であったことに目を見開いたり丸くする者達、そうして甘雨という強力な援軍にどこか悔しげな様子で急進派の者達を見つめる強硬派の面々と言った様々な反応を見せる。

 

「___ふふっ、そんなに驚かないでください。皆さん。隣、失礼します」

 

「はい、どうぞ」

 

「どうぞ、どうぞ。甘雨さん」

 

「はい、失礼しますね」

 

甘雨はどこか妖艶な笑みを浮かべながら、彼ら“急進派”の者達の誘導に従ってその一室へと入っていき、そして勧められるままに椅子に座る。

 

「あぁ、本当に夢みたいだ。まさか甘雨さんが我々の味方となってくれるなんて。今日、実際に甘雨さんがここに訪れるまで半分疑っていましたし」

 

「そうだな。甘雨さん、貴女のおかげで状況が一気に好転しそうです。あらゆる手段を講じてきましたが、どれも上手く行かなかったり、上手く行けそうにありませんでしたので」

 

「そうですね。このままいけば、我々急進派は完全に詰んでしまうところでした。本当に助かりました。礼を言わせてください、甘雨さん。ありがとうございます」

 

「本当にありがとうございます。甘雨さん。甘雨さんが合流してくれたことで、ようやく今代玉衡を引き摺り下ろせる算段が…、あの女、刻晴の“終わりの始まり”をようやく始める事ができそうです」

 

そうして甘雨が自分達の側に座ったのを確認した急進派の者達は改めて甘雨に向き直り、そうして感謝の言葉を伝える。

 

「___ふふっ、いえいえ…、お気になさらずに。それにしても“終わりの始まり”…ですか……」

 

また甘雨は自分に向けられた感謝の言葉を甘露な微笑を浮かべて受け取ると、小さく呟く。

 

 

 

 

 

「___そうですね、“終わりの始まり”ですね。確かに既にその一歩というのは、私が貴方達“急進派”と“強硬派”の会合に参加した事で踏み出しましたね…?」

 

そして甘雨はどこか“意味深な言葉”、“含みを持たせたような言葉”を彼らに聞こえない程の小さな声で呟くと、秘密会合に参加していた急進派や強硬派の彼らに向かって、少し怪しげな笑みを口元に浮かべたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

——————————————————————

Side:刻晴

 

「………」

(少し早すぎたかしら…?)

 

とある橋の上に立ち、そうして橋の手すりに両肘をついていた刻晴は頭上の青空を見上げる。

 

 

とある日の璃月港。晴天。雲一つない青に染まった大空。

 

璃月港の『緋雲の丘地区』と『チ虎岩地区』を結んでいる橋、その橋の上の手すりの方に刻晴は一人立っていた。

 

 

「………」

 

刻晴は青空を少しの間見上げ、そして再び視線を橋の手すりの向こうへと戻す。

 

 

今日は完全に休日。仕事等が一切無い、刻晴の完全たる休日。

 

だからこそ、刻晴が『いつかに交わした“とある約束”』を果たすには、今日という日は絶好の機会であった。

 

 

 

「……少し、遅いわね」

(立て込んでいるのかしら…?それとも急遽、緊急の仕事が入ったのかしら……?)

 

刻晴は手すり越しから背後を振り返って、『とある約束』の相手の人物が訪れることを今か今かと待ち望んでいた。

 

「……」

 

そして刻晴は再び空を見上げる。今度は空を眺めながらどこか寂し気な表情を浮かべる。

 

 

 

そうしてその時であった。

 

 

 

「___刻晴~!!ごめん~!!遅れちゃった!!」

 

「___申し訳ない、刻晴殿。時間に少し遅れてしまって」

 

「___っ!?」

 

その時、刻晴の背後から二人の男女の声が響き渡る。

 

その二人分の声を聞いた刻晴は思わず、まるで飛び上がるかのようにして振り返る。

 

「ふふっ、やっと来たわね」

 

そして刻晴は振り返った先にいる二人の人物を視界に収めると、思わず笑みを零す。

 

「___待っていたわよ。“胡桃”、それに“鍾離”さん」

 

「___えへへ、待たせちゃったね。刻晴」

 

「___待たせてしまったな、刻晴殿」

 

そうして刻晴の視線の先には、腰ほどまである茶髪の長髪にその髪を二つに結んだツインテール、頭に被った赤い梅の花付きの黒く古ぼけた山高帽のような帽子をかぶり、そうして背中に神に認められた者であるという証である“炎の神の目”を身に着けていた少女の“胡桃”と、ベージュのドレスシャツに茶色と琥珀色のウエストコートを着こなして全体的にエレガントな格好をし、そして背中側の方に“岩の神の目”を身に着けている男性の“鍾離”が刻晴に向かって微笑みを浮かべ、返事をしていた。

 

「ふふっ、別に気にしてないわ。じゃあ、さっそく行きましょうか、胡桃、それに鍾離さん」

 

「う、うんそうだね…!!行こう『万民堂』へ!!さぁ、出発~!!」

 

「あぁそうだな。では行くとしようか。『万民堂』へ」

 

そして刻晴は胡桃と鍾離の二人と共に『緋雲の丘地区』から『チ虎岩地区』、そうしてチ虎岩地区内にある『万民堂』へと向かい歩き始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「___着いたわ。『万民堂』へ」

 

「___そうだね~、刻晴。いやぁ、本当に楽しみ!!まさか、あの時のあの約束を果たしてくれるなんて……!!」

 

「___うむ、楽しみだな」

 

そうして璃月の大衆食堂、万民堂にと辿り着いた刻晴、それに胡桃と鍾離の一同。

 

「ふふっ、そう言ってくれて嬉しいわ」

 

刻晴は胡桃と鍾離のそんな彼らの反応を見て、思わず小さく笑みを零す。

 

そしてその時であった。

 

「___む…」

 

その時、鍾離は何かに気づいたかのように万民堂の出入り口に貼ってあった貼り紙の方へと視線を向ける。

 

「___うん?どうしたの、鍾離さん?…ありゃ」

 

そうして何かに気づき固まった鍾離の様子に気づいた胡桃が、同じように鍾離の視線の先へとその視線を向ける。

 

「あちゃ~、なるほどね……」

 

そして胡桃は何かに納得したかのようにして、小さく呟く。

 

 

そう、万民堂に貼ってあった張り紙の内容。それは……。

 

 

『本日臨時休業』

 

 

であったのだ。しかもご丁寧にも『万民堂のシェフのご都合により』とまで書かれている始末だ。

 

 

「う~ん……、まぁ仕方ないか……。うん」

 

そんな貼り紙を見た胡桃は少し残念そうな表情を一瞬浮かべるも、すぐに切り替えて諦めの表情と共に小さく呟く。

 

「___待って、胡桃、それに鍾離さん」

 

そしてその時、二人の前に立っていた刻晴が後ろに振り返って、そんな様子を見せていた胡桃と鍾離の二人に向かって声を掛ける。

 

「ん?どうしたの、刻晴?」

 

「どうしたんだ、刻晴殿?」

 

胡桃と鍾離の二人、そんな刻晴の呼び掛けに反応する。

 

「____ふふっ」

 

すると刻晴は微笑みを浮かべると、小さく二人の方に小首を傾げる。

 

そして次の瞬間には……。

 

「___実は今日の万民堂、完全に“貸し切り”にしてもらっているのよ」

 

「え…?貸し切り……?」

 

「む…?貸し切りだと……?」

 

刻晴は目の前の二人以外には聞こえないよう、周囲を見渡しながら小さく囁き、そうして刻晴のその言葉を聞いた胡桃と鍾離の二人は、思わず刻晴のその囁きに対して小さく声を上げる。

 

「えぇ、そう。今日の万民堂は“貸し切り”なの。だから今日の万民堂のお客さんは、胡桃に鍾離さんの二人だけよ」

 

すると刻晴はそんな二人の反応を見て、どこか悪戯っぽく微笑むと、二人に向かってそう尋ねる。

 

「え…?そうなの……!?うわぁ、刻晴、流石だな~!!」

 

「なるほどな。それは驚きだ」

 

胡桃は刻晴のその言葉に驚いた様子を見せると、次にはもう目をキラキラと輝かせて嬉しそうな反応を示す。そんな胡桃の反応に遅れて気づいた鍾離も、胡桃と同じように感心の様子を見せていた。

 

「ふふっ、そう言わないで頂戴。本当に感謝しないといけないのは、この“万民堂のシェフである彼女”なんだから。彼女の協力が無かったら、今日の万民堂は借りられなかったわ…。さて、ここで立ち話というのもなんだし、まずは中に入りましょうか」

 

「そうなんだ…。分かった、刻晴。まずは万民堂の中に入ろう」

 

「ほぉ、その彼女が協力してくれていたから、貸し切りに出来たのか…。うむ、そうだな。刻晴殿。まずは万民堂の中に入ろう」

 

そして刻晴はそんな胡桃と鍾離の反応に小さく笑みを零すと、万民堂の出入り口の扉を開けて店内へと入って行ったのであった。

 

 

 




次回はこの続き、完全な「万民堂回」となります。

なおお盆休みの投稿はこれで最後となりますが、これから更新ペースが遅くなるにしろ8月中はある程度更新ペースを維持できる見込みです。(今月中は、あと2回程度は投稿予定です)



それでは次回の投稿まで、また今しばらくお待ちください。
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