今回も前回の続き、そして遂に迎えた終幕。その終幕の始まり部分です。
なお、今回は本作品初のアンケートがあります。
(ちょっと終幕の随筆をする際に、一部の描写関連で悩んでいる所がありまして、折角ならばいつも読んでくれている読者さんの意見を聞いて見ようと思いました)
Side:刻晴
「……どういたしまして?」
刻晴のそんな言葉に、甘雨は一瞬だけ硬直しそれから数秒後首を傾げながらそう答える。そんな甘雨が可愛らしくて思わず刻晴がクスッと笑ってしまうと、その笑みを見た甘雨がまた不思議そうに首を傾げる。
「ふふっ、なんでもないわよ。ただ、私は甘雨の事を最後まで信頼しているし、そして私の事を最後まで信じてくれている甘雨の事がとっても嬉しく思うわ…。それだけよ」
刻晴はそう言うと、また優しく微笑んでみせる。それはほんの僅かではあるが、だが確かな笑顔だった。
「___っ!!」
その刻晴の言葉、そして刻晴のその笑顔に甘雨は一瞬だけ目を見開き硬直すると、すぐに数秒後に今度は顔を赤くして恥ずかしそうにモジモジし始める。まるで年頃の可愛らしい乙女のように頬を赤らめるその姿は、普段のキリっとしていて落ち着いた様子は見る影もない。
「ふふっ…」
「そ、そうですか……。そうですか……」
そんな甘雨の様子を微笑ましく思いながら刻晴が見守っていると、甘雨は顔を真っ赤にしながら恥ずかしそうにモジモジし続けながらそう答えるのであった。
「私は信じるわ___」
「………」
刻晴はそう言いながら、再び目の前の夕日を眺める。そしてそんな刻晴を甘雨がチラリと見やる。
「___例え甘雨が“反刻晴派”のメンバーであったとしても、それは何かの間違い。それか私のため、私を守るために甘雨があえて反刻晴派についたと。決して甘雨は私を裏切るなんて事はしないという事を」
「___っ!?そ、それは…!?」
刻晴がそう言うと、甘雨はまるで驚いたかのような表情を見せ、そして小さく息を吞み込む。
「………」
甘雨は口を開かない。まるで刻晴の言葉を待つかのように、刻晴の次の言葉を待っているかのように。
「私は信じるわ……。甘雨との付き合いは長いとは言い切れないけど、ほとんど常に私の傍らに控え、そうして支えてくれた。…それに___」
そうして刻晴はそこで一度言葉を区切ると再び目の前の夕日を眺めると、そのまま静かに口を開く。
「___覚えてるかしら、甘雨?いつだったかしら…。いつかの夜遅くの月海亭、そこで甘雨に話した話。甘雨、貴女への憧れ……」
「っ…!?」
刻晴はそう言うと、甘雨はハッと表情を僅かに変化させる。
「___覚えていますよ……。勿論です」
「ふふっ、そう?ありがとう……」
刻晴のその言葉に、甘雨がクスッと笑いながら答えると刻晴もそれにつられて笑う。そしてそのまま刻晴は再び口を開く。
「…甘雨のような“立派な人”になりたい…。私を憧れさせた貴女……。叔父様の頃から常に業務や仕事を、そしてそれらを通じて璃月や璃月の民達の事を自分なりに考え、璃月の事を第一に考えながら七星達の秘書として毎日奔走してきた“立派な人”の甘雨……」
刻晴は夕日を眺めながら、言葉を続ける。
「___そんな貴女、貴女は決して私の事を裏切る事は無いし、私の事を邪険に思っているなんて事は無い。月海亭や七星八門で流れているそんなふざけた噂、私からすればそんな噂は根も葉もないただの出鱈目。私の名誉だけでなく、甘雨の名誉や誇りを傷つけるような嘘でしかないわ。だから甘雨」
「っ、刻晴さん…」
刻晴はそこで一度言葉を切ると、そのまま甘雨に向き直り、そして真っ直ぐに彼女の事を見つめる。
「…私は貴女の事を信じているし、これからもずっと信頼する。月海亭で私達七星達の秘書として働いてくれる貴女であるように、私は璃月七星の玉衡としてその役目を終える最期まで、貴女の事を信頼して、そうしてその役目も全うしきってみせると、今ここで誓うわ」
「っぅ…!?」
刻晴はそこで言葉を区切って、真っ直ぐに甘雨の事を見つめる。甘雨の瞳が揺れ動く。それはまるで動揺を隠せずにいるようで、甘雨は驚いたように刻晴の事をただじっと見続ける。
そうして二人の間に少しの沈黙が訪れる。甘雨は何も答えないし、刻晴もまた何も言わない。ただただ目の前の夕日を眺めるだけ……。
「___分かりました。刻晴さん……」
そしてしばらくしてから、先に静寂を破ったのは甘雨であった。
先程までと同じように頬が赤く染まっており、さらにその表情が恥ずかしさによるものか耳まで赤くなっているものの、それでも普段通りの落ち着きを取り戻したように真剣な表情で刻晴の事を見つめると、彼女はゆっくりと刻晴に向かって口を開く。
「___刻晴さん。貴女は既に、とても“立派な人”です」
「___えっ?」
甘雨は真剣で真っ直ぐな瞳で刻晴の事を見つめ、そう言う。
「___刻晴さんの、貴女のそういう所。それは既にもう歴代玉衡、いえもしかしたら歴代璃月七星の中でも随一かもしれません。いえ、随一です。もう刻晴さんの叔父様、先代玉衡様を越えているかもしれません」
「___えっ?か、甘雨?」
甘雨のそんな突然の言葉に刻晴は思わず目を見開かせる。
「___私に対してとなりますが…。刻晴さんの、貴女の自らの意志を最後の最後まで信じる。例えどのような状況に陥ってしまっても、その意志は決して揺らいでしまうことはなく、最後までその意志を貫き通す。それは、本当に私が見てきた中でも随一です。そしてその意志の力、それは今の“天権”、凝光様と肩を並べる程だと思います」
甘雨はそう言って優しく微笑む。その笑みに嘘偽りはなく、それは本当に心からそう思っていると感じさせる言葉であった。
「___っ!?」
甘雨のその言葉に刻晴は思わずドキリと胸を高鳴らせる。一瞬、何を言われたのか分からず、そして理解するまでに数秒の時を有したが、やがて刻晴は甘雨の言葉の意味を理解し始めると次第に心の中が何だか不思議な気持ちで満たされていく。
「___あ、ありがとう。か、甘雨…」
そうして刻晴はまるで照れ隠しをするかのようにコホンッと咳払いするとそう礼を言い、そしてそのまま再び夕日を眺める。
「なんだか少し気恥ずかしいわね……」
刻晴はふとそんな事を呟く。だがその表情はどこか嬉しそうで、またそんな刻晴の様子を見て甘雨もまた嬉しそうに微笑む。
「そうですね…。刻晴さん。もうすぐ、夕日が完全にあの水平線に沈みます……」
「えぇ、そうね。甘雨」
甘雨と刻晴の二人は、静かに沈みゆく夕日を眺める。甘雨のその言葉を合図にしたかのように、より一層静かに沈みゆく夕日……。
「………」
甘雨はただ黙ってその夕日を眺め続ける。その表情には穏やかな笑みが浮かび、そしてどこか嬉しそうに思えるようなそんな表情だ。
「………」
そして刻晴も黙ってその夕日を見つめ続ける。刻晴のその表情も穏やかな笑み、そうしてどこか懐かしさで胸が一杯であるかのようなそんな笑み。かつての頃の刻晴、刻晴の叔父である彼が生前の頃であり、そうしてその彼と幼き刻晴が共にこの夕日を眺めていた時の事を思い出しているかのような、そんな表情だ。
「……」
「……」
そうして二人はその夕日が水平線に沈みきるまでただ黙って静かに見つめ続ける…。
「___夕日が完全に沈んだわね…」
そして刻晴がそう言ったのは、それから数分後の事であった……。
「はい、そうですね。刻晴さん……」
甘雨も同意するように、頷きながらそう答える。
「___ようやく、この日。この時、この瞬間が訪れました」
その時、甘雨は静かに、だが力強くそう呟く。
「あら?どうしたのかしら?甘雨、急に……」
甘雨のその言葉に刻晴が首を傾げて、そう問いかける。すると甘雨は刻晴に向かって微笑みながらこう答えた。
「いえ……。ずっと待ち焦がれていたこの時が訪れたと、そう思っただけです」
「?一体それはどういう意味かしら……?」
甘雨が意味深な言葉を口にするので、思わずそう聞き返してしまう。
「ふふっ、それはですね___」
甘雨は力強い瞳で刻晴の事を見つめながら、そうしてそっと息を吸い込んでから再び言葉を紡ぐ。
「___刻晴さん。もう貴女を一人にさせない。これ以上、刻晴さんを孤独な思いをさせず、そして刻晴さんに悪意を持つ者達に終止符を打たせる時が来た、と言う事です」
「っ!!」
甘雨の言葉に、刻晴は思わず息を吞む。彼女のその表情には強い決意が見て取れる。
「___刻晴さん。ご同行をお願いできますでしょうか?」
甘雨は優しい笑みを浮かべながらも、真剣そのものと言った表情で刻晴の事を見つめながらそう言う。
「えぇ、勿論」
そんな甘雨に対して、刻晴は力強く頷いてみせる。
「ありがとうございます。刻晴さん。それでは早速、“群玉閣”へと向かいましょう」
「群玉閣?」
「はい、そうです。刻晴さん。実は今日、“天権”の凝光様より刻晴さんに大事なお話がございます」
「凝光、それに話ね…」
甘雨のその言葉に、刻晴は何かを考え込むような仕草を見せる。
「話と言うのはもちろん、‘今まで話せなかった事’。この‘璃月や璃月港の裏で起きていた真実について’です」
「‘璃月や璃月港の裏で起きていた真実について、ね’…。私が今まで聞かされなかった事ね」
「はい、そうです。刻晴さん。そうして“これからの事”。そう……“今後についての話”、“今この璃月港の裏で起きてしまっている事態を終息に導いていくための話”、そのような話の事です」
甘雨は静かに微笑みながらも、だが真剣な眼差しで刻晴のことを見つめる。それはまるで決意のこもった眼差しで、その瞳にはどこか力強い光を感じさえする程だ。
「璃月港の裏で起きてしまっている事態を終息…ね……」
そうして刻晴は甘雨のその言葉に対して、一つ一つゆっくりと嚙みしめるようにそう呟く。
「えぇ、そうです。刻晴さん……」
甘雨は刻晴のその言葉にそう答えると、そのまま璃月港の方を静かに見つめて口を開く。
「刻晴さん…。今まで本当に申し訳ありませんでした。不安にさせてしまいまして……。私は刻晴さんにこの出来事を伝えようとしましたが、その前に凝光さんに口止めをされてしまいました。また独断で事の実情や真相を探るため、私は反刻晴派側に属する秘密の人間であると周りの人達から認識されるために刻晴さんから離れて貴女の悪口をこっそりと陰で言ったり、私の知り合いに協力してもらって私が密かな反刻晴派側の人間であるという噂を璃月港に流させたりしてきました」
「___っ!?」
甘雨のその突然の告白に刻晴は目を丸くして驚く。そんな刻晴の事を見つめると、甘雨はさらに言葉を続ける。
「___ですが、それもこれでもうおしまいです。凝光様は既に刻晴さんを巡るこのような状況やとても複雑な事態を終わらせるための策略を密かに、そうして大胆にも進めてきました」
「凝光が…?」
「はい、そうです。刻晴さん」
甘雨は刻晴のその言葉に静かに頷く。
「璃月港では既に刻晴さんに悪意を持つ“彼ら”を捕縛、最終的に逮捕していくための凝光様の策略が着々と進行しています。つまりは璃月港の裏で起きていた事態を終息に導くための策がもう既に凝光様の手によって実行されており、それの最終段階に入ろうとしているのです」
「っ!?」
甘雨の言葉に、刻晴は目を見開く。
「そうだったのね…」
(既にそこまでしていたなんて……)
刻晴はそう呟くと、何とも言えなさそうな複雑な表情を浮かべる。自分の知らない所で自分を巡って凝光や甘雨達は、反刻晴派を裏から操っていた者達と激しい攻防を繰り広げていた事を知り、刻晴は複雑そうな表情を見せる。
「ようやくおしまいです…。この日が訪れるまで本当に大変でした…。反刻晴派の裏に潜んでいた“過激派”、“強硬派”、“急進派”のそれぞれ刻晴さんを排除しようしたり害そうと企てた者達の特定、彼らの元に潜り込んで彼らの行動計画や悪事の証拠を掴むための潜入調査、そして凝光様の命令で彼らへの情報操作や誘導など、本当にとても手間取ってしまって大変でした」
「そうだったのね…。ありがとう、甘雨。私のために悪意ある策謀に対して立ち向かい、そしてここまでの危険を冒してまでそのようなことをしてくれた貴女に、本当に心から感謝するわ…」
刻晴はそう言うと、甘雨に向かって優しく微笑みかける。その言葉に甘雨も静かに頷いてみせる。
「いえ…。私はただ璃月七星秘書として、そして凝光様、そうして刻晴さんの秘書としての責務を果たしただけですから……」
甘雨はそう謙遜するように言いながら、どこか気恥ずかしそうに照れ笑いを浮かべる。
「えぇ、分かったわ。甘雨。なら、今から行きましょうか。凝光が待つ群玉閣に」
刻晴は甘雨の照れ笑いを優しく見つめると、今度は甘雨の目を真っ直ぐに見つめてそう言ってみせる。
「はい、刻晴さん。行きましょう。今群玉閣には、“凝光さん以外も刻晴さんの事を待っている人達”がいますので」
「あら、そうなのね。分かったわ、甘雨。なら、凝光やその人達も長い間待たせるわけにもいかないから、早く行かないとね」
「はい、そうですね。刻晴さん。それでは、早速行きましょう。群玉閣へ」
そうして刻晴と甘雨はお互いに見つめ合ってそう言うと頷き合い、そしてそのまま歩き始めたのであった。
「………」
(いよいよね…)
刻晴はどこか緊張したかのような表情を浮かべながら歩みを進める。これから一体どのような話を凝光からされる事になるのか、その事を想像しながら思わず緊張に息を飲む。
「刻晴さん?緊張なさっているのですか?大丈夫ですよ。そんなに心配せず、そして不安にならないでください」
「えっ…!?あっ、あぁそうね。甘雨の言う通りね。えぇそうよ、甘雨」
そんな刻晴の様子を見てか、甘雨がそんな気遣いの言葉をかけるので思わず動揺しながらもそう答える。
すると甘雨は可笑しそうにクスクスと笑うと、こう言葉を続ける。
「ふふっ……ありがとうございます」
そう言って微笑むその表情は本当に楽し気で、またどこか悪戯っぽいようなそんな顔にも見える程である。何だか、刻晴は甘雨にからかわれているかのようなそんな錯覚を感じてしまう。
「___ふっ」
(まったく……)
そう思いながらも刻晴もまた可笑しくなってクスクスと笑う。
日が完全に落ちて星空が煌めく中の璃月港。その璃月港を見守るかのように璃月港の上空にて鎮座する群玉閣。璃月七星“天権”、凝光の空中宮殿と言っても差し支えない群玉閣、その群玉閣内を刻晴と甘雨は共に足を進めて行く。
「___凝光、来たわよ。私に話ってなにかしら」
「___凝光さん、刻晴さんをお連れしました」
そして刻晴と甘雨の二人は凝光が待つ彼女の主室。その場に足を踏み入れる。
「___あら?」
(あれっ?“彼女達”って…?)
そうしてその時、刻晴は目を丸くする。彼女にとって意外過ぎる人物がその場にいた。
「___ようやく来たわね……。刻晴」
そこには群玉閣の主、璃月七星の天権“凝光”と___。
「___ふふっ、待っていたわ。甘雨、それに刻晴」
「___おぉ、来たか。甘雨先輩、それに刻晴殿」
___凝光の斜め後ろに“水の神の目”と“炎の神の目”を身に着けた‘刻晴の顔見知りの二人’が、不敵な笑みを浮かべながら彼女の傍に控えるようにして立っている姿がそこにあったのであった。
___これが、それか?
___あぁ、そうだ。俺達はこれに細工を施す。そうすれば、他の奴らとの細工も相まってあの女が承認したこの案件は後に問題点が発覚して中止、そのまま凍結となる。またそれに関する責任問題が発生するだろう
___ほう?そうか、そうか。いよいよというわけか…
___あぁ、ようやくだ。これくらいではあの女、刻晴に小さなダメージくらいしか与えられないかもしれないが、だが確実だ。まずはあの女を失脚させる第一歩というわけだ
___ははっ、そうかそうか!実に面白い…。いよいよ始まるという訳だな……
___あぁ、そうだな。“甘雨”さんの協力を取り付けられて本当に良かった。あの人のおかげで刻晴の動きが筒抜けとなったのは本当に大きいからな
灰雲に染まるとある日の璃月港、暗雲が立ち込める璃月港内のとある一角。七星八門の総務司が管理しているとある一室にて、複数の男達によるそんな不穏な会話がひっそりと交わされていた。
「___よし、これで添付されていた資料の入れ替えも完了だ。完璧な偽造だな」
「___あぁ、これであの女が出した命令書。この命令書の内容に従い、そうして細工を施した添付されている資料の通りに事を進めて行けば…」
「___いずれトラブルに直面、期限内にその仕事を終えられずに刻晴に対して、それなりの悪影響を与えられるはずだ。そうなればいずれは、あの女の失墜にも繋がる事だろう」
「___ははっ。あぁ、楽しみだな。数日後が…。騒ぎになって忙しくなるかもしれないが、その分。俺達の成果も出るという訳だ」
「___あぁ、そうだ。楽しみで仕方ない……」
「___そうだな。はやく、あの女の焦った顔を見てみたいものだ…」
男達はそう物騒な事を口にしながらほくそ笑みながら笑い合う。彼らは月海亭、そして総務司を始めとする七星八門の職員達であり、そうして“刻晴に悪意を持つ者達”、彼女の失脚を目論んでいる3つの派閥の内の一つ、“急進派”の者達である。
「___ははっ」
「___ふっ」
「___さぁ、仕込みは終わった」
「___あぁ、さっさとここから離れよう」
「___そうだな、行こう」
「___離れよう、ここから」
男達は満足そうであり、それでいてとても愉しそうな様子でそう言い合うとそうして部屋を出ようとする。
そして丁度、その時であった。
「___全員!!その場から動くな!!」
その時、部屋の扉が勢いよく開け放たれて、同時にそんな声が部屋の中に響き渡る。
「なっ…!?」
男達は驚愕の表情でその声のした方へと視線を向ける。
「急進派!!貴様らの企みもここまでだ!!」
「お前達!!遂に一線を越えたようだな!!」
「現行犯だ!!言い逃れなどさせないぞ!!」
そこにはなだれ込むようにその部屋に入り込んできた槍や剣を手にしていた千岩軍の兵士達、十数名にも及ぶ程の兵士達がその部屋の中に入り込んで来て男達へと勢いよく槍や片手剣の切っ先を向け、そう強い口調で言い放つ。
「なっ…!!ま、待て!!」
「こ、これは、ご、誤解だ…!!」
「待ってくれ、落ち着いてくれ…!!」
「黙れ!!全員、動くな!!」
「お前たちの動きは全て、こちらで把握している!!そんな嘘を言ったって無駄だ!!」
「大人しく観念しろ!!全員この場で捕縛、逮捕する!!」
「そうだ!!抵抗は無駄だ!!大人しく跪け!!」
「そうだそうだ!!お前達全員をこの場で逮捕する!!」
「詳しい話は千岩軍の尋問室でじっくりと聞いてやる!!」
千岩軍の兵士達は慌てた様子の男達へとそう強い口調で言いながら、またその言葉に応じるようにその部屋の出入り口から更なる兵士達が次々に現れ、そうして部屋に入り込んで来た。
そうしてあっという間にその部屋は千岩軍の兵士達によって取り囲まれていき、そうして半包囲される形となってしまう。
「くっ……!?」
「くそっ…!!」
「お、おい!!待て!!」
「ま、待て!待ってくれ!!」
「お、俺は違う!!俺は関係ないんだ!!」
「お、俺も!俺もだ!!」
男達は慌ててそう叫ぶが、しかし千岩軍の兵士達はそんな男達のそんな言葉に聞く耳を持たずに剣や槍を向け続ける。
「黙れ!!お前達が刻晴様に対して、悪意を持って何かしらの行動を起こそうとしていた事は調べがついているんだ!!大人しくしろ!!」
「往生際が悪いぞ!!大人しくしろ!!良い加減に自分達の罪を認たらどうなんだ!?」
「大人しく膝をついてそのまま腹ばいになれ!!お前達を捕縛、そして連行する!!」
千岩軍の兵士達はそう言い、自分達の槍や剣を男達へと向けながら強い口調でそう言い放ち、一歩また一歩と少しずつ距離を詰めていく。
「お、俺達が何をしたっていうんだ!?」
「な、何でこんな事に!?」
「ま、待ってくれ!!」
そうして追い詰められつつある男達は悲鳴を上げるようにして叫ぶ。
「___ま、待て!!こ、これは甘雨さんの命令で、その資料の入れ替えを行っただけなんだ!!俺達は何も悪くないんだ!!何か勘違いしているんじゃないか!?その悪意を持っている者達と言うのは、俺達じゃない!!他の者達なんじゃないのか!?」
その時、一人の男が一歩前に出ながら叫ぶようにそう言う。
「___そ、そうだ!!俺達は甘雨さんの指示で動いただけなんだ!!」
「___確かに資料の差し替えは行ったが、それは彼女の指示だ!!もしかしたら、俺達の前にここを訪れた奴とかじゃないのか!?」
「___そうだそうだ!!あの人の指示に従って動いていただけだ!!お前達の言う、刻晴様に悪意を持つ者達と言うのは我々じゃない!!」
「な、なに…?」
「甘雨様の指示だと…?」
「七星秘書の命令…?」
男達はそう必死にそう言い募る。そしてそんな男達の言いようを予測していなかったのか千岩軍の兵士達は一瞬動揺し、そうしてたじろぐ様子を見せるがすぐさま訝しむような視線を男達へと向け直す。
「___それは本当か?お前達」
そうして男達を半包囲する千岩軍の兵士達、その千岩軍の部隊の隊長と思われる男が一歩前に出ながら男達のその必死な様子に問いかける。
「あ、あぁ!!そうだ!!俺達は何も悪くないんだ!!」
「ほ、本当だ!!嘘なんか言っていない!!どうか信じてくれ!!」
「今言った事は全部本当の事なんだ!!信じてくれ!!」
「た、頼むよ!!信じてくれよ!!ならば甘雨さんに確認を取ってみてくれ!!あの人なら俺達の事に関する全ての事情を証言してくれるはずだ!!そうすれば分かる事だ!!」
「そうだそうだ!!甘雨さんに確認を取ってくれ!!俺達は悪くない!!俺達は関係ない!!」
「俺達は嵌められたんだ!!真犯人は別にいる!!俺達なんかに構っていたら真犯人や本当の黒幕を逃がしてしまう事になってしまうぞ!?何やっているんだ!!」
必死な様子で口々にそう訴える男達。そんな彼らの言葉に千岩軍の兵士達は少し戸惑うように顔を見合わせる。
「…っ」
「…な、なぁ、本当にこの男達で間違いはないんだよな?」
「そうらしいが…」
男達のあまりにも必死な様子。その様子に一部の千岩軍の兵士達は疑問の声、また困惑の表情を浮かべる。
「あぁ、本当だ!!頼むから信じてくれ!!」
「信じてくれ!!これは冤罪だ!!」
「そうだ!!俺達を捕縛するならその前に、まずは甘雨さんに確認を取ってくれ!!」
「そうだそうだ!!確認してくれ!!俺達は悪くないんだ!!そして真犯人を捕まえてくれ!!」
そんな千岩軍の兵士達、困惑の表情の彼らに男達は訴えるように声を更に上げ続ける。
自分達を半包囲する千岩軍の兵士達、迷い惑わされているこの者達をあともう少しで押し切り、そうして自分達の味方となった有力な人物である甘雨の耳に入りさえすれば、なんとかぎりぎりでここに駆けつけてくるであろう彼女のおかげで自分達が無実であるとする事ができるはずだ。
しかし、そんな希望的観測を抱いた男達に対し___。
「___“先輩”がそのような事、そのような指示を下しただと…?ははっ、笑えるな……。うん、これは『虚偽申告罪』も追加だな」
「___っ!?」
突然、そんな声が部屋の中へと響き渡る。その声に男達は息を飲む。そして恐る恐る声のした方へと視線を移す。するとそこには___。
「___いい加減、その戯言はやめにしたらどうなんだ?」
___そう言いながら、鋭い視線を向けて男達を睨みつける“炎の神の目を身に着けていた少女”の姿がそこにはあった。
「なっ…!?だ、誰だ!?お、お前は……!?」
「だ、誰だ!?」
「何者だ!?」
突如、千岩軍の兵士達の後ろから現れ、男達にそう言ったその人物。そうしていきなりのその出来事に動揺し、そう叫ぶように言いながら兵士達に半包囲されていた男達は驚きと戸惑いに満ちた表情を浮かべる。
「私か?ふふっ、私は“煙緋”。璃月港の法律家さ。同時に、今の私は凝光殿と契約を結んだ関係で天権直属の“外部特別顧問検察官"と言う身分でも、ある。…さて___」
そんな彼らの様子に炎の神の目を身に付けていた少女、“煙緋”はニヤリとした笑みを浮かべる。
「___噓八百を並び立てては玉衡殿を陥れようとし、あまつさえ彼女を排除せんと直接的にも間接的にも害そうとしていたその罪。今のお前達には璃月を統治する七星の内の一人である刻晴殿を嵌めようとし、またそれに伴って璃月の秩序を乱そうとした容疑により、『国家反逆罪』や『国家転覆罪』を始めとする多数の重大な罪に問われているわけだが。お前達、何か弁明はあるかね?」
___そして煙緋は改めて鋭い視線を向け、そうして威圧感を感じさせる笑みを浮かべながらはっきりと男達にそう告げたのであった。
次回、終幕の続き、そして刻晴過去編の最終回(予定)です。
万が一、最終回が長すぎた場合は前半、後半。もしくは前編、中編、後編と分割し、前半か前編の投稿後の数日後に続きの投稿を行うといった感じで投稿をしたいと思います。
(因みに現時点でも既に、最低でも二分割する可能性が高まってきています。)
そして前書きで述べましたアンケートの件に関してですが、アンケートの内容を端的に言えば『最終回は璃月キャラをどこまで登場させるか』という事です。
当初の予定では、過去編の主要メンバーである『刻晴・甘雨・夜蘭・煙緋・凝光』に加えて刻晴とそれなりに関わった往生堂組の胡桃か鍾離のどちらかを登場させて最終回を作成しようかと思いました。
ただ、今の時点ですとやはり往生堂組は往生堂組なのだから先の5人に加えて『胡桃・鍾離』の2名、また刻晴の過去編で実際に登場した『香菱』の計3名を交えて描写すべきだろうと考えており、またそこから更に一応は条件を満たした(刻晴が過去に現場を知るためにお忍びでアルバイトや労働現場に出向いた際に関わりを持った、もしくは今までの胡桃や鍾離のセリフで言及された)キャラである『行秋・嘉明・雲菫』の3名をも出してもいいのではないかと考え悩んでいます。
作者的には現状は『胡桃・鍾離・香菱』の3名を登場させようかと思っていますが、ただ折角なら先の『行秋・嘉明・雲菫』の3名をも追加させたいなとも考えており、それならば当初案も含めて読者の皆さんにどうするか決めてもらおうかと考えました。
アンケートの結果で特にこの後の展開やエンディングの方に変化が出るという訳ではありませんが、最終回の投稿がアンケートの結果で多少早くなったり、遅くなったりします(特に行秋に嘉明、雲菫を登場させる場合はまだ直接的な登場はしていないため、まずは登場させる前に改めて下調べやそれぞれの人間関係等の確認を行う必要がある為です)。
アンケートの選択欄はそれぞれ、
『①当初案』であれば胡桃か鍾離のどちらかを登場させ、次回の投稿は取り敢えず数週間後辺り(3週間後から4週間後辺り)になる見込み。
『➁現在案』であれば『胡桃・鍾離・香菱』を登場させ、次回の投稿は来月11月の下旬の半ば辺りをめどに投稿する見込み。
『③六名案』であれば『胡桃・鍾離・香菱・行秋・嘉明・雲菫』を登場させ、次回の投稿がおそらく12月の中旬始まり前後辺りに投稿できる見込み。
以上の通りになります。
アンケートは今月の20日の日曜日までは投票できるようにしておきますので、期間中に興味があれば投票してくれると幸いです。
それでは次回の投稿まで、今しばらくお待ちください。
—————
追記1
・文章表現におかしいところがありましたため、修正を行いました。(そうして威圧感を感じさせる“を”笑みを浮かべながらはっきりと男達にそう告げたのであった。→そうして威圧感を感じさせる笑みを浮かべながらはっきりと男達にそう告げたのであった。)
最終回の登場キャラ案はどれにしますか?
-
①当初案
-
➁現在案
-
③六名案