召喚とかいう無から生物が出現する現象を個性の一言で片付けるのやばない? 作:そるしあ
その時々によって割と文体が変化しがちな本作ですが、それもまたご愛嬌ということで、ゆるくお付き合いいただければ幸いです。
有名人って大変そうだよね。
そんなことをぼんやり思う、朝の通学路。
天気はうららか、気分はどんより。
どうも、未来の有名人、紗守名ちゃんです。
「オールマイトの授業はどんな感じです?」
「“平和の象徴” が教壇に立っているということで様子など聞かせて!」
「教師オールマイトについてどう思ってます?」
で、憂鬱の種はこの光景だ。
なんか、こんな朝っぱらから校門前に人が群がっている。
そして、通りがかった人全員に片っ端からオールマイトについて聞きまくっている。
こんな光景を見れば、どよさもちゃん*1になってしまうのも仕方のないことだと思う。
彼らの手にはカメラやマイクが握られているので、おそらくマスコミの人間なのだろう。
登校中の雄英生からオールマイトについて聞き出そうと、半ば強引にインタビューを仕掛けているようだ。
なんというか、いつの世でもマスコミってのは変わらないんだなって。
前世の記憶を遡っても、流石に校門前に群がったりはしていなかったと思うが。
今世だとマスコミ特化の個性なんかもあるだろうから、よりモラルが問われて然るべきだろうに。
あそこ通ってくのやだなぁ。
俺にオールマイトのことを聞かれても困るのだ。
俺が知ってるのは、教師としてはちょっぴりポンコツな事と、緑谷君を弟子にとった事と、その彼に個性を授けた事くらいだ。
あとは
知りすぎてたわ。
なんで俺がそんなことを知っているのか、我ながら甚だ疑問である。
そんな機密情報を語ろうもんならとんでもない事になるのは自明の理なので、何か当たり障りの無い回答を考えておかなければならないだろう。
それに、テレパシーの個性を有する人が居ないとも限らないので、心を無にしておく必要もある。
できるかは知らん。
ああ、早速知ってしまったことの弊害が。
許さん・・・・・・許さんぞ天の助(?)。
「行きましょう、紗守名さん」
俺がマスコミの群れに辟易して立ち止まっていると、一緒に登校していた百ちゃんがスタスタと先んじて歩き出した。
「待ってよぉ」
置いていかれては堪らないので、百ちゃんの服の裾を掴み、その後ろをおずおずと付いて行く。
百ちゃんは一瞬悶えかけた。
そうして校門前まで行くと、案の定マスコミの何人かがこちらにマイクを向けようとしてきた。
が、百ちゃんの顔を見ると何故かすぐに引っ込んでいった。
それでも一人の新人らしき女性がこちらにマイクを向けてきたが、その人も上司らしき男性に慌てて引っ張られていった。
「おいバカ! あの人は八百万家のご令嬢だ! 迂闊に手を出そうもんなら首が飛ぶぞ!」
「す、すいません!!!」
わぁ。
権力ってすごい。
さすが八百万家。
富、名声、力、この世の全てを手に入れた家柄なだけある。
モーゼのように人波を割ったゴール・D・百ちゃんは、すました顔でその間を通り抜けて行く。
一歩遅れて、慌てて俺もその後を付いて行く。
これ、俺は彼らにどう見えているのだろうか。
これではまんま虎の威を借る狐ではないか。
心配になった翔華は、少しでも印象を良くしておこうと、マスコミの間を通り過ぎるときに笑顔で手を振っておいた。
何故か写真を撮られた。
なんでやねん。
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朝のホームルームの時間。
爆豪君と緑谷君が戦闘訓練のことで相澤先生から説教をかまされていたが、相変わらず俺には何も無かった。
これは、昨日の昼休みの一件は放免されたという認識でいいのだろうか。
ある日突然お咎めが飛んでくるという可能性もゼロではないが、だからといってこちらから積極的にあの件に触れるのも憚られる。
うーむ。
まぁ、このままあの一件を有耶無耶にできるならそれに越したことはないだろう。
ついでに、オールマイトの秘密を聞いてしまったあの一件についても有耶無耶できたら嬉しいのだが。
そう思ったが、先程からその
ダメみたいですね。
こっち見んな。
とりあえず見て見ぬふりをしてはいるが、この様子だと空き時間に声を掛けられることは必定だろう。
それにしても挙動不審が過ぎるぞ、君。
紅白男子とかタラコ唇君とか絶対不審がってるって。
俺、君より結構後ろ側に座ってるんだけど。
そんな何度も振り向いて首が痛くならないのだろうか。
ヒーローたるもの前だけを見据えんかい。
後ろを振り向くのは敵を打ち倒した後だけにせんかい。
そんでもって「もう大丈夫だよ」って言いながら、背に庇っていたヒロインに笑いかけんかい。
そっからちょっといい雰囲気にならんかい。
なんのラブコメだよ。
「さて、ホームルームの本題だ。急で悪いが今日は君らに・・・・・・」
その言葉で教室内がざわつく。
翔華もざわつく。
ま、まさかここであの一件の処罰が下されるのだろうか。
もはや我が命運もここまでか。
くっ、殺せ!
「───学級委員長を決めてもらう」
「「「学校っぽいの来たーーー!!!」」」
あ、今の合わせるところだったか。
タイミングを逃したことを反省しつつ、本題がただの学園イベントだったことに安堵する。
学級委員長ねぇ。
こういうのは得てして皆やりたがらないから、結局は投票とか真面目そうな人への押し付けとかになりがちだよね。
んもう、仕方ないなぁ。
ここは俺が、子供達を教え導く大人として、率先して立候補をしてあげようではないか。
ふんす! と鼻息荒く手を上げようとしたその時。
「委員長!!! やりたいですソレ俺!!!」
「リーダー! やるやるー!」
クラスのほぼ全員が一斉に手を挙げ、物凄い勢いで学級委員長に立候補し始めた。
えぇ・・・・・・すごいやる気満々じゃん・・・・・・。
そういや皆向上心の塊ちゃん達だったな、なんて、改めてここはヒーロー科なんだということを再認識させられる。
昨日の暗い雰囲気はどこへやら、あの爆豪くんも「やらせろ!」と掌を天に突き出しながら息巻いていた。
「オイラのマニフェストは女子全員膝上30cm!」
向上心じゃなくて下半身に忠実なやつもいるけど。
学級委員長ってそういうのじゃないから。
そんなこんなで慌ただしくしつつも、最終的にメガネ男子の提案で、投票によって学級委員長を決定する流れになった。
大半の人は自分に投票するようだが、俺は元々やりたい訳では無かったので、適当にメガネ男子に投票することにした。
正直誰でもよかったが、彼なら率先して指揮を執ってくれそうだなって。
メガネだし。
酷い偏見である。
で、最終的な結果は、緑谷君が三票、百ちゃんが二票、その他が一票かゼロ票。
これにより、委員長は緑谷君、副委員長は百ちゃんが務めることに決まった。
投票こそしなかったが、百ちゃんが副委員長になったことは素直に喜ばしく思う。
ばんざーい!
ちなみに俺はゼロ票でした。
まぁ他の人に投票したし、しょうがないよね。
・・・・・・別に悔しくないし。
けっ。
なお、俺が投票した飯田くんは、黒板に記された横棒一本を眺めながら感極まったように拳を握りしめていた。
君、あんだけやりたそうにしてたのに結局他の人に投票したのね・・・・・・。
生真面目だなぁ。
さすがメガネ。
酷い偏見である。
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お昼休みの食堂にて。
緑谷、麗日、飯田の三人は、緑谷の委員長就任について話をしながら食事を共にしていた。
「いざ委員長やるとなると務まるか不安だよ・・・・・・」
委員長に選ばれたことは嬉しいものの、集団を率いた経験など一度もない緑谷は不安で弱音を漏らしていた。
「大丈夫さ。緑谷君のここぞという時の胆力や判断力は “多” をけん引するに値する。だから君に投票したのだ」
「あれ? 飯田君にも一票入ってたよね」
自分への票の内の一票が飯田からだったことに驚いた緑谷だが、飯田にも一票入っていたことを思い出し、疑問を口にした。
「ああ、誰かは知らないが俺に投票してくれた人が居たようだ。その期待に応えられず申し訳ない限りだ」
「じゃあ、飯田くんが自分に投票してたら副委員長は飯田くんだったかもしれないんだね!」
「うぐっ!」
特に悪意のない
「ちょっ、麗日さん!」
「あれ? でも飯田くんも委員長やりたかったんじゃないの? メガネだし!」
酷い偏見である。
お前もか。
翔華と麗日の二人は、さすがチームを結成しただけあってよく分からないところで似通っていた。
メガネは概念。
その後も会話は続き、飯田がヒーロー一家の出であることや、あのインゲニウムの弟であることが判明するなどした。
そして話題は一周し、再び飯田の一票の話に戻る。
「結局飯田くんの一票は誰のだったんだろ」
「うーむ。それが分かれば俺に投票してくれた事と、期待に応えられなかった事への謝意を伝えたいところなんだが」
「そこまではしなくていいんじゃないかな・・・・・・。えーと、確か自分に投票してなかったのが、麗日さんと、轟くんと、紗守名さんだから・・・・・・」
そこまで言って、緑谷は思い出した。
翔華と、昨日の件について話をしなければならないことに。
どこまで聞いたのか、聞いた事は内緒にして貰えないか、という話をしておいてくれとオールマイトに言われていたことに。
緑谷は、学級委員長の件に気を取られてそのことをすっかり忘れていた。
「翔華ちゃんは八百万さんと仲良かったし、飯田くんに投票したのは轟くんかな」
「そうか! なら今度彼と話す機会があれば、その時に聞いてみるとしよう」
「だね! あ、そういえばデクくんは・・・・・・デクくん?」
麗日が緑谷に話しかけた時、緑谷はご飯を急いで食べ終えたところだった。
「ごめん! ちょっと用事を思い出したから先に───」
そうして緑谷が席を立とうとしたその時。
ウゥーーー
校内全体に甲高い警報の音が鳴り響く。
「警報!?」
『セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんはすみやかに屋外へ避難してください』
警報に続き、校内に緊急アナウンスが流れる。
セキュリティ3とは、校舎内に侵入する者が現れたということだ。
あの “雄英バリア” と呼ばれる防衛システムを突破して、だ。
名前はダサいが、確かな防衛力を誇っているのが雄英バリアであり、それが突破されたということは普通に一大事である。
個性社会では、侵入者がどんな強力な個性を有しているかもわからないのだ。
なので、現実世界で侵入者を知らせる為の合言葉としてよく使われる「大きな荷物が届きました」なんて遠回しなアナウンスをしている余裕は、個性社会には無い。
故の警報である。
それはもうダイレクトにけたたましい警報が鳴り響く。
そして当然、生徒達は大パニックに陥る。
もしかしたら強力なヴィランが乗り込んで来たのかもしれない、と身の安全を危惧した生徒達が我先にと避難を始めたのだ。
結果、見事にすし詰め状態が形成され、逆に危険な状況が生まれてしまっていた。
後に、飯田の機転で食堂周辺のパニックは沈静化されるのだが、それはまた別のお話。
校内全体に広がった混乱は、教室に居た翔華達にも伝わっていた。
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「な、何事です!」
「なになに!? セキュリティを突破!? 屋外へ避難!?」
こちらでもまた、他の場所よりは落ち着いているとはいえ、皆一様に軽いパニック状態に陥っていた。
いくらヒーロー科といえども、まだ入学して間もないピカピカの一年生なのだ。
避難訓練だってしていない。
咄嗟に冷静な対応ができないのも仕方の無いことだろう。
「ヴィランか!? ぶっ潰してやらぁ!!!」
一人別ベクトルで冷静じゃないやつがおるな。
身体が闘争を求めすぎだろ。
アーマードコアの新作が出るぞ(?)。
まったく。せっかく緑谷君からの追及を逃れられたと思って安心していたところだったのに。
問題が次から次へと湧いてくるではないか。
入学してからのイベント密度やばない?
どこぞの名探偵じゃないが、そういう事件を引き付ける体質なんじゃないかという疑念すら生じてくる。
もしくは、近くの誰かがそうなのか。
俺は緑谷君あたりが怪しいと睨んでる。
とにかく、事態の全容は既に掴んでいるので、場の収拾と情報の共有のためにも迅速に動かねばなるまい。
「はいはい、皆落ち着いてねぇ」
パンパンと手を鳴らし、皆の注目が集まったことを確認してから一旦落ち着くよう促す。
「落ち着いてる場合じゃないよ! 早く避難しなきゃ!」
「大丈夫だよぉ。なんせ侵入者はただのマスコミだからねぇ」
「え?」
それを聞いた三奈ちゃんは、事の真相を確かめるべく窓から外の様子を伺う。
するとそこには、マイクやカメラを持ったマスコミの群れと、鬱陶しそうに対応する相澤先生とプレゼントマイク先生の姿があった。
「何あれ・・・・・・」
普段ポジティブな三奈ちゃんもドン引きな光景である。
マスコミくんさぁ・・・・・・。
想像以上に今世のマスコミはモラルが欠如しているようだ。
というかもうヴィランやろ。あれ。
「チッ・・・・・・んだよマスコミかよ」
「まぁほとんどヴィランみたいなもんさぁ。バクゴーくん、やりたいならやっちゃっていいよぉ」
「やるか」
「駄目に決まってますわ」
マスコミ共に爆豪君をけしかけてやろうかと思ったが、すげなく百ちゃんに止められてしまった。
んもう、せっかく珍しく爆豪君が乗ってきてくれたのに。
「百ちゃんのいけずぅ」
軽く抗議するために、頭を百ちゃんの肩に当ててぐりぐりする。
おらおらぁ。
バチンッ
「あ痛ぁ!」
デコピンされた。
久々に・・・・・・痛ェじゃねぇか・・・・・・。
ひん。
「ヤオモモってデコピンとかするんだ・・・・・・」
「紗守名さんにだけです。珍しく冷静なところを見せてくれたと思った矢先にこれなんですもの」
「アテテ・・・・・・んもぅ。百ちゃんたらボクのこと大好きなんだからぁ」
バチィンッ!
「ぴぃ!」
えげついデコピンを貰った。
「うわあ・・・・・・」
「調子に乗りすぎですわ!」
「うぎゅおぉぉぉ」
なんでいつも二連撃なんだ・・・・・・!
そういう個性か!?*2
額を押さえながら蹲る俺を、爆豪君は残念なものを見るような顔で見ていた。
やめろ・・・・・・そんな目で俺を見るなぁ!
未だ慌ただしい校内の雰囲気に反し、気の緩んだやり取りをする翔華達に、いつの間にか教室内の空気は和んでいた。
翔華は、本人の意図しないところでパニックを鎮めることに成功していた。
その後、到着した警察によりマスコミは撤退し、はた迷惑な騒動は大した問題もなく終息した。
また、どうやら食堂の方ではメガネ男子が事態の収拾に一役買っていたようで、それを受けて緑谷君が彼を委員長に推薦し、最終的に学級委員長はメガネ男子が務めることに決定した。
その流れで、なんと百ちゃんが俺を副委員長に推薦してきたりもしたのだが、それはやんわりとお断りさせてもらった。
元々やる気があった訳じゃないからね。
それに、さっきのデコピンが思ったより痛かったことをまだちょっと根に持ってるのもある。
反抗のひとつもしたい気分なのだ。
つーん。
そんなこんなで通常の授業に戻りつつある訳だが、ただ一点、ぴこちゃんが常に何かを警戒していたのが気掛かりだ。
ぴこちゃんは賢く、今回の騒動がただのマスコミによるものであることは理解しているのだろう。
だとすると、ぴこちゃんは何に警戒していたのか。
ぴこちゃんがこうまで警戒心を露わにするのは、悪意や害意に対してだけなのだ。
また、マスコミがどうやってあの雄英バリアを突破したのかが未だ判明していないのも気になる。
うむむ。
なーんかヤな感じがするな。
翔華は一抹の不安を感じながらも、ぴこちゃんを落ち着けるためにしばらくその背中を優しく撫で続けていた。
「緑谷少年、ちゃんと話つけといてくれたかなぁ」
一方その頃、事態の収拾に奔走していたオールマイトは、緑谷がしっかり話をつけてくれているかどうかをしきりに気にしていた。
残念。有耶無耶になりました。
拙作とはいえこうして書き手に回ってみると、長く連載を続けている人って凄いんだなぁと改めて感じ入ります。
筆が乗らなかったり、モチベーションがお亡くなりになったりと、そういった問題を皆さんどう乗り越えているのかが気になるところです。
ちなみに自分はお気に入り登録数やここすき、感想なんかを眺めてにやにやすることでなんとかやっております。
という訳で、高評価、お気に入り、感想、ここすき等、お待ちしております!