召喚とかいう無から生物が出現する現象を個性の一言で片付けるのやばない? 作:そるしあ
私は昨日の真夜中にペヤ〇グを食べました(大罪)
ヴィランとは如何なる存在か。
特に理由も無く問いを投げかけてみたくなる、そんな時が誰にだってあると思う。
例えば己の認識が揺らいだ時。
俺は今、まさにこの状態に陥っている。
その揺らぎ様と言ったら、嵐の中の帆船とか、プッチンしたプリンとか、百ちゃんの胸とか、そのレベルの揺らぎである。
俺の認識では、ヴィランというのは個性を悪用して罪を犯すような極悪人の事だったはずだ。
ヴィランになる理由は様々だと思うが、基本的には救えない性格や野望を有している事がほとんどだと思う。
そのはずなんだけど。
「思ったよりも広そうだな。嬢ちゃん、まだ歩けそうか」
「怪我してんだから無理はすんなよ。ったく、大人しく俺らに運ばれときゃいいのによ」
「そりゃあこんなむさ苦しい野郎共に密着されるなんて嫌に決まってんだろ。嬢ちゃんだって年頃なんだぜ?」
じゃあこいつらはなんなんだ。
親戚の気のいいおっちゃんかよ。
露骨な女扱いは未だにムズムズするからやめて欲しいんだよな。
いやまぁ確かに全身を痛めてるし、防衛を担ってくれるのはかなり助かるんだけれども。
だが、それはそれとして。
こわい。
何が怖いって理由のわからん優しさが怖い。
知らん人達から急に優しくされたら誰だって少なからず恐怖を感じると思う。
真っ先に何か裏があるのではないかと疑うことだろう。
相手がヴィランだとしたら尚更だ。
というか寧ろこの状況においては裏があって欲しいまである。
だってこわいんだもん。
これが100パーセント善意による行動だとしたら、なんで君らはヴィランなんてやってるんだって話になる。
実は自分をヴィランだと思い込んでる一般人とか?
もしくは、元々心優しい人達だったが、やむにやまれぬ事情によりヴィランに堕ちてしまっただけとか?
まぁ考えられなくは無い・・・・・・のかもしれない。
いや、きっとそうだ。そういう事にしとこう。
きっと彼らはここにきて善なる心を取り戻したんだ。
いーじゃん! いーじゃん! スゲー美談じゃん!?
ご都合主義とか知らん。
終わり良ければ全て良しなのだ。
わはは。
「いやー、にしてもヒーロー共に一矢報いることができるって聞いてこうしてここに乗り込んで来たんだがな。どうしたもんか」
「なら嬢ちゃんを安全な場所に送り届けた後でひと暴れしに行こうぜ。もしかしたらオールマイトが死ぬところを生で見れるかもしれねえしよ!」
「そりゃいいなァ!」
「・・・・・・ま、後のことはともかく今は嬢ちゃんを守ることに集中しようや」
「おうよ! この子に危害を加えようとする輩が居たら俺達でぶち殺してやろうぜ!」
すごくこわい。
何が善なる心を取り戻したやねん。
バキバキ悪人やん。
バキ悪やん。
道理で肩に乗ってるぴこちゃんが未だに警戒を解かないわけだよ。
仮にもヒーロー科生徒が居るとこでなんちゅう話してんねん。
倫理観ないないしとる。
え、そうすると尚の事この人達が俺を助けた意味が分からないんだが。
何なのこいつら!?
翔華は混乱している。
「なあ、嬢ちゃん」
「!?」
そんな中、一人で殿を勤めていたヴィランが翔華に囁きかけてきた。
それに驚きはしたが、何やら真剣なトーンだったため、こちらも同じように囁き声で返事をする。
「ど、どしたのぉ」
「あいつらは嬢ちゃんを守ろうとはしているが、根っこの部分は完全なヴィランだ。あまり油断しない方がいい」
・・・・・・んん?
「・・・・・・その口ぶりからすると、オニーサンは完全なヴィランじゃないように聞こえるねぇ」
「さて、どうだろうな。ま、これまではともかく、今は足を洗うつもりでいる。嬢ちゃんのおかげで大事なことを思い出したんでな」
ふむ?
なんかこの人だけ他の人と様子が違う気がするな。
ぴこちゃんも他の人程警戒していないようだし。
「大事なことって何さぁ」
「・・・・・・俺は昔、ヒーローになるのが夢だったんだ。今となってはどの口が言ってんだって感じだけどな」
「ほんとだねぇ」
「嬢ちゃん割と辛辣だな」
そう言って苦笑する男からは、およそヴィランらしい悪意は感じられない。
「じゃあなんでヴィランなんて馬鹿なこと始めちゃったのさぁ」
「いやマジで辛辣だな・・・・・・。まぁ、なんだ、ただの八つ当たりみたいなもんだ。憧れがそのまま憎悪に変わっちまったんだ」
ファンとアンチは紙一重ってやつか。
なんとまぁ、難儀な事で。
可愛さ余って憎さ百倍とも言うし、かくも人の心は容易に裏返ってしまうものなのだろうか。
めんこじゃあるまいし*1。
おい誰だ今ババアって言ったの*2。
「だがもう俺は間違えねえ。きっちり罪を償った後でまたヒーローを目指してみるつもりだ」
「ほほぉ。それならまずはその小汚い格好から変えていかないとだねぇ」
「そろそろ泣いていいか?」
仮にも恩人に向かってこの言い草である。
翔華はざっくばらんだった。
怖いもの知らずとも言う。
「・・・・・・まぁとにかく、だ。あのヴィラン達には十分気をつけろよ。ヒーローに対する害意は健在みたいだしな」
「そこら辺は抜かりないから大丈夫さぁ。例え今この瞬間にオニーサンが襲いかかってきたとしても余裕で反撃できるよぉ」
「・・・・・・へぇ、言うじゃねぇか。今の嬢ちゃんにそれができるとは思えねえが、そこはさすがにヒーロー科か。なんか手があんだろうな」
その言葉に対し、にやりと笑いかけることで返答してやる。
それを見た男は呆れ半分、愉快さ半分で「見た目によらず食えねえ嬢ちゃんだ」と呟いた。
ま、実際は反撃の手なんて無いんですけどね。
へへ。
強いて言えばぴこちゃんが反撃してくれるだろうが、それだけである。
俺自身にできることなどあんまり無い!
ふんす!
既にぴこちゃんとれむちゃんを召喚しているし、れむちゃんに充てたリソースが大きかった分気力の消耗も激しいため、これ以上の召喚は望めないのだ。
つまるところ、念には念を入れてのハッタリをかましておいただけである。
忍者ハッタリくんだ(?)
嘘つきは忍者じゃなくて泥棒の始まりだって?
にやついただけだし嘘は言ってないからセーフでござるよ。
ニンニン。
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「嬢ちゃん滅茶苦茶かわいい顔してんなあ。やっぱ彼氏とかいたりすんのか?」
「うへぇ、やめてよぉ。そんなのいるわけないじゃんかぁ」
「なあ嬢ちゃん。パンツ、見せてもらってもよろしいですか」
「オニーサン海賊船で音楽家とかやってたりしたぁ?」
前を行くヴィラン達にそんなセクハラ発言をかまされながらも、着々と出口に向かって移動することしばらく。
翔華はというと、現状を客観視して思い至ったひとつの問題に頭を悩ませていた。
これ*3、先生やクラスメイト達に何て説明しよう。
元々は襲いかかってきたところを今は逆に護衛して貰ってる、と説明したところで意味わからんと思うし。
俺だって意味わからんもん。
心変わりとかいうレベルじゃない。
遊戯王なら禁止カードやぞ。
じゃあ当の本人達に理由を聞けよって話だが、そこを改めてつつくのはちょっと怖いのだ。
再度心変わりしてやっぱ襲うわってなったらヤじゃん!
というか、そもそもこの状況で先生方と穏便に合流が果たせるかどうかも怪しいところだ。
周りを囲う男達はTheヴィラン的風体をしているため、これを一見して俺が護衛されているなどとは思えない様相を呈しているのだ。
客観視したこの状況は、控えめに言ってもドナドナされている哀れな仔羊といったところか。
先生がこちらの様子を確認した瞬間、問答無用で戦闘が始まる可能性がある。
それ以前に、散り散りになったクラスメイトの誰かしらがこちらを目撃し、何らかのアクションを起こすという可能性もある。
その場合であれば、それが一部の野蛮人だったりつよつよ君でもない限り、穏便な手段での救出を模索してくれるとは思うが。
一部の野蛮人だったりつよつよ君だった場合は知らん。
なるようになるやろ(適当)
まさかそんなピンポイントな状況に陥ることなどそうそう無いので、考えるだけ無駄というものだ。
今はとにかく、起こり得る様々な問題に対しての穏便な着地点を考えておかなければならない。
いつになく真面目に考え込んでしまうのも仕方ないというもの。
さて、どうしたものか。
そんな事をうんうん唸りながら考え込んでいたその時。
「嬢ちゃん危ない!」
殿を勤めていた男が唐突に声を上げて動き出した。
「はぇ」
男の個性なのかロープを操り翔華を捕縛して浮かせ、その場を素早く離脱すべく大きく後ろに飛び退いた。
「うおっ、なんだ!?」
「ぐわあああ!」
その直後、前を歩いていたヴィラン達が悲鳴を上げながら氷塊に飲み込まれていった。
こ、この氷塊はまさか・・・・・・。
「一人逃したか」
そう呟きながら泰然とした態度で姿を現したのは、案の定
ピンポイントなのきたな。
寧ろフラグを立てることで敢えて呼び寄せたまである。
召喚の個性は伊達じゃないってか。
やかましいわ。
「大丈夫か紗守名」
「心配してくれてありがとぉ・・・・・・じゃなくてぇ! ちょっとぉ! 危うく巻き込まれるとこだったじゃないのさぁ! ぶーぶー!」
翔華は簀巻きの状態で宙にふわふわ浮かびながらも、足を猛烈にバタバタさせて抗議した。
遺憾の意を表明する!
「・・・・・・その様子なら大丈夫そうだな。安心しろ。後でお前の周りの氷だけ溶かすつもりだった」
結局巻き込むつもりだったんじゃないですかヤダー!
「女の子に対して随分乱暴なことするじゃねえか、坊主」
「ヴィランにとやかく言われる筋合いはねぇ。いいからそいつを解放しろ」
「ん? ああ、そういや捕縛したまんまだったな。すまねえ嬢ちゃん、今解放してやるからな」
そう言って男がロープに触れると、翔華に巻きついていたロープがスルスルと解けていく。
ふぃー、と一息つきながら地面の感覚を確かめる翔華をよそに、紅白男子は怪訝な表情でその様子を眺めていた。
「あんたヴィランじゃないのか」
「いや、ヴィランだ。ただまぁ訳あってそこの嬢ちゃんに絆されてちまってな。今はあそこで氷漬けになってるヴィラン共と一緒に嬢ちゃんを護送してたとこだ」
それを聞いた紅白男子は増々怪訝そうな顔をする。
「どういうことだ紗守名」
「ボクもよく分かってないけど、守ってくれるって言うからお願いしてたんだぁ」
「そうか。なら悪ぃことしたな」
「それでいいのかお前ら」
今度は男が怪訝そうな顔でこちらを見ていた。
ため息をついたその男は、氷を溶かそうとする紅白男子の肩に手を置いて静止をかける。
「そいつらの氷は解かなくていいぞ、坊主」
「・・・・・・どうする、紗守名」
「うーん。ボクとしてはここまで護衛してくれた恩もあるし、それを仇で返すような真似はしたくないんだけどぉ・・・・・・」
それを聞いたヴィラン達はそうだそうだ! と翔華に同調する形で男に抗議の声を上げる。
それらを一喝して黙らせた男は翔華へと向き直り、真剣な表情で諭すように語りかける。
曰く、彼らは翔華を守ろうとはしていたとはいえ、この襲撃に参加している以上、れっきとしたヴィランに間違いはないのだと。
ヒーロー志望ならそこを履き違えず、まずは身柄を拘束して償うべき罪をきちんと償わせなければならないのだと。
そういったことを強く語る男からは、確かにヒーローを目指すだけの熱意が感じられた。
だがまぁ、うん。
それはそれとして。
「確かに言っていることは正しいが、それをお前が言うのはどうなんだ」
紅白男子が直球火の玉ストレートをぶん投げる。
うん。そうなるよね。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・それは、そうだな」
南無。
かくして、氷漬けのヴィラン達はここに放置されることが決まった。
ヒーロー志望の男もここに残るそうだ。
念の為にと、紅白男子による拘束付きではあるが。
ごめんよ謎に親切なヴィランさん達。
きっと改心して戻ってきておくれ。
そしたらその時にまた改めてお礼をさせてね。
申し訳なさそうにそう告げた翔華は、せめてもの餞別としてヴィラン達の口に持っていた飴ちゃんを放り込んだ。
ヴィラン達は何故か涙を流しながら噛み締めるようにして飴を味わっていた。
どしたん・・・・・・こわ・・・・・・。
結局、護衛をしてくれたヴィラン達に感謝の気持ちがある一方で、妙な優しさに対する違和感が晴れることはついぞ無かった。
あ、ぴこちゃんが氷塊をぺろぺろして頭がキーンてなってる。
うーん、可愛さ余って可愛さ百億倍(?)
可愛らしいぴこちゃんの姿を目にした瞬間、翔華の頭の中からヴィラン達の事は暴風前の灯火の如く消し飛んだ。
ぴこちゃんの魅力を前にした時、ありとあらゆる感慨も疑問も全て塵に等しくなるのだ。
目をキュッと瞑り小刻みに震えてるぴこちゃんを抱えあげ、その頭を優しく撫でてやる。
そうして少し落ち着いたぴこちゃんを撫で続けながら、そういえばれむちゃんはどうしてるかな、と今も奮闘しているであろう我が子に思いを馳せる。
相澤先生と一緒に大活躍をしているであろうれむちゃんを想像した翔華は、後でいっぱい褒めてあげなければなるまいと頬を緩ませた。
夜食にこってりしたものを食べると美味さが三割増しくらいになるのはなんででしょうね。
体重計に乗るのがコワイねェ〜〜