召喚とかいう無から生物が出現する現象を個性の一言で片付けるのやばない?   作:そるしあ

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R.I.P. あらすじ



俺は大人だ・・・誰が何と言おうと大人なんだ・・・

 

 

 

「じゃあお前ら、気をつけて帰れよ」

 

「「「はい!」」」

 

戦闘訓練を行った日の帰りのホームルームにて。

 

相澤先生から昼休みの件で何かしら言われるだろうと内心怯えていた翔華は、特にお咎めが無かったことに拍子抜けしていた。

 

目の前で急に遁走したのに何も疑問を感じなかったのだろうか。

 

やってる事ほぼメタルスライムやぞ。

 

ともすれば会心の一撃(除籍処分)を喰らいかねないやらかしだっただけに、全身から力が抜けていくのを感じる。

 

ひとまずは無事乗り切れたようだが、何も言われないというのはそれはそれで怖い。

 

教室から去り行く相澤先生の背中を眺めつつ、俺から声をかければ良かったかなぁとぼんやり思う。

 

「なぁ皆! 今日の訓練の反省会しようぜ!」

 

そんな風に考え事をしてると、俺の3つ前の席に座っている熱血漢(切島)君が声を上げた。

 

それに三奈ちゃんやタラコ唇君が賛同を示し、教室内が徐々に活気づき始める。

 

他のクラスメイト達も乗り気なようだ。

 

そんな向上心溢れる姿を見てると、やはり彼らもヒーローの卵なんだな、と微笑ましく思う。

 

いや俺もか。

 

そんな中、相変わらず暗い顔をしていた爆豪君が(おもむろ)に立ち上がり、そのまま教室の扉へと向かうのが見えた。

 

「あ、爆豪! お前も一緒にどうだ!」

 

「・・・・・・」

 

声を掛けられても一瞥もくれずに教室の扉に手をかける爆豪。

 

これは、彼が無愛想なだけなのか思い詰めているのか。

 

「おいおい、大丈夫か」

 

「体どっか痛むのか?」

 

その様子を心配した他のクラスメイト達も声を掛けていたが、暖簾に腕押しのようだ。

 

彼は憮然とした様子のまま教室を後にした。

 

「どうしたんだあいつ」

 

「負けたことがよっぽど悔しかったんじゃないか?」

 

「自尊心高そうだもんなー」

 

引き止めていた男子達は、深追いはしないことにしたようだ。

 

まぁ、彼の普段の態度からしてあまり気に病むようなタイプでは無いと判断したのだろう。

 

だが、前世で数多の経験を積んできた俺にはわかる。

 

あれは大きな壁に立ちはだかった時の顔だ。

 

彼なら放っておいても自ずと乗り越えていきそうだが、思春期とは得てして複雑なもの。

 

教え導くことのできる大人のフォローがあってもいいのでは無いかとも思う。

 

状況的にオールマイトが適任だろうが、今日の訓練での様子を見るに、彼は教師としてはまだまだ半人前なのかもしれない。

 

空回りする様子が容易に想像できる。

 

やれやれ、ここは頼れるお兄さんである俺がお節介でも焼いてあげるとしますかね。

 

いや、どうせやるならとことんやるか。

 

全力でお兄さんを遂行する!

 

「百ちゃん、ちょっと御手洗に行ってくるねぇ」

 

百ちゃんに一声掛けてから教室を出て、ぱたぱたと小走りで爆豪君の後を追う。

 

その途中でぴこちゃんを喚んで肩に乗せておく。

 

程なくして、玄関から出ようとしていた爆豪君の姿を捉える。

 

「バクゴー君」

 

そう呼びかけると、怪訝そうな顔をした爆豪君がこちらを振り向く。

 

接点の薄い女子がここまで追いかけて来たことが意外だったのか、少し目を見開いていた。

 

肩に乗せていたぴこちゃんを抱え上げ、ん! と腕を前に出して爆豪君に見せつける。

 

「かわいいでしょ! ぴこちゃんって言うんだぁ」

 

「・・・・・・は?」

 

あまりにも突拍子もない翔華の行動に、思わず呆気にとられた様子の爆豪。

 

「君も抱っこしてみぃ。凄く癒されるよぉ」

 

「・・・・・・」

 

「むふぅ」

 

「・・・・・・」

 

しばらく唖然としていたが爆豪だったが、翔華がどうやら自分を慰めようとしていることに気付いたようで、「しねぇよ」とその誘いをにベもなく断った。

 

「そ、そんなぁ」

 

「気遣いなんざ必要ねぇ。もう付いてくんな」

 

そう軽くあしらうと、爆豪は再び立ち去ろうと翔華に背を向けた。

 

ま、そう簡単にはいかないよね。

 

ぴこちゃんを抱え直し、その背中に向けて口を開く。

 

「ボクとペアだった男子、凄く強かったよねぇ」

 

その言葉にピクリと反応する爆豪。

 

「百ちゃんの講評、反論の余地も無いくらい的確だったねぇ」

 

ギリっと奥歯を噛み締める音が僅かに耳に届く。

 

「もじゃ髪君の読み、凄かったよねぇ」

 

「・・・・・・何が言いてぇんだテメェ」

 

最後の言葉でこちらに振り向いた爆豪は、今にも襲い掛かってきそうな形相で俺を鋭く睨みつけていた。

 

こわ。

 

ヒーロー候補生がしちゃいけない顔しとる。

 

ぴこちゃんが毛を逆立てて警戒している。

 

きゃわいい。

 

こちらも負けじと彼の目を見つめ、にやりと笑いかけてやる。

 

「そんな彼らを超えたら、もっと凄いよねぇ」

 

「ああ?」

 

次の瞬間、翔華の雰囲気がガラリと変わった。

 

「俺は超えるよ。彼らも、そして君も」

 

元々の気の抜けたような顔が精悍な顔付きになり、その落ち着き払った声からは年齢とは不相応な程の貫禄が感じられた。

 

そのあまりの変貌ぶりに言葉を失った爆豪は、先程までの怒りを完全に霧散させ、目を丸くしていた。

 

ちなみに、これは翔華が前世の記憶を頼りに頑張って大人ぶっているだけで、実の所は結構な無理をしているのだ。

 

実際に近くで顔を見てみると、僅かに頬がピクピクしているのが見て取れる。

 

いかん、表情筋が悲鳴をあげてきた。

 

カラダ持ってくれよ! 3倍界王拳だっ!*1

 

うおおおお!

 

・・・・・・やっぱ無理ぃ。

 

「なーんてねぇ」

 

大人っぽい雰囲気を醸し続ける事を諦めた翔華は、再びその顔にふにゃっとした笑みを浮かべておどけて見せた。

 

「でも、君の事を超えたいと思ってるのは本当だよぉ。なんてったって、実技試験は君に一歩及ばずの次席だったからねぇ」

 

ころころと変わる雰囲気に付いていけていない様子の爆豪だったが、翔華の言葉を聞いてその表情を変えた。

 

「寝ぼけたこと言ってんじゃねぇ! テメェにも、デクにも、他の奴らにも俺は勝つ! 一番になるのは俺だ!」

 

そう啖呵を切る爆豪。

 

その顔に、先ほどまでの思い詰めた表情は残っていなかった。

 

やはり彼は、怒りや悔しさなんかをバネに、より強くなっていくタイプなんだろう。

 

彼もまた、ヒーローの卵というわけだ。

 

その様子を見て、翔華は満足そうに微笑む。

 

「ふふ、いい表情(かお)になったねぇ。バクゴー君にはその悪人面の方が似合ってるんじゃないかなぁ」

 

「誰が悪人面だコラ!」

 

「えへへぇ」

 

笑ってんじゃねぇ!と吠えた爆豪君は、付き合ってられないとばかりに玄関から出て行ってしまった。

 

いやー、若いって素晴らしい。

 

そんなちょっとズレた感想を抱いた翔華は、百ちゃんを待たせてることを思い出し、気持ち小走り程度に教室へと踵を返した。

 

早いとこ戻らんと、トイレがめっちゃ長いやつだと思われてしまう。

 

これがもし男子校だったら、トイレに関する不名誉な渾名が付けられていたことだろう。

 

更に歩く速度を早めたところで、向こうからもじゃ髪君が走ってくるのが見えた。

 

「こらこらー、廊下を走るんじゃないぞぉ」

 

「あ! ごめん! えーと、紗守名さん、今かっちゃんと何か話し───」

 

「彼、ついさっき玄関を出たばかりだからまだ校内だと思うよぉ。早く行っといでぇ」

 

「あっ、そうだった! ありがとう!」

 

やたらと慌ただしいもじゃ髪君はお礼を言ったかと思うと、再び急いで玄関に向かって走り出した。

 

いや忠告聞けよ。

 

まったくもう。

 

「気張りよぉ、少年」

 

「え? う、うん!」

 

顔だけこちらに振り返ったもじゃ髪君は、少し困惑した様子で返事をすると、そのまま走り去っていった。

 

うーむ、若いねぇ、青いねぇ。

 

ん?

 

ふと、地面に何か落ちていることに気が付く。

 

これは・・・・・・学生証?

 

拾い上げ、裏返して名前欄を確認すると、そこには “緑谷出久” の文字が記載されていた。

 

これさっきのもじゃ髪君のか。

 

どんだけ急いでたんだ。

 

仕方ない、様子を見に行くついでに届けてやるとしますかね。

 

 

 

------------------------------

 

 

 

「───人から授かった “個性” なんだ。誰からかは絶対言えない! 言わない・・・・・・でも───」

 

えぇ・・・・・・。

 

なんだかすごい話をしているところに出くわしてしまった。

 

そして聞いてしまった。

 

個性を授かるってなんだ。

 

こわ。

 

それが本当なら大変な事では。

 

現代の個性社会の根底を揺るがしかねないトンデモ情報だ。

 

そんな簡単に明かしていいもんなんか、それ。

 

・・・・・・いやどう考えても絶対ダメなやつだろ。

 

コンプライアンス意識があまりにも足りてない。

 

教えはどうなってんだ教えは。

 

二人きりで密談するとかならまだいいんだ。

 

不特定多数に情報が漏洩するよかは遥かにマシだ。

 

けど、そこガッツリ人目に付くっスよ。

 

何処で誰が聞いてるかもわからんっスよ!

 

実際、俺が聞いちゃってるんスよぉお!!!

 

玄関口にて、翔華は心の中で雄叫びを上げた。

 

落し物を届けに来ただけなのに、待ち受けていたのはとんだ機密情報の開示だった。

 

もはや、落し物を渡すタイミングもこの場を離れるタイミングも逃してしまった。

 

気付いたらもう爆豪君おらんくなってるし。

 

なんかいつの間にかオールマイトいるし。

 

というかそもそもなんで皆俺に気付かないんだ。

 

そんな影薄いか、俺。

 

もうこうなったら徹底的に存在感を消してやり過ごすしかない。

 

だって、物凄い厄介事の気配がする。

 

ひょんな事から秘密を知ってしまい、そのまま厄介事に巻き込まれることになった準レギュラーキャラとかにはなりたくないのだ。

 

何とか気配を消そうと、息を止めてみる。

 

しばらくそうしていると、ぴこちゃんが心配そうな表情でこちらを見つめてきた。

 

その可愛らしい表情に、思わずふふっと息が漏れる。

 

なんだか心が落ち着いてきた。

 

同時に、思考もクリアになってくる。

 

そうだ、まだ彼の話が真実だと決まった訳ではないのだ。

 

ただの戯言である可能性も否めないのである。

 

「───あの、OFAやオールマイトの事は言ってないんですが、個性を人から授かった事を、その・・・・・・」

 

「話したのか・・・・・・!」

 

「すみません!!! 母にも言ってなかったのに、何でか言わなきゃって・・・・・・本当にすみません・・・・・・」

 

・・・・・・否めないことが否めなくなった。

 

これ、もしかしなくても、オールマイトが緑谷君に個性を授けたってことだよな?

 

つまり、緑谷君がオールマイトの後継者・・・・・・ってコト?!

 

「今回は大目に見るが・・・・・・次はナシで頼むぞ」

 

大目に見るな。

 

事の重大さに気付いていないんだろうか。

 

「この力を持つという責任をしっかり自覚してくれ」

 

その力を与えたという責任もしっかり自覚してくれ。

 

「知れ渡れば力を奪わんとする輩が溢れかえることは自明の理! この秘密は社会の混乱を防ぐ為でもあり、君の為でもあるんだ。いいね?」

 

できれば俺の混乱も防いで欲しかった。

 

ほんとなんでそんな話を校門前で堂々としてるんだ。

 

幸い、今は周りに人は居ないみたいだけどさ。

 

俺を除いてだけどな!

 

「それじゃあ、気をつけて帰るように!」

 

そう言って緑谷君に向かってビシッとポーズを決めたオールマイトは、校舎に戻ろうとしたのか、こちらに向き直った。

 

そして当然、その方向には俺がいるわけなので、オールマイトと視線がぶつかる。

 

あ、どうも。

 

とりあえず軽く会釈をしてみるも、オールマイトはにこやかな笑顔を浮かべたままその動きを完全に静止させていた。

 

なんかあんな感じのフィギュア見たことあるな。

 

オールマイトの様子に戸惑っていた緑谷君もこちらの姿を認めると、同じようにその動きを完全に静止させた。

 

さすが師弟、似た者同士だ。

 

いやまぁ、ヤバめの秘密を聞かれてたことを知ったのだから、そういう反応にもなるか。

 

バレてしまったものは仕方がない。

 

何事も無かったかのようにサッと落し物を渡し、サッとこの場を離れることにしよう。

 

スタスタと緑谷君へと近づく。

 

緑谷君は現実に戻ってきたのか、わたわたしている。

 

「はい、これ落ちてたよぉ」

 

「あの! これは! その・・・・・・え?」

 

学生証を差し出すと、緑谷君はおずおずと受け取った。

 

「気をつけてくれたまえよぉ」

 

「あ、うん・・・・・・」

 

「ほいじゃ、またねぇ」

 

そして、そそくさと立ち去ろうと振り返る。

 

ばいばいきーん。

 

「紗守名少女」

 

「ひゅぃ」

 

オールマイトに肩を掴まれた。

 

ダメでした。

 

「・・・・・・どこから聞いてた?」

 

振り返ると、顔を強ばらせ、額に冷や汗を浮かべたままにこやかに笑いかけるオールマイトの姿が。

 

こわいって。

 

台詞も怖いって。

 

こうなったらもう取れる手段はひとつだ。

 

「・・・・・・し」

 

「し?」

 

「失礼しましたぁー!!!」

 

ばひゅーん。

 

しょうかはㅤにげだした!

 

またかよとか言うな。

 

俺だって一日に先生から二回も逃げ出すことになるとは思わなんだ。

 

だってしょうがないじゃないか*2

 

今回に限っては不可抗力だ。

 

もー知らん!

 

そこで情報セキュリティ意識促進委員会でも開いとってくれ!

 

じゃあな! サラダバー!

 

翔華が遁走するその後ろから、オールマイトの哀叫が聞こえた気がした。

 

ちなみに、教室に戻ったら百ちゃんに遅くなったことを詰められた*3ので、緑谷君の落し物を届けてた、と伝えたら納得して貰えました。

 

ついでに、俺が持ち込んだぴこちゃんによって反省会は破綻しました。

 

猫カフェならぬ、ぴこカフェみたいなことになってた。

 

特に女子達の反応は物凄かった。

 

響香ちゃん*4なんかもはやキャラが変わってた。

 

やはり、ぴこちゃんはそこに居るだけで人々を笑顔にする力があるのだ。

 

なんなら世界中を幸せにすることができると言っても過言だろう*5

 

ぴこちゃんは救済。

 

なお、当のぴこちゃんは終始ちょっと鬱陶しそうな顔をしていた。

 

そんなところも可愛い。

 

翔華は相変わらず親バカだった。

 

 

 

*1
ただし効果は表情筋に限る

*2
かなりえずき

*3
三奈ちゃん曰く過保護なお母さんみたいだったらしい

*4
ぴこちゃんのおかげで仲良くなった

*5
過言(断定)





メタルスライム系主人公とかいう新ジャンル。
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