名前を無くした、天権の懐刀   作:久遠とわ

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とんでもない分量に達してしまい(約15,000文字程度)、なんとかキリのいい所まで描けたのでとりあえず投稿。

まず活動報告に投稿しました『「刻晴過去編」に関する意見の募集』にて意見を投稿してくださいました“蒼矢”さん。また諸事情(匿名希望、また今まで通報をうけてしまった関係や警告などを受けてしまっていたの関係等)により、メッセージの方で直接意見等をしてくださいました方々も、本当にありがとうございます。

皆さんのご意見と私の考え(作者的には刻晴過去編は分離したくなく、今の刻晴過去編を終わらせてから瞬詠が出てくる次の章に行きたいという考え)を統合し、そうしてそれぞれの意見を調整して均衡を図ってみた結果、最終的にはまず「刻晴過去編は分離しない」という事に決定。
また今月から「現在進行中の7幕を2回投稿するたびに、瞬詠が登場し始める次の幕である第8幕を1回の頻度で投稿」していきたいと思います。

仮に今まで通りに1か月に3回投稿できるペースであった場合であれば、その時のおおまかなスケジュールとしましては「上旬と中旬は既存の7幕刻晴過去編、下旬は次幕である8幕瞬詠過去・現在編」と投稿して良ければと思います。



それでは前回の全てが明らかになった後からの続きです。





_ありゃ、鍾離さんに気づかれた

Side:胡桃

 

「………」

「………」

「………」

「………」

 

重苦しい空気が漂う。行秋や嘉明、雲菫に香菱達は押し黙ったままだった。

 

 

甘雨と煙緋の話を耳にしていた行秋が語った恐るべき陰謀、“璃月港転覆計画”。

 

 

その計画が着実にと進行しつつあるのを目の当たりにしてしまった以上、彼らの顔色は良くない。

 

行秋や雲菫達はそれぞれ程度に違いはあれど、それぞれ顔を青ざめさせて固まってしまっている。

 

 

「………」

 

そうしてあまりにも重苦しい空気の中、鍾離は独り行秋や嘉明、雲菫に香菱達の顔を見つめながら険しい表情を浮かべる。

 

璃月港は完全に彼らの術中に陥ってしまっている。

 

璃月衆人達が築き上げたこの城は彼らの掌の上で踊らされ、そうしてその運命は風前の灯火のように崩壊しかけている。

 

彼らの瞳はまだその光を失ってはいないが故、鍾離はまだ彼らが諦めていないという事は分かる。

だがしかし、それ以上にあまりにも絶望的な状況すぎて彼らは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていた事から、このままではそう遠くない内に彼らの心は折れてしまうという事が分かった。

 

 

「………」

 

鍾離は何げなく璃月港の空を見上げる。

 

 

璃月港の空は彼らの心を映し出す鏡のように暗く曇っていた。まるで雷雲のような厚くて黒い雲に璃月港の空全体が覆っていた。

 

 

 

「………」

 

鍾離は表情を変えることなく、そのまま顔を険しくさせたまま璃月港の空を見上げる。

 

 

「……」

 

そしてそのまま彼が静かに目を細めては、もう一度行秋や雲菫達の方に視線を向ける。

 

 

 

「………」

「………」

「………」

「………」

 

彼らは依然として言葉を失ったまま、ただその場で立ち尽くして呆然と沈黙をしていた。

 

 

 

「……。はぁ…」

 

鍾離は思わずため息を溢し、そうして今度は彼の真横に立っていた“彼女”の方に視線をむける。

 

 

 

「___むっ、堂主殿…?」

 

鍾離は真横に立っていた彼女、“胡桃”の姿を見て思わず静かに呟く。

 

 

 

「_すー、はー、すー、はー…」

 

胡桃は目を瞑り、拳を握ってその肩を震わせながら、自身を落ち着かせるように目を閉じて深呼吸を繰り返していた。

 

「すー、はー。……っ」

 

そしてゆっくりと胡桃は目を開けていき、静かに沈黙している行秋や雲菫達の方に視線をやっていく。

 

「………」

「………」

 

そうして胡桃は彼女の真横に立っていた鍾離の方に視線をやり、そうして鍾離も胡桃の方に視線を向けていた事で互いの眼、お互いのまなざしをぶつけ合わせあう。

 

「………」

「堂主殿…」

 

鍾離は思わず胡桃の名を呼ぶ。行秋や嘉明、雲菫に香菱達とは違い吊り上がったその眼つき、瞳の奥底にあるのは深い決意であり、彼女の目を見れば一目瞭然だった。

 

 

 

 

 

「___なぁに、鍾離さん…?ふふっ、私が諦めた、とでも思った?」

 

「_っ!?…はっ」

 

 

 

胡桃はニッと、不敵に笑う。そしてそんな胡桃の笑みにつられるように、鍾離も静かに笑う。

 

「あぁ、いや、すまないな…。堂主殿。行秋殿達や雲菫殿達がこのような状態であったので、てっきり堂主殿も同じような状態と思っていたのだがな…」

 

「うわっ、酷くない?鍾離さん。往生堂の堂主たるこの私が、諦めてしまうとでも思ったの?」

 

「ふっ…。すまないな。だが今回の場合は、往生堂や堂主とは関係ないように思えるが?」

 

「ふふん、そんな細かい事は気にしない、気にしない。どのみち璃月港が滅茶苦茶になったら、往生堂も大変なことになるわけだし。まぁそれに、そんな事よりも大事な事は___」

 

胡桃はそう言うと仁王立ちし、改めて不敵に笑いながら言葉を紡いでいく。

 

 

 

 

 

「___その彼らの企みを阻止する事、私達で刻晴にまつわる危機を完全に終わらせて、そして私達の手で終止符を打つ事だよ。鍾離さん。でしょ?」

 

胡桃は腕を組みながらそう言うと、そのまま不敵で余裕の笑みを浮かべたまま鍾離に問いかける。

 

 

 

「_ふっ、そうだな。その通りだ。胡堂主殿、いや胡桃殿。大事な事は胡桃殿の言う通り、この騒ぎに終止符を打ち、そうして俺達の大切な友人である刻晴殿の危機、それを終わらせる事だ」

 

鍾離は胡桃の力強い言葉に頷き、そうして彼も彼女と同じように不敵で余裕の笑みを口元に浮かべてそう語る。

 

「ふふっ、そうだよね…。全く、行秋や嘉明、雲菫に香菱達はさぁ……」

 

胡桃は鍾離の答えに満足そうに微笑むと、視線を行秋達や雲菫達の方に向けて呆れた様子でそう呟く。

 

 

 

 

 

「___ほらっ!!ボーっとしない!!いつまでも!!固まらない!!」

 

「_わっ!?」

「_おっ!?」

「_うわっ!?」

「_きゃっ!?」

 

胡桃は思いっきり彼ら一人一人の背中をバンッ!!と強く叩く。

 

「ふ、胡桃!?」

「胡桃!?」

「胡桃さん!?なんですか!?」

「び、びっくりさせないでよ!!胡桃!!」

 

そうして行秋、嘉明、雲菫に香菱の四人は胡桃に背中を叩かれて思わず驚き、そして胡桃の方に視線を向ける。

 

「えへへ、ごめんね、ごめんね。そんな鳩が豆鉄砲を食ったような顔になるとは思わなかったよ~。でもさ、今のは皆が悪いんだよ?」

 

胡桃は笑いながら行秋や嘉明、雲菫に香菱の四人に対してそう言うとそのまま続けて語り続ける。

 

「行秋、嘉明、雲菫、香菱。そもそも私達の目的って甘雨や煙緋が語っていた彼ら、‘先に居る者達’が計画した“璃月港転覆計画”を阻止する事でもなければ、迫りくる璃月港の動乱や戦乱の危機を食い止める為にここにやって来たわけじゃないでしょ?ちゃんと思い出して、私達がここに集まった理由を。今のそれらを食い止めて何を成し遂げたいのかという事を」

 

「えっ、この騒ぎを止めるのではなく…?あっ……」

「はっ…、何を成し遂げる……?あっ、あぁ……」

「えっと、彼らの計画を阻止するではなく…?あっ、そ、そうでしたね……」

「璃月港の危機を食い止めるんじゃないの…?あぁ、そう言えば……」

 

行秋達は胡桃のその言葉に一瞬ぽかんとしてしまうが、すぐに自分達がこの場所に訪れた理由を思い出したかのように、一斉に我に返るかのようにハッとする。

 

「思い出した?行秋に嘉明、雲菫に香菱?」

 

そして胡桃は先ほどまでの笑みを少し潜ませて、真剣な眼差しで彼ら一人一人にそう問いかける。

 

 

 

 

「_そうだね、胡桃。僕の最終的な目的、経緯に違いはあれど僕達の最終的な目的は僕らの友人、刻晴の危機を終わらせる為にここを訪れたんだ」

「_あぁ、そうだな。胡桃。俺や俺達はこの騒動を止めさせて、そうして俺達の友達の刻晴を守る為に、こうして集まったんだ」

「_そうでしたね。胡桃さん。完全に事態に飲まれて忘れかけていましたが私、そして私達は刻晴さんを助けるために来たのでした」

「_そうだったね、胡桃。私達は刻晴のために、集まったんだよね。それに私はこの騒ぎを止める事で、彼女を悲しい思いをさせない為に」

 

胡桃の言葉に彼らはそれぞれ胸の中にあった、彼らの純粋な刻晴への思いが浮き上がり蘇ってくる。

 

 

 

「___ふむ…」

 

そして彼女達の様子を静かに見守っていた鍾離は、僅かに口角を上げる。

 

胡桃の発破によって、行秋や雲菫達の顔色が徐々に良くなってきている。

それは胡桃の刻晴に対する友情と、彼女の刻晴の危機を終わらせるという決意が行秋達の心を奮起させた何よりの証だった。

 

 

「_ふっ…」

 

そうして鍾離は再び、何げなく璃月港の空を見上げる。

 

璃月港の空は先ほどまでの暗雲がいつの間にか消えており、雷雲のように黒かった黒い雲からこれからちょっとした大雨でも降り注いできそうな、そんな灰色染みた暗雲へと変わっていた。

 

それは今の彼らの心を映し出す鏡のよう。

 

絶望によって彼らの心の灯が消えかかっていたが、胡桃の発破によってその灯が再び燃え盛り始めたかのように雲の色が明るくなっていた光景。またよくよく見てみればほんの一部ではあるものの雲が薄い事もあって、雲の切れ目から希望という名の光が差し込んできそうなそうな情景が広がっていた。

 

 

 

 

「___行秋、嘉明、雲菫、香菱。皆、何の為にこの場にやって来たのかという目的、それをちゃんと思い出した?」

 

 

「_うん、勿論だよ。胡桃。ありがとう、胡桃。発破をかけてくれて」

「_あぁ、勿論だぜ。胡桃。ありがとうな、胡桃。完全に吹っ切れたぜ」

「_はい、勿論です。胡桃さん。お見苦しい所を見せてしまい、本当に申し訳ありません」

「_うん、勿論だよ。胡桃。本当にありがとう。さぁ、何とかしないとね。この状況を」

 

胡桃の問いかけに行秋や雲菫達は真剣な表情、そしてどこか不敵な笑みで答える。

 

「うんうん、良かったよ良かったよ。ちゃんと思い出してくれて」

 

そして彼らの答えに胡桃は満足げに頷く。

 

 

 

 

 

「___さてと」

 

そうして胡桃は腕を組みながら行秋達の方から視線を外し、いまこの港湾区で起きている現状に目を向ける。

 

 

 

 

 

 

 

「_いい加減にしろ!!千岩軍ども!!そこをどけ!!」

「_そうだそうだ!!いい加減にしろ!!千岩軍!!」

「_道を開けろ!!千岩軍!!俺達の邪魔をするな!!」

「_そうだ!!道を開けろ!!そのクズどもを引き渡せ!!」

「_おぉ!!そうだ!!そこのゲス野郎どもを引き渡せ!!」

「_そうだ!!そうだ!!そうして俺達は刻晴様に危害を加えようとしたこの者達を罰するんだ!!自分達が何をしたのかを分からせる為にも!!」

「_そうだ!!邪魔だ!!俺達はそこのクズ野郎を懲罰するんだ!!玉衡様の暗殺を企てたクソ野郎どもをな!!邪魔立てするな!!」

「_そうだ!!そうだ!!邪魔するな!!千岩軍!!失せろ!!千岩軍のクズどもめ!!」

 

「_だから、いい加減に諦めろと言っているだろ!!この者達の身柄は我ら千岩軍が預かるのだ!!」

「_しつこいぞ!!お前達!!往生際が悪すぎるぞ!!いい加減に諦めろ!!お前達!!元居た場所に帰れ!!」

「_そうだ!!いい加減にこの場から離れろ!!解散しろ!!どのみちこの者達の身柄は渡さん!!これは決定事項なのだ!!身柄を引き渡す事は断じてない!!だから諦めろ!!帰るんだ!!」

「_そうだ!!そうだ!!それに赦されざる事をした者達ではあるが、お前達のような者達にこの者達を渡してしまえばこの者達は法の裁きを受ける前に、お前達のような者達に殺されてしまいかねないだろう!!」

「_そうだ!!そうだ!!だから諦めろ!!お前達!!」

「_そうだ!!諦めろ!!お前達!!元の場所に戻れ!!」

 

「_ひっ、ひぃ!!」

「_た、助けてくれ!!」

「_お願いだ!!助けてくれ!!」

「_ゆ、赦してくれぇ!!」

 

胡桃の視線の先には相変わらず状況が変わらず、刻晴を慕っていた港湾区の労働者達の大男達と反刻晴派の者達を襲い掛からんとする者達の壁となるように展開していた千岩軍の兵士達が彼らを必死に抑えながら、彼らを説得しようと試みている光景。そうして怒り狂う労働者達の前に力抜けたかのようにへたり込む反刻晴派の者達とその協力者達が悲惨すぎる状況にみっともなく涙声や悲鳴を漏らしている光景が広がっていた。

 

 

「_っ!!状況は変わらない、か…!!」

「_っぅ!!本当に相変わらずだな…!!」

「_っ!!まぁ…、状況が良くなるなんて事はありえませんよね…!!」

「_っ!?何としてでも止めないと…!!」

 

行秋達や雲菫達は地獄絵図と言ってもいい程の凄惨な光景を目の当たりにし、彼らは思わず表情を険しくする。

 

 

「_本当に相変わらず、酷い状況だよ…!!」

(だけど、まだ彼らと千岩軍は衝突していない!!まだ間に合う…!!)

 

そうして胡桃も顔を険しく、だが焦燥も絶望も感じさせない冷静な表情でもって、ここ璃月港の港湾区に蔓延る混乱の渦を静観する。

 

 

「_ふむ…」

 

そうしてまた、胡桃と同じく冷静さを崩さずに静かに腕を組んで静観する鍾離は、ここの状況を分析するかのように目を細めている。

 

 

 

「___行秋、嘉明!!」

 

その時、胡桃が行秋と嘉明の名前を呼ぶ。

 

 

「_何だい!?胡桃!!」

「_おぅ!!何だ!?胡桃!!」

 

行秋と嘉明は、その胡桃の呼びかけに答えるようにすぐに反応する。

 

「行秋、嘉明!!話をさっきの煙緋と甘雨の情報共有の所まで戻すけど、その時に“先に居る者達”っていう単語以外に、何か気になった単語や話とかはなかった!?」

 

胡桃は行秋と嘉明の目を真っ直ぐに見つめ、そうして彼らに問いかける。

 

「気になった単語…」

「気になった話か…」

 

胡桃に問いかけられた胡桃は行秋と嘉明は、それぞれ考え込むように顎に手を当てて少し顔を下げたり、逆に顔を少しだけ上に向けたりして、その事について考え事をする。

 

「えーっと…。うん」

「うーん…。あぁ」

 

そしてしばらく二人は考え込み、そうして結論を出したのか行秋と嘉明は胡桃に顔を向けて答える。

 

「僕の方は特に無いかな。嘉明の方は何かあるかい?」

 

「いや、特に無いぜ。行秋。あれでもう全部だ」

 

「そうか、分かった。胡桃、僕と嘉明の方からは、特にこれといった話はないよ」

 

行秋と嘉明はそう話し合い、そして胡桃にそう答える。

 

「そっか…。うん、分かった。ありがとう、行秋、嘉明」

 

胡桃は行秋と嘉明の返答に静かに頷きながら、そうお礼をする。

 

 

 

「___行秋殿、嘉明殿」

 

そして胡桃の問答に続いて、今度は鍾離が静かに彼ら二人の名前を呼ぶ。

 

「うん、何だい?鍾離さん」

「どうした?鍾離さん」

 

行秋と嘉明の二人はそれぞれ鍾離に顔を向けてそう答える。

 

「行秋殿、嘉明殿。この後の経緯については、甘雨殿と煙緋殿の情報共有を終えた後に引き続き、甘雨殿は火災騒ぎ対応の為に煙緋殿と行秋殿の元から離れて甘雨殿と煙緋殿達は別行動を取った。続いて行秋殿は煙緋殿と共に港湾区を巡りながら煙緋殿が説得によって暴動騒ぎを抑えていくのを見届け、そうしてその最中で行秋殿と嘉明殿が出会ってそのまま合流した。まず、ここまではあっているか?俺は行秋殿の今までの話からそう解釈したのだが」

 

「うん、あっているよ。鍾離さん。その通りだよ」

「あぁ、合っているぜ。鍾離さん。その通りだぜ」

 

行秋と嘉明は鍾離の問いかけにそう答える。

 

「そうか、ならば話を続けさせてもらう。続いてその後は行秋殿と嘉明殿は、煙緋殿達千岩軍らや彼女が味方につけた港湾区の労働者達と共に、港湾区で暴動騒ぎを起こしている他の労働者達を止めに入るのに同行した。つまりは煙緋殿が彼らと対話し、そうして彼らを冷静な状態に持っていかせて彼らを味方にしていく光景を見てきたと思うと、俺はそう認識しているのだが、それはそれで間違いないか?」

 

「うん、その通りだよ。鍾離さん」

「あぁ、合ってるぜ。鍾離さん」

 

「そうか。であるならば、話は早い」

 

行秋と嘉明の返答に鍾離はそう頷くと、再び彼ら二人に向かって問いかける。

 

「行秋殿、嘉明殿。単刀直入に聞こう。お前達、煙緋殿が見せてくれた彼らを味方に引き込んだ時に見せたその手腕、それを再現する事は出来るか?」

 

「煙緋さんの説得を再現…?」

「彼女が味方に引き込んだ手腕をか…?」

 

鍾離の問いかけに行秋と嘉明は首を傾げる。

 

「成程、そう言う事ですか。もしも煙緋さんの説得を再現する事が出来れば…」

「うんうん、そうだね。行秋と嘉明が彼女のそれを再現できれば、今のこの状態を切り抜けられるかも…」

 

鍾離の問いかけの意図を察した雲菫と香菱はそう呟き、行秋と嘉明の二人に期待の視線を向ける。

 

「うーん。煙緋さんの説得を再現…」

「そ、そうだな。彼女のやり方を…」

 

だがその期待とは裏腹に、行秋と嘉明の表情はとても険しく、そして難しそうな顔をしていた。

 

 

「_ごめん、鍾離さん。期待に応えられなくて。僕達には無理だ」

「_あぁ、俺も行秋と同じ意見だ。あれは再現できない。悪い、鍾離さん」

 

そうして行秋と嘉明は申し訳無さそうに、鍾離に向かってそう告げる。

 

「そ、そんな…」

「えっ、そんな…」

 

そして行秋と嘉明のその言葉を聞いた雲菫と香菱は、思わず声を漏らして落胆する。

 

「ふむ…、そうか。それはそれで、仕方がない」

 

そしてまた鍾離も、特に気にした様子を見せることなく、ただ静かにそう呟く。

 

 

 

 

「___だが、そう言う事であるならばだ。行秋殿、嘉明殿」

 

そうしてその時、鍾離は腕を組み、目を細めて静かにそう呟きながら、改めて彼らの名前を呼ぶ。

 

 

「_っ。な、何でしょうか、鍾離さん」

「_ぐっ。な、何だ。鍾離さん」

 

行秋と嘉明は思わず身構える。鍾離に非難されたり、責められたりすると思ったのだろうか、彼らは思わず身体を強張らせる。

 

 

 

「_先ほど、再現は出来ないと言ったが、どうして出来ないと判断した?何故できないと思った?」

 

「どうしてできないと判断したか?」

「何故できないと思ったか?」

 

「あぁ、そうだ。行秋殿、嘉明殿」

 

鍾離はそう言いながら頷く。

 

「行秋殿、嘉明殿。お前達が出来ないと思ったその理由、それが今のこの状況を打開する為の突破口になるからだ」

 

「えっ?それは、一体…」

「はっ?どういう事だよ、鍾離さん?」

 

行秋と嘉明は、鍾離の言葉に思わず呆気に取られてしまう。

 

「簡単な話だ。それが不可能であると結論づけたその原因、その原因となったその要因を解決さえすれば不可能は可能となるからだ。難しく考える必要は無い。つまり不可能であると判断した根元的原因部分を解決する事ができなくても、代替的な手段でその部分を置き換える事によってある程度は問題の解決に導く事もできるからだ」

 

「あっ…!!そ、そう言う事か……!!」

「なっ…!!成程、そう言う事か……!!」

 

鍾離の指摘に行秋と嘉明は一転、彼ら二人は顔を明るくして、その表情に希望の光が灯る。

 

「成程!!そうですね!!鍾離さん!!」

「うん!!そうだね!!鍾離さん!!」

 

そうして鍾離の説明を聞いていた雲菫と香菱も、行秋と嘉明と同様に顔を明るくして希望の光を灯す。

 

「あぁ、そう言う事だ。行秋殿、嘉明殿。それに雲菫殿と香菱殿」

 

そして鍾離は行秋達と雲菫達にそう言いながら頷くと、再び真剣な表情となって顔を上げる。

 

 

 

「___改めて問おう。どうしてそれの再現は出来ないと判断した?なぜ煙緋殿の再現はできないと思った?」

 

 

「_どうしてそれの再現は出来ないと判断したか…」

「_なぜ煙緋の再現はできないと思ったか…」

 

鍾離の問いに行秋と嘉明はそう呟くと、真剣な表情を浮かべながらそれに至った理由、そしてその経緯に、そうなった要因を必死に思考する。

 

 

 

「___うん!!」

「___よし!!」

 

そして行秋と嘉明は、ようやく自分の中で納得がいったとでも言わんばかりに、彼らは強く頷く。

 

「ふむ、結論が出たようだな」

 

「うん、鍾離さん」

「あぁ、鍾離さん」

 

二人は頷きながらそう答える。

 

「分かった。それではその理由、その原因を聞かせてもらおう」

 

「うん、分かったよ。鍾離さん。実は___」

「あぁ、分かったぜ。鍾離さん。それは___」

 

そして行秋と嘉明はその理由や原因となっている事象を、鍾離に事細かに説明していく。

 

 

「_成程…。それは確かに……」

「_うんうん、そう言う事ね…。うーん、どうすればいいんだろう……」

 

そうして行秋と嘉明が語るそれに雲菫と香菱もは難しそうな表情を浮かべて、彼ら二人の話に耳を傾けていた。

 

 

 

「___ふ~ん。へぇ…」

 

そうしてまた、胡桃も腕を組みながら静かに、それでいて行秋達の話に耳を傾けながら、深く思考するかのように目を瞑り、その顔を俯かせていた。

 

 

 

「___というわけなんだ。鍾離さん」

「___という事なんだぜ。鍾離さん」

 

 

「_ふむ、成る程…」

 

そして、行秋と嘉明は一通り話を終えると、静かに話を聞きながら目を閉じ、そうして同時に思案している鍾離に向かってそう呼びかける。

 

 

 

 

 

「___行秋殿、嘉明殿。ありがとう。とても興味深い話に感謝する。より実情を鮮明に把握する事が出来た」

 

目を閉じていた鍾離はそう行秋と嘉明に感謝の言葉を告げながら、ゆっくりとまぶたを開いていき、そのまま言葉を続けて行く。

 

 

 

「_最大の要因。それは“彼らと対話するための機会”、また“彼らが対話に応じるだけの資格や資質”を持ち合わせていない事、というわけだな」

 

 

「うん、その通りなんだ。鍾離さん」

「あぁ、その通りなんだぜ。鍾離さん」

 

行秋と嘉明は同意するように頷く、そして彼らは千岩軍に怒鳴る大男達、港湾区の労働者達に視線を向ける。

 

 

 

「_仮に彼らと対話する機会が訪れたとしても、彼らが僕達の事を認めてくれなければまともに会話すら出来ない」

「_あぁ、行秋の通りだぜ。仮に俺達が彼らと対話に応じるだけの資格や資質を持ち合わせていたとしても、まず機会が巡って来なければ対等な立場で対話することすら出来やしないんだ」

 

行秋と嘉明は、そう淡々とした口調で語る。

 

「ふむ、成る程…。煙緋殿が行秋殿と嘉明殿に見せてくれた手腕、まずはそれを再現させる以前に彼らと対等な立場で対話するためだけの状況を作らなければならない、という事か……」

 

「うん、その通りだよ。鍾離さん。まずは対話に応じるという前提条件をクリアしないと、どうにもならないんだ」

「あぁ、その通りだぜ。鍾離さん。行秋の言う通り、まずは対話に応じるっていう前提条件をクリアして、ようやく対等に話し合う事が出来るようになるんだ」

 

鍾離のまとめに行秋と嘉明はそう言って、深く頷く。

 

「そうですよね。本当に難しい問題です。ただでさえ、今の彼らは非常に激怒してしまっているので、まともに取り合ってくれるかも分かりませんし…」

「うん。そうだよね。煙緋が彼らと対話できたのは、煙緋の元にいた大勢の千岩軍の兵士達と彼らの同僚である味方に付けさせた港湾区の労働者達がいたから対話する機会を生み出し、そうして彼女自身の身分が、天権直属の『外部特別顧問検察官』であり、千岩軍の兵士達や七星八門や月海亭の職員達の指揮を執り行っている本人であったからこそ、彼らは煙緋の事を認めて対等に対話する事に応じる事になったんだよね」

 

雲菫と香菱は、煙緋が対話する事が出来た要因を改めてそう語る。

 

「うん、そうだよ。雲菫、香菱。そうして彼ら、その時のそのグループのリーダー達が彼女に興味を持ち、そうして煙緋自身を認めて話し合いに応じたんだ」

「あぁ、そうだぜ。雲菫、香菱。それで興味を持って話し合いに応じた時、その時は同時に彼らもある程度冷静さも取り戻してくれたから、そのまま煙緋は彼らと対等に対話する事が出来たんだぜ」

 

雲菫と香菱の言葉に頷きながら、行秋と嘉明はそう言う。

 

「ふむ…。つまりは、この現状を突破させる全ての鍵というのは、やはり彼らと対等な立場で対話するためだけの状況を作らなければならない、という事で間違いは無さそうだな。行秋殿、嘉明殿」

 

「うん、その通りだよ。鍾離さん。彼らと対等な立場で対話する事が出来たという事は、その時点で既に怒り狂っている彼らもある程度の冷静さを取り戻してくれている筈だから、僕達の話も聞いてもらいやすくなると思うんだ」

「あぁ、その通りだぜ。行秋の言う通りだぜ。鍾離さん。それに俺達は、あくまでも俺達の推測や憶測でしかはないものの、だがほぼ存在は確実と見れる璃月港を巻き込んだ陰謀を暴いたんだ。彼らもその話は確実に興味をそそられるはずだ。冷静になってくれた彼らであれば、その“先に居る者達”という奴らの思惑に乗らずに反刻晴派やその協力者の身柄を千岩軍に譲ってくれるはずだ。間違い無いと思うぜ」

 

鍾離の言葉に行秋と嘉明はそう頷く。

 

「そうですね。皆さん。やはり全ての鍵と言うのは、如何にして彼らと対等な立場で対話を行うのか、それに全てが掛かってきていますね」

「そうだね。皆。逆に言えば、その問題さえどうにかできれば、後の問題はもう、全てが解決されたのも同然、と言えるよね」

 

雲菫と香菱は、そう頷きながらそう言う。

 

「うん、その通りだよ。雲菫、香菱。だけど…」

「あぁ、その通りだぜ。雲菫と香菱。だが、しかしな…」

「はい、そうですね。ですがこの問題、思った以上に…」

「うん、そうだよね。だけど私達の思った以上に、これは厄介な問題だよね…」

 

行秋と嘉明、雲菫と香菱は、そう言って同時に俯きながら頭を抱える。

 

「………」

 

そして鍾離も再びを腕を組んで、難しそうな表情をしたまま静かに考え込むように、その顔を俯かせる。

 

 

 

「_鍾離さん。何か、良い考えが浮かび上がりましたか?」

「_鍾離さん。何か、良い考えは思いついたか?」

 

そうしてその時、行秋と嘉明は鍾離にそう呼びかける。

 

 

「_鍾離さん、お願いです。何とか良い方法を…」

「_鍾離さん。お願い、今のこれをどうにかする方法を……」

「_………」

 

そうしてまた、雲菫や香菱も懇願するように鍾離にそう呼びかけ、胡桃もただ無言を貫く。

 

「行秋達殿、雲菫達殿…。堂主殿……」

 

そして鍾離は行秋達と雲菫達、また隣に立っていた胡桃に視線を向ける。

 

「………」

「………」

「………」

「………」

 

行秋達と雲菫達は、真剣な表情のまま静かに鍾離が次に紡ぐ言葉を待つ。

 

 

 

 

 

 

「___行秋殿、嘉明殿。雲菫殿、香菱殿。申し訳ない。あいにく不甲斐ない俺は、未だにこの事態を解決に導ける策を見つけ出せていない」

 

そして鍾離は、行秋達と雲菫達、そう静かに語る。

 

 

「_ぐっ!!そ、そんな…」

「_っ!!そう簡単には上手く行かないか…」

「_くっ!!鍾離さんでもすぐには、解決策を見い出せませんよね…」

「_っぅ!!そうだよね…。そんなに簡単に上手く行けないもんね…」

 

行秋達と雲菫達は顔を俯かせながらそう呟き、彼らは悲しげな表情を浮かべる。

 

 

 

 

「あぁ、本当に申し訳ない。行秋達殿、雲菫達殿。だが、しかしだ。顔を上げてくれ。俺はまだ策を見つけ出せてないが___」

 

鍾離はそこまで述べると、ふと自身の真横に立っている胡桃に視線を向ける。

 

 

 

「_胡桃殿、堂主殿は俺より先に、何か良い策を思いついたのだろう?」

 

「_ありゃ、鍾離さんに気づかれた」

 

 

 

そして鍾離は胡桃に視線を送りながらそう言うと、胡桃は軽く笑いながらそう呟く。

 

 

 

 

 

「_ほ、本当かい!?胡桃!!」

「_おぉ、マジか!?胡桃!!」

「_本当ですか!?胡桃さん!!」

「_本当!?胡桃!!」

 

そうして鍾離のその言葉と胡桃のその反応に、行秋達と雲菫達は一斉に胡桃に視線を向けて目を大きく見開いて輝かせる。

 

「うん。まぁ、本当だよ。ただまだ策と言うよりかは案、指針や方針程度の物だから、皆が期待するようなものではないけどね。それよりも鍾離さ~ん?」

 

「むっ。なんだ、堂主殿?」

 

胡桃は困ったような笑みをしながら行秋達にそう言うと、今度は鍾離にそう呼びかける。

 

「鍾離さん、鍾離さん。鍾離さんはどうして、私がなにかが思いついたという事に気づけたの?」

 

「むっ。ははっ、面白い事を言う。俺と堂主殿はもうどれくらい長い間の付き合いだと思っているんだ。それくらいは分かる」

 

「えぇっ?なにそれ?もしかして、さっきの趣返し?鍾離さん?」

 

「ふっ、そう言う事ではないのだがな」

 

胡桃がジト目をしながらニヤニヤとそう問いかけると、鍾離は少し可笑しそうに笑いながらそう答える。

 

「ふ~ん、そっか」

 

胡桃も可笑しそうに笑う。そして改めて行秋達の方に視線を向ける。

 

「行秋、嘉明。雲菫、香菱。それじゃあ早速、私が考えついた事に関して教えるよ…。___」

 

胡桃は彼らにそう宣言すると、彼らに自身の考えを述べる為にそのまま続きの言葉を紡ぐ。

 

 

 

「_“彼らと対話するための機会”、“彼らが対話に応じるだけの資格や資質”。未だ私達に機会は訪れず、されどその資格や資質は私達の中にある」

 

 

「資格はある…」

「俺達の中に…」

「資質が私達の中に…」

「資格と資質が…」

 

胡桃はまるで詩歌を読み上げるようにそう語り続け、行秋達はそれぞれ呟く。

 

 

 

「_私達は璃月七星、玉衡の友。果てない努力家の刻晴、その彼女の努力を間近で見届けた者達である我々。我らは刻晴の友であり、理解者である。そうして暴徒化しつつある彼らもまた、刻晴の理解者であり彼女を慕う者達である」

 

胡桃は真剣な表情を浮かべながら、千岩軍とその背後にいた反刻晴派の者達とその協力者達に怒鳴り散らす港湾区の大男達、刻晴の事を慕う労働者達に視線を向けながら、そう語る。

 

 

「僕達は刻晴の友…」

「俺達は刻晴の理解者…」

「彼らも刻晴の理解者…」

「彼らも刻晴を慕う者達…」

 

行秋、嘉明、雲菫、香菱の四人は胡桃の語るその言葉にそう呟く。

 

 

 

「_私達が刻晴の理解者であるならば、彼らもまた刻晴の理解者である。ならば私達と彼らは交わる事が出来る、お互いに彼女の理解者であるが故に」

 

「っ!?そう言う事か!!」

「おぉっ!?確かにそうだな!!」

「っ!?そう言う事ですか!!」

「っぅ!!うん!!そうだよね!!」

 

そして行秋達と雲菫達は胡桃が何を言いたいのかを察し、そうしてその事に希望を見出したかのように、喜びの声を上げる。

 

 

 

「_未だ私達に機会は訪れず、されどその資格や資質は私達の中にある。故に私達は待とう、その時を。彼らと交わえる、その時を…。どう?理解できた?」

 

そうして胡桃は語り終えて、怒鳴り散らしていた港湾区の労働者達から行秋達と雲菫達の方に視線を向ける。

 

「うん、分かったよ。胡桃!!」

「あぁ、理解したぜ!!胡桃!!」

「えぇ、分かりました!!胡桃!!」

「うん、分かったよ!!胡桃!!」

 

行秋達と雲菫達はそう頷きながら答える。

 

「うんうん、嬉しいよ。私の考えた事、意図を理解してくれて。つまり___」

 

胡桃は嬉しそうに笑いながら、行秋達と雲菫達への言葉を続けていく。

 

 

 

 

 

「___私達は刻晴の友人であり、そして理解者である。そうして彼らも同じく刻晴を慕う者達、彼女の理解者達でもある。煙緋の『天権直属外部特別顧問検察官』という身分には劣るけど、でも私達の身分と言うのは『玉衡の努力の軌跡を間近で見届けてきた理解者達』という身分や立場であるの。ならば、彼ら労働者達が私達の身分や立場を認めてくれさえすれば、彼らと対等に対話する事は出来る。そうでしょ?」

 

胡桃がそう言って、行秋や嘉明、雲菫や香菱達に視線を向ける。

 

 

「うん、そうだよ!!胡桃の言う通りだ!!」

「あぁ、その通りだぜ!!胡桃!!」

「そうですね!!胡桃さん!!」

「そうだよね!!胡桃!!」

 

そうして胡桃のその言葉に呼応するかのように行秋や嘉明、雲菫や香菱の四人も口々に胡桃の言葉に同意する。

 

「ふっ、そうだな。胡堂主殿。堂主殿の言う通りだ」

 

そうしてまた、鍾離も賛同するかのようにそう答える。

 

「えへへ、ありがとう。鍾離さん」

 

「あぁ。堂主殿。そうなると残る問題は…」

 

胡桃が笑みを浮かべながら鍾離にそう言い、鍾離もまた彼女にそう言い返すと、再び目の前の港湾区の労働者達の方に目を向ける。

 

 

 

「_どうやって、彼らと対話する機会を得るか、だな」

 

鍾離は真剣な表情を浮かべながらそう呟く。

 

「そうですね、鍾離さん。どうにかして機会を見つけないと…」

「そうだな、鍾離さん。どうにか、良い感じに関わる事ができれば良いんだが…」

「そうですね、鍾離さん。ですが、本当に難しい問題です。関わり方を間違えたら状況はさらに悪化しかねません…」

「うん、そうだね。鍾離さん。本当に難しい問題だよ。もう少し彼らが冷静になってくれるか、もしくは彼らが私達に興味を持ってさえくれれば…」

 

行秋と嘉明、雲菫と香菱はそれぞれ真剣な表情を浮かべながら、それぞれそう呟く。

 

「そうだよね。特に香菱の言う通りだよ。もう少し彼らが冷静になってくれるか、もしくは彼らが私達に興味を持ってさえくれれば、もしかすると彼らと対等に対話する機会が出来るかもしれない」

 

胡桃も難しそうな表情を浮かべながらそう言いつつ、鍾離と同じように目の前の港湾区の労働者達や彼らを抑えようと必死に説得している千岩軍らに視線を向ける。

 

 

 

「_胡堂主殿」

 

「なぁに、鍾離さん?」

 

その時、鍾離が胡桃にそう呼びかけ、彼女はそれに反応して首を傾げる。

 

「堂主殿。機会を得るという事だが、堂主殿はどのように機会を得ようと考えているのだ?」

 

鍾離はそう胡桃に問いかける。

 

「うん、そうだね。鍾離さん。私もその事を考えていたけど、良い考えが浮かび上がらなくて。ただやっておいた方が良さそうな事は思いついたよ」

 

胡桃はそう答える。

 

「ほぉ。それは、どのような事だ?」

 

鍾離は胡桃にさらに問いかける。

 

「うん。まずは、彼ら労働者達のリーダー、それにその集団の中心人物達は誰なのかをはっきりさせた方が良いかなって思ったの」

 

「労働者達のリーダー、中心人物達は誰なのかをはっきりさせるか。うむ、確かにまずはそれを行った方が良いだろう。胡堂主殿」

 

胡桃のその言葉に、鍾離は同意するように頷く。

 

「うん、でしょ?鍾離さん。あとそれと、この場にいる千岩軍の兵士達、彼らの中で誰がこの兵士達を取り仕切っているのか、誰がこの兵士達の隊長達なのかをもはっきりさせておきたいと思ったんだ。もしかすると彼らとの対話を試みる時は、千岩軍の彼らの協力も必要になるかもしれないからさ」

 

胡桃も同意を示すように頷きながら、更に言葉を紡いでいく。

 

「あぁ、確かにそれも必要な事だな。胡堂主殿」

 

胡桃のその言葉に、鍾離は同意するように頷く。

 

「労働者達のリーダー、その集団の中心人物達は誰なのかをはっきりさせる事…。うん、確かに胡桃の言う通りだ」

「誰が千岩軍の兵士達の隊長なのかをはっきりさせる…。あぁ、胡桃の言う通りだぜ。もしかすると千岩軍達の力も借りる事になるかも知れないしな」

 

胡桃の言葉に、行秋と嘉明はそう呟く。

 

「そうですね。胡桃さんの言う通りです。もしも機会が訪れた時に、それをやっているかやっていないかだけでも、彼らとの対等な対話をどれだけ確実に出来るか否かが、大きく変わりそうですし」

「そうだね。胡桃の言う通りだよ。それに煙緋は暴動騒ぎを鎮める為に、その現場にいた労働者達のリーダー達と話し合って冷静にさせていったっていう話なんだから、労働者達のリーダー達やその中心人物が誰なのかを把握する事は、必須な気がするしね」

 

雲菫と香菱も胡桃の言葉にそう賛同するように頷く。

 

「だよね、だよね。うん、機会をものにしたり、また機会を作り出すといったものじゃないけど、ただ機会が訪れた時に彼らとの対話の成否を分ける重要な要素になってきそうな気がするよ。私も」

 

そうして胡桃も同意するように頷く。

 

「うむ、そうだな。堂主殿。…それでは?」

 

鍾離は胡桃にそう問いかける。

 

「うん、そうだね。それじゃぁ、早速始めようか。うん、そうだねぇ…」

(労働者達のリーダーを見極める者達と、千岩軍の隊長達を特定する者達。それに念のため、ここにいる反刻晴派の者達やその協力者達の事を見張る者達…)

 

胡桃はそう呟き、そしてどのように振り分けを行うべきかを思案する。

 

 

 

 

 

「___よし!!行秋!!嘉明!!二人は労働者達のリーダーや中心人物が誰なのかを見極めるのをお願い!!必要に応じて鍾離さんも貸すから!!場合によっては遠慮なく鍾離さんに肩車とかもしてもらっちゃって!!」

 

「_うん!!分かったよ!!」

「_おぅ!!任せてくれ!!」

 

胡桃の指示に、行秋と嘉明はそう答える。

 

 

 

「___香菱!!雲菫!!あなた達はここにいる千岩軍の兵士達に対し、彼らの邪魔にならない程度に誰がここの千岩軍達のリーダーや隊長達なのかを聞き出す作業をお願い!!」

 

「_分かりました!!胡桃さん!!」

「_分かったよ!!胡桃!!」

 

続いて胡桃は雲菫と香菱に、そのように指示を出していき、彼女達もそれに応じるように頷く。

 

 

 

「___鍾離さん!!鍾離さんは私とここで待機だよ!!この場にいる反刻晴派達の見張りと、必要に応じて行秋達や雲菫達の手伝いをお願い!!」

 

「_承知した、胡堂主殿…!!」

 

胡桃の指示に、鍾離はそう答える。

 

 

 

「___うん!!ありがとう、鍾離さん!!それじゃあ、行秋!!嘉明!!香菱!!雲菫!!」

 

 

「_うん!!行ってくる!!」

「_あぁ!!行ってくるぜ!!」

「_はい!!行ってきます!!」

「_うん!!行ってくるよ!!」

 

そうして胡桃が鍾離にそう答えると同時に行秋達や雲菫達に号令を下すと、号令を下された行秋、嘉明、雲菫、香菱達はそう胡桃に答えながらそれぞれ、港湾区の労働者達や千岩軍の兵士達の方に向かって駆けていったのであった。

 

 

 

 

 




次回、胡桃達が行動開始。
一気に事態が進行、急変していきます。

そうしてその次は現段階の予定ではありますが、8幕の始まりを描写して良ければと思います。


それでは次回の投稿まで、今しばらくお待ちください。
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