召喚とかいう無から生物が出現する現象を個性の一言で片付けるのやばない? 作:そるしあ
主人公の脳内お喋りが騒がしいせいでUSJ襲撃編が長引いていく・・・・・・。
誰か猿轡持ってきて(鬼畜)
「オールマイト殺しの実行役ぅ?」
「ああ。黒いモヤみてえなヤツと、身体中に手が付いてるヤツ。後はその近くにいた図体のでけえ黒いヤツがそうらしい」
親切なヴィラン達と別れた後。
翔華は現在、こうして行動を共にしている紅白男子と情報交換を行っていた。
なんでも、彼は別の場所にいたヴィラン達から “個性的な手段” によっていろいろと情報を聞き出したらしいのだ。
それにしてもオールマイト殺しとは・・・・・・改めて考えると随分とまた大きく出たものだと思う。
なんなら無謀と言って差し支えないだろう。
あの脳筋で平和の象徴な筋肉ダルマに三人ぽっちで勝てるわけないだろ! いい加減にしろ!
教師や師匠としてはポンコツもいいとこだが、こと戦闘力に関してはあの人の右に出る者はそう居ないだろう。
パンチで天気が変わるって何?
筋肉版天気の子かよ。
───ねぇ、今から晴れるよ(物理)
やかましいんだよな。
なんでもかんでも個性の一言で片付けていいと思ったら大間違いだぞ。
漫画の世界じゃあるまいし*1。
「平和の象徴があいつら如きにやれるとは思えねえが、どんな策があるかもわからねえ。俺は念の為に広場に向かう。お前は途中で別れて出口に向かえ」
「いんやぁ。広場でうちのれむちゃんが頑張ってるはずだし、ボクもついてくことにするよぉ」
「・・・・・・そうか。それは構わねえが足手纏いにはなるなよ」
「む。わかってるよぉ」
うーん、相変わらずのこの舐め腐った態度。
個性が半冷半燃っていうならクールなとこだけじゃなく熱いところも見せて欲しいなってあたしゃ思うね。
多分根はいい子なんだろうけど、妙にトゲトゲしてると言うか、謎にギラついていて余裕が無いというか。
もはや思春期男子特有のアレというよりかは、なんや復讐にでも生きとるんかってくらい常に張り詰めてる様子だ。
・・・・・・顔の火傷跡を見るに、あながち間違いでも無いかもしれないが。
前から思ってたんだけどこの子属性過多では?
まず、面が良くクールな性格をしている上に、学業優秀で強個性持ちかつ戦闘力も極めて高い。
だが、かなりの天然気質で、顔の左側には火傷跡があり、何やら闇を抱えていそうな様子、と。
沼やん。
ヌッ-ヌッ-ヌマヌマ(゚∀゚) やん(?)
夢女子量産機か何かかな。
ただでさえ鬼つよハイスペ男子なのに、愛嬌のあるギャップとか、寄り添いたくなるような陰まで与えるんじゃあないよ。
属性の詰め放題かよ。
これでヒーローとして世に出ようもんならガチ恋勢続出待ったナシだぞ。
しかも聞くところによると実家が太く、親は超有名トップヒーローなのだとか。
加減しろ莫迦!
ここまでくると相当にヤベー欠点でも無い限り釣り合いが取れんぞ。異常性癖持ちとか。
とんでもねえ奴と同じ時代に生まれちまったもんだぜ。
翔華は遠い目をした。
そんな翔華の様子を見ていた紅白男子は訝しんだ。
頬を膨らませて怒っていたかと思えばこちらを難しい顔で見つめ出し、今は虚ろな目でどこか遠くを眺めている。
(・・・・・・変なヤツだな)
紅白男子は心の中でそう零した。
| ■ 実績解除! | |
| 紅白男子からの変なヤツ認定 |
なんだその実績。
まぁ、無関心ではなくなった分、ある意味で二人の関係性は進んだと言えるのかもしれない。
それが良い方向になのかは別として。
閑話休題。
とにかく、目的地を同じくした二人は広場へと足を進めた。
道中、二人の間に会話は無かったが、不思議と嫌な雰囲気にはなっていなかった。
むしろ、今の切迫した状況に不釣り合いなほどの弛緩した空気が漂っていた。
その故は、紅白男子の強者たる余裕か、翔華の気の抜けた佇まいか、ぴこちゃんの可愛らしい見目か。
油断なく周囲を警戒しつつもどこか穏やかなその行軍は、しかし翔華が突然に呻吟を零したことでその歩みを停止した。
「ぐぅっ」
「っ!? どうした!」
「れむ、ちゃん・・・・・・?」
翔華は、頭痛を伴うほどに急激に脳のリソースが奪われたことで、れむちゃんの身に何かが起きたであろうことを察知した。
自動的に多くのリソースが割かれたということは、眷属の顕現の維持そのものにリソースが追加で必要になったということになる。
その場合の理由として主に考えられるのは、眷属との距離が大きく離れたか、身体の再構築が必要になったかのどちらかだ。
その内、眷属との距離に関しては、個性の副次的な効果により変わらず広場に居ることが分かっているため、今回の場合は身体の再構築が理由だと考えられる。
つまり。
何らかの要因でれむちゃんの身体が大きく損傷した可能性が高いのだ。
あの堅牢な身体を持つれむちゃんが。
「れむちゃん・・・・・・!」
そう思い至った翔華は矢庭に杖を掲げ、冷や汗の伝う顔を強ばらせながら祈るようにして力を込めた。
そして、己の身体がリソース不足による不調を訴えている現状を捨て置いて、“ゆにちゃん” の召喚を強行した。
途端に強まった頭痛と揺れる視界に顔を顰めながらも、矢継ぎ早に喚び出したゆにちゃんの背に飛び乗る。
「乗って!」
それから、目を丸くしていた紅白男子に呼びかけ、後ろに乗るよう肩越しに親指を向けて催促する。
紅白男子はハッとした表情をすると、軽く返事を返し、翔華と同様にゆにちゃんの背中に飛び乗った。
「しっかり掴まって!」
紅白男子が手を重ねるようにして手綱を掴んだ事を確認した翔華は、すかさずゆにちゃんに発進の合図を送る。
それを受けたゆにちゃんは大きく翼をはためかせながら嘶くと、風を切り裂かんばかりの勢いで真っ直ぐ広場へと飛び立って行った。
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時は数分遡り、翔華がまだヴィラン達と行動を共にしていた頃。
広場付近の水難ゾーンでは、窮地を脱した三人───峰田と蛙水と緑谷が、広場での戦いの様子を伺うべく水中に身を隠しながら水際へと近付いていた。
「なあ緑谷、様子を見るだけだぞ様子を・・・・・・」
「ケロ・・・・・・」
「わかってる。危ないと感じたらすぐ逃げるから」
そうして水中から顔だけ出した三人。
その眼前では、相澤先生とれむちゃんの二人*2による大立ち回りが演じられていた。
「ぐあっ!」
相澤先生が、個性行使の直前にあるヴィランを “抹消” で無力化し、狼狽えている隙を狙って渾身の右ストレートを放つ。
撃破数プラス1。
「ひ、ひぃいいいいい」
「このっ・・・・・・! ぎゃあああ!」
れむちゃんが、異形系の怪力とパワー系の個性による乱打を涼しい顔で受けつつ、大きく腕を振って薙ぎ払う。
撃破数プラス2。
「くそっ! まずはゴーグルの奴から倒すぞ!」
「囲え!」
直後、四方のヴィラン達から個性による遠距離攻撃が放たれるも、肩の上に移動した相澤先生をれむちゃんが掌で防護することで対処。
「何ィ!?」
そして、無傷のれむちゃんが地面を強く叩いて揺らし、ひるんだヴィラン達を相澤先生が一掃する。
撃破数プラス4。
締めて撃破数7。
僅か数秒でこの数字である。
無双ゲーかな?
コンボを繋げるように次々と敵を打ち倒していくその光景は、さながらテンポよく攻撃と回避を繰り返すだけのリズムゲームのようですらあった。
フルボッコだドン!!!
そうして雑兵であろうヴィラン達の数を順調に減らしていると、ついに敵の首魁らしきヴィランが動きを見せ始めた。
機を窺っていたのか、痺れを切らしたのかは定かでないが、身体中に手をつけたヴィランが相澤先生へと一直線に駆け出したのだ。
「本命か!」
警戒を強めた相澤先生が先手として捕縛布を放つ。
手のヴィランはそれを掴んでやり過ごす。
その緩く張った捕縛布に沿うようにして二人が駆ける。
やがて肉薄し、互いの拳が交差する。
瞬間、相澤先生が捕縛布を引いて相手の体勢を崩す。
ヴィランの手が逸れ、相澤先生の横を掠める。
そして、相澤先生がその勢いのままに相手の土手っ腹へと肘打ちを見舞った。
歴戦のプロヒーローたる技の妙が光る一幕だった。
一連の流れを見つめていた緑谷達は、思わず感嘆の声を漏らした。
だが、相手も並のヴィランではなかった。
「チィッ」
相澤先生の放った鋭い一撃は、相手の腹部に届く直前、間に差し込まれた相手の掌に遮られていたのだ。
「動き回るので分かりづらいけど、髪が下がる瞬間がある」
「っ!」
加えて、このヴィランは相澤先生の個性の弱点───抹消の効果が途切れるタイミングがあることを見切って動いていた。
次の瞬間、相澤先生の肘にヒビが入る。
手のヴィランの個性なのか、五指の触れている箇所から肘が崩れてきていたのだ。
相澤先生は咄嗟に手のヴィランを突き飛ばして距離を取るが、既に右腕は満足に動かせなくなるほど崩壊が進行してしまっていた。
そこに数人のヴィランが襲いかかる。
形勢不利と見た相澤先生は、幾らかの応酬の後にれむちゃんの居る位置へと下がる判断をした。
これが仮に孤軍奮闘の状況であれば、右腕を封じられて尚ヘイトを集めるべくその場で対処しただろう。
だが、この場には守って殴れるパーフェクトゴーレム*3、れむちゃんが居た。
相澤先生はれむちゃんの肩の上に飛び乗り、戦闘スタイルを近接よりも捕縛布と抹消の個性によるサポートに切り替えることにした。
その判断を正しく理解したれむちゃんもまた、相澤先生を守るような動きから積極的にヴィランを倒す動きへと戦闘スタイルを切り替えた。
1人、2人と順調にヴィランが無力化されていく。
「なんだよ、今度は化け物の肩の上でおんぶに抱っこかよ。ヒーローが聞いて呆れるな」
そうして雑兵のヴィランを蹴散らす傍らで、挑発の言葉を投げかけている手のヴィランにも注意を払う。
流石にれむちゃん相手に近接は不利だと判断したのか、再び攻撃を仕掛けて来ることはないようだった。
「ところでヒーロー共」
だが、手のヴィランが静観に回った理由はそれだけではなかった。
「本命は俺じゃない」
いつの間にか後ろに立っていた筋肉質な黒いヴィランが、れむちゃんの左脚に向けて拳を振り抜く。
「教えてやるよ、イレイザーヘッド。そいつが対平和の象徴───」
すると、今までどんな攻撃を受けてもびくともしなかったその身体は、爆発したかのような衝撃音と共にひび割れ、砕けてしまった。
「───怪人、脳無」
圧倒的な力を前に左脚という支えを失ったれむちゃんの体が、轟音を立てながら倒れ込む。
「くそっ!」
相澤先生は巻き込まれる寸前に大きく飛び退くことで衝撃から逃れたが、無理な体勢と右腕の怪我が相まって、地面に着地すると同時にバランスを崩してしまった。
それは致命的な隙だった。
「やれ、脳無」
既に相澤先生の背後に回っていた黒い男───怪人脳無が、相澤先生を叩き潰さんと手を伸ばす。
既に回避は不可能。
れむちゃんの極めて堅牢な身体すらも砕いた腕力が目前に迫る。
それを見ていた緑谷達は、豆腐のように握り潰される相澤先生を幻視した。
だが、その手が相澤先生に届くことは無かった。
突然、横から突っ込んできた巨大な物体によって脳無の体が吹き飛ぶ。
「は?」
「何が・・・・・・っ!」
突然の出来事に戸惑う相澤先生が横を見やると、そこには右腕を突き出した状態で、
心なしかドヤ顔をしているような気がした。
ついでに、ドヤ顔をしている翔華の顔も浮かんだ*4。
クソ騒がしいから振り払った*5。
とにかく、これで形勢を立て直すことができたことになる。
相澤先生は右腕を負傷しているが、れむちゃんは万全の状態。
対して、れむちゃんの渾身の右ストレートを受けた脳無は、左腕と左脚がひしゃげており、ほぼ戦闘不能。
残す手のヴィランは近接主体のためれむちゃんとの相性不利で、黒いモヤのようなヴィランは現在ここには居ない。
ともすると、形勢有利とまで言える状況だ。
「あいつ、一瞬で回復しやがった。超回復持ちかよ」
手のヴィランが恨めしそうにれむちゃんを睨む。
首を掻き、苛立ちが隠せていない様子だ。
だが、次の瞬間にはニヤリと笑い───
「脳無と一緒だ」
───相澤先生達にとって最悪な情報を告げた。
中途半端な場面でしたが、長ったらしくなりそうだったので一旦区切りました。
これも全て脳内お喋りが騒がしい主人公のせいなんです(責任転嫁)